てぬぐいさんのレビュー一覧
投稿者:てぬぐい
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紙の本もの食う人びと
2003/01/10 11:36
食べる風景のフルコース
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カラスや野犬と争いながら、残飯をあさる子供を見た筆者、
「食べ残すということが罪ならば、この子達がその罪をあがなっている」。
たとえば夕べ、炊飯器には数粒とはいえ米が残っていた。
これを洗って流してしまうか、きちんと茶碗に注ぎきって食べるか。
この二つの行為のはざ間に、「罪」が横たわっている。
巨大レストランのオーナーは言う。
「食べる快楽は、階級・宗教・身分に関係ない」。
果たして本当にそうだろうか?と考えてしまう。
そう、そのレストランに入れない人は?と。
この二つの人間のはざ間に、「身分」が横たわっている。
日本人が立ち食いそばを食べるのにかける時間が2分30秒。
ベトナム人がフォーを食べるのにかける時間は10分以上。
これが10年前の姿。
今のベトナムでは、一杯のフォーにどのくらいの時間が費やされているのだろう?
この二つの時間のはざ間に、「意味」が横たわっている。
とある炭鉱の町で、重労働のあとに食った一杯のスープ。
何もしない一日のあと食った同じ一杯のスープ。
前者を「死ぬほどうまい」と言い、後者はそれほどでもないと感じる。
この二つの感覚のはざ間に、「価値」が横たわっている。
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食うという営みと、食うための営み。
その無限の連鎖が淡々と描き出される。
あらゆる国・文化・環境において、当然のごとく異なるそれらの鎖。
いずれが正しいのか、いずれがあるべき姿なのか。
それを訴えかけるわけではない。
ただ、筆者が入り込み、捉えた「もの食う風景」。
ある風景は悲しく、ある風景は楽しく、そしてある風景は残酷。
禽獣も人もそう変わらない…
紙の本壬生義士伝 上
2003/01/20 11:53
辛夷の花
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一つ一つ、吉村貫一郎という侍の像に肉付けがされていく。
そして、その独白が淡々と、訥々と紡ぎ出される。
物語の中盤も過ぎ、その像がだいぶくっきりとした輪郭を結ぶころ、吉村が辛夷の花が好きだとつぶやく。
「ほかの花は温かくなってから咲くのに、辛夷の花だけは北風に向かって咲く」と。
なぜか突然、涙が止まらなくなった。
僕の中に形作られた、吉村貫一郎の像と、北風に向かって咲く辛夷の花が、あまりにもぴたりと重なり過ぎた。
新撰組は不思議だ。
百人いれば百通りの「カタチ」がある。
僕の中で土方は、この土方でしかありえないし、近藤にしろ沖田にしろ、それぞれに明確な「カタチ」を持っている。
そして、このカタチからはずれて描かれるとき、憤りすら覚えたりする。
これから先、吉村貫一郎がこの「カタチ」以外で描かれると、きっと怒ってしまうのだろうなぁ…
2002/11/29 14:07
魔法物理学なんていう言葉もありましたっけ
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『スプリガン』というマンガをご存知だろうか?
その登場人物の一人、ティア・フラットは言う。
「魔法ってそんなに万能のものじゃないの」「いつか科学と同じ次元で説明ができる」と。
アルテミスの世界で妖精たちが用いるのは、まさしくそういった意味での「魔法」だ。
いわゆるファンタジーの魔法はここではごくごく補助的なもの、妖精たちは超科学の兵器で武装している。
どんな兵器が出てくるかは、本編のお楽しみとして。
アルテミスはその頭脳を武器に戦いを挑む。
新らしい姿を与えられた世界、複雑に張り巡らされた伏線、妖精たちとの間に繰り広げられる心理戦、ウィットに富んだ台詞回し…
ファンタジーというよりはSFなのかもしれない。
どちらにせよ、「子供の本」にとどまらないことは確かである。
おまけについている暗号解読が、簡単すぎるあたりちょっと減点して、星4つ。
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