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    5つ星のうち 4.5 レビュー詳細を見る

森谷さんのレビュー一覧

投稿者:森谷

1 件中 1 件~ 1 件を表示

世界システムに潜む「見えない罠」〜「農業」と「援助」の視点から貧困を考える〜

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 どうして第三国は貧困から抜け出せないのか。どうしたら貧困から抜け出せるのか。筆者は、「農業」と「援助」のシステムを中心に、「資本主義の下の平等」というまやかしの幻想に潜む「見えない罠」を解説し、そこから抜け出す、一つの解決法を提示する。貧困と世界システムを考える上で、必読の書。

 貧困に苦しむ多くの第三国の「農業」における罠を筆者は次のように解説する。彼らは外貨を獲得し、穀物を輸入すべく、需要のある換金作物へとその土地を割り当てる。そして生産の効率を上げるために、流通ルートを確保するために、外国資本の導入を図る。しかし、換金作物政策は必要作物にあてる土地を奪うため、物価の高騰を起こしてしまう。外国資本の換金作物農場で働く人間にしても、収穫物の買い叩き、搾取などによって実質の手取りはほとんどない。人々は以前より苦しい貧困に直面するのだ、と。

 また、先進国は農業援助、留学生の受け入れなど、第三国に「援助」を行うが、その実体は「侵略」である、と筆者は説明する。それら援助は、第三国のエリート層に先進国式の考え方を植えつける役目を果たす。エリート達は自分の率いる国全体を先進国の経済システムの中で成長させようとする。結果、「農業」で陥った罠に再び陥ることになる、というのだ。

 以上が、筆者の考える貧困のロジックの概要だ。つまり、堂々巡りになっているのである。貧困という深い穴から抜け出そうと、第三国は差し出された命綱(先進国からの援助)をつかみ、必死に穴を登る。しかし実のところ、彼らがいくらそれをたぐっても、彼らがその穴から抜け出す可能性はゼロだ。必死に上まで登ってきた彼らが差し出す作物を受け取ると、先進国はまた彼らを足蹴にし、穴の底へと落としてしまうのだから。

 筆者は最後に一つだけ実にシンプルな解決法を提示するが、ここでは触れず、お読みになる方にお譲りする。いささか物事を単純化しすぎるきらいがある本書ではあるが、切り口は今でも新しいし、具体例も豊富で、飽きさせない。貧困を考える人にとっては、まさに必読の書であろう。

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