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宇野邦一さんのレビュー一覧

投稿者:宇野邦一

紙の本アルトー後期集成 1

2007/02/07 17:42

監修者コメント

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アントナン・アルトーは、シュールレアリストのなかにあって、ひとわき異彩を放つ鉱物のような感性の詩人であった。また俳優、演劇人として映画、演劇にかかわり、その現代的可能性をいち早く発見し実験した先覚者でもあった。これらの足跡だけでも、まったく注目に値し、立ち返るべき源泉にみちている。けれども彼はしだいに西欧の文明との緊張を高め、心身を病み、西欧からの脱出を模索するようになる。メキシコへの大旅行を試み、先住民タラウマラ族に出会う。次にはアイルランドに旅立ち、そこで拘束衣を着せられ、フランスに強制送還される。それからの後期アルトーは、もうひとつの重要な次元を開くことになる。それはもはや文学芸術の一ジャンルに還元することのできない思考の次元である。彼は自我と言語を破壊しながら思考する。彼の身体そのものを、破壊を通じて生みなおそうとする。この思考=生殖の過程は、まさに存在の哲学にかかわるが、この哲学は、どんな哲学者のものとも異なっている。彼自身が「表現しえないものをめぐる成功」と呼んだこの試みは、まったく分類不可能で、文学、芸術、哲学を、人間的生の根底に向けて切開することになった。
 後期アルトーは、その大半を精神病院で孤立してすごし、ひたすら膨大な量のノートを言葉とデッサンで埋めながら、もうひとつの戦争を闘っていた。病院の外の世界では、世界大戦の惨禍がひろがっていた。病院から出てすごした最後の2年間には『ヴァン・ゴッホ』と『神の裁きと訣別するため』を執筆し、後期アルトーの代表作として知られているが、いくつかの書物は、まさに氷山のように分厚い未知の堆積の一角にすぎない。この『後期集成』によって、私たちは始めてアルトーの思考=生殖の過程を目撃することになる。
 この冬パリの国立図書館ではアルトーの全貌を紹介しようとする展覧会が行われており、『裁かるるジャンヌ』に出演したアルトーをクローズアップしたポスターがいたるところで眼に入った。その強烈なまなざしはいまも私たちを詰問するかのようである。

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