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  2. レビュー
  3. くろねこさんのレビュー一覧

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先月(2017年8月)

くろねこさんのレビュー一覧

投稿者:くろねこ

85 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本スキップ

2002/06/30 08:30

たった1晩で飛び越えてしまった25年。そこから成長していくヒロインの物語。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

17歳の高校生の高校生だった真理子は、なんと、一晩眠って起きたら、
42歳になっていた!
しかも、結婚していて、ゆうべの自分と同じ年齢の娘がいる?
なんてこと!
17歳から42歳という、人生の花も実もある時間を、たった1晩眠った
だけで飛び越えてしまうなんて、理性のたががふっとぶような事件。
東野圭吾の『秘密』の、逆バージョンのような設定ですね。

でも、せめてもの真理子の救いは、「娘」の美也子と「夫」の桜木が、
とてもいい人であるということ。
なんと言っても、真理子の主観では、前の日まで高校生だったと言っても、
端から見れば真理子の時間はごくごく普通につながっているんですから。
真理子の言うことは、ものすごく奇妙で、妻が母がおかしくなったとしか
思えないはず。ある日突然、「自分は昨日まで高校生だった」
なんて言い張るんですから。
戸惑いながら、そして、それを信じているのではないにしても、そんな突拍子もない
主張をする真理子をそのまま受け入れようとする。
これって、すごいことですよね。
相手のありのままを受け入れるって、なかなかできるものじゃないと思う。
ましてや、真理子の主張を信じれば、美也子や桜木には自分の存在をある意味、
否定されているようなものなのですから。
でも、彼らは根気強く真理子に付合っていく。
その姿勢を見て、涙が出るほど嬉しかった。
だって、そんなことになって、1番心細いのは、真理子なんですから。
それを支える人たちが家族であって、とても嬉しかったのです。
そして、ああ、一ノ瀬真理子は、その25年間を、とても素敵に生きてきたのだと
いうことも、とても嬉しかった。

そして、その25年を失ったことが夢でもなんでもないのなら、いつか、
本物の?桜木真理子が自分の時代に帰ってきたときのために、そして、何よりも
自分自身のために、真理子は、しっかりと、地に根をはって与えられた世界で
生きようとし始める。その1歩を踏み出すのに、どれほどの勇気がいったことでしょう。
だけど、そういう姿勢が、真理子の周りの人たちの真理子への接し方に、とてもよく
似合っていて、「桜木真理子」は間違いなく「一ノ瀬真理子」の延長線上にいるのだと
いうことが、無理なく信じられました。

それから、嬉しいのは、まるで、自分の高校時代を追体験するかのように、そこに
描かれた高校生という年代を感じることができたのが、ものすごく懐かしくも
切ない気持ちにさせてくれました。

とても爽やかな読後感の1冊です。

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紙の本三月は深き紅の淵を

2002/06/20 23:44

謎の本にまつわる4つの謎の物語

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

作者不明、たった200冊しか作られず、それも、
大部分は作者の代理人によって回収されたとされる自費出版の本。
『三月は深き紅の淵を』。
この、1冊の本をめぐる4つの物語。

もう、この設定からして、素晴らしく魅力的、そして魅惑的。
恩田陸というこの作者の本は初めて読みましたが、
初めて読むのがこの作品というのは、とてもラッキーでした。

第1章から、もう、夢中なってしまいました。
友人が持っていたはずのその本を、膨大な書庫の中から、
謎のメッセージを解いて探し出そうとする老人達。
彼らが巧一を招待したその目的は?
なんとも、富豪というのは酔狂なことを、という感じなのですが、
この4人の老人が、とっても魅力的。
ちょっと風変わりではありますが、本をとても好きなのですね。
彼らの会話からそれがびしばし伝わってきて、分かる、分かる!って。
それに、その中の1人が連れている犬の名前ときたら!
なんて、なんて、まぁ(笑)
そして、4人が変る代わる説明する『三月は深き紅の淵を』のアウトライン。
もう、これを聞いただけで、この作品を読みたくてたまらなくなりました。
それを、そのままこの本のタイトルにしているところに、
きっと、なんらかのトリックがあるのだろうなと思いつつ、
そんなことよりも、その、読む人を片っ端からとりこにするその本を、
とにかく、読んでみたくてたまらなくなったのです。

彼らに出された「宿題」を解こうと、必死に頭を働かせる巧一。
そして、なんらかの答えを呈示しては、次々ひっくり返されて(^^;
でも、最後に巧一が見せた驚くべき冴え。
そうそう、こうでなくっちゃ!
4つの章の中で、この章が、とにかく1番好き。面白かった。
もちろん、他の章が好きでないというわけではありません。

第2章は、夜行列車で旅する2人の編集者の物語。
彼女たちの目的も、また、『三月は深き紅の淵を』を探す旅。
列車の個室の中で、酒盛りをしながら(!)繰広げられる2人の、
作者が誰かという推理合戦の面白さ。
推理って、そのどこかの段階で、ぽんっと何かを飛び越える瞬間が
大切なのかもしれません。
隆子に、そのジャンプのきっかけを与えてくれたものが、2人を
夜行列車に乗せたのです。
そして、旅路の果てに目にしたものは…。
隆子と朱音の掛け合いがスリリングで楽しい章でした。

第3章は、いったい、どこで『三月は深き紅の淵を』とつながるのか、
最後の最後まで謎でした(私の察しが悪いのだろうな〜)。
冒頭で起こる2人の少女の死。
彼女たちの周囲の人々の、その死への様々な思惑で話は進むのですが、
どこにも、『三月は深き紅の淵を』が見当たらないのです。
2人の死の謎。
そして、『三月は深き紅の淵を』の謎。
2人の少女の関係に、目が離せませんでした。

そして、最後の章。
これだけは、私は、ちょっと馴染めませんでした。
こういう形式って苦手なのです。
語られる、とある学校の物語、それ自体は、その雰囲気は、私の好みです。
けれど、1番の山場で、いろんなパーツがここに収束してくるはずの、
この章にはまれなかったのは、残念でなりません。
もちろん、この最後の章こそ全てのカナメであるのでしょうが、
私にとっては、3章までを連作短編にしてくれた方がよかったかも。

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紙の本凍える牙

2002/06/07 00:20

男社会の中で闘う女刑事貴子が見た真実

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なんて衝撃的なスタート。
深夜のファミリー・レストラン。
突然、燃え上がる男の体。
さらに、男の体に残されていた野犬の噛み傷。
けれども、それは、単なる始り。
よく似た噛み傷で致命傷を負った殺人事件が連続するなんて。
いったい、誰が、なんのために、犬にそんなことをさせるのか?
被害者の間のつながりは?

事件を追うのは、音道貴子。
バツイチの女性刑事。
物語のもう1つの核は、「警察」という男社会の中での彼女の孤独な闘い。
女であるというだけで受ける不当な扱い。
ましてや、それが、行動を共にする相棒の刑事からのものだとしたら、
なんて救われない。
なにしろ、その滝沢ときたら、貴子とうまくやっていこうという意識が
まるでないんですから。女と組まされたことを、貧乏籤としか思わず、
相手を思いやることをしない。
普通なら、何日も、何日も行動をともにしていれば、多少なりとも打ち解け、
「女」としてでなく、「音道貴子」として見るようになるものでしょうに。
一緒に歩いても、まるで無視。
聞き込みで、自分と同類の男の元へ行けば、本人を目の前にして貴子を
侮辱する。
いったい、あんた、何様のつもりだよ。
何度、心の中で叫んだことか。
分かるから、それが、決してフィクションではなく、警察だけであることでなく、
まだまだ、社会は「そう」であることが。
この作品が書かれたのは、5年前。
でも、いったい、どれだけの進歩を、この社会は遂げたのでしょうか。
男と女の「絶対的」な違いなんて、結局のところ、妊娠・出産について
以外にあるのでしょうか。「男の大部分」がそうであり、「女の大部分」が
そうであることは、「男と女の違い」なんかではないでしょうに。

おまけに、そういう差別をもたらすのが、異性だけでなく、同性からも
だとしたら、いっそう、やりきれない。
ましてや、それが、肉親からだとしたら。

でも、それでも、そんな社会で、なんとか上手にやっていこうと、
貴子は奮闘します。
どんなにがんばっても、誰からも、認めてはもらえないけれど。
自分だけは、自分のがんばりを知っているから。

事件の裏にあるのは、哀しい思い。
でも、だとしても、忠実な犬をそんなことに使うなんて、許せません。
犬は、ただ、大切な人間の命令に従うだけ。
彼は、ヒトの持つ善悪の観念とは別の次元で生きているから。
それを、利用するなんて。
信頼する人間を見る犬の瞳。
真っ直ぐで、曇のない瞳。
あんな瞳で自分を見詰めるものを、どうして!
逃げて!
逃げ切って!
そんな鎖から、自らを解き放って!
祈るような思い。

私は、お前の瞳を忘れない。

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紙の本悪魔の涙

2002/04/27 06:23

大晦日のワシントンの地下鉄で起った銃の乱射事件。それは、続く戦慄の事件の予告編。やがて市長に届いた脅迫状。市民の身代金はなんと2000万ドル!予告された無差別殺人を止める方法はあるのか?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

手がかりは、たった1枚の脅迫状。
その脅迫状から犯人像を割り出すために出動を要請されたのが
パーカー。
でも、彼にとって、それは不本意なことでした。
それによって、離婚した前妻に、子供の養育権を奪われることを
恐れているから。
とはいうものの、事件を引き受けてからのパーカーのお手並みは、
本当に素晴らしいです。
言葉遣い、句読点の打ち方。
そんな些細なことから犯人像を浮かび上がらせていきます。
これは、ちょこっとだけ登場したリンカーン・ライムの仕事の
文書版ですね。
その分析能力は、ライムに勝るとも劣らない。
こういう頭の切れる専門家って、惚れ惚れします。
しかも、仕事一筋でなく、(彼の普段の仕事は、もっと平和な文書の鑑定)
子供をこよなく大事にしているところが、また魅力の1つ。
でも、それは、逆に言うと、弱点ともなりうるのですが…

もう1人の中心的人物が、ルーカス。
FBIの支局長代理。
過去に傷を持つ女性。
でも、そのプロ意識はさすが。
だてに支局長代理をやっていません。
なかなか頭も切れて、パーカーの分析を信頼しています。

4時間ごとに繰り返される無差別殺人。
それを食い止めなければという焦燥。
それを押さえて証拠を分析し、殺人鬼の次なる標的を探し当てようと必死の捜査側。
タイムリミットが切られた中、限られた情報だけを頼りに前に進むのって、
限りなくスリリング。

殺人鬼<ディガー>は、悲しい存在です。
精神を病み、指示を出す男からの、実行中止の指示がないがために
ひたすら、指示通りに殺人を繰り返すなんて。
殺人に対して罪の意識のまるで持てないこういう男を利用するなんて、
まったく、ひどい男もいたものです。

捜査に直接は加わらないものの、ものすごく気に入ったのがケネディ市長。
最初は、保身のために捜査に口をはさもうとする、まぁ、よくあるエライさんだと
思っていました。でも、違っていました。
彼が、市長であり続けたいと願うその理由。
そのために取った行動の中には、ばかげたものもありました。
でも、なかなか伝わってこない捜査の情報を元に動いたにしては、
なかなかたいしたものです。
それに、妻クレアとの関係もとても素敵。これは、ポイント高いです。

それから、素晴らしいケイジ捜査官。
こういう男は、絶対に敵にはまわしたくないですね(笑)

終盤、突如訪れる殺人鬼<ディガー>との対決。
大晦日の花火の下、激しい戦い。
衝撃のクライマックス。
信じられませんでした。まさか、そんな。

要所要所で表れる「3羽のタカ」のクイズが、なんとも象徴的でした。

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紙の本ホワイトグッドバイ

2004/03/16 21:56

雪は降りしきる。全ての想いを覆い隠すように。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大好きな、「天国の本屋」シリーズの作者の作品
ということで、同じような雰囲気を期待して読み始めたので
前半部分の展開には、ちょっとびっくり。

雪に埋もれた街
はるばる訪れた男
彼は、世界的に有名なテロリスト
彼を追うのは、ユーロポールと、そして、もっと恐ろしい組織

白い、白い世界
どこまでも白い世界
全てを覆い尽くして、なお降り続く雪は
この物語に、なんてふさわしい

12年ぶりに、その街に舞い降りた男の心情
12年前、ただ1度、訪れた街を、選んだ彼の想い

追い続ける捜査官、一瀬の想い

響き渡る銃声も
醜い人の罪さえも
降りしきる雪は包み込んでいくから

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紙の本静寂の叫び 上

2002/06/30 08:51

聾学校の教師と生徒たちを人質にたてこもる凶悪犯たち。内からと外からの二手にわたる息詰まる交渉。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

彼らの乗ったバスが3人の凶悪犯に乗っ取られる。
閉鎖された工場に立てこもった彼らを投降させようと交渉するのは、FBIの
交渉のプロ。

そのポターと、立てこもり犯のリーダー、ハンディとの、息詰るような駆け引き。
相手の反応を読み、心理状態を分析し、要求を、あるものは飲み、あるものは
はねつける。そうやって、少しずつ人質を解放させようと必死の心理戦。

とにかく、もう、このハンディって男が、凶悪この上なし。
自分の思うようにならないというだけで、人を殺すことをなんとも思わない。
むしろ、殺されるようなことをするのが悪い、殺されて当たり前と思っている。
話しているうちに、ハンディのペースに巻き込まれそうになってしまうポター。

おまけに、なんとかスクープをものにしたいマスコミはやってくる。
地元の警察や、他の司法組織との軋轢。
何かと邪魔が入り、ハンディとの交渉だけにポターは専念できません。
おかげで、せっかく踏み固めた地歩を失ってしまったり…。

一筋縄でいかないハンディ相手に、必死で戦うポターの足を、
なんでひっぱるんだよ〜、と歯噛みしたい気分。
人質の命や、事件の解決よりも、自分の立場や面子を気にする奴らなんて、
ほんと、ろくでもない!

そうやって、工場の外で闘いが繰り広げられる一方、もちろんのこと、中でも
静かな闘いが繰り広げられています。
自分自身もポターや仲間たちに怯えながらも、生徒をなんとかして逃がそうと
頭を回転させる教育実習生のメラニー。
彼女は、ドゥ・レペ神父の存在を心の支えに、必死です。
聾者になってからの様々なできごと、葛藤を抱えながらも、闘います。
そんなとき、聞こえないということは、どれほど不安になることか…。
なのに、彼女は、やってのけます。
小さなものかもしれませんが、ハンディ相手にポイントを稼いだのです。
その強さ。その美しさ。
ポターは、ずっと、メラニーの存在を意識しながらハンディと交渉を
続けていきます。ほんの一瞬垣間見るだけで、その魂が彼に届いたかのように。

やがて、事態は急展開を見せます。
まさかと思うようなことが。
本当に、予想だにしませんでした。
まさか、そんな!
やられました。脱帽です。

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死の蔵書

2002/06/24 01:00

希少価値のある本が死を招いてしまう…。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

私には、古本を投機的に見る習慣はないので、アメリカで、あんなふうに、
古本に、ここまで高い値がつくというのは、驚きでした。
そう、それは、殺人の動機になるほど。
希少価値のある本の、ましてや初版で美品だと、ものすごい高価なのですね。

となると、そういう本を、できるだけ安価に発掘して高く売るという商売が
成り立つのも納得です。

そして、その事件の捜査に当るのが、クリフ。
彼と、恋人のキャロルとの関係は、微妙なバランスで、事件とは別の、この
2人の関係もとても気がかりでした。特に、2人の関係を他人にひた隠しに
されることで、彼女がとても傷付いているだろうことに、心が痛みました。

そして、宿命のライバルというか、天敵のジャッキー・ニュートン。
クリフの一人称で書かれているせいもあるでしょうが、この男、ものすごく
凶悪で、しかも、やりかたがなんとも巧妙。
いやな男です。

そういう、仕事とも私生活ともつかない関係をベースに、クリフは、捜査を
進めるうちに、本に関わるいろいろな人と出会います。
ほとんどが、価値ある、そしてうずもれた古本を発掘してはぼろ儲けをたくらむ
商売人なんですが、その、本に対する知識は、さすが、半端じゃないです。
もちろん、それが商売なんですけれども、その中にも、「本」に対する愛情が
感じられて、いい感じでした。

そして、ちょっと胸にしみる事件の真相。
これも、やはり「本が呼んだ殺人」なのでしょうか…。
いいえ、本にはなんの罪もないのですよね。
すべては、本が、本ではなく、他のものに見えてしまう人間が
いるせいなのでしょう。

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紙の本淋しい狩人

2002/06/20 23:41

老人と少年のコンビが活き活きと活躍する宮部ワールドの本領発揮

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

宮部みゆきは、本当にキャラがみんな活き活きしていて好き。
小さな古本屋の主イワさんこと岩永幸吉氏と、その孫高校生の稔。
で、この稔、なんだか、高校生なのに、なんとなく、10歳ぐらいみたいな印象。
なんだか、やんちゃなところが、そんな感じに見せているのですね。
それが、宮部みゆきの作品の魅力なのですよね。
おじいちゃん(イワさん)を、いいように冷やかしては、ひっぱたかれる前に
ひょっと逃げてしまうところなんて、ほんと、きかないぼんずそのもの(笑)
で、それを、この2人が実に楽しそうにやっているのがまた素敵。

それに、あんまり出てきませんが、稔の両親(イワさんの息子とそのお嫁さん)の
スタンスもすごくいいんですよね。
学校の勉強の他にも、大事なことがいっぱいあることを分かっていて、
だから、おじいちゃんのところで、息子が店番の手伝いをするのを見守っている。
それから、たとえば、書初め。
学校で出た宿題に、PTAから反対の嵐があったときの、この2人のせりふ。
そして、「お茶漬け」
これには大爆笑(^O^)
いいわぁ、こういうお母さんに育てられたから、
稔も、そんなにいい子に育ったのだわ。

そんな古本屋「田辺書店」にやってくる様々な事件たち。
殺伐としていたり、どこかほのぼのしていたり。
メインのエピソードではないのですが、冒頭のとある「本」のお話。
その男性には悪いのですが、笑っちゃいました。

1番、そんな田辺書店にふさわしくないのは、最後の「寂しい狩人」だと思います。
あまりにもあんまりな犯人像は、いかにも現代的といってしまえばそれまで。
でも、何か、彼らが出会う事件にはそういうのはあってほしくない気がしてしまって。

ほのぼの路線では、「黙って逝った」なんて、なかなか好きです。
ついにやりとしてしまって。

どの作品も、目を見張るようなトリックがあるわけではありません。
でも、それ以上に気をそらさないストーリー・テリングがあるのですね。
人の心の機微を知っているイワさんだからこそ気づくあれやこれや。
そして、年齢的に知識の少ない目新しいところを孫の稔が補って行く。
すごくいいコンビ。

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紙の本殺人症候群

2002/06/20 23:37

エンタテイメントの中に刑罰とは?の深いテーマを織り込んだ秀作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「症候群」シリーズの3作目。
今回の、環チームのミッションは、一見、関連のなさそうな、
事故として処理された事件の関連性の調査。
共通点は1つ。
それらの事件の被害者が、「未成年」であり、かつて、
殺人を犯しながら、未成年であるがゆえに軽微な懲罰で
社会に復帰していること。

刑罰って、難しいですね。
いったん、罪を犯したら、2度と社会に復帰させたくないなんて、
思いません。でも、でも、未成年であるという一点のみで、
ろくに罪をつぐなわず、本当に更生したかもあまり問題に
されないのでは、被害者の遺族の気持ちはどうなるのでしょう。
個人的な復讐を認めていては、社会の秩序は守られない。
だから、それを禁じる一方で、公的な刑罰というものが存在している。
刑罰には、そういう趣旨だって含まれているはず。
なのに、凶悪犯罪の加害者が、未成年であるというだけで、
たかだか1年ぐらいの少年院で社会に出てきて、
以前と同じような、それどころか、もっと凶悪な行動を
続けているとしたら?
それを知ってしまったら、被害者の遺族は、どれほどやりきれない、
情けない思いをすることか。
ましてや、未成年ということで、加害者は氏名さえ公表されないのに、
被害者の名前は公表され、容赦ない世間の目にさらされる。
なぜ、そんなことが許されるのでしょう。

だからと言って、そういう加害者たちを、自らの手で処刑する、
私刑が許されるとは、言い切れません。
そういう行動に出てしまう、被害者側の気持ちも分かります。
だけど、「こいつは生きる価値がないから殺してやる」
という発想で誰かを殺すなら、その判断は、誰がするのでしょう。
その判断をした時から、その人は、正義ではなくなってしまう。
だんだん、「殺していい」という判断を簡単に下すように
なってしまう。恐ろしいこと。

だから、そんな思いをする被害者が、少しでもなくなるように、
刑の応報性は、もっと、厳格であるべきで、少年だからという
一点でもってのみ、犯罪者を甘やかすようなことは
なくなってほしい。

この作品に登場する、もう1人の殺人者。
和子。彼女の殺人は、息子の生命を救うため。
息子に心臓移植を受けさせるため、
ドナーになりそうな「標的」を手にかける。
母の愛。
でも、ゆがんでる。
恐ろしく、ゆがんでる。
分かるけれど、分かるけれど…、
悲しい、とても悲しい。

彼女の職業が看護婦で、仕事においては、
限りない愛情を患者に注いでいるから、
なおのこと。

未成年ゆえに、刑を免れた連中を、「処理」する職業殺人者。
息子に心臓移植を受けさせるために殺人を繰り返す和子。

職業殺人者を追う環チーム。
和子の起こした事故に見せ掛けた事件を追う刑事。
違う事件を追う彼らの道が、どう交差するのか?

今回に限り、環チームから抜けた倉持の真意は?
やがて明らかになる、彼の悲しい過去。
『失踪症候群』でも出てきた坊やちゃんが、また登場したのは
なんとなく嬉しかったかも。

職業殺人者となった、響子と渉の心も悲しい。
彼らの心が救われることを願ったのに。

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紙の本告別 改版

2002/06/07 00:18

避けられない別れ。その切ない風景を切り取った7作品

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

どんなに親しくても、大切に思っていても、別れというのは、
いろんな形でやってきます。
優しい別れ、残酷な別れ。
理由も、それぞれ。
そんな切なさを漂わす7つの風景。

「自習時間」
優等生で、苦手な相手だった同級生が見せてくれたもの。
ラストは、なんとも切なくて、胸が痛みました。
人の心って…。

「優しい札入れ」
不思議な札入れのもたらしたものは…。
いくら使ってもお金が増えている札入れの秘密。
退職していった女子社員の思いのこもった札入れ。
その秘密、知らなければよかったのかもしれません。
秘すればこそ、という真実もあるのですね。
なんて皮肉。

「愛しい友へ…」
工場の閉鎖で引き裂かれたクラスメイトたち。
これは、きっと、工業だけでなく、炭鉱の町でも、
実際に幾度となく繰返されたこと…。
あまりにも純粋な人の心は、奇跡をさえ起すのですね。
だけど、その結末はあまりにも痛い。

「雨雲」
雨を降らせたいと願うと、降らせることができる不思議な能力を持つ男。
なぜ、張り切って受けに行ったはずの昇進試験で、そんなことが起こったのか?
人は、自分の本心を、気付くことを拒むことだってあるんですよね。
それは、無意識に抑圧されるが故に強く、とんでもない爆発を起したりするもの。
出産を間近に控えた妻は、どうなるのか?
それにしても、部下の心配よりも、自分の出世の方が大事なことを、
隠そうともしない上司だなんて。
まったく、出世至上主義なんて、ろくなものじゃないですね。
人の心というのは、弱いもの。
でも、それを乗り越える強さをも持っているのが人間なのだと信じたいですね。

「敗北者」
いったい、このゲームで、誰が敗者で、誰が勝者なのでしょう。
いいえ、そもそも、「勝者」なんて、存在するのでしょうか。
何かを守ろうと必死になるゆえに、本当に大事なことを見失うこともある。
だけど、それを、誰に責めることができるのでしょう。

「灰色の少女」
なんともぞっとしないお話。
執念というのは、全てを超越するのだと言われたみたいで…。
怖い。

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紙の本ある愛の詩

2004/03/16 22:37

美しい海、心、歌声、それが心を癒していく

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友人に誘われて行った小笠原の島で、
イルカと交流する力を持った青年拓海と出会った流香。
出会いのシーン、月の光を浴びた砂浜で、
1人流香が歌うシーンの幻想的な美しさ。
拓海にしか心を許さないイルカのテティスさえ
聴き入るその歌声。

無邪気に流香に近寄り、あっけらかんと「好きだ」と
告げる拓海。
なんて無邪気に微笑むヒトなのでしょう。
翳りなんて、かけらもないような太陽の微笑み。

天使の歌声を持ちながら、哀しい闇を心に秘めた流香。
彼女には、拓海の微笑が、どれほどまぶしく見えたことか。
それは、自分の気持ちに封をして、気付かないふりを
してしまうほどに。

そんな2人を見守る拓海の祖父留吉の持つ包容力。
幼くして両親を失くした拓海をテティスに引き合わせ、
天衣無縫な拓海の成長を、たわめることなく
見守っていた留吉の大きさ。

海の星
タコの木のブレスレット
美しいアイテムたち。
美しい島に似つかわしいものたち。

旅行を終え、東京に戻った流香を追って上京した拓海。
流香の心の中の闇に気付き、拓海のとった行動。
一時的に、流香の誤解を招き、キツイ言葉を
投げつけられいようとも、流香のためと信じて
行動する拓海の純粋な心。

素直になれない流香が、心にもなく投げつけてしまう
言葉を、受け止める拓海。
都会のブルードルフィンを見詰めながら、
ただ、流香のためを想う拓海の心

想いよ、流香に届けと、祈らずにいられない。

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紙の本黄昏の百合の骨

2004/03/16 21:58

謎と疑惑に満ちた恩田ワールドを堪能

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不思議な雰囲気の漂う恩田ワールド
思いっきり堪能できました。

近所の人から<魔女の家>と呼ばれる古い洋館
屋敷の主である祖母がなくなり、その遺言によって
その屋敷に暮らすことになった理瀬。

彼女が、半年間そこで暮らすことを言い残した
祖母の真意はどこにあるのか。

同居するのは、もとからそこに暮らしていた理瀬の
叔母に当たる梨耶子、梨南子の2人。
彼女たちにすれば、母が、いきなり、その家に
理瀬を半年以上暮らさせなければいけないと
遺言を残すなんて、面白いわけがなくて。
理瀬がなんのためにやってきたのか、
何を探しているのか、と疑心暗鬼。
きっと、何か財宝が隠されているのではと
あれこれ探りをいれてくる。

姉妹でありながら、まさに正反対の2人。
激情型の梨耶子。
穏やかな梨南子。
一見、何かやらかしそうなのは、梨耶子。
だけど、物静かな梨南子の方が、むしろ、
何を考えているのか分からない穏やかな怖さもある。
少年が、理瀬に告げた言葉を聞いてからはなおのこと。

心臓が弱く、家にこもりがちな慎二。
その分、観察者としての<目>を育む機会には
恵まれているはず。
でも、病気がちであるがゆえの思い込み、
そんなものは、含まれていない?

祖母の1周期のために訪れた亘と稔
爽やかで、明るくて、陽性な亘
だからこそ、言えないことも、ある。
守りたいから。大切だから。
理瀬の年齢で、すでに、そんなもの想いを
知らずにいられないなんて、何か切ない。
無邪気に遊びまわる時代を、彼女は知っているのかしら、と。

そんな中、事件は起こってしまう。
梨耶子を襲った恐るべき事件。
憎らしい人ではあったけれど、
憎めないところもあったのに。

そして、理瀬の友人朋子に思いを寄せる少年も…

誰もが、何か暗い秘密を隠し持っているかのような世界
黄昏の…

その屋敷の秘めた暗い秘密
それが、そこに住む人を撓めてしまうのか…。
そこに住んだ人が、その屋敷をゆがめてしまったのか。
むせるような百合の香りの中。

理瀬が進む世界を、これからも、見詰めて行きたい。
彼女のこれからが、とても気がかりで。

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紙の本今日を忘れた明日の僕へ

2002/07/08 23:54

記憶が蓄積できず、自らの拠って立つところを失った男。彼は事件の犯人なのか?

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交通事故のため、記憶を蓄積できなくなってしまった<僕>
うたたねであっても、眠ってしまえば、それ以前の記憶が
まったくなくなってしまう。
頼りは、自分自身がことこまかくつけている日記。
たとえ、それを自分が書いたことすら覚えていなくても。
なんて、なんて不安定な心理状態に置かれるのでしょう。
自分自身が、昨日の続きの自分でないということ。
拠って立つ記憶がないということ。

恐ろしく、残酷なこと。
それを、毎朝目覚める度に<新しく>おしえられるなんて。
そして、毎朝、毎朝、それを夫に告げなければならないなんて。
妻、奈々美の繰り返す地獄。
目覚める夫は、毎日新しい夫。
目覚める自分は、昨日の続きの自分。

自分自身のふがいなさ、妻への申し訳なさ。
追い討ちをかけるように接近してくる由嘉里。
雑誌の取材だというけれど、それだけではなさそうな彼女の
本当の目的は、どこにあるのか?

記憶がないなんて、それだけでも不安なのに、
時折、記憶をかすめる恐ろしい映像。
その意味は?
親友の死、女子高生の自殺。
それらは、なんの関係があるのか?
自分が何をしたのか、しなかったのか。
それが分からないなんて、恐ろしい。

でも、それを乗り越えるためには、
自身で真実を見つけるしかないのです。
ハンデを背負いながら、動き始めた<僕>

やがて辿り着いた真実は、何か悲しい…

それにしても、それが、日記から推理されうるとは。
うまく騙されてしまいました。
黒田氏の騙しのテクニックは天下一品。

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紙の本あかんべえ

2002/07/03 00:07

不思議な力を持つ少女おりんが出会ったおばけさんたち。彼らの過去にあるものは?

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宮部みゆきの世界って、どうしてこんなに暖かいのでしょう。
幽霊がたくさん出てくる話なのに、なんだかほんわり優しくて。

料理屋「ふね屋」の1人娘おりん。
両親に、祖父母、店で働く人たちに囲まれて、
何不自由なく育った少女。
そんなおりんが、命に関わる大病の後、身につけた不思議な力。
それは、この世の者でない存在が見えるようになったこと。

素晴らしいのは、おりんが、幽霊を見て、
きゃーきゃー騒ぎ立てるだけの少女でなかったこと。
そんなおりんだからこそ、亡者たちも、見えるように
なったのかもしれませんが。

実に様々な亡者たちが、ふね屋に現れます。
色男優男な玄之介、なんとも艶っぽいおみつ。
おどろおどろなざんばら髪。
あかんべえの女の子。

彼らが、いったい、なにを思い残してふね屋に取り付いているのか、
それが分かれば成仏できるでしょうに。
だからと言って、調査に乗り出そうなんて、
たった7歳のなのに、おりんってば、なんて、まぁ。

でも、おりんにとって、もっと、切実な問題。
それは、幽霊騒動でふね屋の存続が危ぶまれていること。
それを支える、おりんにとっては祖父にあたる七兵衛。
このじいちゃん、なかなかどうして、たいした傑物。
孤児だったところを、拾われて仕込まれただけあって、
肝も据わっているし、妻おさきとのコンビネーション。
幽霊で評判になったなら、それを逆手にとってやれ、
なんて、なかなか言えることじゃないのでは。

生きている人も、そうでない人(?)も、
それぞれに、いろんな事情を抱えています。
だから、ある人にはおみつさんだけが見えて、
ある人にはざんばら髪だけが見えるのだという
その理由付けが、やけに説得力を持ってきます。

そして、過去の事件が見えてくるにつれ、
いっそう、その条件付けがいきてくる。

生きていく以上、出会いと分かれとからは、
誰だって、逃げることはできません。
おりんにとって、それは、初めて経験する
親しい人との別れでしょう。
でも、おりんなら、決して、悲しんでばかり
いるはずがありません。
彼女自身がしっかり前を見る力を持っている上に、
あんなに素敵な家族に囲まれているのですから。

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紙の本地下街の雨

2002/07/01 20:49

優しさあふれる宮部ワールド

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なんて優しいお話。
特に、表題作の「地下街の雨」
婚約者に裏切られ、仕事まで失った麻子。
失意のまま、ウェイトレスのアルバイトをしていた彼女の前に現れた、
似たような境遇にある曜子と知合ってから、事態は動き始めたのです。
そんな中で交わされる「地下街の雨」についての会話は、すごくセンスが
あって好きなシーンです。
それと、地下街の喫茶店は、外の風景が見えるわけでないのに、やっぱり
窓際の席に座ってしまうのって、なんだか、分かる気がするのです。
彼女が偶然見掛けた見覚えのあるネクタイ。
するべき人でない人がしているそのネクタイのその謎とは?
関わるべきでない人と関わってしまい、傷ついた麻子を待っていた
素敵な出会い。
心がほわほわ温かくなる素敵なお話です。
人生って、自分に見えるところだけではない。
自分と関わっている人が、自分に見えないところでも、生きているのだということ。
それが、事柄を、自分に見えないところで動かす事だって、よくあること。
忘れがちなことだけれど。
大切なこと。

それから、ついつい静かにガッツポーズの出そうなのが、「勝ち逃げ」。
亡くなった勝子の葬式で浮かび上がってくる誰もしらなかった勝子の過去。
すごくいやな、はっきり言って最低な夫婦も出てきます。
でも、勝子が、最後まで人には言わなかった過去。
そこに隠された勝子の深い思い。
そして、それを知ったときの、彼女の姉妹と姪っ子の反応。
これが、本当に温かい。
それだけでも、実際には登場しない勝子の人柄が忍ばれます。
自分自身が温かくなければ、周りの人間が彼女にそういう感情を持ったりは
しないはずなのですから。

ちょっとぞくっとする後味を残すのが、「決してみえない」と「不文律」
そして「混線」。
日常の陰に潜む恐怖。
だって、嘘でしょう? そんな…。
そうつぶやきたくなるような落とし穴の数々。
一見、なんでもなさそうにそこにあるから怖いのです。

特に、ぞっとするのが「ムクロバラ」。
デカ長のもとに通いつめる橋場の中に巣食うムクロバラの正体とは?
彼が言う「ムクロバラの事件」には、何か法則があるのか?
彼が書いたその似顔絵は、だって…。
ああ、そんなことがあるのでしょうか。
でも、それでも、ほんのささやかな救いがあれば、人は生きていけるはず。
きっと!

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