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かいらぎさんのレビュー一覧

投稿者:かいらぎ

36 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本午前三時のルースター

2003/07/09 22:07

泡沫のベトナムという非現実

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 黎明に響くルースター(一番鳥)の鳴き声。それは闇夜が永遠ではないことの証左でもある。
 旅行代理店勤務の長瀬は、得意先の孫の少年とともに、失踪した彼の父親を探しにベトナムを訪れる。そこで叩きつけられた真実とは…。
 込み入った伏線が張られているわけでもなく、ストーリーとしては比較的単純だ。水戸黄門を観るように、安心して読めるストーリーである。それでも、というかそれだからこそ好感の持てる物語だ。複雑さではなく、ベトナムだからこそ成り立つ巧みなストーリー展開で読者をひきつけていくのだ。これがパリやLAだったらまったくもって興ざめであろう。ベトナムという発展途上の国は、逆に将来は確実に明るいと信じられる現在がある。とともに、過去と現在がごちゃ混ぜの混沌にある。
 そこでの現実は、日本を基準とするならば非現実といえよう。ベトナムという非現実を選ぶのか、日本という現実を選ぶのか、そこには本人の意思を差し挟む余地がある。真実を知った上で帰国した彼らにとって、日本という現実に戻ってしまえば、それは泡沫の出来事だったのだ。しかし、最後は実に後味のいい結末となっている。

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紙の本屈折率

2003/05/11 17:41

ニッポンの製造業に必要なのは恋のような情熱だった

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 元ヤリ手商社マンであった安積啓二郎は、ひょんなことから経営の傾いた実家のガラス工場の社長となる。当初、工場の清算整理を目論んでいた啓二郎であったが、工場に出入りするガラス工芸家の野見山透子と不倫の恋に落ちる。これまで、企業経営も結婚も、成功を手に入れる手段として捉えてきていたのだが、透子に恋することを通して今まで見えていなかった人生を賭するに値することが見えてきた。啓二郎は工場再建と恋に情熱を傾けるようになる。
 経営者である啓二郎は、芸術を追求する透子から、芸術を支えるのは限りない情熱と厳しい選択をも躊躇しない確固たる信念であることを学んだのではないか。「経営は芸術だ。」といわれることもあるように、経営にも情熱と厳しい選択が必要だったのだ。そして、それは恋のようでもあったのだ。啓二郎の心境の変化は、まさに現在のニッポンの製造業に必要な変革でもあろう。

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紙の本一瞬の光

2004/12/25 01:06

永遠の光

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 久しぶりに素晴らしい小説に出会えた。
 文庫本の背表紙にあるあらすじを読み、「月並みだがそこそこ読めるかな…。」と思い手にしたが、読み出したらページをめくる手が止まらない。橋田、香折、瑠衣の人物設定や背景に極端なところがあることはある。しかし、それがそれぞれの心の動きをあぶり出すために効果的な設定であるし、不自然さを感じさせずにリアリティをもって読者をぐいぐいと引き込んでいくストーリーの強さがあるのだ。
 橋田はエリート中のエリートとして描かれているのだが、そんな彼にもそのような状態がしっくりせずに何か居心地の良くない心の揺れが見られる。そしてそれが香折との出会いで増幅され、最後には自分自身の居場所を香折の中に見つけ出すのだ。その様子は、橋田と香折との心の交流、という平板な表現では表しきれないつながりであり、それを見事に描いている。穿った見方をすれば、エリートだがエスタブリッシュメントではない橋田は、エスタブリッシュメントである瑠衣よりも香折の中に橋田自身を見出したともいえる。
 最後まで読み終わってから、橋田と香折の最後の会話の部分そして香折の手紙の部分を読み返す。たったこれだけの文章がこんなにも人の心を表しているのかと、深い感動に身をゆだねることになる。時には立ち止まって心を静めるために、仕事に忙殺するサラリーマン諸兄にお勧めする。

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紙の本そこに僕はいた

2002/03/06 22:21

二度と帰ってくることはない思いでの日々

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 筆者が少年時代に過ごした福岡、帯広、函館で、その地と仲間たちが織りなす小さなドラマを綴っている。笑いと涙のエッセイ集だが、心の中に大切にしまい込まれている甘くて苦い思い出は、もう二度と帰ってくることはない…というしみじみとした感慨に浸ってしまう。
 同じような路線の「あの頃ぼくらはアホでした」は笑いに満ちているが、「そこに僕はいた」は思い出の感傷に浸れる。

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紙の本クライマーズ・ハイ

2004/01/18 00:19

滲み出る葛藤

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 降って湧いた日航機事故に絡んで起きた、地元新聞社を舞台とした組織人の葛藤の物語である。事故をありのまま伝えることの必要性や社会正義と、営利を目的とした新聞社の二面性。そして、報道人としての使命感とスクープをモノにするという功名心とで揺れ動く個人。より踏み込んで言えば、ニュースと言う名の商品をどのように扱ったら最大の利益になるのかという新聞社の思惑、スクープをモノにして名を上げたいという報道現場、そして新聞社という組織の圧力と個人の正義との鬩ぎ合い。そのような葛藤がリアルに伝わってくる。クライマックスは目の前にぶら下がるスクープをモノにするのかしないのか。功名心と報道の正確さとで揺れ動く。どこまでが社会正義で、どこまでが私欲なのか。そのとき、悠木は社会正義でもなく私欲でもない、自らの信じる正義を通した。
 大惨事を目の当たりにするチャンスがあってこその作品、と言えばその通りである。「大惨事をネタに娯楽作品(小説)をつくることへの批判は甘受する。」との横山氏の談話は開き直っているようにも見える。しかし、本著を表すまでに十数年の歳月を経ていることに、横山氏の深い葛藤を感じるとともに、いまだに迷いがあることを確信した。それは正に悠木が感じている迷いであり、そのような迷いがあってこそ、悠木の葛藤をリアルに表現できるのだろう。そして、その葛藤に決着をつけるのは自分としての正義だ。それが横山氏の言う「乗り越えなければならない山」なのだろう。

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紙の本ストロボ

2004/01/06 20:34

記憶の時間の矢とともに振り返る

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 久しぶりに真保氏の作品を読んだ。これまで読んだスピーディな展開とは異なる作風で、28年にわたり人間が成熟していく様を描いている。
 読みはじめてまず気づいたのは、いきなり「第5章」からはじまることである。「乱丁か?」と思い、目次を見ると第5章から始まって第1章で終わる構成となっているので確信犯であることに気づく。「奇をてらった構成になっているなぁ」と思いつつ読み始めた。しかし、読み終わってみると、この構成は必然性があることに深く納得する。
 起承転結あるいは因果応報は物理的な時間の矢、すなわち過去から未来に向かって展開することが当然だと思い込んでいた。しかし、人間がある時点で過去を振り返るときには、近い過去から遠い過去へと思い返す方が、現在との連続性を保ちやすく自然なのだ。そしてこの物語はストロボで切り取られたような過去の自画像を5編の短編として記憶の時間の矢の順に並べたのである。そこには、長い人生を経験して初めて解き明かされるさまざまな謎や疑問、もっと具体的に言えば「若気の至り」や「忘れてしまった夢」、「野心や野望」などがちりばめられている。
 自分自身も全てを振り返るほどの人生経験を積んだ訳ではないが、自らの「若気の至り」を思い起こすとともに、過去を振り返ることも大切なことであることを感じた。長い年月の中で変わってしまった自分と、過去の積み上げである現在の自分と、そして未来の自分を見つめるための好著である。

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紙の本神々の山嶺 上

2003/06/28 11:30

壮絶な登頂の企てに立ち会う

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 マロリーの謎を追う写真家、深町がしだいに登山家、羽生の壮絶な人生に魅せられ、羽生の孤独だが壮大な挑戦を追うようになる。
 絶対に死なずに帰ってくる、それが登山の基本である。それは、下界での生活が基本であり、登山が人生の目的ではないからだ。登山は人生におけるちょっとした調味料でありスパイスだから、そのために死ぬわけにはいかない。しかし、登山が人生の目的であったなら違ってくる。では、そのときに登山の目的は何か?
 マロリーがエベレスト登頂を企てた時代においては、登頂は征服の象徴であり、登頂することこそが目的そのものであった。しかし、地球上のすべての陸地に人類の足跡を残した今、頂を踏むこと自体に目的を見出す時代ではなくなった。現代の登山つまりは羽生の登山は、その過程を克服することが目的であり、頂を踏むということは、その過程が成功であったことの象徴なのだ。その過程とは、人間の限界への挑戦であり、装備はあるにせよ、生身の体で極限状態を克服することである。しかし、その挑戦は頂を踏まなければ成功とは言えない。
 読み手は深町とともにマロリーと羽生を追うことになる。二人は時代背景が異なるがゆえに、エベレスト登頂の目的も異なるが、登頂したか否か、それは二人にとってだけではなく、深町そして物語の読み手にとっても重要な意味をもつ。ラストは感慨と興奮とが入り混じる、この物語を締めくくるにふさわしい展開であった。

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紙の本ホワイトアウト

2003/01/29 23:27

圧倒的な迫力で息もつかせぬ山岳小説

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 読むに当たって、まず地図を用意してもらいたい。それは新潟・福島県境に位置する「奥只見ダム」周辺の地図である。そう、この小説の「奥遠和ダム」は奥只見ダムがモデルになっているのだ。地図を見ながら小説を読み進むと、物語がその地に展開し、そして筆者の克明な描写により奥遠和ダムと周辺の銀世界が眼前に広がるのである。そして小説がまさに現実となって読者の脳裏に繰り広げられる。息もつかせぬストーリー展開と、雪と寒さとの戦いが圧倒的な迫力で読者に迫りくる。そして最後は思わず涙してしまった。

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腕白ボウズは「死ぬ」ことをどう感じた?

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 「死ぬ」とはどんなことだろう? 3人の6年生たちは、「死ぬ瞬間」を目撃するために一人暮らしの老人を見張り続けることにした。しかし、観察の対象であるべきその老人は、いつしか子供たちの「おじいちゃん」になり、子供たちがそれまでは知らなかったことを体験することになる。「死ぬ」ことを見ることが目的だった彼らは、それ以上に大切なものを得ることができた。
 「死」を恐れ、目を背け、自分の領域外として捕らえる姿勢から、自らの中に取り込んでいく、そんな心の流れが自然に受け入れられる物語だ。

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紙の本君を見上げて

2002/03/06 22:12

男だって恋に落ちれば不合理に

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 表題の通り、身長163cmの章二と身長182cmの瑛子のラブストーリー。ソウル行きの飛行機でたまたま隣り合わせた二人は、ソウルの町中で偶然再会し、恋に落ちていく。その恋を阻むのは、もちろん19cmの身長の差であり、それを乗り越えたかに見えてやはりそこに引き戻されてしまう。そして、章二が金庫屋であるがゆえにある事件に巻き込まれてしまう。
 19cmの身長の差を乗り越えるというストーリーのおもしろさもさることながら、男だって恋に落ちれば不合理に心を揺れ動かしている、ということの描写が楽しめる。

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紙の本翼はいつまでも

2002/03/05 00:10

夏の十和田湖は爽やかな感動で満ちあふれていた

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 既にいくつかの素晴らしい書評があるが、書かずにはいられない!評価(★マーク)は五つ星が最高だけど、★★★★★★をつけたい!
 あらすじは他にもある通り、14歳の「ボク」つまり神山君がある日聞いたビートルズのプリーズ・プリーズ・ミーに勇気を与えられ、中学校の野球部のいざこざや初恋を通して大人になっていく物語だ。こう書いてしまうと何とも「クサイ」のであるが、読んでみればそんな臭いは笑いと涙の洪水に押し流され、そして最後にさわやかな暖かさが残る、そんな物語だ。
 少年時代、あなたは「へっぺ」(セックス)に関心を持ち、想像を膨らませたことはありませんでしたか? 神山君もそんな少年だったが、ついには「へっぺ」をしに一人、夏の十和田湖へと行ったのだ。しかし、「へっぺ」を忘れさせてしまう意外な展開がそこで待ち受けていた。
 少年時代にだれもが持っていた心を手に取るようにわかる巧みな表現で読者を引き込み、夏の十和田湖に誘う。少年に戻って、夏の十和田湖で喜び、感動し、三沢駅で思いっきり泣いてみませんか?
 久しぶりにビートルズのCDを引っぱり出して、プリーズ・プリーズ・ミーを聞き、もらった翼を羽ばたかせてみました。

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紙の本あの頃ぼくらはアホでした

2002/01/04 23:04

あった、あった、そんなこと

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 小学校から大学までの出来事を綴ったエッセイ集。標題の通り、いかに「アホ」に生きてきたかをおもしろおかしく書いてある。良くある出来事や「事件」ばかりだが、現在40歳前後の同年代を生きてきた人たちにとってはどれもこれも「あった、あった、そんなこと」と、自分と重なり合って、笑いをこらえられず吹き出してしまうこと請け合い。したがって、電車での読書はやめた方がよいかも。

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紙の本ベイジン 上

2011/07/13 08:53

証明:事実は小説より「危」なり

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 前回の書評は2007年、中越沖地震の後だった。
そして再び、東日本大震災を受けて書評の筆をとった。震災以上に日本という国を揺るがしたフクシマ危機をデジャブのように感じさせる小説、それが本書であるが、を思い出したからである。
 表題のベイジンとはつまり北京のことであるが、オリンピックを目指した猛烈な発展とそれを支えるための原発建設の物語である。原発はどこの国でも膨大な利権がからむため、政治の動きに翻弄され、現場のエンジニアが目指す安全指向が捻じ曲げられ、国家の威信と利権を貪る道具として作られてしまうことが物語として繰り広げられる。そこには腹黒い政治家、闇組織も当然のように群がってくるが、これを撥ねのけるのは、エンジニアの信念である。
 物語は中国を舞台として、安全性よりも利権を貪ることに重きを置く政治家や闇組織、事故発生時に捨て身で収束を図る現場エンジニアたち、保身に走る「責任者」たち、重大な危機に直面してもパフォーマンス優先の政治家たち、が描かれている。これらをそっくりそのまま日本人キャストとしたものがフクシマ危機であり、デジャブである。
 この小説を読んだのはちょうど1年前だった。その時の感想は、「中国ならありうる、そして中国で事故が起きればたちまち日本は被害を受けるではないか・・・」というところだ。しかし、これは安全神話を刷り込まれた末の安っぽい感想に過ぎなかったことがわかった。これを読んで、われらの足元を見直すことすら発想できなかった。そして、「素人」の小説家が想定ができることを日本の「専門家」そして政治家たちは誰も想定できなかったことが3・11で証明されたのだ。
 小説に次のような件がある。
 「メルトダウンを防ぐには水があればいいんですよ」
 「消防車の高圧ポンプを使って、海水で冷やすわけにはいかないんでしょうか。」
 「ヘリからも同じことができると思います」
 「我々が原子炉の暴走を止められなければ、世界中の原発が停まるかもしれません」
 そして「フクシマ」は「ベイジン」を超えた・・・
 事実は小説より「危」なり、が証明されてしまった。

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紙の本イントゥルーダー

2007/07/27 09:22

事実は小説より「危」なり

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中越沖地震の報道を見聞きして、久しぶりに書評の筆をとった。この地震でクローズアップされた、原発の危険性について、ある小説でフィクションとして詳細に記述されているのを思い出したからだ。言うまでも無く、それが本書である。
 原発建設は膨大な利権がからむため、これに群がる勢力が多数存在する。中には、工学的正論をも排してそれを食い物にするきわめて厄介な勢力が存在する。工学的正論を得た主人公と「極めて厄介な勢力」との暗闘がこの小説の筋書きである。
 本書の著者は原子力工学を熟知しており、現存する原発に関して事実であるかどうかは別として、工学的見地での小説としての記述に間違いは無いのであろう。問題は、この小説の筋書きがフィクションとして読み過ごせるのかどうかである。個人的な感想としては、小説の中に散りばめられた個々の事件は別としても、大枠の経緯や結果としての事実関係があまりにも酷似しており、今読み返してみると衝撃を覚えずにはいられない。

事実は小説より「危」なり、である。

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紙の本T.R.Y.

2003/06/28 09:54

傲慢な連中の鼻を明かす快感

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 時は明治44年。ターゲットは陸軍参謀次長、東。獲物は日本陸軍の武器弾薬。東は武器商社と癒着し、私利私欲を肥やす一方で、利を見るに聡く、用心深い男でもある。その東を騙す詐欺グループの構成には不安がある。日本人で天才詐欺師の伊沢。伊沢を慕う中国人、陳。清を倒すことを目指す革命家の中国人、関(グアン)。日韓併合で日本や日本人を恨む韓国人、パク。それぞれが違った目的意識をもちつつも、壮大なペテンを仕掛ける。
 明治時代は決してのんびりとした時代ではなく、帝国主義が跋扈する弱肉強食の国際関係は、国の舵取りが即座に存亡にかかわる時代でもあった。維新の高邁な残り火も消えつつある中で、役人や軍人は派閥争いや利権を貪る。そのような時代背景だからこそ得られる各個人の強烈な動機、緊張感やスピード感あふれる展開がこの物語を引き立てる。そしてなんといっても、傲慢な連中の鼻を明かす快感を堪能できる一冊である。

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