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  3. 3307さんのレビュー一覧

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先月(2017年6月)

3307さんのレビュー一覧

投稿者:3307

218 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本アシモフの雑学コレクション

2002/04/23 22:27

特効薬と副作用

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アシモフ氏が本書を世に送り出したのは1979年。
 間もなく四半世紀が経とうとしている現在から見れば、本書の中に取り上げられている「事実」の多くは、あるいは修正しなければならないことばかりかもしれません。
 でも、そんなことは少しも問題じゃないんです。

 なぜって、そんな「事実」をじっと眺めて、それを面白がったアシモフ氏の精神そのものが、本書の魅力なのですから。

 また、本書の「普遍性」は、「編訳」を行ったのが「星新一」さんであることによって、更に強固なものになっています。

 忙しすぎてショートショートさえ読めないけれど、それでも「何か読みたい」活字中毒者さんへの特効薬になりそうですが、「読んだ端から、誰かにクイズを出したくて、落ち着かなくなる」副作用にムズムズするかもしれません。

 何はともあれ、文庫であるコトに、これほど意味のある書籍も珍しいのではないでしょうか。文庫の良さが引き立つ、チャーミングな一冊。

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火柱は反撃の狼煙。もう逃げない。育ち、奪還し、回復する。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

その世界は、たとえ唯一無二の存在ではあっても、
四次元を従えたネズミ型万能兵器が居るくらいには突飛で、
被害者がやがて加害者になる暴力の連鎖が存在する程度に身近。

・ルーン=バロット
 感じた痛みを自分から切り離し、やり過ごしてきた少女。

・ウフコック=ペンティーノ
 肉体はマスコット、ハートは二枚目。ネズミ型万能兵器。

・ドクター・イースター
 ハカセ。役どころは「おやっさん」。飄々とクール。

・ディムズデイル=ボイルド
 最強の刺客、バロットたちの追っ手。立ちふさがる壁。

・SFのお楽しみ、思わず欲しくなるアイテムの数々。
・物語の構造は、複数の童話モチーフを散りばめて普遍と接続。
・姑息・サイコ・大人物。敵役も充実、勢いもスリルも完璧。

本書の魅力を挙げれば切りがないけれど、
私にとって、これらの要素も世界も何もかも全ては
上記4人のためだけに用意された、化学変化用のシャーレ。
シンプルなルールが美しく機能するから、ご都合主義は混ざらない。

おとぎ話もRPGも、さらわれた姫は救出を待つことが多いけど、
我らがヒロイン バロットは、自分を自分の手で取り戻す。
剣の代わりにウフコックを肩に、復讐活劇の旅路を行く。

■ 「そいつは良かった」
■ ドクターはいったんウフコックから目を離し、しみじみと
■ コーヒーをすすった。
■ 「何が良いんだ、ドクター?」
■ 「マリッジブルーって知ってるか、ウフコック」
■ 「なんだ、それ」
■ 「一度決めたことに対して、ぐだぐだぬかすことさ。個人的な感情が
■  どうとか、自分は大丈夫なのかとか、何が必然で何が偶然なのかとか、
■ そういったことをだらだら考えるんだ」
■ 「俺がそれだと?」
■ (2巻・P189より引用)

生き延びるために殻をまとったバロットの閉じた世界を薄く包み、
辛抱強く声をかけ続けるウフコックは、彼女のためだけに存在する孵卵器。
生まれ直す卵、温め続けるウフコック。彼らをずっと見ていたい一冊。

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紙の本無人島に生きる十六人

2003/11/18 23:46

生き延びる姿に感激。裸族、主食は海亀。遊び心は希望の源。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

太平洋の真ん中で難破した16人を抱き留めてくれた、
無人島「本部島」の鳥瞰図を眺めるだけでも、
本書を手に取る価値はある。

地図は、見慣れた新潮文庫の扉の前に、おまけの
ポストカードのように添付されている。

「ウミガメの牧場」「土俵」「見張りやぐら」
「あざらし半島」「上陸記念井戸」

そんな言葉がちりばめられた、夢のある地図。

実際には、5年・10年待っても迎えは来ないかもしれない
絶海の孤島に、明治男16人が放り出されているのだから
「夢がある」なんて言っては失礼。
これは、過酷なサバイバルストーリー。

でも、水を確保し、カツオの刺身や
ウミガメのステーキを食べ、細かな珊瑚の砂に
包まれて眠るリズムに慣れると、「愉快」に生きるために
探求心を育てる「自然塾」に様変わりする。

珊瑚の森の花畑を見下ろし、熱帯魚の生態を観察し、
海鳥の子育てを眺め、あざらしの群と友達になる。

ギリギリの場所にいるからこそ、夢もある。
極限を生き延びた、キーワードは遊び心。

楽しくなければ駄目なんだ、笑わなければ続かない。
タフで知的な、海の男たちに万歳三唱の一冊。

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シンプルだから伝わる空気。小さな命と寄りそう、日々の喜怒哀楽。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読み終えて、むしょうに文鳥を飼いたくなる。

しかし、同居ねこには、珍味美味。人・ねこ・とり、三者とも不幸。
「できない相談」。いつもより多めに、ねこをなでてみる。
ねこは応えて、いつもより多めにゴロゴロ言う。着慣れた平和。

  『ちっちゃなぴーちゃんの体重は24g それは手紙一通と同じ軽さ』
  『余分なものは  いっさい持たない それが飛ぶためのきまり』

厳選されたシンプルな線。おさえた色使い。
だから、ノイズが混じらず、愛おしい空気が的確に伝わる。

『シルクみたいにつやつやで まっしろなプリンス』の、
「ぴーちゃん」を主役として見せる、著者の覚悟。その凄さ。

著者らしき人物は、自画像がブタ。まるで黒子。
にじむような、楕円が表す、ひどく優しいその瞳。
念入りに「脇役」の記号を与えても、幸せな空気は消せない。

・何かを好きになること、とくに動物と過ごす喜びの色。濃厚。
・命を預かる緊張感、確実に自分よりも先に逝く寂しさ。
それらを余さず収めた上で、なおシンプルな絵本。

すぐ読める。繰り返し楽しい。
開くたびに、ほほえましい空気が花開く一冊。

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紙の本クマのプーさん 新版

2003/10/20 23:09

父と子のあたたかな空気を、永遠へ押し上げた言葉たち。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

  「プー、きみ、朝おきたときね、まず第一に、
  どんなこと、かんがえる?」
  「けさのごはんは、なににしよ? ってことだな。」と、
  プーがいいました。
  「コブタ、きみは、どんなこと?」
  「ぼくはね、きょうは、どんなすばらしいことがあるかな、
  ってことだよ。」
  プーは、かんがえぶかげにうなずきました。
  「つまり、おんなじことだね。」と、プーはいいました。
(——P252)

底が抜けてるプー、ちいさなコブタ、子沢山のウサギ、
ものしりなフクロ、etc.etc.

1926年、イギリス。
おもちゃ箱のぬいぐるみたちに、
A.A.ミルンは命を吹き込みました。

彼が、クリストファー・ロビンに、聞かせた
クリストファー・ロビンとプーの物語。

子ぼんのうな父親は無数にいるし、
わが子の目を通して出会う「驚きに満ちたおろしたての世界」に
感動できるお父さんも多い。観察眼が鋭いお父さんも、また同様。

ただ、A.A.ミルンが他の父親たちと違っていたのは、
「言葉」を持っていたこと。
普遍的であたたかな世界に、詩人は形を与えました。

  プーってやつはねえ。プーは、あんまり頭は、いいほうじゃないさ。
  でも、けっして、へまはしない。プーが、なにかばかなことをすると、
  それが、ばかなことでなくなっちゃうんだ。
(——P209)

17年かけてようやく、コブタの言葉に共感できた一冊。

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紙の本探偵伯爵と僕

2004/06/05 23:56

凝っても分かり易い、『詩的私的』は伊達じゃない。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

まじめなのかふざけているのか、それとも真剣にふざけているのか。
飄々とした伯爵、淡々とした「僕」。
二人の関係、この空気は、とてもとても魅力的です。

ミステリーランドが好きです。
その中でも、第4回配本までの12冊なら、森博嗣さんの『探偵伯爵と僕』が好き。

会話・テーマ・設定に惹かれて読み進み、最後の「しかけ」で世界をひっくり返されて、思わずそのまま二周目も読んでしまいました。『探偵伯爵と僕』は、ミステリとしても、児童文学としても、そして森博嗣さんの「私的詩的」な魅力のエッセンスとしても成功しています。

本書を手にとって、ぱっと目に付く魅力を一つあげるなら、伯爵と「僕」の会話になるでしょう。

●引用:P71
■□□「お金ももらったよ。伯爵に会ったら、電話をかけてくれって。」
■□□「何? いくらだ?」
■□□「五百円。」
■□□「小癪な……。」伯爵は舌打ちする。「それで、君は、買収されたのか?」
■□□「売春?」
■□□「違う、買収だ。お金のために自分の主義主張を曲げることだ。」
■□□「よく意味がわからないよ。」

二人の会話はたいてい二重の意味が生じるように書かれています。だからもし、全編を読み終えて、エピローグの高みから振り返ったなら、「あのときの伯爵のズレは、こういう理由だったのか」と、きっと感じることでしょう。
そんな、「今にして思えば」感が、読者の郷愁アンテナを、やわやわとくすぐります。

さて、肝心の物語ですが、夏休みを通して命がけの冒険を体験した「僕」は、伯爵と何度も対話を重ねたことで、ついにこんな考えを抱くようになりました。

●引用:P334
■□□ 一番大事なことは、きっと、自分の命を守るということで、その次に
■□□大事なことは、できるだけ沢山の人の命を大事にすることだと思う。
■□□ 人が人を殺すことは、悪いことというよりは、嫌なことだ。
■□□ 悪いことだからしないのではなくて、嫌なことだからしたくないのだ。
■□□「僕」には、そういうふうに思える。

虫なら殺せる。でも、犬や猫は殺したくない。でも、牛や豚は殺して食べている。
僕らが抱えたこんな矛盾と「僕」が直面した時、傍らに立つ伯爵は「毛とあたたかさ」ってヒントを与えました。

毛の感触と、動物の持つ体温を例に、その動物を抱きしめたなら(抱きしめるような関係になったなら)、もう殺せなくなると示唆しました。

殺された側にとっては、「嫌なことだから殺さない」「嫌じゃないから殺してみた」なんてスタンスはたまったものではないですが、でも、暴力に関する問題を根本から解決するには、一人でも多くの「嫌だなって感じられる子」を増やすのが最も効率的に思えます。

抑止力でも、再発防止策でもなく、素朴に「命の抱きしめ方」を獲得させること。——でも、そもそも僕らはこんなこと、どの場面で学んできたのでしょう……。

・殺すこと、殺されること。
・許すこと、許されること。
・すぐに解決できない問題との向き合い方。

——こんな要素を、「今日は久しぶりに好きなミステリを読んで、どきどきしよう」「児童文学? そんなの大人になってからも楽しめるの?」なんてスタンスで気軽に手に取れる形にまで落とし込んだのは、"森博嗣マジック"です。

森博嗣作品だから、本書ももちろん凝っています。でも、分かり易い。相反する要素がきちんと両立しているのは、「子どもにも、手間さえかければ、分かるように伝えられる」と、森博嗣さんが熟知しているからこそ。

説教せずに、物語の幾つもの層を介して、一気に多くのことを伝えてしまう。こんな作品なら、ミステリはもちろん、児童文学でも森博嗣作品を読む楽しみが増えました。本書は私にとって、熱烈におかわり希望な一冊です。

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紙の本少年動物誌

2003/11/19 21:24

いつだって、心の野菜不足を解消します。もぎたて少年時代。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「伝える方法」を獲得した大人による、
胸の中の腕白坊主へのインタビュー集。全10話。
話題は、戦前の豊かな自然に育てられた思い出が中心。

それは、著者の心の中の自然であり、
同時に、ほぼ失われた日本の原風景の記憶。

夏の終わりの墓場探検、不気味な井戸と気配。
「懲りる」ことを学んだ、蛇との全面戦争。
熱にうなされて見た夢と、イタチの足音が与えた回復の希望。

自然だけではなく、家族もまた、今振り返れば貴重な環境。
何人もいる兄弟、鷹揚で毅然とした父親、おおらかで信心深い母親。

暴力も振るうし、病に伏せることもあるけれど、
太陽と風に磨かれた野生児は、どこまでも健やか。

その上、動物との関わりを中心に描いた本書は、
戦前を舞台にしていても、一向に古びない。
1976年以降、読み継がれていることがその証拠。

味が良い上に、いつ口にしても新鮮なまま。

だから、「農薬つきの促成栽培」的な育ち方で
何かとバランスを崩しがちな現代人には、かっこうのサプリメント。

心にもう一つの少年時代と、淡い故郷の記憶を補ってくれる一冊。

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紙の本愛する源氏物語

2003/10/08 15:21

和歌の光で晴れる、千年の霧。見晴らしの丘の眺め。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

  唐衣またからころもからころもかへすがへすもからころもなる  光源氏
  唐衣またからころもからころもいつまでたってもああからころも(万智訳)
  (——P051)

源氏やけくそ。
源氏物語にこんな歌があるなんて知りませんでした。

かろうじて読み通したのは、ダイジェスト版と現代語訳。
あらすじを追うのが中心。和歌が始まれば、またいで通りました。
知っているはずも無いですね。

  795首の和歌を、それぞれの人物の状況と才能に応じて歌いわける
  という技量。その「成り代わり」の技においては、紫式部は、
  恐ろしいほどの力を持っていた。
  795首は、795種でもあるのだ。(——P008)

言葉を圧縮昇華する和歌、駆使して物語る式部。
これは、私にとって新たな視点です。

末摘花、六条御息所、頭中将etc.
名前くらいは知っていても、人物像はのっぺりとした印象。

今回、和歌に触れて初めて、
それぞれのキャラクターの顔を垣間見ました。
不可解で染まる霧、和歌の光ですっと晴れていきます。


私の拙い理解を助けてくれた解説は、無機質と無縁。
俵さんの言葉で語るスタイルは、とっておきの教養エッセイ。

  思ふらん心のほどややよいかにまだ見ぬ人の聞きかなやまむ 明石の君
  会いもせぬ私に恋をする人の心は一体どうなってるの   (万智訳)

   思わず拍手、の一首である。これは、光源氏の口先だけの言葉に
  対する強烈な一撃であるとともに、平安時代の恋愛に対する、
  根本的な疑問を含んだ歌でもある。
   この時代の—— (——P101)

本書は、源氏物語全54帖のパノラマを見晴らす丘。
一気に読める。
でも、きちんと雅な一冊。

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ゲド戦記 全5巻セット

2003/06/30 16:57

子供時代の宿題を大人買い。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

たしか、小学五年の頃だったと記憶しています。
ゲド戦記の名を初めて目にしたのは、
岩波少年文庫収録の『ナルニア国物語』の巻末広告です。
私にとって巻末広告は、最も身近なブックガイドでした。

ドリトル先生
メアリーポピンズ
ホビットの冒険
あしながおじさん

どれも夢中で読みました。
期待を裏切られたことなんて、一度もありません。
しかし、ゲド戦記だけは手を出すことが出来ませんでした。

『影との戦い ゲド戦記1』

それは当時の私にとって、↑この書名が
なんとも地味で、重苦しいイメージだったからです。
わくわくの「わ」の字も感じることが出来ず、
読み逃しました。時折、絶賛する評判は耳にしても。

  過ぎたことですが、これが、原題の「A WIZARD OF EARTHSEA」を
  オズの魔法使い(Wizard of Oz)のように直訳して
  「アースシーの魔法使い」となっていたら
  あるいは、手に取れたかもしれません。

しかし過ぎてみれば、少年時代を終えて、たくさん挫折して
ある程度自分が何者なのかを思い知らされたこの時期に
手にすることが出来たのは幸運でした。

与えられた力の大きさに奢るハイタカ(ゲド)が
挫折し、追放され、青年へと育つ姿を理解するには
当時の私は、少し幼すぎましたから。


・少年の成長物語の『影との戦い』。
・少女の成長物語の『こわれた腕輪』。
・師弟間で力の継承が行われる『さいはての島へ』。
・女性・暴力・暮らしを語る『帰還』。
・理解・共生・世界の「区切り」を語る『アースシーの風』。

子供時代に「読み逃した」寂しさと
それを取り戻そうと「大人買い」した5巻セットに後押しされて
2週間がかりで一息に読み終えました。

ようやく、子供時代からの「宿題」を一つ終えた心地よさと共に、
『ゲド戦記』は私の中で、『ナルニア国物語』と同様の位置を
占める作品となりました。

『ナルニア国物語』は、神話や物語、そしてキリスト教を
背景に持ち、「充実した物語を誰にでも分かり易い形」で
世に送り出されたから子供の頃から繰り返し読むことが出来ました。

一方、『ゲド戦記』が背景に持つのはル・グイン氏の
思想と感性になりますので、作者と訳者の配慮から
子供にも読める形になってはいますが、やはり難解な面もあります。
だからこそ、30代・40代……と、この先も関わることで
今は読み落としている部分も、これから気づいていける楽しみがあります。


大人になるのも、時には悪くないと思わせてくれる5冊。

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紙の本スラムダンクな友情論

2003/01/28 01:04

「生きる張り」を得るための、明快応援歌。

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『会議革命』でファンになった齋藤氏の著作だから、手に取った一冊。

一冊素敵な本をものされた方の著作には、アタリが多いものですが、本書はかなりの大物。思わぬ大当たりに、ほくほくしています。

どう良いのか、どう面白いのかは、本書を手にとっていただければ自明ですから、まずはどんな方に手にしていただきたいかを挙げてみます。

--------------------------------------------------------------

 >>本書は次の方たちにオススメします

 ・迷っている人
 ・迷いの王様、思春期の子たち
 ・思春期に入る前の子たち(特に小学6年生)
 ・就職を前にして、自分の「やりたいこと」が分からなくなった人

 ・本を好きになるキッカケの一冊が知りたい人
 ・本が好きで、更に素敵な本と幸福に出会いたい人
 ・お子さんや生徒さんを本好きにしたい人
 (※本書に触れたが最後、ご自身も本好きになりますから、
   ご注意ください >> 親御さん&先生)

--------------------------------------------------------------

本書は『スラムダンク』という、激しく強く深く読者をとらえ、その多くの胸に火をつけた奇跡的な作品を例に挙げ、「自分を獲得していくこと」を明快に論じています。


たとえば、こんな感じに。
(以下は、アイデンティティについて齋藤氏が触れた箇所になります)

 * P48より引用=============================================

「○○として生きてる」と思うことで、「生きる張り」が湧いて、自分にぴったりくる感じのする「○○」が、その人の「アイデンティティ」だ。

==============================================================

未だかつて、これほど明快に「自分の核」について説明した例があったでしょうか。

*「生きる張り」を与える何か

この説明は、私にとってはこのまま辞書に追加して欲しいくらい、腹にすとんと落ちる言葉でした。「生きた言葉」を一つ得ただけで、本書を読んだ価値は十分にあります。そんなヒントが、惜しげもなくちりばめられています。利用しない手はありません!

本書は少年少女と、心に少年少女が住み続けている全ての方への応援歌です。断然元気になります。強く強くオススメです!!!!!

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紙の本あの頃ぼくらはアホでした

2002/09/04 00:49

小説家を好きになることは

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

——心から楽しめる、エッセイを確保することでもあります。

「アホ」というよりも、無茶。
青春時代の甘酸っぱくて
過剰に一生懸命で、少し愚かなエピソードが
みっちりつまっています。

本書は、東野少年がだんだん成長して、
最も危険な中学で生き延び
高校、大学、そして社会人へ
という場面まで描かれています。

エッセイに収録された対談によれば
「この先は、仁義を守るために、書かない」
(↑引用ではありません、雰囲気だと
 思っていただければ)
ということですが、なーに、時間はいくらでもあります。

東野さん、60歳くらいになったら
さすがに20代の諸々なんて時効ですから
是非、続編を執筆してください。

あと16年、一読者としてお待ちしますので(*^^*ゞ

愉快なエッセイを読んで、作家さんを身近に感じることは
面白い小説をより味わい尽くす、秘訣ではないかと。

お済みでない方は、是非お試しを(*^_^*)

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紙の本青空の卵

2002/07/15 16:12

2002年最高の一冊

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ★5つになっていますが、これは上限のせい。制限がなければ★10はつけます。最高の倍なんて、「無限の向こう側」みたいですが、これが実感です。だから、著者の坂木さんを「2002年デビューの作家さんの中で、最高の中の一人」と安心して挙げることができます。本書を読んでいる間、痛みを感じましたがそれでも大満足です。

 満足した要素は多々ありますが、まずは装丁から。ルネ=マグリットを一瞬思い出す青空は、夕暮れ間近。下から照らされて金色に輝く雲は黄金の滝のよう。書影確認時から好印象だったのですが、手にしてさらに好きになりました。「四六判フランス装」の感触の良さのためです。これは、本書の世界観を、触感レベルに落とし込んだ優れもの。

 本書は、エラリー・クイーンや有栖川有栖さんのように、作中にも登場する「坂木司」さんの視点で物語がつづられます。この坂木さんはもちろんワトソン役。「ひきこもりの名探偵」は、この坂木さんと相互に依存しているため、文字通りの二人三脚で物語が展開されます。このユニークなコンビの関係も、見所の一つです。

 巻末の著者インタビューによると、北村薫さんの『六の宮の姫君』に強い影響を受けたとのこと。読者の私にとっては北村薫さん・加納朋子さん・菅浩江さんの世界と重ねるのが自然に思われました。

 私は、北村薫さんの私シリーズ、や加納朋子さんの『ななつのこ』『魔法飛行』に『ささらさや』、菅浩江さんの『永遠の森』に愛着を持っていますが、ここに本書『青空の卵』を並べてもまったく遜色がありません。デビュー作でこれほど力を持った作品が生まれることは、もはや業界の常識なのでしょうか? 北村さんの『空飛ぶ馬』や、加納さんの『ななつのこ』の例がありますが、それでも奇跡を目撃した思いです。

 出だしで好きになり、「こういうの読みたかった!」と大喜びして読み進み、徐々にボディーブローを受けて言葉を失っていく。そんな読書体験でした。本書を通じて受けた痛みは、この物語に「友情」「恋愛」「親子」の問題が織り込まれていることに原因があります。もちろん、物語進行を妨げる野暮な書き方はされていませんが。それでも、読者に訴えかける力は強いです。

 その力は作品の底でうねり続ける、「人との関係で負った傷は、人との関係の中でこそ癒すんだ」といった祈りから発しているのでしょう。かつて傷を負った人と、今傷を癒している人にお勧めします。

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紙の本ルドルフとイッパイアッテナ

2001/11/27 14:51

「読みたい気持ち」も併せて贈る

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本を小さな子に与えてあげて欲しい。綺麗にラッピングして手渡し、その上で、読み聴かせもできたなら最高だ。

 人気作家の作品なので、お子さんは既に読んでいて、知らぬは大人ばかりなんてコトもあるかもしれない。

 それでも、本書を媒介にして、楽しい時間をきっと共有できるはず。26章からなる本書なら一晩1章ずつ読む約束なら、忙しくてもさして時間は必要ない上、一ヶ月も楽しむことができる。

 その本自体が読みたくて、待ち遠しい本は多い。しかし、その本を読み終えたことで、読書欲そのものを増加させる作品は、極めて希だと思う。
 本書は、そんな作品。

 「何でもいいから、何か本が読みたい」そんな気持ちも、併せて贈ることのできる一冊。

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紙の本チルドレン

2004/05/24 20:44

おとなだもん、奇跡の一つも見せなくちゃ。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

もともと、好きになった作家って存在は、読者にとっては特別なんですけど、2004年を生きる僕らにとって、伊坂幸太郎さんが特別だって理由は、日々感じている釈然としない思いを言葉に変えてくるからなのかもしれません。

伊坂さんの出世作『重力ピエロ』は、世界で一番格好良いお父さんの物語でしたが、本書には身近で格好悪い父親と、煮詰まった少年が登場します。

全方位的にこんがらがって、もう子供じゃないし、大人にもなりたくないし、行き場もないし、イライラはつのるし、結局諸々の矛盾が向かう先は自分だし。そんな少年時代には、奇跡の一つくらい見せてくれるカッコイイ大人が側にいて欲しいものですが、フィクションの世界でさえ、誰かがヒーローになる瞬間はあっても、いつもヒーローでいられる人はなかなかいません。まして、フィクションの外ではなおのこと。

だから、カッコイイ大人なんていなかったし、今もなかなかいないけど、「いないなら書いちゃえ!」と、伊坂さんが書くと、こんな物語になるのです。たぶん。

そのヒーローは、すっごくはた迷惑で無責任で優しくないし、むしろ突飛で乱暴なんだけど、それが颯爽としていて心地いいんですね。無茶な言説をガンガン積み重ねて、ふと「本当のこと」を言わせてしまう伊坂マジックの象徴的キャラクターの一人です。これって、『陽気なギャングが地球を回す』をお好きな方には、一つ頷くだけで察していただける魅力なんです。(響野はお好きですか?)

また、前作からの流れで言えば、キャラクターの魅力だけでなく、『アヒルと鴨のコインロッカー』や『ラッシュライフ』で読者を幻惑した、構成の魅力ももちろん健在です。

【子供のことを英語でチャイルドと言うけれど、複数になるとチャイルズじゃなくて、チルドレンだろ。別物になるんだよ(——P96から引用。)】

この短編集は、五つの物語を重ねることで、はた迷惑な若造がヒーローになるまでを描きます。もっとも、最初からヒーローだった傑物の、数々の伝説を4人の視点で目撃するので、成長物語の要素は控えめです。

具体的には——。

警察に囲まれた銀行から強盗たちが消えた。
縁日で見かけるようなアニメの登場人物のお面を被せられ、
縛られ床に転がされた少年たち。
陣内がしゃべくり倒し、鴨居が巻き込まれ、盲目の永瀬と出会う。
——『バンク』


拳銃を持った牧師こと、家裁調査官が登場。
語り部の武藤君はなんだか、近藤史恵さんの
整体師シリーズのお人好し編集者と通じる印象。
居合わせて巻き込まれる、武藤君てば不幸。
(不幸な彼らに幸あれ……。)
——『チルドレン』


【「失恋した俺のために、今、この場所は時間が止まっている」(——P140から引用。)】
時に神様は、本当に時間を止めてみたりする。その公園で時間が止まって
2時間が過ぎた。語り部は優子、恋人は永瀬。目が見えないからこそ
世界が見える永瀬の傍らに立つ優子は、盲導犬のベスに
後輩扱いされている。恋敵は盲導犬。
——『レトリーバー』


【俺たちは奇跡をやってみせるってわけだ。(——P194から引用。)】
家裁調査官の仕事は奇跡を起こすこと。身勝手な大人、格好悪いオヤヂ、
歩きあぐねる少年。彼らの上に、起きた奇跡。武藤君は再び、語り部として
目撃者として担ぎ出された。「カッコイイ」を紅の豚の専売特許から奪還?
——『チルドレンII』


不可解な彼の転機を目撃する特権は読者だけのもの。
ただ、それを伝える語り部は必要で、盲目の永瀬だからこそ
感じた奇跡を読者に手渡せる。その事件の本当の意味は?
——『イン』

こんな五つの短編が集まって、読者は傍若無人な彼の伝説を一望できるのです。「青春エンタ」の講談社から刊行されたこともあってか、少し切なくて元気で愉快な風合いに仕上がっています。旬の物語を瑞々しいまま頂くなら、時は今なのです。

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紙の本電子の星

2003/11/29 23:03

弔い合戦からの生還。スピードを保つ、熱波の源は成長物語。

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人気シリーズ第4弾。無意識の内に、
前作『骨音』(ISBN:4163213503)と比較していた。

「東口ラーメンライン」
「ワルツ・フォー・ベビー」
——どちらもいい話だけど、マコトが泣きすぎる。

「黒いフードの夜」
——敵役の設定、「地獄を生き延びて堕落」に疑問。

気がつけば、ネガティブの連鎖に陥っていた。
そんな空気を吹き飛ばしてくれたのが、「電子の星」。

挑んですり切れて、都市伝説のような奈落に転落した少年。
あまりにやりきれない犠牲者の弔い合戦。
Gボーイズのキングも、あの若頭も参戦。

試して突きつけられる結果は苦しい。でも、
賭ける前から捨てない。
そう言えるようになるまでの、
大マイナスから小マイナスへの成長物語。

彼らの熱気を浴びて、本書を振り返れば
堅気になった「あのツインタワー(双子ギャング)」の
ほほえましい恋があり、痛めつけられた背中をそれでも
伸ばす老父がいて、暴力の連鎖を断ち切る黒いフードがある。

心配することなんてなかった。
人気作だからって、斜に構えることもなかった。
虚心坦懐に見て、うん、やはりIWGP。

足を止めることを知らない、熱狂・快楽・勢いの一冊。

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