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石堂藍さんのレビュー一覧

投稿者:石堂藍

4 件中 1 件~ 4 件を表示

14世紀の世界観を知るうえでもきわめて興味深い

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 14世紀後半に成立した作者不詳の長篇叙事詩「サー・ガウェインと緑の騎士」は、中世イングランドで書かれたアーサー王ロマンスの中でも、最良のものの一つと言われる。本書は、その「緑の騎士」のほか、同じ作者のものと思しき長篇詩「真珠」、フランス系の妖精物語「サー・オルフェオ」を、トールキンが古英語から現代英語に移し替えた、翻訳集である。
 トールキンの解題によると、「緑の騎士」「真珠」は、《頭韻復興》の信奉者の手になるものだという。そして、訳者の山本史郎は、トールキンが翻訳に際して頭韻にこだわり、時には韻に合わせて独自の解釈を施していると語っている。しかし、日本語での再現は到底不可能であるため、翻訳では一般的な散文となっており、本書にトールキンらしさを特に認めようとすることは虚しい。
 確かに言えることは、トールキンはこうした古典の研究者だったのであり、現代語に翻訳しようと考えるほど、これらの作品に思い入れがあったということである。トールキンのファンは、そのような興味からも読むことができるだろう。
 だが、私自身は、こうした不思議に満ちた物語が、ジェフリ・オヴ・モンマス『ブリテン列王史』の強い影響によって、アーサー王が歴史上の人物と思われていた時代に紡がれているということや、キリスト教や聖母マリアの信仰も色濃く現れでているこの物語が、同時にキリスト教の奇跡とは関係のない魔法の要素を強く持っていることをたいへんにおもしろく思う。そのような意味では、むしろ作家トールキンの翻案ではなく、ケンブリッジ大学の古典学者による翻訳であることが喜ばしい。
 「真珠」は死んだ娘の霊に導かれて天上のエルサレムを垣間見るというもので、美しいイメージにあふれ、意想外の隠喩も使われている。アーサー王伝説とは関わりない作品だが、14世紀の世界観を知るうえでもきわめて興味深く、機会を得て翻訳されたことを嬉しく思う。(bk1ブックナビゲーター:石堂藍/書評家)

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ファンタジーの魔法空間

2003/01/30 12:28

空間的なもの、時間的なものに強いこたわりを持っているファンタジー作家・評論家による、最新評論集

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 空間的なもの、時間的なものに強いこたわりを持っているファンタジー作家・評論家による、最新評論集である。
 本書は、「家」「旅」「魔法」という三つのキイワードで括られている。そしてこの三つのキイワードの象徴するものや、それらに具わっている本質的なものが、登場人物たちの内面世界(時にはそれは無意識の世界であったりもする)と深く結びつけられているということが丁寧に論証されていく。私たちファンタジーの読者もまた、物語を通して、自分の内面と向きあうことになるのだということが、本書では繰り返し語られているのだと言えよう。
 取り上げられている作品は、『指輪物語』『ゲド戦記』といったモダン・ファンタジーの古典的作品から、『危険な空間』『ハリー・ポッターと賢者の石』『レイチェルと滅びの呪文』といった近年の作品までと幅広い。さまざまな知見に満ちていて、どこから開いて読んでもおもしろいのだが、「家」を論じた章が、最も力が入っている。特に「台所のマリアさま」のように、いわゆるファンタジーではない作品を取り上げて、その象徴効果を語る「家屋の神話学」は、鮮やかな論理で貫かれていて、著者以外には書けないものだ。また、私が個人的に興味を引かれたのは、《ハリー・ポッター》をなぜ評価するのか、という点だった。ファンタジーを読み慣れた人からの批判に応える形で、この作品のファンタジーとしての魅力について語っている。その偏見のない眼差しにも感嘆させられた。
 一人ひとりにとって、自分というものもまた謎である。ファンタジーの主人公たちに付き合ってゆくことは、自分自身の中に深く降りて行くことでもある。誤解を怖れずに言えば、井辻朱美もまた、自分という謎に向きあうために、こうしてファンタジーについて語り続けているのだろう。私はその営為そのものを美しいと思う。(bk1ブックナビゲーター:石堂藍/書評家)

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小さな白い鳥

2003/04/23 11:52

定型的なファンタジーとはひと味ちがう世界が楽しめる作品

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 ジェイムズ・バリは『ピーター・パン』の作者として名高いが、決してワン・ブック・オーサーというわけではなく、多くの小説や戯曲を残している。本書は一九〇二年刊行の長篇小説で、もしもこの本の名が知られているとしたら、まずは〈ピーター・パン〉の挿話を含んだ作品としてだろう。しかし作品全体はいわゆるファンタジー童話とはまったく異なっている。四十七歳の独身男性と六歳の少年の交流をユーモアたっぷりに描いた小説なのだ。
 主人公である語り手は壮年の裕福な紳士。彼は、階級意識に敏感で、女性を軽侮し、冷静で辛辣な人間観察をもっぱらとする、というような自画像を描いてみせるが、彼の行動は彼自身の語りを裏切り、情にもろく、愛情深いところを見せてしまう。この語りそのものがまったくのくせものだ。照れ隠しのためにアイロニイが多用されているので、つい私小説を読んでいるような気分になるのだが、その実、語り手は、バリに創作された人物にほかならない。それを忘れて、主人公の語りに思わず引き込まれてしまう。
 主人公が作家自身ではないということを忘れさせてしまう要因はもう一つあって、それはこの作品がメタノヴェル的な機能を持っているということである。『小さな白い鳥』という本が生まれることになった経緯そのものが、この『小さな白い鳥』に書かれているという構造、語り手による注めいた断章、物語の中の物語など、さまざまな要素が、作家と語り手とを混同させるように仕組まれている。この眩惑性だけでも、本書は充分に魅力的だと言えよう。
 ごく一般的なファンタジーの要素も随所にある。最初に述べた通り、『ピーター・パン』の原形となった、ゆりかごから抜け出して妖精の仲間入りをした赤ん坊ピーターの物語が、ほぼ独立したお話として挟み込まれている。また、主筋の中にも、人間になった犬の話などがさりげなく盛り込まれ、とぼけた味わいをかもしていたりもする。定型的なファンタジーとはひと味ちがう世界が楽しめる作品である。(bk1ブックナビゲーター:石堂藍/書評家)

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七王国の玉座 上

2002/12/11 12:36

冬の訪れとともにやって来る激動の時代が、いかなる物語を紡いでいくのか

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 夏と冬だけが交互に、しかも不規則な長さで訪れる中世的別世界を舞台にした《氷と炎の歌》シリーズの第一作。
 二段組でおよそ八百頁。相当な分量だが、実は物語の発端部分が語られたに過ぎない。というのも、八人の主要人物による多視点方式を採っているためで、言ってみれば、この長さの中に、八つの別々の物語が入っているようなものだからだ。整理すれば四視点ぐらいに出来ると思うのだが、この作者は要するに欲張りなのだろう、さまざまな視点を使って、さまざまな人生を描き出したいのだ。
 物語は、七つの小国を一つに統合している七王国の王ロバート・バラシオンが、幼なじみであるエダード(ネッド)・スタークを〈王の手〉(補佐役)に選んだところから始まる。王宮には暗い影が立ちこめており、それに触れたスターク家の人々はみな数奇な運命をたどることになる。
 視点人物は、名誉を重んじる正義の人ネッド、ネッドの気の強い妻ケイトリン(キャット)、スターク家の優秀な私生児ジョン、過酷な運命を担うことになる次男のブラン、王子の許嫁となった長女サンサ、男勝りの次女アリア、ドラゴンの血を引く前王の娘デーナリス(ダニー)、スターク家と敵対するラニスター家の次男である小人のティリオンの八人。誰もが際立つ個性を持っているが、言い換えれば物語的に分りやすい造形になっているとも言える。好きな登場人物に的を絞って読むこともでき、ほとんどキャラ小説と呼んでも良いほどだ。私はジョンとティリオンがベスト・キャラだと思う。
 さて、本書は一見すれば玉座をめぐる争闘の物語だが、全体としては、この別世界がどのように変化していくのか、それに人々がどう適応していくのかを描く、〈世界の物語〉であると私は見る。ジョンの赴いた北方には未知の恐怖の気配が満ちている。また、大陸では失われていたはずの存在が蘇っている。冬の訪れとともにやって来る激動の時代が、いかなる物語を紡いでいくのか、続巻が待たれる。(bk1ブックナビゲーター:石堂藍/書評家)

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