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レビューアーランキング
先月(2017年6月)

Tukaさんのレビュー一覧

投稿者:Tuka

29 件中 1 件~ 15 件を表示

せつない

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 著者は『寄生獣』の人。どうもマイナーな感が否めないが、この著者はコンスタントに良作を生産している稀有の漫画家である(と思う)。
 「雪の峠」、「剣の舞」双方の共通項は、戦乱/戦後の歴史の交代期を扱っている点だろうか。前者では平和の世に順応出来ない不器用な老臣たちの不幸が描かれ、後者では実戦剣術(木刀)からスポーツ剣術(撓)への転換点が描かれる。

●「雪の峠」
 関ヶ原後の佐竹家。築城を巡り若手家臣と古参家臣団が対立する。
 「狡兎死して走狗烹らる」という諺が思い浮かぶ何ともせつない話。と同時に、人類の歴史はこれの繰り返しであり、今の我々はその上に立脚しているんだな、と感慨深くなる話でもある。古参の家臣団を憎めないキャラクターとして描いたところがポイントか。

●「剣の舞」
 戦国時代。兵士に強姦され家族を惨殺された娘が仇討ちのため疋田文吾に弟子入りする。疋田文吾とは剣豪・上泉信綱の高弟。
 これもせつない。前半の明るいトーンと後半の暗いトーンのコントラストも素晴らしいが、物語の最高潮であるラストの試合のシーンが秀逸だ。「遊び」の回想から「それは/悪しゅうござる」と気をはいて打ち込むシーンにはゾクゾクさせられた。

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紙の本シャドー81 改版

2002/03/14 10:49

サプライズとリアリティに優れた傑作

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 計画的犯罪としてはいささか運に頼る要素が大きいのだが、よくよく考えてみれば、ハイジャックなんてこんなものだろう、というリアリティがある。
 さて、ハイジャックと一言でいっても、犯人側の目的によってその性質が変わる。獄中の仲間の釈放であったり、異なる勢力圏への亡命であったり、単に目立ちたいだけであったり。本作でのハイジャック犯の目的は乗客の身代金である。当然、読者の興味は、「犯人がいかにして金を受け取り、かつ逃げ延びるか」に集中することになる。で、本作はこの部分にとんでもない意外性があるのだ。
 無論、読みどころはそこだけではなく、軍隊、政治家などの人物絡みも楽しめるし、何よりハイジャック犯との駆け引きによる緊張感が良い。また、ジャーナリズムの問題点をきっちり描いているのも私的にポイントが高い。というわけで、本作は上質のエンターテインメントとしてかなり楽しめた。

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紙の本エンプティー・チェア

2001/11/01 17:18

そこらのホラー小説より怖い

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 このシリーズはどんでん返しがウリなので、シリーズも3作目になってしまうと、読者は誰が黒幕であるのかを容易に想像できてしまうのである。が、それを見透かしたかのような巧みな急展開があったりして、最後の最後まで息をつかせぬ見事な作品に仕上がっている。終盤は、しばしば作中に登場するキングやクーンツのホラー小説よりも怖い。

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紙の本宇宙からの帰還

2001/12/07 07:59

宇宙に行きたくなる本

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 宇宙から地球を眺める、月面から地球を眺める、宇宙遊泳をするetc、これらの体験によって、宇宙飛行士たちはそれぞれ違った精神的インパクトを受けたようだ(無論、各人のパーソナリティの問題も指摘されるが)。

 本書は取材対象がアメリカ人だから仕方がないのだが、神について語るとき、どうしてもキリスト教が前提になってしまう。しかし、他の宗教の「神」も信仰の仕方が違うだけで、キリスト教の「神」と本質的には変わらないという人もいるし、我々日本人のように不可知論的無宗教者の人もいるが、私としては、もっとグローバルな人種、宗教を持つ人の意見を聴きたいと思った。いや、本書が書かれた時点では、そういった人々は飛んでいないので無理なんだけど……。

 宇宙から地球を見ると、大気汚染や戦火、船の航跡までが識別できるという。そして、地球の美しさも写真では分からない、実際に宇宙体験しないと分からない美しさがあるという。本書を読んで私も宇宙に飛んでみたいと思った。

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紙の本贋作『坊ちゃん』殺人事件

2001/11/07 21:21

ぶっ飛んでいて面白い

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 かなりぶっ飛んでいる内容で面白かった。赤シャツは何故赤いシャツを着ていたのかとか、寄宿舎での騒動の真実とか、中学生と師範生との喧嘩騒動の裏とか。こじつけと思える箇所もあるが、私的にはパズルのピースがピタリとはまるようなカタルシスを味わえた。『坊っちゃん』には隠れファクターとしてもうひとつの闘争があったのだ。

 「おれ」は相変わらず親譲りの無鉄砲だ。『坊っちゃん』読者ならニヤリとしてしまうような描写やエピソードに溢れているので、『坊っちゃん』好きには一読を勧めたい。ちなみに本作では狸は転勤し、野だは気が狂って癲狂院に入院している。

 本作の一番のポイントは朝日新聞社から出版されていることである。察しの良い人はこれでどういう内容か想像がつくと思うが、まあ、そういう思想的面は考えず、純粋に「坊っちゃん」の江戸っ子ぶりを堪能すべきだろう。

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好感が持てる

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ここで書かれている著者の仕事は、所謂サポートセンターみたいなものである。天文台の広報普及室なので、天文に関する質問に答えるのが仕事なのだが、やはりサポセン系の仕事にありがちな、ストライクゾーンを大きく外した困った電話が多数あるようだ。で、本書はそういった迷惑話をユーモラスに書きながらも、暖かいエピソードを紹介したり、日本の理科教育を憂いたり、学術に対する熱いメッセージを若者に説いたりしている。

本書を読んでわかることは、この著者は天文学が好きで好きでしょうがない、ということである。そしてこの態度が、この手の本にありがちな、質問者の頓珍漢ぶりを冷笑的に扱う趣味の悪い本とは一線を画しているのである。

こういう本には好感が持てる。

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溺れる魚

2002/04/03 15:38

笑える

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 笑った。この著者は変態及びその行為と、飽くなき下半身的欲望の描き方が素晴らしい。「素っ裸にペンキを塗りたくって舞台の上で喚きながらのたうち回る前衛舞踏家」(p.41)といい、「溺れる魚」の脅迫内容(“男気”に“嫁さんヨロシク”ペイント)といい、「バンビーズ・バトルセックスショー」(ネーミングからして凄い)といい、著者の変態センスは尋常じゃあない。
 一応ジャンルは犯罪小説になるのだろが、その手の小説にありがちな暗さはあまりない。とにかく笑える。

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待たれていた男 下巻

2002/03/14 11:41

相変わらずのチャーリー・マフィン

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 ナターリャの省内闘争は相変わらず退屈だったが、チャーリーが敵を陥れていくところは相変わらず痛快だった。CIAの殺し屋の処理やイギリス情報部の「内憂」への対処なんかはかなり笑える。本作は事件の謎が暴かれていく過程よりも、チャーリーの自己保身法が面白い(というか、このシリーズは全部そうか)。
 他。FBIモスクワ支局副支局長の野心的な女性が昔の女スパイという風情で良い味だしていた。kiss my ass!
 訳者解説。本作のラストでも少し仄めかされる次作の“Kings of Many Castals”はかなり期待できそうだ。ソヴィエト共産主義復活が題材らしい。ところで、著者はそろそろシリーズもの(3つある)を畳んでいかないと年齢的にヤバイような気がする。いらぬお世話かもしれないが、未完結は勘弁だなあ、ということで。

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軍鶏 14

2002/03/14 11:38

新展開に期待

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 裏社会の賭け格闘技で稼ぐというのが、いかにも「軍鶏」らしくていいのだが、「斉天大聖」の登場により、強さのインフレーションが懸念される。『バキ』や『タフ』のような漫画とは一線を引いてもらいたいと思っているのだが……。
 この巻ではある男が再登場する。それによって、この漫画の重要なテーマが浮き彫りにされた。この物語の底流には「家族」という要素が流れているのだ。1巻での主人公・成島亮は16歳。平和なエリート家庭に育ち、東大合格間違い無しの優等生であった。それが、ある日突然キレて両親をナイフで惨殺してしまう。なぜ、亮は両親を殺したのか? この巻に再登場する男の末路によって、そのテーマが鮮烈に浮かび上がる。
 てわけで、次巻にも期待したい。

Ruins

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紙の本宇宙を語る 立花隆・対話篇

2001/12/07 07:50

宇宙に対する熱意が伝わる本

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 毛利衛、向井千秋はスペース・シャトルに乗り込んで宇宙体験した人たちで、菊池涼子はソ連の宇宙飛行士の候補者になった人であるが、この3人との対話は凡庸で期待外れであった。ただ、毛利衛が各地で講演するときのエピソードに興味をひかれた。なんでも、アメリカのフロンティア思想でもって宇宙開発を語るのが日本では受けが悪いそうだ。まさに島国ニッポンという感じ。

 面白かったのが、アーサー・C・クラークとの対話である。アーサー・C・クラークは『2001年宇宙の旅』に代表されるSF作家であり、科学者でもある。ワープやら宇宙エレベーターやら特殊な材料やらSFファン好みの技術的な面について色々語っていて面白い。

 それと、司馬遼太郎との対話も面白かった。宇宙飛行士の受けた精神的インパクトと空海の受けた精神的インパクトを対比して語ったもので、歴史上の宗教者についての本を読んでみたくなるほど、興味深いものであった。

 本書は全体的に著者の熱意が伝わってくるような内容で、とりあえず著者の講演記録とエッセイ、さらにアーサー・C・クラーク、司馬遼太郎との対話部分は押さえておいて損はないと思う。

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ナインスゲート

2001/11/06 17:13

映画も面白いが原作も面白い

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 元の邦題は『呪いのデュマ倶楽部』であったが、文庫化にあたって改題された。映画が面白かったので読んでみた。
 2冊の本の調査、『三銃士』の線と『九つの扉』の線の絡み具合といい、メタ的な要素や三銃士のパロディといった作者の遊び心と思われる部分の仕掛けといい、技巧的な作品である。また、ある程度中世ヨーロッパの歴史や文学を知っていないと楽しめない衒学小説でもある。私的にイチオシの場面は、後半にある濡れ場の部分。描写に使われている比喩が面白い。

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項羽を殺した男

2001/11/06 17:10

英雄・項羽

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 色々な人物の視点から英雄・項羽を描きだす。あとがきによると、項羽に対する想いを綴った連作短編集だとか。個々の作品は無難な出来だったが、文章が適度に抑制されていて良い感じであった。すなわち、漢字が嫌味になっていない程度に上手く使われているということ。
 本書で面白かったのは「九江王の謀反」。軍中の黥布を見た劉邦が、そこにかつての項羽の姿を重ね合わせて恐怖するところがなかなか。

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紙の本三国志演義の世界

2001/11/06 17:08

「正史」から「演義」へ

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 大抵の人は、まず「演義」を読み、続いて「正史」という流れで三国志の世界に入るのだと思う。そこで疑問に思うわけだ。なぜ、「正史」では魏が正統になっているのに対し、「演義」では蜀が正統になっているのか、と。本書はそれをじっくりと論じている。
 概ね満足のいくような考証の仕方であったが、一つだけ気になった点があった。それはヨーロッパと中国の対比の箇所。両地域は同じような面積にも関わらず、ヨーロッパは分裂が常態なのに対し、中国は統一が正常な状態で、ここに中国の思想が見えるとかいう主旨のことが語られている。しかし、ヨーロッパの思想性を論じていないせいか、あまり説得力がない。というか、この論は地政学的観点をまったく無視しているため、ちょっと無理があるような気がするのだが……。機会があったら、この分野の本を読んでみたい。
 中国の歴史の深さを味わうことができるという点で、この本は良書であると言えるだろうか。「正史」から「演義」に至る変遷の背景について知りたい人は読んで損はしないだろう。

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アシモフの科学者伝

2001/11/06 16:48

偉大な科学者

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 原題の通り、それまでの科学技術の壁を突破した人たちが取り上げられている。アルキメデスは抽象的であった科学を日常のレベルに応用したし、グーテンベルクは活版印刷を考案、コペルニクス、ガリレオはそれまでの宇宙論を一変させる「地動説」を明らかにし、ニュートンはそれを大きく前進させた。現代の我々が予防接種や化学療法を受けられるのも、ジェンナーやエールリッヒらの研究あってこそである。……と科学のブレイクスルーを挙げたらキリがない。
 本書はこれらの科学者一人に対し5〜6ページ費やして語り、さらに吉永良正の2ページのコラムが付いている。よくある偉人伝の要点をまとめたという感じで、短いながらも科学者の偉大さが伝わってくるような内容であった。

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他人事じゃない

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 世の男性諸氏にとっては、他人事だと思って無視できるような内容ではない。というのも、実際に痴漢をしていないのに、被害者による私人逮捕によって、簡単に「有罪行きベルトコンベア」に乗せられてしまうのだ。

 特に警察の取調べの狡猾さというのは、本書みたいな本で予習しておかないと、いざという時にコロっと嵌められてしまいそうで怖い。

 現代社会ではたとえ無実の罪であっても、起訴されたらクロに近いグレーと認識され、普通のサラリーマンなら判決が出る前に会社を辞めさせられてしまう。冤罪者に対する補償もないので、いわばヤラレ損になってしまうわけで、そうならないためにも、一般人も法律による理論武装は必要なんだと痛感させられた。

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