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敏腕ジャーナリストにより浮き彫りにされた水危機

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 地球は水の惑星と呼ばれ、地表面の70%は水で覆われている。ところが、人間が手に入れることができる、海水ではない水は、その0.08%以下である。本書では、この貴重な水に関するさまざまな危機が、敏腕ジャーナリストによって浮き彫りにされている。

 水に関する最大の危機は、必要な水を十分に得られない人が世界に大勢いることだ。世界人口の三分の一は、人間が最低の生活を一日営むために必要とされる50リットルの水も得られずに生活している。著者は、水は基本的人権(ヒューマン・ライト)として誰でも得られるべきなのに、現在は世界環境サミットにおいてすら、水は必需品(ヒューマン・ニード)と定義されてしまい、誰でも無条件に保証されていないと批判している。

 一方で、人間は、農業・工業・生活用水の確保や、洪水防止、水力発電などのため、各地にダムを建設してきた。ところが、このダム下流では水質汚濁、生態系の破壊が問題になっている。さらには、ダムなどで人工的に水を管理することが、逆に大洪水につながった例も紹介している。

 貴重な水をめぐっては、国家、地域紛争も勃発する。第三次中東戦争は、イスラエルの近隣諸国がヨルダン川源流からの分水をして、イスラエルへの水供給を絶とうとする計画が原因だとされている。このような、各地の水紛争の解決のためには、当事者が顔をつきあわせ、話し合うことが大切だと言う。例えば、南米のピルコマヨ川での汚染問題でボリビアがアルゼンチン、パラグアイと対立し、軍事的な小競り合いになった。その時、旧・ソ連の元大統領、ゴルバチョフが設立したグリーンクロス・インターナショナルが、三国を話し合いのテーブルにつかせ、汚染問題は解決に向かったのだ。

 水に関するあらゆる問題をコンパクトにまとめており、世界の水問題の入門として適している。訳もこなれており、読みやすい。『地球環境報告』(石弘之著)に似た雰囲気を持っていると感じた。

(橋本公太郎/東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻 助手 http://www02.so-net.ne.jp/~hashi/kohtaro/index.html)

【目次】
序章  世界の水危機の現実
第1章 管理された奔流
第2章 隠された砂漠
第3章 基本的人権か必需品か?
第4章 民営化がもたらすもの
第5章 水は高きへ流れる
第6章 再生への道
第7章 勝者はいない
第8章 水の惑星
終章  救済
謝辞
解説  世界の水危機と日本(沖大幹)
訳者あとがき
参考文献

【関連書】
E.C.ピルー著『水の自然誌』河出書房新社
石弘之著『地球環境報告』岩波新書
石弘之著『地球環境報告2』岩波新書
マルク・ド・ヴィリエ著『ウォーター』共同通信

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映画のシナリオタッチで描く「ボーパールの悲劇」

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 1984年12月2日から3日にかけての深夜、インドのボーパールの農薬工場で起こったイソシアン酸メチル(通称ミック)の漏えい事故は、「ボーパールの悲劇」と呼ばれる史上最大の産業災害に発展した。公式発表では死者は1754名といわれているが、実際の死者は1万6000人から3万人の間と推定されている。この本は、農薬工場が「ボーパールの悲劇」をひき起こすまでの出来事を、貧民地区の生活の話を交えて、映画のシナリオのようなテンポで描き出している。

 米国ユニオン・カーバイド社は、猛毒のミックを原料とする、万能の農薬セヴィンの工場をインドのボーパールに造ることになった。ところが、カーバイド社は、ミックの危険性についてはひた隠しにした。そして、必要以上に貯蔵するのは危険であるミックを120トン貯蔵できる大きなタンクを備えた工場を、多数の貧民が居住する「黒い空地」と呼ばれる土地に建てたのだ。

 カーバイド社は、ミックの危険性は十分認識しており、多数の安全装置と、守るべきマニュアルを用意した。しかし、セヴィンの販売不振により工場は1984年には操業停止状態になった。貯蔵タンクにミックが60トンも貯えてあるにもかかわらず、冷却装置、漏えいガスを除去する水酸化ナトリウム洗浄設備が止められた。さらに、漏えいしたガスを燃焼排気する装置までも除去してしまったのだ。

 そして、12月2日の夜を迎える。貯蔵タンクにつながるパイプを水の洗浄時に、配水管が詰まり、水がタンクの中に流れ込んだ。水とミックが反応し、タンクの圧力が上昇した。そして、ついにはミックが漏れだしたのだ。ミックは空気より重いため、漏えいガスは地を這って貧民居住地区を直撃するのだ。

 貧民地区の生活を交えることで、「ボーパールの悲劇」のむごさを心に響かせることに成功している。膨大な資料をあたり、ボーパールの貧民地区に住み込んでの取材が実った力作である。

(橋本公太郎/東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻 助手 http://www02.so-net.ne.jp/~hashi/kohtaro/index.html)


【上巻目次】
読者への手紙
第1部 インドの空の新星
1 人命を奪う爆竹、死にゆく子牛、殺人的昆虫
2 無数の昆虫による地球規模のホロコースト
3 オリヤー・バスティーという貧民地区
4 食料を救う大金持ちの夢想家
5 ハドソン河畔の三人の徒刑囚たち
6 バスティー住民の日々のヒロイズム
7 世界を睥睨するアメリカの谷
8 列車の座席の下を這いずる小さな娘
9 ゆでたキャベツのような毒臭
10 神の慈悲を享受できる人たち
11 「未来への手」
12 千一夜物語の王国跡、約束の地
13 六百の言語と三億人の農民の大陸
14 きわめて特殊な売春斡旋業者
15 「チョコレート工場ぐらい無害な工場」
16 インドの空の新星
17 「ブルドーザーを突っ込ませたりはしない」
18 恐怖の報酬
19 怠惰な詩人の会
20 「カーバイドのせいで水が腐った!」
21 「すばらしい工場」ではじめてつくられた致死液
22 カーニヴァルのように飾った三つのタンク
23 「一日も欠かさずに五十万時間、働いた」
24 黒い空地にいつまでも
第2部 星々の祝福する夜
25 殺す前に陽気にさせるガス
26 「諸君はみんな塵芥と化すだろう」
27 貧しき英雄たちにはアリ・ババの宝物
28 上等のウィスキーを好む財政家

上下まとめて買物カゴに入れる

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