dejiemiさんのレビュー一覧

切なく癒され

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

かつて月子とセンセイは、高校時代の教師と教え子の関係だけでほとんど気に留めることもなく卒業し、そしてもう高校を卒業してから10年以上はたっているある日、偶然にもセンセイと月子が通っている居酒屋にて再会するのであった。それからたびたび待ち合わせをするでもなく、偶然を装うのでもなく、自然にその居酒屋で二人の時間を過ごすようになるのだが、その時の過ごし方がホンワカしていていいのである。センセイのおだやかながら芯の強い正しい日本語のお手本のような語り口調と、月子のおとぼけ具合の二人の会話が絶妙な感じがしていい。本書は時の流れがゆっくりと過ぎ、そしてゆっくりと季節がめぐり、心がゆっくりと動くようでそして切なく、ラストは穏やかに泣ける物語である。