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本格派さんのレビュー一覧

投稿者:本格派

10 件中 1 件~ 10 件を表示

セレクトだけでもそこそこいけるぞ!

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

恥を忍んで申し上げます。
私は、某国立大学を卒業して十数年が経ちます。
受験生時代は、数学が好きで、そればっかりやっていました。英語の成績はいまいちでした。予備校の夏期講座などに参加して、「英語は構文が第一だ、単語集は受験直前に確認する程度の利用法で十分だ」といわれて、単純にその気になって、英語の勉強をするとすれば、伊藤和夫の「英文解釈教室」を地道に、辞書ひきひき、構文を考えつつ訳す、という程度でした。模擬試験でも長文も文法問題も発音アクセント問題ですら、知らない単語だらけで、解釈問題は壮大な想像力で超意訳と称して一か八かで日本語にしてました。そうした二次型の記述式の試験はごまかせもしたのですが、私大の英語や共通一次(共通テスト)の英語のような、正解を選ぶという形式の問題は、惨敗です。問題文も想像で読み、選択肢の英文も想像で読んでいるのですから、鉛筆を転がしているようなものです。
共通一次の英語は無惨にも、130点くらいでした。
他教科の踏ん張りで、どうにかこうにか、大学には滑り込みましたが、大学に入ってからも、「英語は苦手」という強い劣等感から、目を背け続け、単位のための試験も、試験範囲の教科書の全文訳を覚え込んで臨むという対処療法で乗り切りました。
社会に出て十数年。
この英語(厳密には英単語・英熟語暗記)を避け続けた自分の生き方に、強い喪失感がありました。「英語をサボってきた人生だ」と。
で、Duo3.0とDuo selectを知ったのです。
 ──まず、受験英語からやり直そう。
 そう、誓いました。会社までの片道40分の通勤時間で、セレクトを丸暗記しようと決意しました。土日を除く、平日の行きの40分だけです。帰りは酔っぱらっていることがほぼ100%なので、やりませんでした。決意から1年と4カ月。377の問題文を丸暗記しました。和文をみて、即座に英文が口から出る、という状態にもっていきました。単語の正確な綴りなどは最初から目指していません。
 ──力試しをしよう。
 山籠もりから下りてきた大山倍達状態です。
 ともすれば忘れてしまう377の問題文を無為に繰り返し繰り返し口ずさむ2カ月があって、今年の1月半ばを迎えます。そう、共通テストのシーズンです。20年ぶりに、共通テストの英語の試験に挑戦しました。
 ──受験生時代より、確実に知らない英単語の数が減っている。
 勿論、セレクトだけで、カバーできるほど、受験英語は甘くありません。知らない単語はいくつも出てきます。しかし、大きな文脈に影響する単語や空欄補充問題に関わる熟語の多くは、セレクトで覚えたものだったのに驚きました。
 どうにかこうにか解き終えて、採点しました。
 163点でした。8割超えたのですからまあまあじゃないでしょうか。
 40歳近くになって確実に脳の暗記する力は衰えています。しかし、毎日毎日、コツコツと覚えることを強制していく内に、覚えるスピードがついてきたように思います。今は、Duo3.0にとりかかっていますが、セレクトで覚えた単語・熟語が基礎にあるので、最初にセレクトにとりかかった頃より、楽に覚えられます。再来年は慶應か上智の英語の試験で力試ししてみます。

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紙の本昭和史 1926−1945

2004/03/26 19:28

右とか左とかでなく。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 中学生の時、こんなことを考えた。
 日本史で、一番大きな出来事ってなんだろう?
「大化改新? 源平合戦? 信長・秀吉の天下統一? 明治維新?」
 今なら、問答無用で、「第二次世界大戦」と答えるが、当時は、真剣にそんなことを悩んだ。恐らく、授業で習わないからだろう。高校生になっても、日本史の授業は、明治維新から日清・日露戦争あたりで、時間切れ。「後は教科書を読んでおけ」で流された。
 有史以来、日本人が一番、多く死んだのは、あの戦争だし、あの戦争以降、日本人を支配していた様々な価値観が変わった。それは明治維新や天下統一の比ではない。
 否定されたものとして、「愛国心」があり、「日本人の誇り」があり、「天皇への忠誠心」があり、「人民の管理・統制」があり……。
 代わって喧伝されたものに、「自由と平等」があり、「平和」があり、「民主主義」があり……。
 以降、日本人は前者を悪として憎み、後者を是として生きてきた。
 その大転換を含む時代こそが昭和という時代だ。
 要するに「侵略して、戦争になって、敗戦した」この一連の歴史が日本という国をまったく変えたのだ。本書には、まさにそれが描かれている。語り口調の易しい文章で、この歪んだ時代を分かりやすく教えてくれる。
 陸軍悪玉海軍善玉説、二・二六の軽挙、近衛の優柔不断……そうしたことどもは、断片的に分かった気になっている。しかし、それらの本当の姿は、通史レベルですら、一般には知られていないはずだ。陸軍がなぜ悪玉になっていったのか。海軍は本当に善玉なのか。二・二六というクーデタを生み出す当時の情勢とはいかなるものだったのか。総理大臣がしっかりしていれば、戦争は避けられたのか……。
 私たち、全国民は、少なくとも本書のレベルの歴史認識をあの戦争に対して持たなければならない。国家を上げて好戦に熱狂していく様は、かつてあった自らの姿として、自戒の為に、あのような戦争を繰り返さないために、認識しておかなくてはならない。しかし、無自覚に振り子の反対側に寄ってもいけない。正しく認識し、正しい身の置き所を見つけなければならない。

 戦後民主主義教育や偏った民主意識は、価値観という振り子を極端に反対側に振った。教師の体罰がやり玉にあがり、教師や警官の聖職意識を奪い、児童・生徒・学生の集団帰属意識を脆弱なものとし、エリート教育を否定し、PTAが増長し、人間の序列を忌避し、教養を放棄し……、「自由と平等」の真意のはき違えである。そのおかげで、聖職者の淫行、学級崩壊、若年者の売春、ひきこもり、凶悪犯罪の低年齢化、学力の低下等など、悲惨な問題を現在の日本と日本人は背負っている。単純にそれらのすべてがそこに起因するとはいえないのかもしれないが。
 個人主義といわれるフランス人だって、日本人よりは遙かに愛国心があるのだ。民主主義の伝道師面しているアメリカだって、天才児なら十歳で大学入学というようなことが可能だ。いかなる国家体制であろうと「愛国心=同胞への誇り」は否定されるべきものではなし、学力や駆けっこの序列をつけることが「自由と平等」を蝕むことにはならないのだ。戦後民主主義をゼロベースに戻して、もう一度、立て直さなくてはならないのではないだろうか。そのためにはあの戦争を正しく、振り返らなくてはならない。本書はその格好の教科書となりえよう。

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刑事たちの美しいポジ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

警視庁捜査一課というのは殺人、強盗、放火、誘拐、爆破事件などを担当する、いわゆるドラマなどで活躍する刑事たちが所属しているところだ。総員350名を超す大所帯である。因みに、二課は汚職、詐偽、選挙違反など、三課は窃盗、ニセ札づくりなど、四課は暴力団関係の犯罪担当というような担当分担になっている。
本書は、忌まわしくも記憶に焼き付いている、数々の凶悪事件を題材に、その時どう刑事たちが捜査し、考え、判断し、動いたかを緻密な取材で、ドキュメントとして再現させている。
二部構成で、第一部は「オウム真理教にまつわる数々の事件」、第二部は「有楽町の三億三千三百万円強奪事件」、「中村橋派出所の警官刺殺事件」、「宮崎勤による幼女連続殺害事件」、「富士フィルム専務殺人事件」が扱われている。
展開にスピード感がなく、多少の混乱をまねく話の運び方が気になったが、しかし、それを補ってあまりある緻密な取材と、発言の再構成するその力量は、迫力十分、素晴らしいドキュメントになっている。
決して大げさでない、いわゆる地を這うような捜査、気の遠くなるような指紋照合、犯罪者の心理を知り尽くしていないとできない自白までの老練な誘導……、そうしたひとつひとつが胸に熱く迫る。そうした労苦をいとわせないのは、ただただ、刑事たちの誠実な正義感のみがそれを支えている。捜査の天才などいない。どの刑事も苦しみながら、スキルを現場で身につけていく。犯罪捜査というのは、地道で、人間的な世界なのだ。

地下鉄オウム事件では化学兵器がその凶器だったわけだが、警視庁にたったひとり存在した、科学的な専門知識を持った刑事の獅子奮迅の活躍に焦点が当てられる。林郁夫の取り調べでは担当の刑事の意を尽くしたその手法に読むものは圧倒される。有楽町の三億円事件では、指紋捜査の持つ果てしない作業の重さにスポットが当てられる。若い警官二人が惨殺された中村橋派出所の事件では、残された警官の幼い三人の子供のためにも、犯人検挙に血道を上げる刑事たちの熱い思いが描かれる。

ミスもある、失敗もある、やりすぎもあれば、誤認逮捕もある。
警察の捜査にはそうしたネガの部分も確かにあるし、本書はそれも逃げずに書いている。しかし、本書を一読して脳裏に浮上してくるのは、個々の正義感に基づいた純粋なひとりひとりの刑事たちの勇敢な姿である。膨大な作業にため息をつき、被害者の痛ましい死に涙を流し、自らの家族の安全に身を細らせ、そして犯人の残虐さに怒り震える。
刑事たちの肉声をひとつひとつ丁寧に拾い上げることで、本書は、見事にその美しい魂を持った人間としての刑事たちを浮かび上がらせた。

稀有のドキュメントといっていいだろう。

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紙の本サラマンダーの夜

2004/02/18 21:38

一粒で三度おいしい、傑作警察小説

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 面白い! 一気に読んだ。凄まじいスピード感、欲望と不正のからみつく現実、目まぐるしく訪れる虚をつく展開……。
 本書は、新宿のペンシルビル火災事件に想を得た警察小説だ。物語の展開はこうだ。
 池袋の歓楽街の雑居ビルで、突如爆発を伴った火災が発生する。火元のフロアの風俗店では19名もの死傷者が出る大惨事となった。三十路の独身女性記者は、ひょんなことで亡くなったホステスの同棲相手というホストと知り合う。亡くなったホステスは生前、事業に失敗した青森の両親のために、自らに生命保険を掛けていた。一方、バツイチの黒田刑事と茶髪の鳥居刑事は、帳場の管理官の見えない思惑にいらだちながら、地を這うような捜査を続ける。死んだホステスの親とホストの綱引きに揺れる保険金の行方。一部警察と風俗店の癒着。暴力団と中国系マフィアの対立。捜査四課、一課、生活安全課、新聞社、それぞれの思惑が交錯しつつも、女性記者と二人の刑事は何重にもとぐろを巻いて存在する複数の事件の核心へと近づいてゆく……。
 圧巻はラスト数十頁だ。すべての布石が見事に収斂するだけではない。それだったら、普通のよくできたミステリーであり、普通の面白い警察小説だ。この作品には、その先、そしてもう一つ、その先が用意されているのだ。幾重にも仕掛けられた著者の罠に読者は必ず我を忘れて絡め取られるに違いないだろう。
 短いシーンを重ね、畳みかけていく──ちょうどテレビのチャンネルをザッピングするような──著者の手法は、読む者を物語の激しい渦に巻き込んでしまう。僕らは無抵抗にそのスリリングな展開に心地よく溺れていくだけだ。
 また、著者の現代という時代を見据える視線は、今風の風俗や若者の有り様を巧みに織り込みつつ、深いようで、実は底の浅い、しかし、決して一筋縄ではいかない人間という存在を見事に捉えている。是非、おすすめしたい一冊だ。

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ペンの力

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 本書は、児玉隆也というルポライターの生涯を追いかけた評伝である。
 児玉隆也というのは、時の首相を退陣に追い込んだ月刊誌「文藝春秋」の伝説の特集、「田中角栄研究──その金脈と人脈」「淋しき越山会の女王」の後者の取材執筆者である。前者の著者はいわずと知れた知の巨人、立花隆だ。
 昭和12年生まれの、児玉は、幼い頃に父親を亡くし、戦後の混乱期に、裕福とは言い難い状態の中、勤労学生として早稲田の夜学を出て、光文社に入社。「女性自身」編集部で、辣腕編集者として活躍していく。
 編集長代理として「ドラマ人間」という骨太のシリーズ企画を成功させるものの、未曾有の組合闘争「光文社闘争」をきっかけに、昭和47年、34歳で退社独立にいたる。独立を決意するまでの描写は、会社をやめて独り立ちする者に普遍的な内面の葛藤が見事に掬い取られていて、興味深い。
 フリーランスのルポライター。聞こえはいいが、注文が来てなんぼの厳しい世界だ。その文章と緻密な取材力には定評のあった児玉だからこそ、「サンデー毎日」「週刊TVガイド」「現代」と様々な媒体から活躍の場を与えられた。しかし、当時のライターにとっての最高の舞台は「文藝春秋」だった。児玉も数度原稿が載ったが、まだ、レギュラーライターいう立場ではない。常連執筆者にならなければ、一流とは認めてもらえない。
 一方、「文藝春秋」編集長、田中健五は、時の首相を解剖しよういう大型企画を密かに目論んでいた。何人もの編集者を立花隆にあてがい、史上最強の取材チームを作った。田中角栄の「金脈」の全貌を描くのがこのチームの使命だ。その一方で、田中健五は、人間臭いドラマのある記事を一本欲しがった。児玉が、かつて「女性自身」の名物企画の中で、田中角栄の金庫番、佐藤昭という女性秘書を取り上げようと取材まで終えた段階で、田中角栄の圧力を受けて潰されたことがあったことに思い至る。
 かくして田中健五と児玉は対峙する。田中健五の腹は、取材データだけよこせ、記事は編集部で書く、というものだった。ここで児玉は一世一代のアピールをする。
「自分に書かせてくれ」と。
 その情熱に田中健五は折れ、児玉に賭けた。児玉はひと月弱という短期間に、旧知の取材記者二人に声を掛け、この大仕事に取り組む。
 ここの男たちのドラマは、胸が熱くなるものがある。まさに本書のクライマックスだ。この時、児玉37歳。すでにガンという病魔は児玉の肺に着実に根を下ろしていた。
 やがて発表された2本のレポートは、大きなうねりとなって日本の政局を揺り動かす。それは新聞にもテレビにもできなかった快挙である。筆の力で政権が滅びたのだ。
 目もくらむ名声を得た児玉であったが、翌年の春、38歳になってすぐ、不帰の客となった。10歳、8歳、2歳の幼子を残して。その無念、いかばかりであったろう。
 ルポライターは、検事や警官のような捜査権を持つものではない。しかも記者のように、大新聞や有名雑誌を看板に背負って、取材できるものでもない。「人から話を聞く」という仕事では、最も弱い立場である。児玉隆也はそのルポライターに誇りを持ち、地を這うような取材を敢行し、すぐれた文章で多くの素晴らしい記事を残した。
 こうした矜持を僕たちはどんな仕事に就いていようと持たねばならぬ、そう痛切に感じた。本書は見事な快作である。

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紙の本島尾敏雄全集 第1巻

2003/12/04 20:02

「一番好きな作家は?」と問われて、「島尾敏雄」と答えていた頃が確実にあった。

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島尾敏雄との出会いは、高校の国語の教科書だ。
角川書店の現代国語の1年生用の教科書だ。
「春の日のかげり」という短編が掲載されていた。
主人公と他者との距離感の危うさが、16歳のボクの波長に共鳴して、大きなうねりが生じた。
見かけは陽気にふるまい、友人達の輪(柔道部)の中心ではないが、少なくとも内側にはいると、信じて生きていた高校生が、キャプテンの小さないたずらに引っかかって、みんなに笑われてしまう。それだけではない、そのいたずらは、その柔道部の集団とはまったく無関係の少女を巻き添えにしてしまった。主人公の心は乱れ、震え、怯える。しかし、主人公は、懸命に陽気を装う。そして、主人公は、その少女に……。
──島尾敏雄
初めて見た名だ。それから、貪るように島尾を読んだ。全集は奨学金で買った。彼の作品は、どれも裏切らなかった。作品と言うより、彼の文章は、といった方が、感覚的に近い。
この現前する過酷な眼前の光景に、ひたすら畏れおののく、ひたすら繊細な神経を持った主人公、ただそれだけを描き続けている。

奥野健男ら、多くの評論家は、島尾文学には4つの系列があるという。
「単独旅行者」や「贋学生」に代表される、〈旅の系列〉。
「出孤島記」や「出発は遂に訪れず」に代表される、〈戦争もの〉。
「死の棘」に代表される、〈病妻もの〉。
「夢の中での日常」や「鬼剥げ」に代表される、〈夢の系列〉。
以上の4つの系列で語られる。
しかし、そうではない。それは単に、作品の道具立てで分類したにすぎない。
島尾文学はひとつだ。
「死の棘」を読んだ奥野健男が、「なぜ、この題材を夢の手法で書かなかったのか」と慨嘆する評論を書いている。しかし、それはナンセンスだ。
島尾という小説装置は、甲羅も鎧も衣類も布も皮膚も細胞膜もない、むき出しの神経そのものなのだ。通常、驚くことも怯えることもなく、見過ごして、あるいは、適宜処理して日常を送ることのできるような些事にさえ、その装置は、怯え、震え、哀しみ、苦しむ。そんな敏感な装置に、「震洋」という人間魚雷ボートに乗って敵艦に体当たりすることを義務付けられ、発進命令を待つ、という現実が突付けられたら、どうなるだろう。そんな敏感な装置に、自らの浮気によって、妻が発狂し、幼いふたりの子を巻き込んで家庭が崩壊してしまうという現実が立ちはだかったら、どうなるだろう。その繊細な装置は、日常から逸脱した「旅」という空間にさえ、畏れおののく。また、「夢」でさえ、彼にはおぼろげなものではなく、過酷に現前する驚異として写るのだ。

島尾の特異性は、そこにあり、それはそのまま、日本文学のある極点を示しているには違いない。小賢しい論評よ去れ、読者はただ、島尾と同化すればよい。

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プリンス近衛殺人事件

2003/12/03 18:54

悔しい悲しい腹立たしい

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遅まきながら、読んだ。
圧倒された。
近衛文麿の長男、文隆がシベリアに抑留されて獄死する、その顛末が、主たる軸となって展開するノンフィクションだが、ソ連側が発表し、日本政府が鵜呑みにし続けた数字(60万人の抑留、内6万人の死亡)が、まったくのデタラメであったことが、本書によって暴かれているのだ(100万人が抑留され、半数が死亡、これは世界史的に見ても、広島・長崎の原爆と並ぶ未曾有のジェノサイドである)。
近衛文隆は、公爵であり、三度も首相になった近衛文麿の息子であり、妻は昭和天皇の姪である。そもそも近衛家は五摂家の筆頭である。
そんな高貴な家柄の青年が、100万人の抑留兵の中に混ざり込んでいた。戦時中、文隆は中尉という一下級将校であった。
ソ連当局の取り調べは苛烈を極めた。
貴族は人民の敵である。しかも敵国日本の超特権階級だ。
飯もろくに与えず、延々と終わりなき取り調べは続く。
いや、取り調べとは名ばかりだ。これは拷問である。
この拷問の目的は、ただ一つ。
洗脳してエージェントとして日本に送り込むためだ。

「もう100回も捜査されましたが」
「101回目の捜査を実施する」
「裸になれ!」
「口を開け!」
「耳と鼻の穴を見せろ!」
「尻を開け!」

満州や中国北部に駐屯していた日本兵は、ソ連に対して一切の戦闘行為をしていないのだ。それは、日本軍が日ソ不可侵条約を遵守していたからだ。にもかかわらず、ソ連は、ドイツ戦のケリがつき、日本の敗戦が濃厚と見るや、突如、参戦してきた。昭和20年8月15日の無条件降伏を受けて、日本兵は武装解除する。無抵抗の日本兵はそのままソ連兵によって抑留される。国際法で許されぬ、長期抑留と強制労働が始まった。半数は寒さと飢えで亡くなっていった。たしかに文隆はその不幸な100万人の一人でしかない。しかし、彼は「近衛家」だ。だからこそ、執拗な尋問にも遭うが、その記録も残された。
近衛は妥協を一切せず、疲弊し、栄養失調となり、それでも誇りを捨てず、かたくなに正義を通した。日本という国を彼は守ろうとしたのだ。
やがて、彼は「脳出血」といういかにも、うさんくさい死因で、命を失う。拷問の日々は11年に及んだ。

しかし、近衛文隆が死を賭して、守ろうとした日本という国の現在は、その彼の清冽なる魂に恥じぬ国であるのだろうか。
共産主義でも資本主義でも自由でも平等でもなんでもいい。
ただ、愛国心は持たねばならぬ。愛国心は他国を憎む心ではない。誇りのことだ。その対象は、天皇でも政府でもない、父祖の魂であり、妻子への慈しみであり、同胞への矜持である。

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巻末の株主優待制度一覧が便利

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不景気の煽りで、給料は上がらぬものだから、当然、車を買い換えたり、不動産を購入したりといった大きな買い物は一切できない。また、海外旅行や高級レストランで散財という景気促進に協力する気にもなれず……。そんな日々は逆に、小銭を貯めさせてくれるのですが、銀行に預けても、ほとんど意味がない。そこで唐突に「株」ってどうなのかなと思ったのですが……。

私は文学部(日本史専攻ですがここでは関係ないか)出身で、お金に関係のない事務内勤ばかりだったので、部下もちょぼちょぼできはじめたというのに、「株」についてはまったくのド素人だったんです。
何から読んでいいのかもわからず、ついつい日々の仕事を優先してきてこの様です。
経済学部出身の新人クンに仕事を教えていても「実際、株の知識はこいつの方があるんだよなあ」などと思ってしまい、一人恥入るばかり。

そこで出会ったのが本書。
イラストがふんだんに使用されていて、マンガを読むような感覚で基本の基本がシンプルに説明してあります。この私でも、「株の世界」の概要が2時間で理解できました。
しかし、この本を買って面白かったのは巻末にドカーンとこれでもかと集められた、「株主優待制度」の一覧。
「ヤクルト」の株主になったら、ヤクルトをしこたま呑めて、神宮球場の野球まで見られるトカ、「ジョナサン」の株主になったら、半年に一回、1万2千円のタダ券がもらえるトカ……。
「配当金」とか「キャピタルゲイン」とか欲張らなくても、超安定企業の「株主優待」を目当てに小銭を運用するというやり方は絶対あるよな! と感じ入った次第なのでありました。
それもこれも含めて、確実にひとつ賢くなりました!

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最後の砦も歪んでいる

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 特捜検察といえばどういうイメージがあるだろうか。
「特別に捜査する検察」とはなんだろう?
 一般に、捜査といえば「警察」が連想される。
 しかし、警察の集めた調書類を元に、検察が刑事告訴もしくは不起訴を決めるのだから、警察は検察庁の下部組織的なイメージもあるのは事実だ。検察官といえば、裁判で、被告を糾弾する法律の専門家だ。それに対し、被告側について被告を擁護する論陣を張るのが弁護士だ。それらを聞いている裁判官も併せ、この三者はいずれも司法試験に合格した法のプロである。
 法律的には「検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる」と検察庁法に定められている。また、行政内の一省庁でありながら、極めて特殊な独立した権限が守られている。つまり、検察は「捜査」について、警察よりも大きな権限を有した存在であり、政治家の直接の影響下にない存在なのだ。
 その検察庁だが、通常は刑事裁判の運営がおもな業務になっている。通常の犯罪捜査は警察が行う。しかし、特別な犯罪、つまり「政治家」にまつわる犯罪は、警察レベルでは手が出せないことがある。そこで、最後の砦、「特捜検察」が動くのだ。
 そう、特捜検察は、政治という権力にも屈しない「正義の最後の砦」なのだ。
 本書はそのタイトルにもあるように、その「正義性」に疑義を提出した調査報道リポートだ。
 取り上げられている事件は大きく三つ。「佐川疑惑」「ロッキード事件」「造船疑獄」である。その論考は緻密で、ややもするとくどいところもあるが、なるほどと読ませる筆力はさすがである。
 彼らは「最後の砦」ではあるが、「捜査のプロ」ではない、ということが分かった。
 日々、地べたを舐めるような捜査を繰り返す警官と、何年に一度の巨大事件に動く特捜検察、そこに捜査スキルの差は歴然と存在してしまうだろう。自白への導きにしても、老練な警察官の取り調べと、エリート意識むき出しの検察官の取り調べでは、彼我の差は例えようもないものがあるだろう。
 また、事件に対して青写真をまず描き、それにそぐう自供を強要していく、という彼らの歪んだ方法は、やはり、そのエリート意識から抜け出せない、人間の本来持つ「驕り」や「偏向」や「先入観」や「間違いを認めたくない傾向」などに起因する「弱さ」そのものを感じてしまう。

 正義にはいろいろある。裁判官の正義、検察の正義、警察の正義、官僚の正義、与党の正義、野党の正義、宗教団体の正義……。いずれも歪んでいるのだ。悲しいことだが、人間とはそういうものなのかも知れない。

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この力業はホンモノかも……

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ある夜、休日出勤しての帰り、甲州街道をちんたら走っていた。カーラジオのスイッチを入れると、どこかで聞いたことのある声が届いてきた。誰だか思い出せない。アナウンサーは、そのゲストのことを「てつやさん」と呼んでいる。しかし、私の脳裏にあるその声の主は、そんな名前じゃなかったはずだ。その声の主は、日本で長く、中高生向きの人生相談をやりすぎて、色が付いてきたので、心機一転、ニューヨークにわたったという。そして3年過ごして帰国したそうだ。そこでの経験を元に、小説をこの度、発表したと言っている。頭髪が薄くなったことを告白もしている。
誰だ! 誰なんだこの声は。
彼は、番組終了間際、その書名を連呼していた。
「メキシコ人はなぜハゲないし、死なないのか」
と。
気になりまくったので、後日、その本を取り寄せた。そんな本との出会いは初めてのことだ。著者紹介で得心した。
ドリアン助川だったのだ。
行きがかり上、仕方ないので読み始めた。なんせ、3000円近くもする本なのだ。積んどくわけには行かない、読まざるを得ない。
冒頭、数十頁は、退屈きわまりない。1400円の本だったら投げていた。
ニューヨークに渡った日本人の中年料理人の独白である。韜晦で難解でややナルシスティックな、いわゆる間違った意味での純文学作品的な述懐が延々と続く。大学の文芸部の学生の小説のようだ。だめだめなモノローグ小説だ。
要は離婚して、娘を嫁にとられて、友人との絡みで全財産を失って、死のうとしているわけだ、その中年日本人料理人タカハシは。
が、しかし、ここからは、めちゃくちゃ面白くなるのだ。一挙に、メリメリと地殻を破って、マグマが吹き出すかのように、物語が炸裂するのだ。
その料理人の自殺は何匹かのネズミによって阻止された。しかし、その際、「憂鬱の砂嵐」というパンドラの箱を開けてしまった。全世界を、日本にいる娘を救うためにもメキシコの4つの宝を探し当てねばならなくなった。タカハシのお供は猫よりデカイネズミとなんでも知っている年老いた学者ネズミである。途中、おしゃべりな若い娘のネズミも加わる。この一行のメキシコでの大冒険は、血湧き肉躍るものがあるのだ。一つ目の宝で、色彩を失った村を救い、ふたつ目の宝で、飛ぶことを止めた蝶の大群を救い……。
頑張れタカハシ、負けるなタカハシ、全世界を救え!

しかし、結末には、若干、疑問が残るのだが……。

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