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朝倉ちのさんのレビュー一覧

投稿者:朝倉ちの

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紙の本号泣する準備はできていた

2005/02/15 00:55

号泣する準備

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 恋愛依存症の女たち。それがこの短編集の共通事項だと思いながら読み進めた。それぞれの恋愛感、それぞれの出会いと別れ、そして生活。全部で12編の短編小説がこの本には収められているがどの作品も共通の何かがありそうで、でもそれが何か分らない。強いて言えばどの主人公もそれぞれが「恋愛依存」もしくは「他者依存」であり、満たされない何かに気付いていた。 号泣するほどではない、それが初めの読後感想だった。主人公たちの思い、生活は白々過ぎて感情移入できなかったから。でもあとがきを読んで自分の思い違いを知った。「号泣する準備」これがこの作品集のキーワードだったのだ。

『たとえば悲しみを通過するとき、それがどんなにふいうちの悲しみであろうと、その人には、たぶん、号泣する準備ができていた。喪失するためには所有が必要で、すくなくとも確かにここにあったと疑いもなく思える心持ちが必要です。 そして、それは確かにそこにあったのだと思う』

 何かを確実に所有していると自覚すること、それが号泣するための、喪失するための準備なのだ。 

 そうして見ると彼女たちの共通事項はただの恋愛依存症ではなく、一度は確かに手に入れた愛を失い、それでも変わらない生活を続けていく女たちの物語になっていると思う。彼女たちは決して号泣はしない。それでも一度手に入れたものを失う痛さを感じている。

 読み返してみても主人公の気持ちに感情移入はできない。号泣もしない。でも号泣する準備ができていた彼女たちが羨ましいと、ほんの少し思う自分に気付いた。

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