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桜  さんのレビュー一覧

投稿者:桜  

『磨けば光る子どもたち』を読んで

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 最初の3・4頁を読んで、とても自然で楽しい雰囲気にほっとすると同時に、その先の展開に強い興味がわいてきた。本の帯に「知的障害のある生徒たちとのふれあいの中で」と書かれてあったので、とても辛い内容を読まなくてはならないのかと少々気が重かったのである。
 出だしを時系列的にしなかったことは、大変よかったと思う。エピソードの一つ一つが輝いている。おそらく数え切れないほど沢山の思い出の中から八つを選び出すのは困難な作業だったと思われるが、書かれている生徒たちの言葉や動作、表情などを鮮やかに思い描くことができる。そして懸命に生徒たちに向き合う作者の姿に、感動を覚える。
 普通高校で野球の指導をやりたかったという作者、思いがけず養護学校に配属されてとまどう気持ちが素直に述べられている箇所、よくわかるしほほえましい。
 三年間我慢して、普通高校に転勤することだけを考えていたのに、いつの間にか夢中でソフトボールを教えていたという。人柄がよくわかるところである。小学校3年生の時から野球一筋、夢はプロ野球選手、しかも若かったからこそできたのだろう。通りいっぺんにしか野球を知らず、そこそこの分別をもつ中年教師であったなら、適当に妥協をしていたに違いない。
 この本はふだん障害を持つ人たちと触れ合う機会のほとんどない私たちに、実に多くのことを教えてくれると同時に、その親御さんたちにも貴重なメッセージを送っている。残念なことだが、親はえてしてサポートしなくてはいけないときに何もせず、逆に我慢して見守る必要のあるときに駆け寄って抱き起こしてしまうものなのである。
 作者は優しさと厳しさ、柔と剛をうまくミックスさせて、全力投球の指導を試みる。新採の青年教師のさわやかさ、ひたむきさが心地よい。
 これを読んで養護学校の教師になってみたいと思われた若い人もおられるだろうし、障害のある我が家の子どもにも何かスポーツをさせなくては、と考え始めたお父さん、お母さんもいらっしゃるかもしれない。確かに障害があろうとなかろうと、老人であろうと幼児であろうと、体を動かすことの心地よさ、楽しさを知ることはとても大切なことだ。
 知的障害者と関わる人たちに対してなされている提案、あたり前の考え方、そして対応をするべきだという言葉にはっとさせられる。無意識のうちに彼らを特別視していた自分に気づかされたのである。真に理解しようとはせずに、ただ何となく同情していただけに過ぎない自分に。
 障害児(者)教育について、世間ではよく統合か分離かというような二者択一論で論議されているが、作者が提案しているように、一つの建物の中に普通学校と養護学校を併設して交流を図るというのは、理想的だと思う。ただ外見からでは判断しにくい知的障害者に対する世間一般の無理解・偏見等は現在でもかなり根強いのではないだろうか。
 一生懸命生きるということは、たぶん、今しかできないことや自分にしかできないことを、全力を傾けてやり続けること。それを身をもって示した作者は、幸いなことに苦労に見合う成果を得られており、その幸福な達成感を共有することができた。
 チャレンジ精神旺盛な作者の今後を、期待を込めて見守りたい。

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