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先月(2017年8月)

さくらさくらさんのレビュー一覧

投稿者:さくらさくら

1 件中 1 件~ 1 件を表示

子供に対しどう接するべきかを教えてくれる良書

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

多くの先生、子供を持つ親御さんたちにお勧めしたい本です。
子供をどう理解し接したらよいか、そのことを教えてくれそして勇気を与えてくれる本です。文化を越えて普遍的なもののあることが確信できる本です。
この本は、作家のサム・スウォープさんが、ニューヨークで三年間小学校の子供たちに作文教育を行った記録です。固有名詞は事実とは変えていますが、事柄は事実に忠実に基づいて書かれています。
この本の魅力は、子供たちの成長を語る点にもありますが、何よりも人への接し方を教えてくれる点にあると思います。著者は、常に子供たちをよりよく理解し、良いところを伸ばそうとします。よりよく理解するというのは、子供たちの生活や考えをまずあるがままを受け入れるということです。舞台となった小学校はニューヨークのクイーンズにあり、様々な人種、移民の子がいます。スウォープさんはとまどいを覚えながらも、子供たちの事情をありのままに理解します。そうして、ちょっとした良い点に敏感に反応し、子供たちの作文の力を伸ばします。例えば、宿題をしてこないノエリアは、「スウォープ先生。どうすればいいのかわかってる。いけない心がそそのかすたびに、そいつを無視しようってがんばってるよ」と言います。スウォープさんは、そこから説教はせずに、「ねえノエリア、それ、物語にしたら面白そうだ」と言い、ノエリアはそれをもとに物語を仕上げたのです。
このようなスウォープさんは、いつも温かく子供たちに接するのですが、その底には、人が幸福であることは良いことであり当たり前のことであるという信念を持っているように思えます。クイーンズに大雪が降ったときに、「めまいがするほどこの人生がいとおしかった。紙がわたしたちすべてを祝福しているのだ」と言ったり、転校するクワンインと大の仲良しのアーロンが最後の物語を書くのを、「二人はぴったりと体を寄せて座り、互いに腕を相手の腰に回したまま物語を書いていた。」と描写しています。どんな小さい場面も、それが心動かすものならば、スウォープさんは見逃さないのです。
また、教育上の多くの鋭くそして当然の指摘もあります。例えば「言葉の美しさを血肉で感じるには詩歌を暗誦するのが一番だ。」とか「子供が想像する生々しい暴力場面を教師はどう扱うべきなのか?」、また文法事項の指導についてなど、実際の教育現場で課題とされることが多く含まれているのです。
そして、あちこちにちりばめられるユーモアのすばらしさ。例えばスティーブンズの「クロムクドリを見る十三の方法」が子供たちに受け入れられにくかったとき、「わたしには三つの意識があった。その一、わたしはろくでもない教師だ。その二、このクラスはろくでもないクラスだ。その三、スティーブンズはろくでもない詩人だ。」と思ったりするところなどがそうです。
金利光さんの翻訳も子供たちの作文を細部にまで工夫して訳していると思われ、子供たちの作文のぎこちなさなどもわかりやすく伝えてくれています。 (H17.7.3)

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