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先月(2017年4月)

烟霞さんのレビュー一覧

投稿者:烟霞

3 件中 1 件~ 3 件を表示

現代資本主義にふさわしい会社形態が株主主権的な会社でないことを分かりやすく論理的に説明した一冊

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 近年、日本では、リストラだ、グローバルスタンダードだ、株主重視だと、日本的経営を否定するような考え方が強くなっている。だが、この考え方に則った改革が必ずしも十分に効果を挙げているとは言えず、今の日本には、一体何をすべきか方向性が見えず、苛立ちの気分すら蔓延している。
 そのような中で、本書は、経済学の本でありながら、通常経済学で使う「企業」という概念でなく、日本人にとって馴染み深い「会社」に焦点を当て、読みやすい文体でかつ論理的に、現在の資本主義では米国的な株主主権的な会社はグローバル標準にならないことを説明する。本書を「目からウロコ」といって読む人は多いと思う。
 本書が、会社には「法人名目説的な仕組み」と「法人実在説的な仕組み」の二面性があるとして分析を進めているのは目新しいが、本書の中で用いられている説明の多くは、これまでよく言われてきた議論をベースにしていると言って良い(たとえば「知識や能力が重要」「差異が利潤を生む」など)。
 では、本書の何がが良いかというと、一つには、世間一般で言われるが真に正しいか論証されていない命題(たとえば、株主利益の最大化、ITが資本主義を変えた)を主張するあまたの書籍と異なり、本書が、根源的に、会社とは何か、資本主義の本質はどう変化したか、それに会社はどう対応すべきか等を、既存の枠組みを組み合わせて探求し、その結果を、一般の人々にも分かりやすく、かつ一貫した論理で説明していることである。
 さらに刺激的なのが、そうした分かりやすい論理展開によって得られる結論が、今日の通俗的な議論、たとえば、会社は株主主権的であるべきだ、といった議論と逆になってしまう、ということだ。
 つまり、グローバル化、IT革命、金融革命により、差異が容易に解消され、モノやカネ等の標準化が進んでいる(たとえばおカネや機械設備などは安価となり世界中で皆が利用できる)。このため、企業が利潤を上げるには、独自の差異性が必要で、そのためには知識資産、それを生み出す人間の知識・能力が重要になっている。この人間の知識・能力を活かして独自の差異性を創造するにふさわしい企業組織とは、株主主権的な会社ではなく、「法人実在説的な会社」、即ち会社それ自体が純粋なヒトとして、組織特殊的な人的資産を外部(株主など)から保護し、従業員による創意工夫が内発的に行われることを促す形態なのだ − というのが著者の主張だ。それでいて安易に日本的経営復活論になっていないところもよい。
 ただ、本書にもいくつか問題があると思う。たとえば、全体として主張が「仮説」の域を出ていないこと、また、著者のいう人間の知識と能力が活かされる企業組織を作ることは実際容易でなく、その困難性にも理論的に言及すべきでなかったかということが問題点として挙げられよう。
 しかし、より重要と思うのは、著者が主流になるという「法人実在説的な会社」には企業変革のモメンタムが乏しいという欠点があることに触れていないことだろう。このような会社では、市場環境の変化等により不必要になった組織特殊的な人的資産や変革の障害となる企業文化も保護されてしまうし、経営者等のモラルハザードを是正する契機も小さいであろう。そのことは、会社自身、ひいては経済システム全体のパフォーマンスにも影響しかねない。現代の日本でコーポレートガバナンス、株主重視の経営などが叫ばれているのは、まさにこの問題の存在が背景にあるからではないだろうか。組織特殊的な人的資産を保護する「法人実在説的な会社」が主流となる、と言われると、若干留保を付さざるを得ない。
 とはいえ、本書は、現代の経済の「本質」に迫った上で、業績の低迷する日本企業にも今後の方向性を示唆した、他の一般向け経済書ではあまりお目にかかれない内容に富んだ一冊である。一読に値する。

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多様性が確保される一方で情報管理される現在の社会において「自由」とは何なのか

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 先日、個人情報保護法案が衆議院で可決された。この法案や住基ネットに対しては報道の自由、プライバシー保護等の観点からマスコミや識者から過剰なまでに反対論が展開されてきている。この種の反対論は、基本的に旧来的な国家権力に対する懐疑に基づく発想といってよいが、これに対しては違和感、あるいは「ピントはずれ」であるとの感がしてならなかった。
 本書を読んで、そうした感覚が誤っていなかったと思った。
 本書は東浩紀と大澤真幸の3回にわたる対談を収録したものである。テーマは今の時代において「自由」とは何か、である。
 本書の対談の内容は多岐にわたるが、思い切って要約すると次のとおりになるだろう。現代社会において、権力は、(東浩紀の言葉でいえば「動物化」した)生物としての人間を生かすために行使されるものであり、セキュリティの確保、個人認証による情報管理の形をとる。これを本書では「環境管理型権力」と呼んでいるが、この下で人々は十分な多様性が認められているし不自由さも感じない。またこの権力は必ずしも政府が主導するとは限らず市民自らが自発的に行う場合もある。したがって、このよう現代の権力に対して、国家を軸とした旧来的な権力のあり方に対抗する議論をぶちあげてもピントがはずれるだけなのだ。
 では、現代社会においてこの「環境管理型権力」で脅かされるのは何だろうか。著者たちは、概念化することの難しさを認識しつつ、それを、東は「匿名の自由」(プライバシーとは異なる)、大澤は「(根源的)偶有性」だとしている。つまり、ある人間を、いろいろな記述(データ)で把握することができるようになり、そのような記述では還元できない固有性の領域が小さくなってしまうことだ(そのため人々が自らの固有性を感じられなくなっている)。
 このようにして、著者たちの指摘する問題の所在は何となく見えてくるのだが、では現実において何がどう問題となるのか、どう新しい権力に対抗すべきなのか、大澤も東もきちんと理論化・概念化できているとは言えない。また、「環境管理型権力」の問題がこれで尽きるのかもよくわからない。ただ、これらの点は、著者たち自身が十分に認識済みで、たとえば、東は「まえがき」で、この対談が「いま起きているさまざまな事件は、…あえて考えればこんな思想的な問題を孕んでいるんだよ、と注意を喚起するために行われたものである。だから本書では問題は解決されない。ただ提起されるだけである」と言っている。
 本書と同様のテーマで、大澤が「<自由>の条件」、東が「情報自由論」を本年中に単行本化する予定だそうだ。そこでクリアに提示されるのかどうかまったくわからないが、とりあえず彼らの単行本を待つことにしよう。
 いずれにせよ、本書は、マスコミ等に蔓延する安直な論調と異なり、はるかに的確に現在の社会の問題を抉り出した興味深い一冊であった。
 なお、「9・11以降の現代思想」という副題はいかがなものかと思う。本書の対談は必ずしも9・11の事件が生起した思想の状況を描いたものというより、むしろ東がいうような、1995年頃からの思想の状況に対応していると考えた方が適当であろう。

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紙の本アメリカの論理

2003/04/20 15:34

ブッシュ政権はなぜイラクに対して戦争を仕掛けたか:日本人のためのわかりやすい米国外交「入門書」

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 イラク戦争に向けた米ブッシュ政権のやり方に疑問を持ち、あるいは反対している人々は日本にも多い。しかし、そのような人々がなぜブッシュ政権があのような行動をとったのか、十分理解しているとはいえない。単純に、ブッシュ大統領を含めた政権関係者の石油等に関する利権の確保のため、という(もっともらしいが根拠が示せない)「憶測」を正しいと信じている人は結構多いように思う。
 しかし、ブッシュ政権に対する支持は米国内でかなり高い。日本のメディアは世界の世論を映し出すときに、(無意識にそちらに共感を覚えるせいか)反戦的・反米的な見解を取り上げがちであるが、米国民の圧倒的な支持があることが米国の対イラク戦争の欠かせない要素になっているはずである。「石油利権」ですべてを説明しようというのは無理がある。なぜブッシュ政権がイラクに対して戦争という手段に訴えたのかをまずきちんと客観的に理解することが、日本外交を考えていくうえで必要はずだが、日本のメディアや一般の人々は、自らの一面的な見方ばかりにとらわれていて、しかもそのことを自覚できずにいる。不幸なことだ。
 その意味で、最近の米ブッシュ共和党政権関係者の主に外交に関する考え方と政権内での動向を、イラク戦争を中心に据え、事実をおさえながら、一般向けに非常にわかりやすく説明した本書には意義がある。特に、日本のメディアでも最近よく取り上げられるようになったが、ブッシュ政権の外交を主導しているといわれる「ネオ・コン(ネオ・コンザーバティブ、新保守主義)」の議論、中でも政権内に多くのメンバーを抱えるシンクタンク「PNAC」の議論を一般に紹介しているのはタイムリーである。また、ネオ・コン勢力に対抗するパウエル国務長官などの動きも要領よく描いている本書を読むと、政権内でもネオ・コンは必ずしも優勢であるわけでもないようだが。
 本書は、内容にさほどの深みはないが、時宜を得た米国外交の入門書である。ただし、なぜ、この種の外交思想を持ったブッシュ政権が米国で誕生したのか、その背景となった米国の事情は何か、といった点に言及がなされていないのが物足りないところである。また、最終章である第9章「ナイーブな帝国の行方」は歴史を振り返っての米国外交の性格を書いたものだが、本当はこれで一冊の本が書けるほどの事項のはずで、本書の記述はあまりに単純にすぎるし、情緒的だ。「アメリカ外交の歴史の中で、対日外交はユニークな地位を占めているといえる」(175ページ)という点も本書を読む限りはよく理解できない。
 いずれにせよ、本書のようなアプローチは、世界最強の国、そして日本の同盟国である米国について、常に行われてしかるべきものである。日本は米国については経済状況への関心は高いが、こと政治に関してきちんとフォローし分析することが少ないように思う。こうした点で本書が日本の多くの人に読まれることを期待したい。

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