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考える人さんのレビュー一覧

投稿者:考える人

11 件中 1 件~ 11 件を表示

紙の本監督不行届

2007/02/20 05:34

しあわせな夫婦の一形態を覗き見!

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 これは面白い。
 日本のオタク四天王と称される男性と結婚した女性マンガ家が、自分たちの夫婦生活を描いたコミックエッセイ。ですが冒頭には「この物語はフィクションであり〜」という注意書きが入ります(遊びのひとつとして)。巻末の映画監督である旦那さんのインタビューでも、事実をかなり脚色していることが名言されていますし、内輪受けのお惚気マンガにしないよう努める作者のプロ意識の高さが感じられた作品です。「嫁さんは自分を美化できない」という旦那さんの言葉が本当なのは、読めばわかります。

 安野モヨコの作品といえばオタク精神は皆無じゃないでしょうか? むしろオタク系の男をみたら引きながら「お風呂に入ってなさそう」と話すような女の子を描く人です。
 この作者の有名なエッセイ美人画報でも「一般受けするキレイなお姉さん」を目指しており、オタク女子やバンドのファンの子にありがちな個性派(?)ファッションに対しては否定的だったと記憶しています。つまり耽美生活百科(楠本まき←学生の頃からライブハウスに入り浸ってた系の作者)などを愛読する私の趣味ではありません。
 しかし本書で作者は、自分がオタクだと告白。同業者やオタクの男子とつきあったことがなかったのは、非オタクの人と一緒にいれば中和されて自分もフツウになれるんじゃないかと思ったから、だそうです。
 私は彼女を誤解していた。

 そんな作者がオタクの男性と結婚し、中和されるどころか高濃度になっていく様子は、影響されたというよりも「本来の自分を取り戻した」と表現するべきじゃないでしょうか。
 オタクを悪いこと、恥ずべきことを思い、隠そうとしたり治そうとしたりする「隠れオタク」の女子って、私の知るかぎり非常に多いんですよね。なぜそんな引け目を感じなければならないのか、男性と比較してジェンダー的な観点で追究するのも実がありそうですが、本書はそんな彼女たちに生きる道のひとつを示しているように感じました。

 男女どちらにもいえますが、結婚相手がオタクだったとき起こるトラブルといえば、まず自分の部屋だけでなく家中をコレクションで占領してしまうこと。さらに給料の大半を趣味につぎこみ、家計や教育費や老後の蓄えにまわさない。そして休日や余暇は趣味に没頭して家族サービスしない。などが典型的ですよね。
 そういった問題をどう乗り越えていくか、あるいは乗り越えられずに妥協している部分も含め、ふたりがオタク特有の夫婦生活を全身で楽しんでいる様子が伝わってきて、なんとも微笑ましい気分になりました。

 その辺の隣家の中でも、こんな未知の世界(笑)が繰り広げられているかもしれないと思うだけで、楽しくなります。面白い!

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赤ちゃんが来た

2007/02/07 23:16

人間を変えてしまう出来事のひとつ

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 タイトルや表紙イラストからして女性が興味をもちそうな感じですが、どちらかというと男性にお勧めしたい作品です。

 想像されるとおり妊娠・出産・育児を扱った内容で、朝日新聞やいくつかの雑誌に掲載されたエッセイをよせあつめて一冊にまとめたもの。なので内容的に重複している部分も若干ありました。
 この手の作品は一時期やたら流行し、それが過ぎても常に一定の需要がある分野ですから、ひとつのジャンルとして定着することに成功しましたよね。類似の作品を読んだことのある人も多いと思います。

 しかし本書は、ほかにはない特徴があります。
 出産にまつわる体験をルポして感じたことを書くだけにとどまらず、母親となった作者が妊娠前と比べてどれだけ変化したのかをかなり客観的に自己分析し、冷静に述べているのです。生活面に変化があるのはもちろんですが、自分の物の考え方や視点の変化が中心です。一人称なのに三人称かと思うくらい、自分のことを引いて見てるのがスゴイ。

 たとえば作者は出産後に旅行をします。そこで赤ん坊の姿がやけに目についたのに気づく。でもべつに赤ん坊の比率が高いわけではありません。

「日本にいるときも妊娠中は妊婦の姿が、産んでからは赤ん坊の姿が、よく目に入った。それまで見ていた光景からは、全然みつけ出すことのなかった人々である。見えてなかったと言ってもいい。そうなると今自分が見ている光景だってあやしいものだ。身近に感じることが少ないから、たとえばお年寄りとか車イスの人とかの姿を、私はちゃんと視界に入れてるかどうか。」

 人間は変わるものです。
 あなたも恋人がいつまでも若く美しいままだとは思っていないでしょう。外見よりも中身が好き、ですか? こんな性格だから、こんな考え方だから好き、という部分がきっとあるんじゃないでしょうか。
 でも、ふたりの幸福を象徴するような出来事である妊娠・出産・育児を経験したのがきっかけで、彼女は変わってしまうかもしれません。あなたの好きだった部分がこの世から消えてなくなる可能性だってあるんです。

 もちろん女性に限らず男性も多かれ少なかれ同じです。お互い様なんです。ただ本書は母親側の変化がメインですから、男性が読むと得るものが大きいと思います。
 そこはもう通過しちゃったって人は、あのとき自分が外で働いているとき、育児をする妻の中でなにが起こっていたのかを、いまさらながら知ることができるかもしれません。
 あと子供をもたない人生を選んだ人。子供ができたとたん友人が親バカというかバカ親になって、迷惑な勘違い行動をとるようになったと批判的に感じることもあるでしょう。本書の作者も妊娠前はそんなことを考えるタイプでした。だからこそ子供ができたことによって初めてわかったことを、子供のいない人にも理解できるように書くことができるのです。

 出産・育児に縁が薄い人にとっては、確実に世界を広げられる作品だと思います。

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紙の本鈍器降臨

2007/02/02 15:15

渦巻く知性と異次元の世界

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 読者からエッセイを募集し、古屋兎丸がそれを元にした四コマ漫画をつけて載せるという、ダ・ヴィンチでの連載をまとめたものです。
 まず読者投稿のエッセイの質の高さに驚き。私はダ・ヴィンチを読んだことがないし周囲にも定期購読している読者は皆無なのですが、日常の描写から少し哲学的な思いをはせるような小文を上手にまとめることぐらいできて当然な読者層なんでしょうか。週刊誌の投稿欄などとは別の世界だ。
 そして古屋兎丸のマンガは相変わらずシュールかつアーティスティック。まあネタによって当たり外れはありましたけどね。

 古屋兎丸は、正式に絵を学んだに違いない美術的な描きこみとマンガ的にデフォルメされたキャラクターが同居する絵柄、やたらシュールでブラックなネタ、あるいは社会風刺の効いたネタ、そして作者個人が抱いているあまり笑えないコアすぎる少女へのフェティシズム、といった芸風の作者です。デビュー時は高校の美術教師で、この連載をしていた頃はまだ在職中だった模様。
 こうして特徴を並べ挙げるだけでも一般受けしない作家であることは明らかです。不謹慎なものには即座に眉をひそめちゃうような良識派の方は、もう生理的にダメだと思います。逆に好きな人は深くハマること確実で、知人友人に勧めるときは相手の嗜好をよく見極める必要があるでしょう。
 たぶん好きだと思うけど微妙だな〜という場合、作者の良さがでてて、かつ軽めの作品を選びたいのですが、どれもそれぞれ濃くてチョイスが難しいのが悩みどころ。ギャグ作品とストーリー作品では完全に味わいが違いますしね。
 そこで私は、本書を古屋兎丸の入門用として推したいと思います。
 ひらくと右のページに読者エッセイ、左に古屋のマンガという構成。エッセイをそのままマンガ化しているのではなく、そこから何回転もヒネりまくった内容ですから、その解釈や曲解の仕方をいくつも読んでいると彼の持ちネタや方向性がだいたい把握できますし、もし合わないと感じたときも半分を占めるエッセイを楽しむことで、損したという気分を減らすことができるかもしれません。笑。
 もしこの作品で古屋兎丸に興味をもった人がいたら、次は
PalepoliやWsamarus 2001あたりに進むといいんじゃないでしょうか。

 とても好きな作者です。今回も兎丸ワールドにどっぷり浸れて気持ちよかった。

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『人間の生き方』に真正面からとりくんだ少女マンガ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 や や 難 解 。
 作者によると仏教の八正道を参考にしたとか。人間が正しい生き方をするための八つの方法、だそうです。主人公を通して読者もそれを学んでいく、小中学生女子むけ作品。メルヘン設定の数々とキラキラ少女マンガの雰囲気が平気なら、大人の鑑賞にも耐えうる内容です。中途半端な年齢だと説教くささが鼻につきそう。
 序盤は平易ですが、3巻くらいからハードな展開になります。火あぶりで処刑される人とか出てくるし。読者に「考えさせる」ためなのか、台詞や演出面で理解しにくい部分も多く、ちょっと不親切です。終盤は哲学じみています。暇つぶしで気楽に読みたい人にはあまり向いてない作品かもしれません。

 あらすじ。
 本書の世界には愛の女神が実在し、真実の愛を説いています。そして女神の使者が人間の中から選ばれます。男性は『ユニコーン』で女性は『聖なる乙女』です。7つの愛のどれかをもつ人間の男性はユニコーン化して天に呼ばれます。聖なる乙女候補として選ばれた少女は天にある宮殿の学校に入り、7人のユニコーンと接して彼らから7つの愛を学び、すべて習得すれば聖なる乙女の完成。乙女自身が8つ目の愛を意味します。ユニコーンは乙女に愛を伝えれば地上に戻れるようです。ユニコーンや聖なる乙女になったからといって特別な任務があるわけでもなく、ただ故郷で自分らしく人生をまっとうすれば、それで務めを果たしたことになります。
 主人公コーネリアが聖なる乙女候補として天に昇り、10巻かけて見事卒業、地上に帰還し、自分の人生を歩みだすまでの物語。ひとりの女性に多数の男性が群がる逆ハーレム系の話ですね(笑)。男性キャラがそれぞれ欠陥のある個性でうれしい。なんで主人公はこんな男を選ぶのか、とは思いましたが。歴史物としての時代考証も手堅く安心です。

 一番の主題は男女の性差やジェンダーだと感じました。男女に明確な違いが与えられているんです。
 なぜ男性は愛(というか真理)のひとつを、教えられずとも最初からもっているのか。ほかの6つは必ずしも必要ではないのか? なぜ女性はひとつの愛も知らない状態で生まれ、7つ全てを勉強していかなければならないのか。女性は理解すればOKなのに、男性は実践しなければその愛をマスターしたことにならないのはなぜか。
 こういった問題を、恋愛に具体的な興味をもちはじめるローティーンの女の子に提示する方法として、それなりにベターな形で仕上がっていると思います。
 本書で推奨されている(?)男女のあり方には賛否両論ありそうですけどね。

 現代日本の一般的な正論とは違う意見や、なじみのない考えが良しとされることもあり、とても面白いです。私は初期仏教のサイトで八正道についての解説を読んだら、本書のわからなかった箇所も理解できました。
 仏教的じゃない部分は、女神の愛が永遠であること。永遠にして不変なものを信じることが全ての基本になっている。ま、とにかく自分自身が生きやすくなるための考え方が描かれています。それを行動にうつすと、他人を思いやって生きてるように見えるわけですね。だから登場人物たちの言葉や行動を表面的にうけとると、奇麗事ばかりのつまらない話に感じてしまうんじゃないでしょうか。

 読書を通じて自己啓発したいタイプの人にお勧めの良書です。

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究極の癒し系

14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 夏休み。どこにでもあるような住宅街に引っ越してきた幼い女の子、よつばの日常を描いた物語。
 といっても子供とその親が、やりたくなくても必ず経験する役所や病院や学校での煩雑な手続きなどは、決して描かれません。育児マンガのようなリアリティは欠如しています。
 ここにあるのは小さな女の子と同居したい独身男性の夢の世界です。彼を本当に不快にさせたりウンザリさせたりするような、でも子供がやりがちな行動ってあるんですが、そこは巧妙に避けられています。
 悪意のある見方をすると、よつばは「男に都合のいい女」の子供版であるといえるでしょう。脇役たちは服装などの点でかなり作りこまれたキャラクターであるのに、主人公のよつばと父ちゃんはそういった意味での個性が薄く、読者が自分の理想像を投影しやすくなっていると思いますね。
 彼らの日常は至って平凡なものです。だれもが普段いくような場所、だれでも経験するような出来事、だれの身近にも存在するような普通の人々。まさにありふれた風景です。
 ただそれだけのことが、日本での生活が浅くて好奇心旺盛な子供のポジティブな目を通して描くだけで、こんなにも新鮮で美しいものになってしまうのかという驚き!
 本当に驚くほど綺麗に丁寧に描かれています。生活に必要な味気ない道具だの、どこでもみられるような風景だの街角だのが。いうまでもなくキャラクターも素晴らしい。細部にまで気を配って描かれている完成度の高い作品で、しかもその密度を感じさせない控えめなテンションが貫かれています。
 ストーリーなどあってないようなものです。登場人物たちが試練に遭遇してそれを乗り越え成長するような物語ではないです。そういったものを求める人には退屈な作品だと思います。そのぶん気力や集中力がなくても読める、ストレスの少ない本です。
 日々の暮らしに疲れた読者が、「自分の生活も視点を変えればそう悪くないはず」と再発見して癒される、そんな作品です。

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大自然は人間に好意的ではありませんよ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 大山玲の作品でコミックス化されているのは2作しかありません。これは新しいほう。テーマはどちらも同じというか、前作のコア部分を濃縮した焼き直し作品ともいえます。オチ(?)も同じだし。
 描かれているのは一言でいえば「自然」でしょうね。と、そうきいて、どんなイメージをもちましたか?

 本書に描かれる自然とは、呼吸し、殺し、食べ、排泄し、交わり、眠り、子を産み、年老い、死ぬ。生物のいるところでは絶対的な法則として問答無用に繰り返される新陳代謝のことです。
 作者は、原初のプリミティブで野蛮なエネルギーに対し、無条件な敬意を払っています。彼の2作にはどちらも神のような存在が登場しますが、人間に善やら法やら救いやら与えてくれる存在ではなく、上記の新陳代謝を象徴する原始宗教的な性格をしていることからも、それがわかります。

 登場人物が裸で歩いたりセックスしたり人を殺して焼いて食べたりするわけですが、本人にも作者にもタブーという意識は皆無。まったく当然なこと(自然なこと)をしているだけという態度ですよ。だから性行為されたって読者もただ眺めるだけ、いわゆるヌケないエロを描く作者だなあ。まあ前作と比べて本書はその手のサービスがほとんどないですけどね。

 前作は現代日本が舞台でしたから、自然というテーマを扱う必然として環境保護問題などにも言及していたわけですが。要するに現代人の抱く「自然のイメージ」がいかに軟弱で夢見がちかって話です。守ろうと考えるってことは自分たちより弱いものとして捉えているのでしょう。でも違う、少しでも隙をみせたら大自然は人間なんか蹴散らして地球の覇権を握ろうとウズウズしている連中なんですよ。という話で。
 本書の舞台は原始時代ですからね。現実の小難しい問題に結びつけて建設的な結論を導きだす必要もなし。大自然の驚異的なパワーをひたすら描くだけです。

 独自の世界観をもっている作者でしょう。彼の目には物事がどんなふうに映っているのか想像すると興味深い。
 目前で展開された生命活動に、ただただ圧倒されるだけの作品でした。

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紙の本Holy brownie 4

2007/02/06 02:58

サービス過剰なエンターテイメント。テーマは重い

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 昔、天声人語で、国連の平和維持軍について読みました。日本の戦国時代も単なる内戦状態ですが、そこに戦車や戦闘機がのりこんできて強引に戦闘を終結させようとしたらどう思う?という意見。

 本書は童話「小人の靴屋」の設定を下敷きにした社会風刺ギャグマンガです。
 最初エロ漫画誌で連載されていた作品で、成人指定はついてませんが毎回のように性描写があります、要注意。でも主題はそこではないのでエロ漫画じゃありません。

 小人の靴屋とは夜中に小人が仕事を代わりにやってくれるという話です。主人公はその小人というか妖精というか天使のような存在で、神の命令により人々の望みをかなえてやるのが仕事です。一話完結式で、主人公のふたりがどんな時代のどんな国にも現れ、ある特定の人間を救おうとします。
 これじゃファンタジーぽいですが、じっさいはSFで、たとえば中世、人間に限りなく近い機械仕掛けの人形を作ろうとしている「靴屋」がいたら、主人公たちは何百年も未来の技術を運用して精巧なロボットを製造してしまうのです(冒頭につながる)。この辺もう、何でもあり。ギャグですからね。

 主人公たちは、人類誕生から滅亡に至るまでの歴史を知っている万能に近い存在です。私たちと違って特定の国や時代に属しておらず、価値観・倫理観の面で、ありえないニュートラルなポジションにいます。
 愚かな人間のどんな無茶な願いも実現できる。でもそれで本当に彼らを満足させ救うことができたのか? その結論が読者にも常に問われている物語といえるでしょう。

 主人公たち。ピオラはマジメなツッコミ役で、相方のフィオはすべてを知り尽くした愉快犯です。
 最初から「自分たちは神様の便所紙」と笑っていたフィオが、自分たちの存在に意味はあるのか。といった疑問を改めて呈します。
 ここからストーリーの本筋というやつが少しずつ姿を現し始めました。

 話の描かれ方も変化します。もともと主人公たちに救われる側の人生を描くのがメインで、主人公たちはガイド役でした。それが次第に、主人公たちが彼らを救うためにどんな手段を考え、どう判断するかに焦点が移ってきた気がします。

 個人的な感想というか推理ですが、2巻でフィオが抱いた疑問への解答も見えてきました。主人公たちが任務を果たす意味、それは「人間とはなにか」を学ぶためです(って連載は読んでないので、べつの真相が明らかになってたらどうしよう)。
 ふたりは肉体をもたない情報生命体ですから、どうやらこれは人工知能を人間に進化させるために必要なことをやってるんじゃないかと感じたんですよね、4巻を読んで。

 本書で描かれたピオラの初仕事の様子から、フィオとピオラの差異も感じました。フィオは試作機で、そのデータからピオラが作られた印象を受けたんです。
 もしかしたら最終的にフィオは廃棄される運命ではないか、という考えまで脳裏をよぎります。本人それを察しているような、そんな気配がしませんか?

 3巻にあった人魚の話。永遠の命を捨てて人間になろうとした(そして、なった)彼女の「人間らしさ」を、ピオラはヒステリックに断罪し、受容しませんでした。その次の話では「さいきん対象の人間の思考に同調しがち」という自らの変化を感じるシーンも入ります。
 そういうのを4巻の後に再読して気づいたり、深く読み込むぶんには面白かった。純粋に続きが楽しみです。

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神は細部に宿る

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 両親を交通事故で亡くした小学生の女の子みのり。父の実家にひきとられたが、祖父はマッドサイエンティストだった。次々と繰り出される発明品によって今日も大変、でも少しずつ心を通わせて家族になっていく、そんな日々をコメディタッチでつづるホームドラマです。
 マッドサイエンティストな祖父が大きな野心などをもっておらず、孫の機嫌をとるためだけに発明をするんですが、一般的な常識や倫理観が欠けているために生じるトラブルを面白おかしく描いています。発明品が炊飯器や洗濯機といった身近な家電製品を改造する形なのも楽しい。って、説明するとギャグはギャグじゃなくなってしまうんですよね、いつも思うんだけど。
 1話が8ページと少なめです。アホな発明やアホな登場人物のせいでこんなことになっちゃったーという、みのりの驚きを示す場面が見開き2ページで必ず入ります。今回の一発ギャグはなにかな?と期待しながら読むわけです。そのパターンが確立されてきたら今度は待ち構えてる読者に肩透かしをくらわせるようになったり。雑誌連載で読んだときはいい箸休めになる作品でした。こうしてまとめられて毎回それをやられると、ちょっと飽きてくるかもしれません。

 一巻は最初から最後までそんな一話完結型ギャグでしたが、2巻では、みのりと同居するイトコのマコトさんを掘り下げたストーリー展開もあります。
 これがまた青春!って感じで、こっちが赤面して部屋を転げまわりたくなっちゃう青臭さに満ちており、好きな人にはたまらないでしょうね。子供の頃は正しいことをしても「良い子ね」って褒められるのが耐えられず、わざと見せつけるように悪いことをやって照れ隠しするようなところがあるじゃないですか。あれです。あの空気がビシバシ伝わってくる。
 ただ、2巻収録のデビュー作や、みのりの友達が転校する回などを読むと、シリアスな話はそれしか書けないのか?とやや心配になりました。次回作に期待します。

 私がこの作品で好きなところは、細部のちょっとした描写や小ネタです。床の拭き掃除をしてワックスをかけるとき、スカートが汚れないように膝の下にきれいな雑巾をしいてたりとか。みのりの音楽の教科書の裏表紙がピアノの鍵盤(懐かしい!)だとか。かわいい。アシスタントはいないそうなので作者の腕ですよね。
 それから子供の気持ちや学校生活を描くのが上手い。小学校のクラスで男子と女子が対立したときの様子なんてリアルすぎて素晴らしいです。子供を記号的じゃなく描いているので、どんな家庭環境なのか、クラスではどんな立ち位置なのか、想像できるんです。
 たまに思い出して読みたくなる作品。あまり知られてないみたいですが、もちっと高く評価されてもいいんじゃないでしょうか。

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恋愛には技術的に解決できる部分も多い

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 恋愛マンガの巨匠が放つ女性向け恋愛指南書。マンガじゃありません。
 本をひらいてまず目につくのは、字のデカさと行間の広さです(笑)。見出しを色分けしたり絵を多用したり、言葉遣いも世間話してるような親しみやすい口語体で、ふだん活字の本を読まない人でも入りやすくなっています。
 なんというか、恋愛関係のマナーを学ぶ本かな。相手の浮気が疑わしいとき、どんな言葉や態度で確認するといいか?とかね。

 「人間、古いものに対しては悪いところに目がいく。新しいものに対しては良いところに目がいく」とは、けだし名言ですな。同じ人と長くつきあおうとすれば、だんだん相手の短所ばかりが気になってきます。相手も同じです。例外なく、だれでもそうなります。
 どうすればいいか? とるべき道は「自分の器を大きくして短所を許容する」「古くなる前に互いの短所を補いあえるような愛を育てる」「自分の人生において恋人が占める割合を減らす、つまりほかに生き甲斐をもつ」「次々と相手を新しくする」「ひとりでやっていく」など、自分にあう方法を自己責任で選べばいいんですけどね。どんな選択肢も肯定しているのが本書の良いところです。

 ただまあ、こういった本にはありがちなことですが、作者は仕事という生き甲斐をもっている女性で、語弊のある表現をするならば「男性的な要素が強い」わけです。ですから恋愛だけで頭を一杯にして生きていきたい女の子の気持ちに対してはあまり理解がないというか、むしろ仕事や趣味など男(&子供)以外に打ちこめるものをもつべきだという方向に走りがち。つまり女性の幸福とはなにか。それは人によって違うので、まず自分のタイプを正確に見極めろと作者も申しております。
 とにかく自分を幸せにできるのは自分だけ。だから自分の頭でよく考えて判断して、常に努力しろ。そしてどんな結果がでても自分の責任だから人のせいにしてないで次に活かせ、という論調です。当たり前ですか。

 本書は「恋を始める前」「始めてから」「つきあってるとき」「続けるには」というような段落に大きく分けられており、それぞれの段階でするべきこと、してはいけないこと、考え方の指針などが述べられています。ポイントは、段階によって必要とされることが違うってことでしょうか。
 うまくいかないときや不満を感じたとき、自分が悪いのか相手が悪いのか、単に男女の違いなのか、本質をついた指摘が満載。そして対処法もかなり具体的で、実践可能なことばかりです。自分が悪いときは治し方が書いてあるし、男女の違いが原因のときは見方を変える。相手が悪かったり性格が合わないときは別れよう。
 恋愛中は酔っぱらってるようなもので冷静な判断力を失っていますから、別れて次を探せとアドバイスされても簡単には従えないと思いますが。とにかく原因の在処を正確に知るのが解決の第一歩だってことですね。それが筋道たててわかりやすく納得いくように説明されています。

 恋愛は人によって違うといいながら、けっこう似たようなパターンを踏襲するのがよくわかる本でした。
 つきあって1ヶ月のときに起こりがちな山場とその対処法、同様に半年後、1年後、3年後。その「起こりがちな山場」は踏み絵のようなもので、たとえば1年後のマンネリ期に相手がどんな態度をとるのかを知れば、3年後の山場ではどう振る舞うのか、作者には予想できてしまう。恋愛にまつわる言動はその人の本質が露骨にでるからです。そのときどこに注目すれば相手を品定めできるのかなども書いてあり、非常に実用的。

 恋愛という人間関係の一種について、本質的なことを多く教えてくれる本です。

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幸せな結婚しようね

2007/01/31 09:14

結婚を夢見る人の、目を覚ます

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 結婚したいのにできない女性に対して、その原因はなにかを具体的に指摘してくれる本。かわいらしい絵柄のカラーマンガで要点がわかりやすく描かれており、気軽に読めるのが良いですね。
 女性向けの本ですが、マンガの語り手は男性なので、男性読者が友達の恋愛失敗談をきくように読むこともできるかも。
 どんな女性が結婚したくないと思われるか、という内容。
 どこが問題なのかよくわからない人や、自分には非はないけど男運が悪いせいだと考えている人に、自覚をさせるのが主題です。「それはわかってる、だからどうしたらいいのか教えてよ」という人が読んでも得るものは少ないんじゃないでしょうか。個人的には、男性向けのこういう作品が増えるべきだと思う。
 恋愛から結婚に移ろうとするとき考えなきゃいけないことって何段階かあると思うんですけど、その一番最初でつまづいてしまうケースを扱っています。結婚に限らず、家族以外の人と親密に共同生活しようとするときの心構えについてと考えることもできます。
 「心構え」です。じっさい問題が起きたときは、ふたりの問題ですから片方だけが勝手に解決することは難しくて、話し合いをして妥協点をみいだして互いに歩み寄るって形をとらなきゃいけないことが多いと思うんですけど。この本にでてくる人は「それ以前」で、相手になにか訴える前に自分ができる努力があるから先にそれやろうね、話はそれからだ、って感じ。
 例にあげられる女性たちが結婚にあこがれる思春期の女の子ではなく、いい年の社会人ばかりであることになんともいえない危機感を覚えましたが、エッセイマンガとしては面白く読むことができました。

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事例集としては良い

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いわゆる心の病にかかって人生が困ったことになっている人々を軽いタッチで紹介するエッセイマンガです。いまどきは珍しくもない内容だと思います。要するに、その手のものは特殊なわけではなく意外と身近な問題なんですよ〜と世間に啓蒙する本ですよね。
 かなり深刻で笑えないケースも多いんですが、作者自身が鬱病や神経症の経験者なこともあり、一般の人なら引いちゃうような人に対しても仲間意識をもって描いているのが好印象でした。
 さらに、個々のケースについて作者からのアドバイスも載ってます。といっても彼女は精神医学の専門家ではありません。たとえるならば、同じ病気の患者同士が集まっておこなうグループセラピーでの意見みたいなものです。

 以下は本の読んでの個人的な感想。
 そもそも日本人は、セラピストやカウンセラーにはなにを話すものなのかを、理解していませんよね。そりゃあ発祥地の欧米だって教科書通りにはいかないでしょうが、カウンセリングのあるべき姿が明確なビジョンとして脳裏にあります。

 カウンセラーは結論や答えや自分の意見をいわないものだってことです。患者に自分のことを話させて、どうしてそう思ったの? どうしてそういう行動をとったの? という質問を的確なポイントで与え、患者自身に考えさせて内面を整理させ、自分で結論をだせるよう手助けするものです(カウンセラーが望む結論に誘導できちゃうという弊害も報告されているようですが)。
 ところが(私が接したカウンセラーたちがそうだっただけかもしれませんが)「こういうふうに考えてみたら」という言葉で、結局は答えを与えてしまってるんです。なんだか妙に言葉や物腰が柔らかいだけの、お説教になっている。しかも内容は毒にも薬にもならない一般論。また患者は患者で、魔法のような解決策を教えてくれることを期待していたりします。
 しかしやっぱり、自分のちからで考えだした答えのほうが他人からもらったアドバイスよりも心を動かせるわけで。

 この本の作者も答えを与える形の助言をしています。精神的な問題を解決に導く手段として、アドバイスはあまり上等なものではないと思う。でも信用できる精神科を探すのだって大変なのに、ましてやカウンセラーとなれば、日本では層が薄くて話になりません。
 だから本当に困って切羽詰っている人は、こういう本の助言に頼るくらいしか手がないんだろうなっていう苦しい現状を感じさせるのです。日本におけるこの分野のさらなる発展を心から願わずにはいられませんでした。

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