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梶谷さんのレビュー一覧

投稿者:梶谷

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紙の本チャイナ・インパクト

2002/07/08 02:47

「地域国家論」は正しい!?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今、とにかく巷には中国経済に関する書籍が山のようにあふれていて、一体どれから読んでいいのか大いに迷うような状況だ。その中で、この本は著者のネームバリューと大々的な広告の効果もあってかなり売れたようである。「中国経済の読み方を根底から覆す衝撃の書」っていう帯のキャッチコピーは本当なのか、気になってちょっと手にとってみた。

 さて、まず全体としての印象だが、現在の中国における高いレベルのものづくりの実態が地域ごとにきちんと紹介されているほか、中国の社会・政治面における基本的な情報も押さえられているし、それほど悪くない本であることは確かだ。だけど、どうも中国経済の現実をダシにして自説を雄弁に語ろうという姿勢が濃厚で、そこが少しうさん臭い。
 この本の中で大前さんは、現在の中国の成功は地方主導によるものだ、ということを繰り返し述べている。特に、珠江デルタ(広東省)・上海周辺・東北三省、といったいくつかの省にまたがった地域(大前さんはメガリージョンと呼んでいる)が、お互いに刺激を与えながらそれぞれの特徴を生かして成長をとげてきたことを非常に評価していて、日本もそれに見習うべきだ、という主張までしているほどだ。つまり、各地方が自立した経済圏を作り、お互いに競いあいながら発展した方がいい、という、かねてからの彼の主張である「地域国家論」を補強する材料として中国の現実が捉えられているのだ。

 だけどこの議論は前提にちょっと疑問がある。例えば、中国が国有企業の管理などの面で地方政府への大幅な権限委譲を行ったのは主に80年代の話だ。その頃から中国経済は高い成長率を記録し始めていたが、それは主に農業や繊維製品の加工貿易などの軽工業を中心としたもので、現在のように機械産業におけるものづくりの質の高さが評価されたというわけじゃなかった。
 そして、大前さんが中国のものづくりの実力を見直したという90年代後半は、実は行き過ぎた「地方分権」が一種のバブル経済化をもたらしたとして批判の対象になり、中央政府が地方に対するマクロコントロールの力を強めようとした時期にあたる。その後中国は、発展の遅れた西部の内陸地域に集中的に財政資金を投下しインフラ建設を行う「西部大開発」という国家プロジェクトを推し進めている。つまり、大前さんが批判してやまない、かつての日本のような「均衡ある国土の発展」の道を歩み始めているともとれるのだ。 
 こういった事実を踏まえれば、現在の中国の現状から「日本も地域が独立してお互いに競争すればうまくいくのだ!」っていう結論を導きだすのはちょっと一面的すぎると思う。それに、そもそも国土とか、国の成り立ちとか、民族構成とか、初期条件がぜんぜん違うんだから、「中国が地方分権でうまくいったんだから、日本も地方同士自由に競争させよう」というのは、議論の運び方としてはかなり乱暴なんじゃないだろうか。

 というわけで、一部の「中国は共産主義の独裁国家だ、だから必ず崩壊するんだ」と吼えてるだけのどうしようもない本に比べればずっとマシなんだけど、特にこの本から「衝撃」を受けるということもない、というのが僕の正直な感想だ。同じ中国経済の現場レポートとしては、僕は黒田篤郎さんの『メイド・イン・チャイナ』(東洋経済新報社)の方を断然お薦めする。

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