サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. わじゃさんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年8月)

わじゃさんのレビュー一覧

投稿者:わじゃ

11 件中 1 件~ 11 件を表示

見ず嫌い・読まず嫌いの人のための「指輪物語」

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 バカファンタジーは好きなんだけど、おおげさなのは性に合わないゆえ、世界最高のファンタジーと言われる原作にも作者にも、ましてやハリウッドだのアカデミー賞だのまったく興味のもてなかった私。「あれは一部が一番つまんないんだよ。だまされたと思って全部見てみ」という知人の言葉に、若干斜にかまえつつ、ビデオで見てみました。
 
 指輪を葬ろうとする旅の結末。すごく悲しくて、リアルで、でも救いがあるの。それまでの数々のいやーな話(フロドの眉間のしわとか)は、すべてここに収斂されていた。物語ってそういうものなんだ。
 
 これは原作にあたってみなければ。
 
 すると。うわ! エルフ語の本まである(笑) エルフっていうのは物語に重要な役割を果たす妖精の一族で、北欧神話に出てくるのです。「指輪物語」は文学者で言語学者であるトールキンの研究の集大成みたいなもので、エルフ語の文字はトールキンが北欧の伝承物語研究の中で、古ケルト語をベースに創作したのだそうです。すごい人がいたんですねー。
 
 原作は、話があっちにそれたりこっちにそれたりするところにかえって神話的な世界の厚みが感じられました。素朴な訳のおかげもあって、もっとゆったりして朴訥とした印象です。トールキンはこの古風な伝承物語風な語り口をわざとやってるのです。お話の中で、登場人物(ピピン)に、プルースト以降にありがちなくどくどしい情景の描写なんかをギャグっぽくさせてるくらいだもの。

 映画の方は必死で話を進めないと終わらないので(笑)、もっとスピーディーで、ハリウッド映画らしく視覚的・直感的に訴えるつくりになっています。会話もすごく洗練されている感じです。ただし洗練されすぎてて、会話のひとつを聞き漏らすとあとで意味わかんなくなったりするので注意。
 
 ファンタジーに抵抗がある人は、作家や物語が創作された背景からはいる楽しみ方もあるかも。いまさらトールキンや「指輪物語」やこの三部作の映画について、私などが語ることもないのは百も承知なのですが、私といっしょで、見ず嫌い、読まず嫌いの人もいるのではないかと思い書いてみました。ただいま、全6巻の原作の3巻目にとりかかり中。映画を見ておおまかなところをつかんでからトライするのがオススメです。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

調味料の分量だけじゃない、料理に必要な何か

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 シャンソン歌手石井好子さんの有名なエッセイ「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」のビジュアル・レシピ・ブック。

 「巴里の…」のレシピは、氏ご自身が後書きでおっしゃるように、現代の他の料理本と比べるとあまりに素朴です。でもこの本から伝わってくるのは作り方だけじゃないのです。お皿、テーブルクロス、グラス、鍋、コースター、いろんなものが組み合わさって、異国のハイカラな文化と、それに憧れる若々しい好奇心や憧れをぎゅっと凝縮したかのようです。

 料理って人や人との関係とそっくりだなと思うことがあります。高価な食材を使っても、どうやったらこうまずく作れるんだ! って感じになっちゃうこともあるし、ゆでたじゃがいもひとつがほんとにおいしいサラダになることだってある。ある人が作ってくれればなんでもおいしいということもあれば、あの場所で食べるからおいしいんだということだってあるのだと思う。料理に必要なのは、化学の実験みたいなレシピだけではなくて、その人でなくてはだめだ、っていう何かなんじゃないのかな。

 この本からは、石井好子さんでなくてはありえなかったあのエッセイの世界が、写真の一枚一枚、イラストの1点1点を通して伝わってきます。エッセイが出版された1963年当時、まだ生まれてもいなかった若いスタッフの皆さんが、レシピだけじゃない何かを石井さんから受け取りたくて、それを読者に伝えたくて一生懸命な様子が伝わってくるようです。

 なんてことのないものを楽しく作っておいしくいただきたいな。としみじみ思ったのでした。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

わたしたちの音楽史

2004/11/23 18:14

「のだめカンタービレ」を読んでクラシックに興味を持った人たちへオススメ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いまをときめく爆笑クラシックまんが「のだめカンタービレ」。ご多分にもれず私もマンガを読んで蔵クラシックに興味を持ち、わかりやすい音楽史の本がないかなーと探していたところ名著発見!

 原始人がたいこを初めて叩いたときのことから、宇宙のひびきを再現する未来の音楽(の妄想)まで、音楽の歴史をヨーロッパを中心に2段組300ページでかけぬける本。すんごーい面白い! ハイドンさんてすんごいいい人だったのね。ベートーヴェンて生涯独身で寂しかったのね。ヘンデルさんは大食漢だったのね。ヴァザーリの「ルネサンス画人伝」を思い出してしまった。考えてみればそうですよ、何百年の時を経て伝えられる音楽家たちが人間的にスケールが小さいわけないものね。そうか、そう考えればいいのか。「神」とか言ってないで。偉大な作曲家を「神」とか言うのほんとやだなー 人間がやってるからすごいんじゃないって思ってしまう。そういえばミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチを神よばわりするのってあんまり聞いたことないな。

 そしてこの本は挿絵がとってもいいのです。学校の仲間と管弦楽団を作り得意になって指揮をするシューベルト少年や、6歳のモーツァルトが演奏を誉められてマリア・テレジアにとびついてキスするところや、パリのオペラ劇場で劇中にほんものの象が登場しちゃうところなんかが次々に出てくるのです。楽しいじゃないかー。

 あと、ワーグナーの章でルートヴィヒ2世があっさり変人よばわりされてるのが面白かった。ヴィスコンティの映画やノイマイヤーのバレエを見ていると、ワーグナーの方が、金目当てでナイーブな王の狂気につけこんだ極悪人に見えます(笑)

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本怒りのブレイクスルー

2005/01/15 08:58

天才は世間知らずなお人好しだった

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 2005年1月11日、青色発光ダイオード発明者の中村教授が、所属先の日亜化学に200億の発明の対価を請求していた訴訟で、日亜化学が中村教授に8億4391万円の発明の対価を支払うことで和解。翌日の記者会見で、中村教授は「完全敗訴」「日本の司法制度は腐っている」とまで言ってキレまくっていた。

 この機会に読みそびれていた「怒りのブレイクスルー」集英社文庫 を読んでみた。2001年に刊行されたものの文庫版。アメリカに移住した翌年の本ですね。

 冒頭の文庫版のために書かれた文章が泣ける。東京地裁で日亜化学に200億の支払い命令が出されたのが2004年1月、文庫化されたのが2004年5月のことだから、その間に書かれた文章だろう。仮定の話になるけれど、と前置きしたうえで、「ある程度の額を勝ち取ることができたら、やる気のある学生に奨学金をだしたり、優れた研究機関に費用を援助したり、教育的な財団を設立するとか、自然科学系の教育を支援してもいい」と考えたそうだ。

 ともうその時点で完全に中村びいきになり本文を読み進めたのが、これが思わずあぜんとする他ない素晴らしい(いろんな意味で)エピソードのオンパレードなのであった。

 毎日夕方6時頃、研究室が爆発するのが近隣の名物だった。とか。
 他社の研究者に「よくこれをひとりで設備もなく作りましたね」と仰天され「だから買ってください」と営業してまわり「このまま営業部に配属されたらどうしよう」とおびえた、とか。
 予算もスタッフもいないので実験設備を全部自作し、大企業の研究者なら器材の発注・納品に3ヶ月もかかるところが1日でできた、と得意げだったり。
 青色LEDやろうと決めて当時の社長にかけあい米国に留学することになったものの、飛行機に乗ったことなくてすごいこわかったとか。
 実はすっごい人付き合いがよくて、年下の部下ともうまくやっていけるとか。
 アメリカの友人からは敬意と同情をこめて(会社の)スレイブ中村と呼ばれたとか。

 この人、ノーベル賞に最も近い男って言われるような人なんですよ!?(笑)

 この(笑)ってつけたくなっちゃうところがポイント。この人の文章なんかおかしみがあるんですよ。すんごい苦労話してたかと思うといきなり子供の頃の兄弟げんかに話がとんだり、万年負け続けの部活動(バレーボール部)の話になったり、会社に文句言ってたかと思うと日本の大学受験制度はなっとらん! と怒り始めたり。

 失礼だけれども、ご自身が何度も繰り返しおっしゃるように、世間知らずな人だなーって印象は否めない。そしてむちゃくちゃで子供みたいでばかみたいにお人好しで、それはほとんど「本当にこのひとは−研究がなかったらいったい−」って言いたくなっちゃうくらい。アメリカだっていいことばかりじゃないと思う。大学の研究グループのボスが、学生の研究成果に横槍をいれたり、上層部がごちゃごちゃ言ってきたり、個人の業績を会社が横取りしたり、そんなこと日本じゃなくてもどこにだってあるだろう。でもだからこそ、こういう人がいてくれなくちゃつまんないですよ。ほんとに。

 会社とうまくいかなかったことは残念なことです。でもご自身を信じて、アメリカでほんとがんばって欲しいなーって思います。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

邪悪を斬る

2004/12/09 13:52

女難剣難てんこもり

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 死体。血飛沫。紐跡。相続。嫉妬。短剣。密室。こう書いてるとほとんど牧歌的ですが、殺人ほど素敵なものはない! でもエンターテインメント文庫では、冒頭のシーンは濡れ場なのです。正直言ってかなーりへきえきしました。なんべん言ったらわかるのよだから私はセックスより死体が好きなの!

 気をとりなおして読み続ける。わはは。この主人公やっぱり面白い。前作「流星を斬る」で走りまくっていた浪人梢竜四郎ですが、今作でも走っています。刺客を差し向けられて、とりあえず走って逃げる(というか身をかわす)んだけど、その走り方っていうのが

 手足を互い違いに出す普通の走り

 っていうんだから本気出したらどんな走り方するのよって思うじゃないですか。はい、あなたのご想像のとおりです。爆笑しました。いやーなんというかかっこいいというかかっこ悪いというか、美を備えていない「本気」なものほど美しいというか、なんともいえない壊れっぷりが爽快でした。

 そして今作から初登場の名医安軒(あんけん)センセイの活躍にも期待。作者が作家デビューするきっかけでもあり、bk1の編集長日記で余命1ヶ月を宣言し世を騒がせた安原 顕氏がモデルなのだとか。あの毒舌が再びよみがえります。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

流星を斬る

2004/08/06 00:18

ブコウスキー再来

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 女難・剣難てんこもりのこのダサかっこいい感じ。もうブコウスキーですよ! キル・ビルなんか見てる場合じゃないって、ホント。

 時は明和9年、所は満開の桜の花びらが吹雪のように舞う墨田堤。作者が時代劇に初挑戦した作品なのだとか。

 主人公がめちゃくちゃポップでかっこいい! いやかっこいいのかどうかさえ実はもうよくわからないのです。放浪の剣士、梢 竜四郎は、なんか知らないがやたらと走る。剣の練習をするときも、悩んでいるときも、夜中の江戸の町をひたすら走る。義賊をきどる弟分と盗みの相談をするときもふたりで走りまくる。走りながら打ち合わせする。そんな浪人きいたことないって(笑)。ルパン三世だって目的もなく走り回ったりしないよ(笑)。

 そして女好きなのか嫌いなのかこれがまたよくわからない。「同じ女は一度しか抱かぬ」なんて言っちゃって、クールなのかしら? と思ってるとお金をもらって大奥の女たちの相手をすることを平気でやっちゃったりもする。お約束どおり、抱かれた女たちはみな彼に夢中になってしまうんですが、女たちも負けてない。夢中になったわりにはというかだからこそなのだけれど、なんとか彼を亡きものにしようと騙したり刺客を差し向けたりぶっそうなことこのうえない。いくら女性にもてても、男性がこれを読んでうらやましいとは思わないんじゃないかしらん。

  あー面白かった。次作もとっても楽しみです… が、唯一の心配は、こういうほんとのポップな作家さんって、一般的には死んでから有名になるものなんじゃないか? ってこと。そんなこと言わずに(私が言ったのか)ぜひ生きてるうちに直木賞かなんかさくっととって欲しいものです。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

忌中

2003/12/19 00:01

ドスのきいた純文学

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「日本の文学に決定的に欠けているのはドスのきいたリアリズム」と言ったのは猪瀬直樹氏だが、ドスのきいた純文学ならある! 文学の凄みってこういうものだったんだ! とえらく感銘を受けた。

 例えば冒頭の「古墳の話」。「私」の、麻原彰晃は死刑にしたらよいという聞き苦しい断定で物語は始まる。ところが一転して客観的な新聞記事の引用が続く。章が変わって、話はいきなり古墳に飛ぶのである。この話はいったいどこへ向かっているのかと読み進めずにはいられない。2編目の「神の花嫁」の一種のどんでん返し。表題作「忌中」の脇役達。

 効果がすみずみまで考え尽くされた文章だから、心中、殺人、自殺といった凄惨極まりない事態に直面している主人公達がこんなにもいきいきとしてみえる。ミステリーや冒険小説でストーリーを追いかける楽しさとは全く別の、文章の技術の精巧さを堪能した。

LA DOLCE VITA

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本依存性パーソナリティ障害入門

2005/01/08 15:20

心理学は流行りすたりが激しい

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

矢幡 洋氏の「依存性パーソナリティ障害入門」日本評論社 を読んだ。感想。心理学(に限らないと思うけど)は流行りすたりが激しいなー。

 日本人の特性をあらわす「依存性」を解き明かそうとする書物として、71年の土井健郎「甘えの構造」が有名だけれど(2001年に新版が発行されている)、矢幡氏は「甘え概念は依存性概念に席をゆずって退場すべき」と言っている。

 −依存性の現象を解明するのに、「相手との密着関係への願望」「母子一体状態への希求」「「母親への幼児感情の転移」「分離を否定し一体化を求める」「分離の痛みを止揚しようとする努力」などといった精神分析的な大仰な道具立てが何ら必要でないことは明らかである。ミロンやベックが主張するように「自分の能力を過小評価するという認知パターンを持っている人間が安心感を獲得するためのスキル」というシンプルな定義で十分なのであり、この明瞭さが依存性概念にさまざまな社会現象を解明する機動性を持たせているのである。−

 精神分析ってなんなんだろなって思う。ある精神科医の人が「患者は皆同じことしか言わない」と言っていたのを聞いたことがあるけど、それは精神分析の理屈にあてはめる聞き方をしているから皆同じに聞こえるのではないかしらん。人の行動の因果関係のパターンを体系的にしたものが精神分析なのでは? 問題なのはそれでその人が何をするか、なのだ。

 ただ、自分のルーツを確認することで、現在のその人の身の上に起こる困った現象が解消されることってほんとにあると思うから、否定するつもりはぜんぜんないのですけどね。

 なるほどなーと思ったのは、一世を風靡したように思われる(思われる、というのは、リアルタイムでは読んでないから)土井健郎の「甘えの構造」が、認知理論全盛期の今となっては全く不要なものとされている点なのです。人間のやってることってあんまり変わらないような気がするけど、それをどうとらえるかという考え方が30年かそこらでこんなに大きく変わるというのはなかなか興味深いです。門外漢の私にも、現在の心理学の動向などがわかりやすく書かれてあってよい本でした。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本13歳のハローワーク

2004/01/21 23:39

大人もどうぞ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この世の中には2種類の人間・大人しかいないと思います。(略)2種類の人間・大人とは、自分の好きな仕事、自分に向いている仕事で生活の糧を得ている人と、そうではない人のことです。

 という序文で始まる、村上龍のお仕事紹介本。なんか2種類の人間しかいないって言ってる人多いね(笑) 読んでて面白いのは職人さん系の仕事。最高峰の独立時計技師を目指す人はスイスの学校で学ぶのがオススメ、とかバイオリン職人ならイタリアのクレモナに専門学校があるとか。プロスポーツ選手は分野ごとに国内のプロ選手の数が書いてあって、例えば、サッカー800人・野球700人・競馬900人・テニス200人・プロレス&格闘技100人てな具合。

 クリエイターと職人系の仕事のことしか書いてないような気もするものの、楽しくぱらぱらとめくっています。海外に留学したいと考えるほど時計が好きな13歳なら、このテの情報はどういうわけか手に入れているものだと思うのだけれど、こんなふうにあえて図鑑にしてあげなくちゃならないなんて、どっちかというと子供たちより、いい学校→いい会社→幸せ という図式からこの期に及んでも抜け出せずにいるばかりか、子供たちにもう役には立たないその図式しか示すことが出来ずにいる大人たちが待っていた本なのかもしれません。

LA DOLCE VITA 

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

ミステリーの楽しみ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アントニイ・バークリーとポール・アルテがランクインしているという理由から、探偵小説研究会編「本格ミステリ・ベスト10 2004」(原書房)をこの年末年始のナビとすることにしました。本書は第3位。

 探偵小説なんて遊びなんです。どんなにおぞましい殺人も、恨みや嫉妬といった誰でもが持ち合わせているに違いないネガティブな感情も、全て遊び道具。犯罪がおぞましければおぞましいほど、動機がせこければせこいほど、それを面白がるのがエレガンスってものです。

 かといってトリックに懲りすぎるのはこれまた野暮。1920年代、ミステリ黄金期を代表する作家のひとり、アントニイ・バークリーは野暮なミステリーを美しい指先で(そういうイメージ)鮮やかにさばいてみせるのでした。終章近く、××が△△するあたりではこらえきれず爆笑。これを3位にもってきた探偵小説研究会はえらい! ただしそれだけにストーリーテリングのダイナミズムという意味では、ちょっとだけ物足りなかったりもするのだった。

LA DOLCE VITA

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本死者と踊るリプリー

2004/01/16 23:43

ハイスミス・ワールドへようこそ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 50年代に「パラノイアの詩人」と謳われたミステリー作家、パトリシア・ハイスミス。彼女が特に愛し、映画「太陽がいっぱい」「リプリー」で世界中に奇妙な共感を生んだキャラクター、トム・リプリーは原作で読むといいがたく魅力的。被害妄想気味で自己中心的、頭がよくて、強迫的に行動力があり、クールでエレガントなものが好きで、恋人を大切にし、そしてそれぞれの度合いがちょっとずつ人より並外れている、つまりごく多数派の人間のもつ特徴を体現している不思議な人物です。今時の、怪物のように単純至極なサイコ・キラーとは一癖もふた癖も違ってる。

 例えば、引っ越してきた隣人が自分の家のまわりをうろついて写真を撮ったりしてたら、誰だっていやな気持ちになりますよね。やめて欲しいと穏やかな手段で伝えたり、町内会でさりげなく言ってみたり、それでもやめてくれなかったら、引っ越していってくれないかなーと願う… 行動には移さないまでも殺意をおぼえさえするかもしれない。

 お話は、この隣人の目的や何者なのか? という謎とともに進んでいきます。トムは敢然とこのいやらしい隣人に立ち向かいます。同棲する彼女の身の安全を心配し、近所の気持ちのいい友人達の力を借りたりもします。ストーカーに対処するにはこうあるべきってくらい、爽やかで毅然としたトムの姿を楽しめます… っていうのはもちろん、トムには贋作画家を自殺にみせかけて殺した過去があると、読者は知っているからなんです!

 じゃあトムなら、実際にこの隣人を殺してしまうんでしょうか? トムはもちろんそれを考える。でもハイスミス・ワールドではそういうことは起こらない。なんなのよ〜 と笑うしかないオチは他の作家にされたら激怒すること間違いなし(苦笑)

 トムもトムなら、隣人も隣人なのです。そもそも人間てへんな生き物なんだよなーと、自分のへんさに少々うんざりすることもある私はハイスミス・ワールドに入り込むたびに、奇妙な安心感を覚えるのです。

LA DOLCE VITA

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

11 件中 1 件~ 11 件を表示