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先月(2017年8月)

ほりうちさんのレビュー一覧

投稿者:ほりうち

2 件中 1 件~ 2 件を表示

アンダーレートされている天才が蘇る

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 長野県松本市、松本城に程近い静かな通りにジャズ喫茶エオンタがある。とんかつ屋の横の階段を上がると、途中から低くテナーやベースの音が響いてくる。ジャズメンたちのサインが書かれた壁を横目にドアをあけると、わっと音に包み込まれる。狭い店全体がスピーカーであるかのように鳴っている。
 5年程前に、往年のジャズ狂の知人とこの店に入った。かれがリクエストしたのが、「幻の“モカンボ”セッション'54」だった。「守安のあれ、ある」といっただけで、レコード盤が出てきたのにも呆れたが、それにもまして衝撃的だったのは、セッションの中でも際立つピアノの響き。こんなすごい演奏をするピアニストが、昭和20年代末の日本にいたのか、と驚いたのを今も覚えている。それ以来、守安祥太郎の名前は心のどこかにひっかかっていた。
 本書は、守安の慶応の後輩にあたる著者が慶応ヨット部について取材する中で、後にジャズプレイヤーとなった戦時中のヨット部キャプテンにたまたま興味を持ったことがきっかけで書かれることになった。著者は元編集者だというが、その経験と人脈を頼りに「守安の生涯が短かっただけに、彼と関わりのあったすべての人に話を聞こうと、筆者はこの取材で200人近い人に会った」という。
 もう50年近い昔の話で、守安を知る人はほとんど70歳を超えている。高齢の人から先に話を聞いたというが、その苦労は相当なものだっただろう。本書が出なかったら、時の向こうにあっけなく消えていったはずの1人の青年の人生が、もちろん事実そのままではないにしても、生々しく蘇っている。しかも、ただの青年ではなく間違いなく天才と呼びうるジャズプレイヤーの生涯だ。地味な本だが、その価値は大きい。
 ジャズの理論にしても、音楽は専門外だとことわっているが、それだけに素人にも分かりやすく書かれている。
 他の著書も読んでみたいと思い検索してみたが、今のところ本書以外にはないらしい。また5年かかって誰かを追いかけているとしたら、そろそろ2作目が出る時期だと思うのだが。

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紙の本回送電車

2001/08/29 23:34

いかにもダ・ヴィンチでとりあげられそうな装丁。まあ私も好みだが

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 それはともかくとして、内容は新聞、雑誌に掲載された様々な随想を纏めたものである。
 私が読んで印象に残ったのは、「特定の路線上にあって、なお分類不可能な」存在への共感を綴ったタイトルロールの、各国からの貧乏留学生が中世の修道士のごとくに集い、回廊でつながれた蜂の巣状の書棚というあたりが ボルヘスの『バベルの図書館』を思わせるパリの大型書店風景を描写した、近所の野良猫につける愛称の話から、競馬場へ行くために馬を連れて道路を横切った馬丁に、ムーミン・シリーズの登場人物スナフキンの姿を重ねる体験へと連想が飛ぶなど。
 事象に対する愛着が現代的であるいっぽうで、普通とは少しずれた視点でものをながめ、日本や西欧の伝統的な文学の教養にもとづく題材と育ちの良さそうな文体が奇妙なバランスを保っているところが、この本の魅力だ。それは、著者の言葉を借りれば「的な身分」を自ら選んだ「間の抜けたダンディズム」ということになる。この、地に足をつけたくない生き方への主張、世の中に対して絶望しないための避難所を確保し、そこから世間を観察しようとする姿勢には、『徒然草』など日本の中世の隠遁文学に通じる精神が感じられる。

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