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  3. ほいほい0080さんのレビュー一覧

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    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    中野 ジェームズ修一 (講師),日本放送協会 (編集),NHK出版 (編集)

    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

ほいほい0080さんのレビュー一覧

投稿者:ほいほい0080

10 件中 1 件~ 10 件を表示

日本の政策にその意見は生かされてはいないようであるが、予想の当たる中東専門家による定評ある解説書

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 2003年のイラク戦争前には、何人もの(自称)専門家が登場し、状況の予測を行った。岡崎久彦、田久保忠衞、志方俊之、佐々淳行、江畑謙介、森本敏、古森義久…といった有象無象の中東問題の素人の予測が外れるのは仕方が無い。しかし、イラク戦争に肯定的だった気鋭の若手池内 恵氏や慎重派ではあったが、カナン・マキヤみたいなお調子者に引っかかってしまった酒井啓子氏らの中東専門家も、米国がこんなに準備不足だったとは思わなかったという、素人からは、もっとしっかりしてくれよと言いたくなるような「言い訳」を語っている。結局、最も正確にイラク戦争後のイラクの混乱(2004年8月の時点)を予測していたのが、泥沼化を予測した本書の著者・高橋和夫放送大学助教授であった。
 自然科学や工学では「モデル」を「ある対象の動作や動作の結果を計算するためのエッセンス」といった意味で使う。自然科学や工学では数式で書かれることが多いが、自然言語で書かれることもある。そして、予測能力によってモデルは評価される。未来予測は非常に困難であり、最高のモデルの予測も全く信頼できないことも多いが、予測が外れるモデルよりは、当たるモデルの信頼性が高いのが普通である。
 高橋氏の解説の特徴として「分かりやすさ」がある。その「分かりやすさ」は、複雑な事情の単純化によるのだが、中東問題の半可通には必ずしも評判は良くはない。しかし、いたずらに多数の複雑な要素を考慮したモデルの予測能力が低いことは、科学技術の応用の現場では広く認識されている。さらに、複雑なモデルを用いるには、情報収集等に大きな時間がかかることが多く、急変する現実について行けないという弱点がある。高橋氏の提供してくれるモデルは、現実を予測するのに単純過ぎず、複雑過ぎずで、有用であるように思われる。
 そしてもう一点、高橋氏の得意技に、世間に広まっている言説が「神話」に過ぎないことを、「王様は裸だ!」的に、明らかにする論説がある。中東問題では、良く考えるとトンデモな言説が、主流メディアや著名な外交評論誌などで、大真面目に論じられることが多い。1991年の湾岸戦争の前には、イスラエルは、米国にとって、中東におけるソ連の影響力に対抗するための戦略的資産(Strategic Asset)であるという、イスラエル・ロビーの広めた「神話」を真に受けて、したり顔で語る中東/軍事専門家がいた。しかし、大衆の間に反イスラエル感情が蔓延している中東では、イスラエルに軍事支援を求めるような政権は、正当性を失い、存続できない。だからこそ、当時のブッシュ大統領(現ブッシュ大統領の父親)は、湾岸戦争当時、イスラエルにイラク攻撃を許さなかった。米国がイスラエルにつぎ込んだお金は、親米国家の保護に全く役に立たない無駄金だった。「イスラエル=戦略的資産」説のトンデモさを明らかにしたのが本書であった。
 最近でも、パレスチナ自治政府を含む中東の民主化が、イスラエル/パレスチナ和平に資するという「神話」が語られている。高橋氏は、1993年のオスロ合意以降の和平プロセスは極めてパレスチナ側に不利な条件で進められており、「アラファトは腐敗した独裁者だからこそ、オスロ合意を動かしてこられたのである。民主的に選ばれた代表ではとてもこんなことはできない。」と指摘している(“パレスチナ情勢とアメリカの現在”,大航海 No.44,2002年【特集】パレスチナ)。パレスチナ或いは中東諸国で民主的な選挙が行われれば、反米反イスラエル政権が誕生するだろう。1992年に出版された本書には、当然最近の話題が登場しない。しかし、入手し易く、安価な解説書として、トンデモ説に惑わされないための基本書として本書をお薦めしたい。

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滅びゆくアメリカ帝国

2007/01/21 13:26

驚くべき予測の正確さと原理原則に則った主張

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「本書は、・・・情報誌『インサイダー』に書き綴った記事の主なものを、ほぼ原型のまま日付順に収録し」たという序章「はじめに」の記述が本当であるとすれば、著者の高野氏による米国の「テロとの戦争」に関する状況予測は非常な正確さで的中している。岡崎久彦、”恥辱の殿堂”古森義久、中西輝政、江畑謙介、森本敏・・・・といった有象無象の中東問題の素人の無責任な放言とは完全に一線を画し、まともな中東専門家と比べても十分以上に正確である。日本の中東専門家の主流派は、イラク戦争により、世界中でテロの脅威が増大し、中東がさらなる混乱状態になることは予測していたものの、専門家としての慎重さからであろうが、アフガン戦争やイラク戦争が泥沼化することを明確に断言した専門家はそれほど多くはなかった。著者はアフガン戦争以前から、「テロとの戦い」の泥沼化を断言している。
 基本的には、米国が強いから、そちらに付くというイラク戦争を支持した機会主義的な素人達と違って、著者の論は、一般的な「民主主義」や「法治主義」の原則に従っており、また、情勢分析については、専ら、海外の専門家の発言や海外報道からの情報抽出によるものの、その大部分が、後の検証により正しいと判明するものが選択されている。
 なお、米国のマスメディアに、ネオコン批判が出るようになったことを持って、著者は、イラク戦争によるネオコンの退潮を伝えているが、残念ながら、ネオコンは、相変わらず猛威を振るっている。未だに、米国の主流マスメディアは、ネオコンの広報機関状態から抜け出せていない(2001年1月時点)。既に、アフガニスタンでは、復活したタリバンが南部を実効支配し、米軍を引き継いだNATO軍に相次いで犠牲者が出ている。イラクでは、既に内戦が始まっていると言える状態で、毎日のように数十から百数十人の民間人が犠牲となり、米国人兵士も例えば2006年12月中には109人が死亡している。このような状況下で、イランへの攻撃を支持する米国主流マスメディアと、またも騙されつつある米国民多数派の学習能力の低さには、評者も頭を抱えざるを得ない。
 著者によるイラク戦争の予測がこれだけ当たっているとなると、日本の将来に不安を覚えざるを得ないのは、米国が超大国から最大ではあるが「超」のつかない大国になるという著者の将来予測である。すなわち、米国が何でも思い通りに行動できる時代が終わり、他の大国との協調の時代が始まるという。評者はこの予測を正しいかどうか判断できるだけの知識を持っていないが、そのような時代が来るとしたら、日本は今どのような外交を行うべきだろうか? 現在の日本政府がそのような可能性を考慮して、外交政策を策定しているとは到底思えない。
 中西輝政、岡崎久彦らの中東問題の素人は現在の安部政権(2007年1月時点)のブレーンとして活躍しているそうである。素人達の脳天気な北朝鮮問題や今後の中国の大国化に対する対応策は、中国・韓国・ロシアに敵対し、ひたすら米国に追随しておくというものであったが、彼らが熱烈に支持したイラク戦争の結果、中国やロシアの国際的立場と経済状態は圧倒的に強化され、北朝鮮問題はほぼ、中国やロシアが決定権を握る情勢となった。素人は専門家の意見を伺うことによって、適切な判断を下すことができるが、残念ながら現政権のブレーンは、日本の中東専門家の主流派の意見を完全に無視して、楽観論を振りまいた無能者である。日本の将来に不安を覚えざるを得ない。

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格好のレバノン・中東情勢副読本−ハリーリ前首相暗殺の背景

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 2005年2月14日、レバノンのハリーリ前首相が暗殺された。イスラエルとパレスチナ自治政府の間で停戦が成立し、イラクでは初の「民主」選挙が行われたものの、パレスチナ各地で小規模な衝突は続いており、イラクにおいても、米軍への攻撃やシーア派市民へのテロは全く止まず、さらに、イランの核兵器開発疑惑を理由に、米国やイスラエルが攻撃をほのめかす等、依然、中東が混乱状態にあるさ中でのテロであった。
 日本を代表する中東研究機関に中東調査会が有り、そのホームページ(http://www.meij.or.jp/,2005年2月現在)には、「現地だより」(http://www.meij.or.jp/information/Stories/stories.htm)というページが有り、中東諸国に散った日本の外交官が、各国の事情を伝えている。当たり障りの無い文章が大部分を占めているが、その中で、質量ともに充実し、異彩を放っていたのが、駐レバノン特命全権大使であった著者のコラム(http://www.meij.or.jp/information/Stories/stories.htm#lebanon)である。本書は、そのコラムをまとめたものである。
 本書の著者である天木直人氏は、小泉政権の一方的なイラク戦争支持に反対し、外務省を辞職せざるを得なくなったキャリアとして注目され、外務省のどうしようも無い体質を告発した「さらば外務省!」(講談社)等の問題作を世に問うている。「さらば外務省!」では、どう見ても、一般読者の反感を買い、本の売り上げにはマイナスであろう、ノンキャリア職員への侮蔑的な発言を行うといったエキセントリックな一面を持つ著者ではあるが、親日国レバノンにおける日本の評判をさらに高め、親日派を増やすことに全力投球し、また、心からレバノンの平和と発展を願っていた燃える外交官であったことは、前述のコラムから伝わっていた。
 植民地時代に、欧州列強が勝手気ままに国境を定めたために、キリスト教やイスラーム教の各宗派が、一つの国民として融和せず、「モザイク国家」となってしまったレバノンは、1975年に内戦に突入した。1982年のイスラエルの侵攻を経て、1989年のターイフ合意まで内戦は続き、「遺棄された戦場の国」となってしまった。内戦ほど国を疲弊させるものは無い。中東のパリと呼ばれた時代のレバノンを復活させるために人生をかけたのが、ハリーリ前首相であった。ハリーリ前首相、ラフード大統領他、様々な立場のレバノンの政治家の人となりが、著者との交流における様々なエピソードにより(勿論、外交における交流には、裏表があるわけであるが)、活き活きと描写される。シラク大統領やマハティール前首相を始めとする親レバノンの政治家達の活躍も印象的である。シリアのレバノン支配、米国より「テロ組織」と指定される反イスラエル抵抗組織ヒズボラ、イスラエルの傍若無人な領空侵犯、パレスチナ難民問題……復興を阻む、抱えきれないほどの問題についても述べられる。本書は、中東に興味のある人には、必見の書であり、格好の中東情勢の副読本となっている。さらに、特異な例とは思われるが、現地外交官の活躍も知ることができる。
 いくつかの報道によれば、ハリーリ前首相の暗殺に、レバノン国民はかってない団結を見せ、内戦終結後もいすわるシリア軍の撤退を求めたそうである。しかし道は遠い。流血の事態を起こすことなく、シリア軍の撤退を勝ち取れるだろうか? 内戦の再発を防ぐことはできるか? ローマ法王が語ったとおり「十分に苦しんできた」レバノンの人々に、平和が訪れることを、著者と一緒に願わずにはいられない。

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紙の本ならずもの国家アメリカ

2004/07/23 16:38

宗教集団に牛耳られ孤立化する日本唯一最強の同盟国(中東問題の記述への評価)

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 極東の軍事情勢については、本書の記述は問題があるように思われたが、この書評では、本書の中東問題の記述部分についてだけ評価する。正直言って、本書のように真っ当に米国の中東政策の問題点を指摘した本が、それなりに米国で売れているらしいというのは驚きである。本書の指摘している問題は、米国やイスラエルの外では、多数の中東専門家が指摘していたことであったが、米国では、本書ような立場をとる専門家は主流メディアにはめったに登場しない。
 「第8章 主客逆転−二つの物語」は“この章で取り扱うテーマは、政治的に影響が大きい危険な領域なので、書き出すまでにはずいぶんと迷った。しかし、イスラエルと台湾の話題を避けて通るわけにはいかない。”(p.262)とはじまる。米国で、米国のイスラエル支持政策を批判的に論じた書籍を出版することについては、大きなリスクを伴う。イスラエルに批判的な本は、狂信的な宗教グループからの抗議メールやFAXの嵐を覚悟する必要が有り、有力なメディアでは、なかなか肯定的に取り上げてもらえない。しかし、「世界とアメリカを隔てる大きな相違」の原因は「イスラエルと台湾、そして宗教と圧力団体」にある。米国の国益を第一に考える「伝統的」保守主義者である著者は、リスクを知りつつも書かざるを得なかったのだろう。
 “イスラエルーパレスチナ問題の中心は、イスラエル支配下の土地が増え続けていることにある。1967年から続く入植の拡大が、その主な原因だ。”(p.288) 大統領選挙を控えた2004年、現ブッシュ大統領は、入植地を容認するという政策転換を宣言したが、それまでは米国は公式には反対していた。以前の現ブッシュ大統領による入植地建設の凍結の要請を、イスラエルのシャロン首相はにべもなく拒絶し、米国の援助によって入植地を拡大したが、ブッシュ大統領より「平和の人」との賞賛を受けた。本書は、米国の安全保障に深刻な悪影響を与えている入植地について、“どうして世界で最も力のある国の大統領が、はるかに小さな、しかもアメリカの資金と保護に全面的に依存している国から、凍結の約束をとりつけられないのか”(p.289)という疑問の答えをはっきり書いている。かなり以前から、世界中の中東専門家が指摘していたことであるが、「ユダヤ系アメリカ人の票」を基盤とし、議会を牛耳る親イスラエル圧力団体と(イエスの再臨のために、イスラエルの領土拡大を支援するという)「キリスト教原理主義グループ」の影響である。
 そしてもう一つ、目立たないように書いているが、著者は、米国のマスメディアの深刻な問題点を指摘している。“私はイスラエルが報復した時にアジアを旅していて、その映像を日本やシンガポール、マレーシア、インドネシアのテレビで見たが、CNNがいかにイスラエル寄りの報道をしていたことか。”“英『エコノミスト』誌の意見はこうだ。「イスラエルがパレスチナ人の民家をブルドーザーでなぎ倒している事実を、アメリカの新聞は報道しない。…」”(p.265) 世界の国々に多くの友人を持つ、米国では珍しい「国際人」である著者は、米国のマスメディアの問題点を認識し、勇気をもって書いた。
 さらに、著者は、現在の極端なイスラエル右派政権支持を改め、紛争の解決に注力すること、双方の過激主義者に拒否権を与えないために、すべての暴力の終結を条件とすべきでないことを提言した。しかし、残念ながら、本書の指摘が顧みられることはなく、イスラエルの“行き着くところは必然的に一種の民族浄化か、南アフリカ式のアパルトヘイト”(p.299)というのが現状である。日本の唯一最強の同盟国が、宗教グループに牛耳られて、国際的に孤立していく。本書は、米国政治の問題点を理解するために必見の一冊である。

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現在の重要なトピックが登場しないが、パレスチナ問題の解決を願う研究者による学問的に誠実な解説書

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 日本を代表する中東問題の研究者・立山良司防衛大学校教授による、出版当時としては、イスラエル、パレスチナ両方の主張をバランス良く載せた優れた解説書であった。しかし如何せん1989年の出版であり、記述がかなり古くなってしまっている。本書だけでは、現在のイスラエル・パレスチナ問題の状況を知るのは困難である。1989年の出版であるから、1991年の湾岸戦争とその影響、オスロ合意とその破綻、第二次インティファーダの発生とシャロン政権成立による泥沼の状況等、現在の重要なトピックが登場しない。
 バランス良く対立する両者の主張を載せたという本書の特色から、現在では、不適切になってしまう記述もある。例えば、パレスチナ難民の発生原因については、当時は必ずしも確定していなかったため、イスラエル軍によって追放されたというパレスチナ側の主張とパレスチナ人が自発的に立ち去ったというイスラエル側の主張とが並記されている。しかし、現在では、この問題は学問的にはほぼ決着がつきつつある。大多数のパレスチナ難民が直接的・間接的なイスラエル軍の攻撃により追放されたというのが主流である(例えば,Ritchie Ovendale, The Origins of the Arab-Israeli Wars (Origins of Modern Wars), Addison-Wesley; ISBN: 0582368952; 3rd Edition (1999/09/30))。これはイスラエル側の軍事資料や諜報活動の資料からもほぼ立証されたといえる段階にある(Benny Morris, The Birth of the Palestinian Refugee Problem Revisited (Cambridge Middle East Studies), Cambridge Univ. Press; ISBN: 0521009677 ; 2nd Edition (2004/01/31)) 。
 以上のような問題にもかかわらず、パレスチナ問題の解決を願う研究者が、当時の知見により学問的に誠実に記述した解説書として、お勧めしたい。

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イスラエル人多数派の脳内現実

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「イスラエルの和平派は、なんと・・・」という調子で「和平派」を批判する著者は、イスラエル人多数派の意識を記述することに成功している。日本語で読める貴重なイスラエル体験記である。ただし、著者が描いているのは、イスラエル人多数派の「脳内現実」であって、それは現実とは必ずしも一致しない。
 本書で、著者が痛切に訴えるのが、パレスチナの子供を射撃するイスラエル兵の心情の理解である。イスラエル兵が子供に実弾射撃を行っているとは思えないから、ゴム弾射撃を指しているのであろう。実弾をゴムで覆ったものであるが、殺傷能力もあり、回復不能の障碍を与えることも多い。銃撃される子供達に言及すること無く、イスラエル兵を理解してくれと訴える著者は、放水のように、子供を殺すことの無い暴動鎮圧方法があるという事実を思い浮かべることができない。イスラエル人多数派が和平を諦めた理由として、パレスチナ人によるイスラエル兵2人のリンチ殺害事件が繰り返し登場するが、「2000年9月28日、リクードのシャロン党首は、アル・アクサ寺院のあるエルサレムの神殿の丘を訪れるという挑発に出た。・・・続く3日の間に、武装攻撃を受けたわけでもないイスラエル軍は、30人を殺し、500人を負傷させた。」(ル・モンド・ディプロマティーク2001年9月号の記事)こと、事件の前に、イスラエル軍が12歳の少年を殺害した映像が繰り返し放送されていたこと(著者は、映像をアラブ人の陰謀と確信しているかもしれないが)等、イスラエルで繰り返し放送されたパレスチナ人群衆が殺害に「歓喜」する映像の背景は、本書には登場しない。著者が意図的に隠しているわけでは無く、知らないか、知っていても頭に浮かばない精神状態にあるのであろう。
 アラブ世界の教育、社会環境、報道が、プロパガンダに満ち、イスラエルへの敵意を煽るものであることは、世界中の人が認識しているが、イスラエルの教育、社会環境や報道も同レベルであることをイスラエル人多数派は認識していない。そうして作られる「脳内現実」が現実となり、自国の犯している戦争犯罪は認識から消えてしまう。
 そんな状況は認識していたが、評者が驚かされたのは、著者が熱心なキリスト教徒だったことだ。7章の「2000年後の帰還」という章題が語るように、著者はイスラエルへの移民に肯定的である。1948年のイスラエル建国当時、パレスチナ人の約2割が、先祖代々信仰を守ってきたキリスト教徒であった。イスラエル建国時に、75万人前後のパレスチナ難民が発生したが、おそらく数万人規模のキリスト教徒は、全く非が無かったにもかかわらず、イスラエル軍に銃で追われたり、至る所で行われたパレスチナ人大量虐殺の報道や噂を聞いて、難民となった。彼らは故郷への帰還を熱望したが、イスラエル政府により禁じられ、再び故郷を見ることなく異郷にて生涯を終えつつある。著者の住む土地も、かなりの確率で、パレスチナ人所有の土地であり、キリスト教徒の土地だった可能性もある。残念なことであるが、著者の信じるイエス様は、そういったことには無頓着でいらっしゃるらしい。

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紙の本パレスチナ紛争史

2004/06/11 00:57

「憎しみの連鎖のなぜ」にまったく答えられない「精緻な」レポート

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 近年のパレスチナ問題の展開が分かる解説書である。しかし10ページの「出来る限り偏らぬよう心がけた」と言うのは宣伝だろう。パレスチナ問題の発生についてアラブ側の事情はほとんど紹介されていない。アラブ側の主張が正しいとは限らないが、根拠も示さず無視しては解説にはならないし、「憎しみの連鎖のなぜ」に答えられるわけが無い。マスメディアが好んで占領地のパレスチナ住民の声を取り上げる結果、パレスチナ側に偏っているという著者の批判は、報道の存在意義の自己否定である。軍占領下の人々の声を伝えることは、報道の第一級の使命である。それは、ナチス占領下のユダヤ人が心の底から渇望して、得られなかったものだ。読売新聞の高木規矩郎氏他、日本のマスメディアの中東特派員は、優れた中東専門家・解説者を輩出して来たのだが…
 本書の立場を示しているのが、巻末の参考文献であろう。少数の例外を除き、イスラエル(特に、軍)や米国の中東政策を支持する立場(例えば「イラクの大量破壊兵器の脅威」説を主張したZe'ev Schiff)の文献が多数を占める。イスラエルのメディアは四紙が参照されるが、アラブのメディアは一つも参照されない。唯一の日本人専門家の文献は、熱烈なイスラエル支持者として名高い故・村松 剛氏の「ユダヤ人」(中公新書)である。
 特に、オスロ合意以前に関する記述には問題が多い。二点あげる。著者は、アラブ側が1947年の国連のパレスチナ分割決議を拒否したことを非難している(162ページ)が、アラブ側の事情をどこにも書いていない。仕方がないので、防衛庁防衛研究所の故・鳥井 順氏の名著「中東軍事紛争史II(1945-1956)」(第三書館)から引用すると、「アラブがあくまで反対したのは、…分割案自体が客観的に不合理で、かつ不公平なものであり、彼らにとってとうてい容認できないものであったからである。」当時のパレスチナの人口は、アラブ人が約3分の2、ユダヤ人が約3分の1。土地所有については、アラブ人の私有地が約48%、アラブ村落の公共用地の割合は約46%、ユダヤ人の所有地は約7%であった。決議は、人口で3分の1、土地所有で約7%のユダヤ人に全土の55%前後を割り当てていた。欧州の反ユダヤ主義者が払うべき賠償金を、なぜアラブ人が払わなければならないのか?と言うのが、アラブ側の言い分である。もう一点、本書には中東問題の解説書なら必ず言及される、イスラエルが第三次中東戦争で占領した土地からの撤退を決議した国連安保理決議242号が登場しない。著者の軍事偏重主義のためか、戦争における一般市民の犠牲を防ぐことを目指したジュネーブ条約も安保理決議も紹介されないが、この方針に賛成する専門家は日本では極少数だろう。この他、パレスチナ難民の発生原因、国際社会の見解、和平プロセス中の入植地拡大、イスラエル内アラブ人の人口問題等、登場しない重要な話題は多い。これでは「憎しみの連鎖のなぜ」はわからない。
 立山良司「イスラエルとパレスチナ」(中公新書)、高橋和夫「アラブとイスラエル」(講談社)等、定評ある解説書が有り、本書の前に読むことをお勧めする。著者が取材したという和平交渉(詳細な解説はこちらのPDF。米国の事情はクライド・プレストウィッツ「ならずもの国家アメリカ」(講談社)が詳しい。)、第2次インティファーダの箇所は、他の日本語文献では読めない情報も多く、新書のため典拠の記載が不十分という問題もあるが、最近の情勢に興味が有る人は買うべきだろう。今後の活躍が期待される著者には、再チャレンジして欲しいが…

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紙の本アラブ政治の今を読む

2004/03/28 20:03

新鮮な中東情報。しかし、日本のアラブ・イスラーム研究者批判に説得力無し。

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書はタイトルから受ける印象と異なり、まとまった解説書ではない。気鋭のアラブ・イスラーム専門家池内 恵氏の論説集である。まとまってはいないが、中東問題に興味を持つ人間にとって、多くの新鮮な情報が書かれており、イラク支援について拝聴すべき主張もある。中東問題に興味を持つ人なら、読んで損は無いことは確実である。
 しかし、本書には大きな問題がある。東海大学文学部の春田晴郎氏がホームページ(2004年3月28日現在)上で指摘されていたたことだが、『最大の問題点は、第2章(とくにpp.56-65)や第5章(とくに、pp.197-204, 210-215)において、「日本のアラブ研究者・イスラーム研究者」が強烈に批判されるにもかかわらず、その批判の対象の典拠がほぼまったく記されていないことであろう。』 典拠らしきものが示されているのは日本の指導的研究者であった板垣雄三氏(p.230, n.4)ぐらいである。
 板垣氏への非難は妥当かというと、池内氏は2001年9月11日の全米同時多発テロに関する板垣氏の言説が「陰謀説」であると主張するのだが、引用された板垣氏の言説は「陰謀説」以外の読み方もできるので、判断はつかない。(2004年3月24日の米同時多発テロに関する調査委員会で行われた公開証言で、過去4代にわたる米大統領の下で勤務し、情報関連を担当していたリチャード・クラーク氏が、それまでの政府見解と違って、ブッシュ大統領はテロの脅威を十分に考慮しなかったと語った。同時多発テロについては、2004年3月末の時点でも、解明されていない部分があることは確実である。)
 個人的に問題と思われたのが、板垣雄三氏の「反ユダヤ的」言説を紹介する文献が、デイヴィッド・グッドマン、宮沢 正典著『ユダヤ人陰謀説—日本の中の反ユダヤと親ユダヤ』であることである。グッドマン氏は、全編アラブ人への偏見に満ちたジョーン・ピータース著『ユダヤ人は有史以来』を読むべきと主張する極端なイスラエル支持者である。米国の熱烈なイスラエル支持者達のバイブル、ジョーン・ピータース著『ユダヤ人は有史以来』(Joan Peters,From Time Immemorial: The Origins of the Arab-Jewish Conflict over Palestine,1984)は、パレスチナ人とはユダヤ人のパレスチナ開発につられて周囲から流入してきたアラブ人であると主張したが、引用や統計処理のインチキが発覚し、トンデモ本という評価が確定している。『ユダヤ人陰謀説』には、シオニズム批判を反ユダヤ主義とみなすトンデモな部分があり、板垣氏が反ユダヤ主義者であると主張する根拠の大部分は、その反シオニズムの言説・活動である。極端なイスラエル支持者による極端な主張により、板垣氏を反ユダヤ主義者のごとく紹介するのは、専門家として褒められたことでは無い。
 同じく春田氏の指摘によるが、著者の日本のメディア状況の認識も変である。p.341には「日本の報道では、戦前も戦中も(そして戦後も)「イラク人」はアメリカの戦争に絶対反対であり、アメリカに付くよりはフセイン政権のもとに参集する、ということが前提にされていた。」とあるが、著者にとっては、日本最大の部数を誇る読売新聞あるいは産経新聞は「日本の報道」には含まれていないらしい。朝日新聞や毎日新聞でも、著者が言うような極端な報道は、ほとんどなかったことは確実である。
 アラブ・イスラーム研究者として大成されることが期待されている著者には、アラブ・イスラーム研究発展のために、感情論ではなく、典拠に基づく研究者への批判を行ってもらいたい。批判が多くなったが、多くの中東問題に興味を持つ人間が著者に期待していることを忘れないで欲しい。

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本書=「アラブとイスラエル」+「アメリカとパレスチナ問題」価格に見合うプラスアルファはうーん……

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は放送大学の教材である。評者は視聴したことが無いが、高橋先生の講義は放送大学学生には大変面白いと評判のようである。本書は、放送大学で高橋氏の授業を受けるのであれば、必須であろう。しかしここでは、教材として使用しない立場の人間からの評価させていただく。
 実は、本書は、著者の手による非常に良くまとまった定評ある解説書である「アラブとイスラエル」(講談社現代新書)と、同じく著者の手による、中東・アメリカの重要人物の人となりと経歴を語ることで、中東問題をより深く解説しようと試みたユニークな参考書「アメリカとパレスチナ問題 −アフガニスタンの影で」(角川書店)とを豪快にくっつけたものである。前者は定評ある解説書であるが、如何せん1992年の出版であり、最近の重要な話題が登場しない。一方、後者は、人物伝の寄せ集めが大部分を占め、後者を読んだだけでは、中東問題の全体を俯瞰して、理解することは困難である。両者をまとめた本書の内容は、中東問題の解説書として、非常に価値があるものとなっている。しかし、問題は価格である。「アラブとイスラエル」は税込価格735円、「アメリカとパレスチナ問題」は600円、両者を合わせて、1,335円。一方、本書は税込価格3,570 円であり、二冊の合計の二倍以上の価格となっている。
 教科書として、新書二冊に比べて、大きな改善がなされているかと言えば、価格差に見合う改善はなされていないように思われる。確かに、本書では、現実の研究の進展に合わせて細かな記述が、修正されている。例えば、1「アラブとイスラエル」では、パレスチナ難民の発生原因について、「アラブ諸国の指導者がパレスチナ人の避難を勧告したという」イスラエル側の主張と「イスラエルがパレスチナ人を追い出した」というアラブ側の主張を両論併記していたが、研究の進展に合わせて、本書には「パレスチナ人が難民となった原因についてのイスラエル側の説明の虚構性はますます明白になりつつあるのが現状である。」という記述が付加されている。そのような修正点を見つけるのは、評者のような中東問題に興味を持つ中東マニアには楽しいが、そのようなマニアックな楽しみは、一般の方にとって楽しみとなるとは思えない。
 そして、残念ながら、本書は教科書としては、学術書として不可欠と思われる典拠の記載が十分でない。すなわち、記述の根拠がどのようなソースによるものかがほとんど書いてない。ページ数の限られた新書では典拠を省くのは一般的だが、学習の基本となる「教科書」ではあまり省いて欲しいものではない。参考文献としてあげられているのが、日本の参考書や日本語に訳された参考書だけというのも問題だろう。中東問題では、重要な英語で書かれた文献(場合によっては、アラブ語やヘブライ語の文献)が示されていないのは、極めて残念である。新書版の場合は、それで良いだろうが、放送大学の学生や専門家を志す人に対しては明らかに不十分だろう。これは本書に限ったことでは無い。放送大学の教科書の多数が、学習者がさらに先に進むための必要な参考文献を十分に記載しているとは言い難く、本書も例外ではなかったということである。
 と言うわけで、本書は、既に「アラブとイスラエル」や「アメリカとパレスチナ問題」のどちらかを購入した方には、お勧めしない。どちらも持っていらっしゃらない方は、本書を購入しても良いと思うが、強くは推奨しない。ただし、中東問題に強い興味を持っている人に対しては、その限りでは無い。中東問題に興味を持つ評者としては、是非とも、典拠を加えた改訂版を出版していただきたい所である。

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生きながら火に焼かれて

2006/05/05 22:05

アラブ人差別を煽る偽書

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 名誉殺人というアジア・中東・アフリカ地域に残る、家に逆らって恋愛した女性とその相手の男性の殺害(本書では女性だけが対象だが。)という残虐な人権侵害を世間に知らせる活動は重要かつ尊いものである。しかし、本書は先ず間違いなく、狂信的なアラブ人差別主義者グループによる偽書か、或いは幻想文学である。本書に感動し、名誉殺人に心を痛めた多くの読者にとっては、寝耳に水かもしれないが、本書の記述は矛盾だらけで、その内容は信頼できない。豪州では、本書と類似の記述のNorma Khouri著Forbidden Love、 A Harrowing True Story of Love and Revenge in Jordan(Honor Lostの別名でも出版)が、フィクションであることが判明し、絶版となった。現時点で、本書が偽書であると確定はしていないが、その矛盾だらけの記述から見て、かなりの確率でそうであろうと思われる。本格的な本書の問題点の指摘は、豪州の歴史学者Therese Taylorが保守系の反戦組織Antiwarドットcomに発表した論説Truth、 History、 and Honor Killingを参照されたい。
 本書の舞台は、パレスチナのヨルダン川西岸地域であるにもかかわらず、本書では、シスヨルダンなる全く流通していない名称が用いられる。「パレスチナ」という名称の使用を断固拒否するのは狂信的なイスラエル支援者の特徴の一つである。本書の破綻は至る所にあるが、幾つか紹介する。(1)本書の記述によると、スアドの村は孤立した小村で、舗装されていない小道をたどらないとたどり着けないという辺境の村である。一方で、著者の妹は電話器のコードによって絞め殺されたとのショッキングな描写がある。1977年当時のヨルダン川西岸の辺境の村に、電話線は来ていなかった。現代でも小集落の多数には電話線が無い。当時電話線が来ていたとすれば間違いなく幹線道路沿いであり、名誉殺人が起こるような辺境ではない。(2)本書にはアラブ女性の習慣として、性器の脱毛が何度も登場する。アラブ女性の脱毛は一般的な習慣だが、髪と眉毛を除く、全身脱毛である。著者が書くような、陰毛のみの脱毛ではない。(3)著者の一人は、パレスチナの医療従事者達が名誉殺人や不義の子の死を容認していると主張する。しかし、著者の娘は著者が火傷で生死をさまよっている時(米国版では、著者は全身の70%に火傷を負ったことになっている。著者が新人類で無い限り、死んでいる。)、7ヶ月の未熟児として生まれた。7ヶ月の未熟児は、当時のパレスチナの水準を遙かに越える最先端の医療と献身的なケア無しに生存できない。(4)表には出ないが、著者の一人である(自称)人権団体所属のジャックリーンは、テルアビブからローザンヌに直行便で向かったと書くが、そのような直行便は存在しない。(5)著者は、近所の人がテルアビブ近くに所有する農場に行ったことを語っているが、ヨルダン川西岸在住のアラブ人はイスラエル領に土地を持つことは許されない。イスラエル建国以前に所有していたとしても、全てのヨルダン川西岸在住のアラブ人の土地はイスラエル政府に全て強制収用されている。ヨルダン川西岸からイスラエル領に入れるのは成人のみであり、未成年の彼女が入ることはできない。ここで現れる「私自身、ユダヤ人から痛い目に遭わされたことなど一度もない。」という文章は、狂信的なイスラエル支持者達が担ぎ出す偽パレスチナ人の決まり文句である。
 出版社は、中東専門家の協力を得て、本書の真相を調査し、偽書であることが判明した場合には、謝罪し、絶版にすべきである。

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