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    中野 ジェームズ修一 (講師),日本放送協会 (編集),NHK出版 (編集)

    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

mitchさんのレビュー一覧

投稿者:mitch

65 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本ヒッコスでひっこす

2005/08/14 21:48

へんてこりんな引越しのお話

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

畠山則安、三年三組。あだ名は、十円やす。 このシリーズのいつもの出だしです。
さて、今回の騒動は、いきなり「アナホリ会社」の社長が則安くんの家にやってきたことからはじまります。
社長の話では、なんでもこの家の下にバクダンが埋まっているのだとか。はやいところ掘り出さないと、大変なことになります。
さあ、それからが大変です。畠山家は家ごと引っ越しをしなければなりません。社長から渡された謎のロボット、「ひっこしロボ・ヒッコス」に行き先を書いたカードを差し込み、希望の場所に家ごと引っ越させてもらうことになります。 移れるチャンスは17回。 この一家、いったいどこへ住むのでしょう。 畠山一家の引っ越し先がとても傑作です。

この家族ときたら、もう本当にへんてこりん。
「木の上」「川の上」「スーパーの中」「土の下」「新幹線の上」「飛行機の上」とても住んでいられないようなところばかりを選ぶんです。
お父さんは会社があるし、お母さんは家事があるし、則安くんは学校がある。
それなのにねぇ〜。 川の増水で家が流されても、「会社が近くなっていいや」なんて言うし、水の中では、「浦島太郎だっておぼれ死んでない」なんてのんのんとお気楽。 ついでに「よし、世界一周だ」なんていう始末。
何があっても、それはそれはもう超超超超〜ポジティブシンキングなんです。何が来たってあせらない。何が起こってもおもしろがって受け入れる。
いいように、いいように考えて、結果うまーく乗り越えていくんです。もう、こういう発想は、なんでもありの童話の世界だからできることなんでしょうね。

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紙の本はれときどきぶた

2005/08/14 22:11

各国語に翻訳されている名作です

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

畠山則安、三年三組。あだ名は、十円やす。 毎日日記をつけるのが自慢の則安君は、ある日お母さんに日記を盗み読みされてしまいます。 勝手に日記を読まれたことに腹を立てた則安君は、逆にお母さんをおどろかそうと、でたらめなことを日記に書きます。
「トイレに大蛇」 「お母さんがえんぴつをてんぷらに」 「金魚がへやをとびまわる」・・・・・・。
ところが、書いたことがすべて本当になってしまうのです!
みんなに謀られたとにらんだ則安君は、ある日「ごごから ぶたがふりました。」と日記に書いたところ、それも本当になってしまい・・・・・・。

日記に書いたありえない話が本当に起こってしまうという、奇想天外なユーモア小説。畠山則安君が「ぼく」という一人称で語ったお話です。
3年生の男の子らしい発想が面白おかしく描かれていて、娘といっしょに何度もげらげら笑ってしまいました。
なんといっても、日記に書いたことが本当になってしまう、という発想がいいですね。途中さしはさんである絵日記も作者の遊び心があって、なかなか楽しいです。
今にも降りおちてきそうな、ぶたたちで埋め尽くされた夕焼け空の絵は見ものです。

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紙の本ラチとらいおん

2003/07/09 12:47

勇気という贈り物

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

私はこういうパターンのお話に弱くて、もう最後は涙なしには読めませんでした。 大好きな友達が、勇気という贈り物を残してある日突然いなくなってしまうのです。  物語のなかで、このラチという少年は「弱虫でこわがりで泣き虫」の男の子。 友達にも相手にされず、一日中家の中で絵本を眺めて過ごす子どもです。子どもというのははっきりとしていて、時には非情なものです。 「使えない」とわかった者は遊び仲間とは認めず、平気でつまはじきにします。 
「みんな仲良く」を標榜する幼稚園や学校の先生でも、そんな子どもの世界の掟を変えることなんて容易にできるものではありません。 自分がこういうタイプの子どもの親なら、「男の子なのに臆病で、ひっこみじあんで、友達も作れなくて、将来まっとうな人生が歩めるのか心配なんです」とカウンセラーに相談したくなるというものです。
   
   ところが、そんなある日ラチのもとに 小さならいおんが現れます。 このらいおん、いつも憧れをもって眺めていた絵本の強いライオンとは似てもにつかない、間の抜けたぬいぐるみのようならいおんです。 面白いのは、弱虫の男の子を鍛えるのがいかにも強そうな風貌のライオンではなくて、親しみやすくいつも寄り添っていてくれる友達の姿をとって現れたらいおんであるというところです。
らいおんは、ラチの行く手に立ちはだかる困難から力で守ってくれるのではなく、一緒に強くなるための訓練をしようというのです。  子どもを変えることができるのは、親ではなく、子どもの心に寄り添ってくれる第三者であるということがよくわかります。 

   らいおんはラチの弱さを知りぬき、励まし、共に体を動かして ラチに働きかけます。 今までずっと内向きでいたラチの気持ちも、このらいおんのおかげではじめて外へと向かいます。 
今まで恐がってきたものに、生まれてはじめて対峙しようとするラチ。 
ほんの少しの勇気のおかげで、いじけて過ごしていた毎日に少しずつ変化があらわれます。  そしてついに自分より年上でずっと大きいのっぽから、らいおんの助けなしで自力でボールを取り上げることまでできるようになるのです。

   でもその時はもう、らいおんはラチのもとから去っていました。
もう、ラチにはらいおんの助けはいらなくなったわけですから。
まるで初めて補助輪なしで自転車を自力でこげるようになった日のことを思い出しました。 
後ろで倒れないように自転車をずっと支えてくれていた誰かの手が、いつのまにか離されていて、はるか後ろのほうで微笑んでいるのを見た幼い日。

   「弱く臆病なのが個性」という見方も今の時代は受け入れられてはいます。けれど、男の子は、やはり強くなりたいという身についた願いがどの子どもにもあるものだと思うのです。 本当にそうしたいから内に引きこもっているのではなく、ほんの少しの勇気がまだないだけなのかもしれません。 
この絵本のラチは、らいおんから勇気をプレゼントされることで、自分の人生を切り開いていく自信も同時にもらいます。 強さは男の子の憧れであって、切なる願いでもあります。
本当に願えばどの子にも、ラチの「らいおん」のような誰かにきっといつか出会えるはずだ、と私は思っています。

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紙の本うまかたやまんば

2003/06/24 15:31

昔話の古典的な恐ろしさを味わう

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人より大きな馬まで バリバリ食べてしまうやまんばとは、なかなか恐ろしい存在です。この絵本のやまんばも、骨張った体に ざんばら髪、灰色の肌を着物からのぞかせて、見るからに恐そうです。

逃げても逃げても まだ追ってくる、という どこまでも追いつめられていく怖さは、たいてい誰もが夢の中で体験しているはず。 一生懸命 全力で走っても、足がもたついてうまく走れない。 でも後ろから追っ手がやってくる。 そんなもどかしさと 逃れようのない恐怖を たとえ夢の中だけでも味わっている人なら、この話が リアルに感じられるのではないでしょうか。。

実際、5歳の娘に読み聞かせるたびに、おびえた様子をみせるので、幼い子どもにとって この絵本のインパクトはかなりなものなのでしょう。  
魚や馬をバリバリ食べて、さらにすごい勢いで追ってくる 恐ろしい姿のやまんばは、やはり最後に死んでもらわないことには 読んでもらっているほうは、安心できません。
最後の「えんつこ もんつこ さけた」で やっと娘もほっとした顔になるわけですから。
でも、恐ろしいやまんばにも ひとつだけ弱点があります。火の神さまの言うことには逆らわないのです。  恐ろしい鬼畜としてだけでなく、そうした人間的な一面を やまんばにも付け加えた、というところも、なかなか面白いところです。

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リズミカルなことばが魅力!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昔大好きでよく手にとっていたのを、偶然図書館でみつけました。
見覚えがあるキャラクターだと思ったら、かこさとしさんの作品だったことがわかって、2どびっくりです。 まるで色紙を切り抜いて作ったような 3にんの子どもたちの目が、とても印象的で、何十年たった今でも記憶にしっかり残っているのですから、すごいです。

今改めて読み返してみると、言葉のひとつひとつがよく工夫されていて、すごくよく出来ていることに気付きました。
「どろんこ こねて おだんご つくろ  きなこに あんこ あまから だんご どろんこ こねて おだんご つくろ  あんこを つめて ほかほか まんじゅ」

たとえばこれは、みんなでどろんこごっこをしている場面に書かれた言葉なのですが、口に出して読んでいるだけで、とても心地の良いリズムに身を任せることができます。まるいおめめの めりーちゃんたちキャラクターのの魅力だけじゃなくて、言葉遊びの要素がふんだんに詰まった リズミカルな文章にも、子どもを夢中にさせる秘訣があったのですね。

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紙の本長くつしたのピッピ

2004/12/14 09:18

リンドグレーンの代表作、世界一力持ちの女の子の物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

トミーとアンニカは仲良しの兄妹。 ある時、おむかいのおんぼろ屋敷に、ひょっこり女の子がやってきます。 女の子の名前はピッピ。 赤毛のおさげがみに、色ちがいの長くつしたをはいた、風変わりな子でした。 お母さんはとおの昔に死に、船長だったお父さんは行方不明で、ピッピはたったひとりで、馬とオナガザルと一緒に暮らしています。
それにピッピはとびきりの力持ちで、運動は大のとくい。 料理もなんでもひとりでこなします。 トミーとアンニカは、すっかりピッピに夢中になります。 おなじみ、リンドグレーンの代表作、世界一力持ちの女の子の物語。


いやぁ、すっごいうけました。これほどまで娘(6歳)に受けるとは思いませんでした。
「ピッピってすごいよねぇ。すっごい力もちなんだよね。牛のつのだっておっちゃうんだよね。」 なんて、本を離れてからもしばらく興奮がおさまらないといった感じです。 

現実には絶対にいないような女の子が、どうしてこれほどまで世界中の子どもたちから愛されてきたのか、ちょっとわかったように思いました。
この世界では、子どもはやはり力がなくて弱くて、大人たちにはどうしたって逆らえないもの。それなのに物語のピッピときたら、自分がこうだったらいいのに、といった思いを全部実現してくれているのですから。 これはもう、拍手喝采、ピッピは子ども達のヒーロー間違いなしですよ。 

それに、ピッピは学校に行きません。学校というところは、必ず行かなければならない子どもにとって、自由にやりたいことを選んでいるピッピは憧れの的なのだと思います。 
自由というのは、世の中の基準からの自由という意味も含まれています。 
ピッピは人の目からどう見られるかとか、どうふるまえば他人から気に入ってもらえるか、といった縛りからも完全に自由な女の子です。 常に「こんなことして、みんなからどう思われちゃうかな」とか、「こんな服着ていったら、変に思われる」と気にして過ごしている私たちから見れば、全く羨ましい限りです。
力、そして自由。このどちらをも持っているピッピは、やはり子ども達の憧れの人なのです。
小学校中学年以上向けが多いシリーズ翻訳の中で、本書は小学校低学年向けに書かれ、挿絵も多くわかりやすいです。

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紙の本さむがりやのサンタ

2003/07/09 12:43

自立した老人

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この絵本との付き合いはとても長い。 それは私が昔まだ小学生だった頃何度も読み返していた愛読書だったのだから。 家の中の細部にわたる描写が魅力的な絵と、マンガのコマ割ですすんでいく楽しい展開が非常に新鮮で、大のお気に入りだったことを覚えている。 
やがて母となり、自分の子どももこの絵本が楽しめる年齢となって今ふたたび手にとってみても、やっぱりとても楽しめる絵本なのだ。
このサンタのおじいさん、とても個性的な人物で、幼い頃なんとなく想像していた「やさしく子ども好きで鷹揚とした人のいいおじいさん」といったイメージを塗り替えてしまうほどくせのある性格なのだ。  
まず、このおじいさん、好き嫌いがたいへんはっきりしている。 夏と暖かい場所とお酒と紅茶と旅行が大好きで、冬と寒い場所が大嫌い。 部屋のあちこちに南の島のポスターが貼ってあり、「冬はいやだよ、まったく」なんて朝からぶつぶつつぶやきながらクリスマスの仕事の用意なんてしているのだ。 
ブリッグズのこの絵本はずっと世界中でロングセラーを誇っているという。
その秘密はやはり絵の美しさとサンタのキャラクターの魅力に他ならないのだが、何度も読み返しているうちに愛され続けてきた秘密をまた発見した気がする。
このおじいさん、一人暮らしをしていても、きれいに片付けられた部屋に住み、身なりもこざっぱりしている。 誰も見ていないのにきちんと自分ひとりのために料理をし、テーブルもセットする。 1人だし面倒だから鍋から直接食べよう、なんてことはきっと彼の美学に反するに違いない。 
世界中の子どもたちにプレゼントを配る大仕事を終えたイブの日も、家ではきちんといつも通りの生活習慣を守っている。
入浴剤を入れたおふろでさっぱりしたあとは、誰に見られてもはずかしくない格好に着替え、クリスマスのための特別なごちそうを作り、数種類のリッカーを並べた豪勢な食卓をひとりで囲む。
寝る前には 「やっかいなボタンだよ」と文句をいいながらもちゃんとパジャマに着替えるし、牛乳の空き瓶を外に出して戸締りも忘れない。
そう、このサンタクロースはしっかりと自立したおじいさんなのだ。
自分のことは自分でやり、人には迷惑をかけない。 毎日の生活をきちんと送っていて仕事にも忠実な人だからこそ、多少文句たれ屋であっても、小憎らしいことを言ったとしても(もらったプレゼントにけちをつけたり) それが許されて受け入れられてしまうのだと思う。  
「えんとつなんて なけりゃいいのに」と言い、用意されたジュースを、「ふん なんだジュースかい」なんてケチをつけたとしてもちっともイヤなじいさん、なんて印象をもたせない。  
自分だけの楽しみを持った、生活の基本動作を怠らない自立したおじいさん。 ホント面白いサンタクロースだと思う。

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紙の本金子みすゞこころの宇宙

2003/06/24 16:11

みすゞの深く広い世界

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

金子みすゞは大正生まれの童謡詩人。 若い頃より同人誌に投稿を続けていたみすゞの作品は早くから注目され、仲間から高く評価されていたという。 時を経て21世紀の今日、再びみすゞの詩が注目されはじめているようだ。  
みすゞののこした代表的な作品の一部を取り上げ、著者の矢崎氏が解説と独自の観点からの感想を加えたのが本著である。
今年の始め頃、私は友人からはじめて「金子みすゞ」の名前を聞いた。
恥ずかしながらそれまで一度も彼女名前も作品も知らずにいたのだったが、なんだかそれ以来とても気になって、とうとう図書館に探しに行ってしまった。
はっきりいって、とても感動した。 短いうたような言葉で、真実をこんなに深くみごとに表現できる人がいただなんて! ほんと、ひとつ読んだだけでただものではない、って思わせる。 すごいなー、こんなふうにものごとを捉える人がいるんだ、と。 言葉のひとつひとつが、深い祈りのあとに発せられたようなひびきを持っている。
 
そして、この本の著者もみすゞに負けないくらい、深くものごとを見て感じている人だと驚く。 それもそのはず、若い頃一度みすゞの詩に出会って以来、ずっとみすゞを追い求め、みすゞのまなざしにならって来たというほどの人なのだから。 ひとつの言葉から、深く広く世界が広がっていくことのすばらしさを感じた一冊。

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紙の本きつねのホイティ

2003/06/24 15:45

スリランカの大らかで魅力的な人々の話

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

豊かな色彩の自然と人物が画面いっぱいに広がる、スリランカの作家による作品です。スリラカの絵本はこれが初めてなのですが、もう本当にすばらしい!の一言です。これがあまりに素敵なので、もう一冊 同じ作家の別の絵本を即購入してしまったほど。

人と動物たちが自然な調和を保ちながら生活する、村の光景。 元気でおしゃべりで、働き者の女性たち。 それに対して、所在なげにたばこをくゆらせる、男性たちの姿。家の中の調度品も、用意される食事も、フォークやスプーンでなく手を使って食べるスタイルも、スリランカそのもので 眺めているだけで 元気になれそうな絵本です。ストーリーと絵全体から感じられる大らかさも、きっとこの絵本の魅力なのでしょう

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紙の本くぬぎの木いっぽん

2003/06/24 15:07

虫たちの立場がわかります

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ある日、一本のくぬぎの木の前にたてふだが建てられました。
〈立ち入り禁止 森林伐採計画〉と書いてあります。それを最初に
発見したのは一匹のあり。そのうさわはどんどんくぬぎに住む仲間に
伝わって、てんやわんやの大騒動。動けるものたちはみな、いっせいに
大移動をはじめます。 

一本のくぬぎの木に、どれだけたくさんの生命が依存して生きているか。
開発の名の下に、次々と木を切り倒していく人間に抵抗することが
出来ない生き物たちが、住みかを追われて行く様子が虫たちの立場で
よく描かれています。 最後に虫がリスにどんぐりを託して「できるだけ
遠くにはこんでうめてね」と淋しくつぶやくセリフがぐっときます。

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笑いを売った少年

2004/12/07 12:56

「笑い」という大切な宝を取り戻す冒険物語

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「わたし」が人形遣いのティムから聞いた話を7日間にわたって書き
止めていくという設定で話は進む。貧しい人たちが住むアパートに、
ティムという少年が継母と義理の兄と父親の3人で住んでいた。
お金はなくとも、ティムは聞く人誰もを幸福な気持ちにさせる「笑い」
を忘れることはなかった。しかしティムの運命は、父親の死を境に大きく
変わっていく。 ひょんなことから、競馬場で謎の紳士と出会ったことから、ティムは紳士と妙な契約を交わす。
それは、ティムのこれからの人生においてすべての賭け事に勝てる能力の
かわりに、ティムの「笑い」を紳士に譲るというものであった。
笑いを失った少年ティムは、お金儲けの不思議な力を得た代わりに、
微笑むことすらかなわなくなってしまう。次第にティムは自分の失った
「笑い」という宝のすばらしさに気づき、自分の笑いを取り戻すための
旅に出ることを決意する。

面白くて、読み出したらとまらない! 1962年にドイツで書かれた古い作品だそうだが、この作品の訳者が言うように、今読み返してみても本当に面白くて新鮮。寝てしまうのが惜しいくらい、明け方まで読みつづけてしまった。
「世の中には、お金にかえられないほど価値のあるものがあるのだよ」と大人が子どもに説明するとき、この物語がとてもよい参考になるとおもう。
ビジネスで成功した世界一お金持ちの男、リュフェット男爵が自分の力ではどうしても手に入れられなかった、笑いという恵み。幸せであることとお金もちであることは必ずしもイコールではない、ということがティムの苦しみを通して伝わってくる。 貧乏はたしかに不幸を生むけれど、お金だけを追い求めていても、精神的な安らぎにつながらない。 
ではお金と人から愛される笑いを両方手に入れられたとしたら、果たして完璧な人生が送れるのか。リュフェット氏のその後をみると、それもやはり難しいということに気がつく。
そして、ティムをとりまく影響力ある大人たちの行動も、とても興味深くて引きこまれる。裏であれこれと手を回すセレク・バイ氏たち。それを先回りしてかぎつけるリュフェット氏との駆け引き。新しいブランドマーガリンを発売するまでに至る、リュフェット社のマーケティング戦略。大人が読んでも存分に楽しめるこのような物語を、児童向けに作り上げた作者のクリュス氏に拍手!

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紙の本まりーちゃんのくりすます

2004/03/11 14:49

レトロでロマンチックな絵が最高

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もうすぐクリスマス。まりーちゃんは白い羊のぱたぽんと仲良しです。
クリスマスがくるので、うきうきとうれしいまりーちゃんと、サンタクロースは自分には関係ないとちょっぴり淋しいぱたぽんの、ことばのやりとりでお話は進んでいきます。
なんといっても、この会話のやりとりがとっても愛らしいんです!
ちょっとレトロな絵も、木靴という小道具も、昔のヨーロッパのクリスマスの雰囲気が味わえて、とってもいいんです。 どちらかというと、女の子に受けそうです。

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紙の本あほうどり

2003/07/08 00:15

純粋でやさしい心をもつ男の子の話

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信太は小学4年生。両親がなく、踏み切り小屋の仙三じいさんと2人で暮らしています。
信他は人よりも少しのみこみが遅く、うまくしゃべることができないせいか、同級生たちからは「あほうどり」と呼ばれています。とくに信太のとなりの席にいるちよ子とちよ子の仲間たち3人組からは、いつもからかいの格好の相手となっていました。
そんなある日、ふとした事故で、ちよ子は川の深みにはまり、おぼれそうになります。そこへ、ふだんバカにしていたはずの信太が飛び込み、みごとちよ子を助け出します。
ちよ子は、それをきっかけに態度をあらため、信太と強い友情で結ばれるのでした。

家が貧しく、身なりもだらしない。そして人よりも鈍くて言葉もうまくしゃべれない。まさにいじめの格好の対象となりそうな男の子、信太。だれからも本当の名前で呼ばれることなく、「あほうどり」と呼ばれながらも信太はいつもにこにこと、決して誰もうらむことがありません。 いつも何を言われても、信太は自分だけの楽しみを持っているのです。
信太の時間は、他の皆とは違った時間で、信他の考える「とくべつ」は、他の子たちとは違います。
それゆえに、友達もなく、いつも一人きりで自分のペースで毎日を送っています。「なべの中のゴマみたいな子」のちよ子は、そんな信太のことが、なぜか気になります。
信太の服装をからかったり、どもりをバカにしたり、信太を見ると何かせずにはいられないのです。 そんなちよ子が、事故をきっかけに信太にとってのはじめての友人になります。

信太は普通に考えれば、不幸でかわいそうな子どもなのでしょうが、本人を見る限りでは、全くその影もありません。 少し智恵遅れで、貧しくて、親がない、というその設定だけでも悲劇になりそうですが、物語は一貫して明るく、信太の純粋さ、心の素直さややさしさで満ちています。 今でいう、「いやし系」ですね。 この信太独自の世界が、本当にきれいで純粋で、読んでいて涙がでてきました。ポケットの中に集めた信太の宝ものの写真が挿入されていますが、こまごまとした物たちがまるで信太の心の世界の象徴のようで、本当にすてきです。
態度ではバカにしていても、ちよ子はこんな信太の人間性に、惹かれていたのだと思います。 人間にとって大切なのは、勉強ができることでも、友だちの数が多いことでもない。生き物や自然を愛し、どんな人にもやさしくできる、心の美しさなのだということを教えてくれる、感動の物語です。  

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紙の本木のいのち木のこころ 地

2003/06/24 16:08

「待つ」ことの大切さを教えてくれた本

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『木のいのち木のこころ(天)』の西岡常一棟梁の一番弟子による著。
高校の修学旅行で 法隆寺の五重塔を見て宮大工に憧れたことが 入門のきっかけだという。西岡棟梁の元で技術を身につけた後、今度は自身が棟梁となって弟子をとり、「斑鳩(いかるが)工舎」を興す。そうした著者の半世紀と、宮大工としての思いが綴られたのが本書である。

著者が故・西岡棟梁に弟子入りしたのが、21歳のとき。 
その時点でもう大工になるには年をとりすぎていると言われてしまう。 
それでも小川氏はひたすらねばり、幾多の迂回路を経てようやく弟子入りを認められる。そして、やがて自らも棟梁となり独立する。
著書を通して一番いいと思ったのは、小川氏の弟子を見つめるまなざしの暖かさだ。 何百年も後の木の状態を考えながら材木を組み立てていく 宮大工のことだけある。 人に対しても同じこと。 速効熟達を望むのではなく、育っていくのをじっくり腰をすえて待つ。カンナ研ぎの仕事ひとつにしても、弟子たちが体で体得するようになるまで、ただひたすら待つ。 

私も子育てをしているが、この「待つ」というのは思ったよりも難しく、自分の器量がもっとも試される部分であるように感じている。 だからこそ、人の上に立つ人にはなくてはならない資質なのだと思う。
弟子の中には著者の息子さんもおられたようで、息子さんはじめ斑鳩工舎のメンバーひとりひとりの声を反映させた『木のいのち木のこころ(人)』という巻も発行されている。

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紙の本木のいのち木のこころ 天

2003/06/24 16:06

温故知新が生きている世界

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著者は法隆寺金堂、法輪寺三重塔などの再建にも携わった、「最後の宮大工棟梁」と呼ばれた人物。 明治41年生まれで、平成7年に享年86歳で亡くなっておられる。
飛鳥建築や白鳳建築等、古代工法で建築できる、唯一の棟梁だったという。
本著は氏が亡くなる3年前、西岡氏が直接語った言葉をテープから書き起こした、「語り書き」の方法で著されたもの。 それ故、読み手に向かって、直接語られているような、口語体の文章が実に味わいがあって 内容が引き立てたれている。

西岡氏の家は、代々寺社を建造する宮大工の家系で、氏も幼い頃から棟梁であった祖父に、大工仕事の基礎からたたきこまれて育ったという。
それ故、木に対する造詣は深く、歴史的背景と共に、実にわかりやすく、説得力を持って木と大工という仕事について語られている。

西岡氏が亡くなってずいぶん経つのだが、最近よくこの著者の名前を見かけることがあり、本著を手にとってみた。 深く静かで含蓄に満ちた言葉に、本当の意味でのプロフェッショナルとはどういうものであるのか、十分学ばせてもらったように思う。
今はなんでも機械で製材できて簡単に作れるから楽、と思われているが、実は木にはそれぞれ癖があるのだという。 製材の段階で規格化されたすべて同じものが出来たとしても、それが10年20年と時間を経るに従い、よじれや縮みなど、木本来の姿が現れてきて、結果建物が長持ちしないということにつながるのだそうだ。

木の性質を見極める力、道具を扱う能力、そういったひとつひとつの技術を年月をかけて身につける過程は、現代のようになんでも早いほうがいい、とされる時代においては容易には 実現できないことかもしれない。 
それでも、実際手間と時間がかかって効率が悪いように思えても、古代の木を生かす工法で立てられた法隆寺は、千三百年経った今もこうして存在している。 
木の寿命を全うさせようと、職人たちが木の個性をそのまま使って建てた結果が、こうしてあるわけだ。
新しいものはよりすぐれたもの、という価値観が知らず知らずのうちに自分の内に根付いてしまっていたのだが、先人の残した智恵や工夫を見直すことの大切さを 本著によって改めて思い起こされた。 

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