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先月(2017年6月)

福島秀美さんのレビュー一覧

投稿者:福島秀美

1 件中 1 件~ 1 件を表示

新たなまなざしの交錯地点に

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 失われた塔「浅草十二階」についての詳しい記述だけでも興味を大いにそそられる上に、この塔が近代日本人にもたらしたさまざまな「まなざし」をも解き明かしていく本書は、知的興奮を味わえること間違いなしの一冊である。
 かつて浅草に聳えていた塔。塔には日本初のエレベーターがあり、内部では写真による美人コンテストが開催された。しかし、例えば東京タワーがテレビ塔として建てられたように、何らかの機能を付加されていたらいざ知らず、ただ「登るため」にのみあったこの塔は、次第に飽きられ、忘れ去られてその存在意義を失っていく。そして、関東大震災によって途中階から折れ、最後には爆破されてこの世から消えた。
 その三十三年足らずの存在期間において、塔から、そして塔へ向けられる無数のまなざしが交錯するさまを、著者は多岐な分野にわたる資料を丹念に分析することで明らかにしてゆく。例えば、塔の上から目の前に広がる景色を眺めるまなざし。塔から吉原の美女を覗き見るまなざし。塔の下に広がる色街に足繁く通った石川啄木が塔へと投げかけるまなざし。次第に忘れ去られてゆくその塔を見つめるまなざし——。
 それにしても不思議な本である。塔から投げかけられたまなざしが対象を見失ってさまようように、忘れ去られた塔へと向けられたまなざしが塔を凝視することをためらってとまどうように、物語はどこか一点に収斂していくわけではない。もちろん、それは著者によって意図されたところでもあるのだろう。塔が失われてしまった以上、塔からの、そして塔へのまなざしは、我々がどんなに想像を馳せても完璧に再現することはできない。
 しかし、浅草十二階は、失われた後も人々のまなざしを集め、人々にまなざしを投げかける存在となった。現代の我々もまた、浅草十二階をまなざし、これによってまなざされる存在である。そして『浅草十二階』は、その行き交うまなざしの新たな交錯地点に、そっと置かれるべき書物なのである。

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