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先月(2017年6月)

ラミさんのレビュー一覧

投稿者:ラミ

2 件中 1 件~ 2 件を表示

必要なものを必要な人に届ける

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『思想』に連載した論文「自由の平等」をまとめた新刊が出るとしばらく前から著者のホームページ (www.arsvi.com) に予告されていたが、それがこの本。楽しみにしていたので、発売と同時にすぐに買って読んでしまった。

予告の段階では『SHARE−たんにわかたれないもののために(仮題)』でタイトル募集中とあって、評者も『分配−存在の自由のために』などと考えたりしたのだが、結局もとの論文のタイトルのままで落ち着いたようだ。ちなみに副題は「簡単で別な姿の世界」で、本の実物では「自由の簡単な姿」「平等で別の世界」となるように赤と黒で色分けされている。

著者は以前から自分の主張を「働ける人が働き、必要な人がとる」とまとめているが、基本的な立場は、機会の平等をいうリベラリズムの限界をいい、結果の平等とまではいわないものの補正すべき問題(例えば障害者に対する福祉、資金や介助が不足していること)には積極的な分配で国家が対応していくべき、その上で国家が撤退すべき領域が多くあるのではないかとして、「分配する最小国家」を構想するというもの。
 
今回もその延長線上にあり、リバタリアニズムや価値相対主義の批判などの論点が付け加えられている。特に重要だと感じたのが「世界にあるものの配置」と題された第6章。下に2箇所引用する。どちらも282ページより。

「社会科学にとって大切なのは、これは仕掛けであるといって終わらせるのではなく、その仕掛け、仕組みの一つ一つを記述すること、そのことによって、どの部品を減らせば、あるいはどの接合を組替えたら、何が変わるのか、変えることができるのかを考えることである」

「やはり解析し、組み直すことの可能性が考えられるべきは、社会にある様々なものの配置、流通、滞留、等と、それに関わっている事々の分離や遮断や争いを含む接合のあり方である」

——— 読み終わった後に、必要なものを必要な人に届けるとはどういうことだろうなどと考えてしまった。一言苦言。今回も著者の独特の文体に苦労させられた。具体的な主題を論じた短文は表現も含めて本当に素晴らしいと思う。しかし抽象度が高くなるほど、また長くなるほど(少なくとも評者にとっては)分かりにくくなってしまう…。

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一歩ひいて政治と教育を考える

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この著者の前著「オークショットの政治哲学」の良さにひかれ、続けて大学の講義のテキストとして書かれたというこの本を読んだ。ジュヴネル、オークショット、プラトン、マキアヴェリ、ホッブズなどにふれながら読者を政治学の入り口へ導いていく。

特徴的なのは、「知らないでいるうちはそれなりに幸福でいられた、といったものの存在をあえて知ることで、相手を不幸にするおそれが教育という営みにはある」「オークショットのいう『できることなら当然に解放されたいと願う本来的に重荷に満ちた活動』にあえて聞き手や読み手を引き込む」(「はしがき」より)といった言葉に見られるような著者の一歩ひいた姿勢である。

研究と教育の二つの役割を担う学者という存在でありながら自らの仕事に積極的に没入することはせず、ディレンマを抱えつつ一歩ひいて斜めから考える。この点に何とはなしのおかしさと共感する気持ちを抱いてしまう。

肝心の内容は、著者自身が認めるように決してよくまとまった入門書とは言えないのだが、随所に著者独自の見解が散りばめられていて、やはりよく書けていて面白かった。

とくに印象的だった箇所は、「思慮の推論がいかに申し分のない政策案に行き着いたとしても、その諾否はつねに他者を説得する言葉の力にかかっている。しかしいくら立派な—「科学的」な—根拠によって正当化された政策だからといって、その内容がそれだけ良くなる保証などありえない。政治が思慮と説得の事柄であることを望むのなら、われわれはどこまでいっても未決定性のスキャンダルを耐え忍ばなければならないのである」(P.77「説得の政治」より)。

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