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先月(2017年8月)

川島芽李子さんのレビュー一覧

投稿者:川島芽李子

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本四季 夏

2003/11/12 12:00

一冊まるまる「すべてがFになる」の解決版、か?

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四季四部作の第二部である。第一部「春」とはちがって、この「夏」は、少なくとも「すべてがFになる」と「四季春」を読んでいないと、気付けないまた楽しめないトラップが随所にちりばめられている。この二作を先に読むことをオススメする

さて「夏」のテーマは、何故真賀田四季は両親を殺したのか? である。正確に言えば誰が殺したのか、だろうか。「すべてがFになる」の作中では、曖昧なままだった。確か四季の多重人格性で無理矢理説明されたはずだ。ともかく見どころは、何故、両親を殺さなければならなかったか、という四季の心情である。
四季は「春」の頃に比べると、外の世界にも目を向けるようになる。しかし悲劇は外に目を向けたことにより起こったとも言えそうだ。私がわからないのは四季の思考そのものなのだが、あれだけ物事の展開の推測が得意な四季が、なぜ、最悪(と常人には思われる)の選択をしたのか? ということだ。四季が自室でナイフを取り出したシーンを思う。四季は推測できない心の動きにこの時初めて気付くのか? いや。ナイフは衝動で買ったのか衝動に見せかけて計画的に買ったのか。そもそも研究所を設立しようししたときからこうなることを予測していた? 私はいったい四季のこれが思考の結果なのか衝動なのかを判断できないのである。
四季は自分が妊娠する以前から、「死」と「妊娠」についての関係を瀬在丸紅子からヒントを得て熟考し、なんらかの結論を導き出したようだが、それが殺人の動機に関係していなくもない気もする。しかし、繰り返すが、常人には理解しがたい。
両親を殺した後、四季は叔父に向かって動揺もせずに言う。
「私の産む子が大きくなれば、私や、叔父様をきっと殺すでしょう」
「F」においてその予想は半分は当たったといえるのだろうか。
13歳の少女が、この言葉を口にすることの意味を考えると恐ろしい。というか、ここで恐れている時点で私は四季の思考には到達していないし、したくもない。森博嗣はそういう「理解できない人物」として四季を設定しているのだろうけれど。カヴァーの文字を読後に読みなおして頂きたい。建設的かつ傲慢に感じられたその言葉が恐ろしくなるはずだ。

ここからは楽しい話を。別の見どころとしては、さらにふたつ、今回の事件と今までにほのめかされていただけだった人間関係が明確な形で提示された点を挙げておこう。とくにS&MシリーズとVシリーズをつなぐ人間関係、こういう本筋とは関係のない、いわば森博嗣の余技の部分は本当に楽しい。むしろ、ミステリよりもこう言う部分に萌えてこのシリーズを読んでいる読者が多いのではないだろうかと想像する。実は私もそのひとりだ。
ちなみに今回の事件というのは、この物語の帯になっている「誘拐」だ。しかし、わざわざ帯にするほどのクライマックスではなく、過去の事実の確認だけでは構成的に物足りないので、盛り上げるために演出してみた、という印象だった。とはいいうものの、私は誘拐犯と四季の会話がこの本の中で一番面白かった。誘拐犯とは、言わずと知れたあの人で、この展開、伏線の張り方はぜんぜんミステリとして成立していないし、そう言う意図もないと思うので、この作品は純粋にミステリ作品とは言えない。一冊まるまる「すべてがFになる」の解決版(部分解決版?)、言い方を変えると「F」ファンのための複雑かつまた楽しいおまけ、とも言えそうである。

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