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レビューアーランキング
先月(2017年2月)

松浦晋也さんのレビュー一覧

投稿者:松浦晋也

5 件中 1 件~ 5 件を表示

人々の名前を抱えて「のぞみ」は飛び続ける

32人中、32人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 火星探査機「のぞみ」の打ち上げにあたり、宇宙科学研究所は「あなたの名前を火星に」というキャンペーンを行った。はがきに書かれた名前は切り抜いて整理し、縮小コピーを重ね、小さなアルミ板に焼き付けて「のぞみ」に搭載した。「のぞみ」と共に火星に向かった名前は約27万名。多くのはがきには、応募の理由が書いてあった。
 はがきに書かれたコメントがなかなか感動的であるということは、的川泰宣教授の著作で知っていた。旧宇宙研、現宇宙科学研究本部に問い合わせると、名前を切り抜いた後のはがきはすべて大事に保管してあるという。2004年の初夏、私は相模原のキャンパスに向かった。はがきをチェックするためだ。その時点ではすべてのはがきを読むつもりだった。
出てきたのは段ボール箱が確か10箱ほどだった。持ち上げるとずっしり重い。中にはびっしりとはがきの束が詰まっていた。
 広報のWさんに「これで全部ですか」というと、「いえいえ、これで5万人分ほどよ」という答えが返ってきた。まだまだ大量の段ボール箱が残っているという。
 結局、その5万人分に目を通すために、私は相模原に数日通うこととなった。量が多すぎる。それ以上読むのは諦めた。

 読み始めると、その内容に、私は涙と@水が止まらなくなってしまった。27万人というのは、中ぐらいの地方都市の人口程度だ。しかもチェックできたのはそのまた一部でしかない。たったそれだけでも、集まってきた人々の人生の断片は切なく、いとおしく、雄弁だった。
 やっとこさ5万人分を読み終えて、私はWさんに「もうハガキの内容で泣きっぱなしですよ」と言った。するとWさんは「そうなのよ。あのハガキのメッセージが載って飛んでいっているということはそれだけでもすごいことなのよね。その一点で『のぞみ』は特別な探査機だったのよ」と答えた。
 日本で惑星探査に向けた本格的な動きが始まったのは1975年のことだった。探査機の具体的な検討に入ったのが1986年、火星探査機「PLANET-B」の開発が始まったのが1992年、PLANET-Bが打ち上げられて「のぞみ」と命名されたのが1998年、そして5年半の苦闘の末、ついに火星探査を断念したのが2003年の末。
 「のぞみ」には、3つのものが堆積している。惑星探査に向けた科学者達の執念、開発に当たった科学者と技術者の人生の時間と努力、そして27万人の星空に向けた祈りだ。
 それらすべてが、運用担当者による超絶的な粘りを可能にした。発生する絶望的なトラブルをその都度克服し、「のぞみ」は探査は不可能だったが、とにもかくにも火星に到達したのである。
 失敗はあくまで失敗であり、安易な感動ストーリーでごまかしてしまうべきではない。だが私たちは、これほどまでの苦闘と残酷な結末との向こうに、諦めと「どうせ日本はダメさ」というシニカルな笑いを持ってくるべきではないだろう。次にあるのが何であれ、また立ち上がり宇宙を目指す意志を持ち続けるべきだと私は思う。
 あなたは、1998年初春、宇宙研の呼びかけに応じてはがきを送っただろうか。送ったならば、あなたの名前は今火星とほぼ同じ、太陽を回る軌道にある。「のぞみ」の旅は終わったが、使命を負えた「のぞみ」は宇宙を飛び続けているのだ。
 それは灯籠流しに似ている。今、私たちの名前は、「のぞみ」と共に火星軌道にある。

■「恐るべき旅路」目次

序章 あんよはじょうず

第1部 長い旅支度
 第1章 惑星に向かって
 第2章 ロケット打ち上げ能力と探査機重量の狭間で
 第3章 トラブルの種子と、二十七万人の想いと

間章

第2部 恐るべき旅路
 第4章 打ち上げオペレーション
 第5章 地球脱出
 第6章 長く曲がりくねった軌道
 第7章 「のぞみ」は駆け抜けた

あとがきにかえて

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我々が宇宙に行くための宇宙計画へと復帰しよう

17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 1969年、子供達はロケットの先端に乗って宇宙に行くことを夢見ていた。12年後の1981年、子供達が夢見るのはスペースシャトルの操縦席に変わっていた。その間にあったのは、アポロ計画の終了とスペースシャトルの開発開始、そして米航空宇宙局(NASA)の宣伝だった。1981年4月12日、スペースシャトル「コロンビア」が初めて宇宙へと打ち上げられた。
 実際、スペースシャトルは見事なほどに絵になる機械だった。特に帰還時、悠然と滑空しながら降下し、主翼の両端に空気の渦を巻き起こしながら着陸する映像は、多くの人に「これこそ未来」と印象づけるのに十分な迫力と魅力があった。
 それから24年、すなわちアポロ計画が2回以上実施できる時間が経過した。その間にスペースシャトルは113回飛行し、2回の致命的な事故を起こした。1981年、NASAは年間50回シャトルを飛行させるとしていたが、24年後の現在、打ち上げは「コロンビア」空中分解事故によって2年以上停止している。スペースシャトルのコクピットを夢見た子供達は大人になったが、子供の頃に夢見ていたほど宇宙は身近な場所になってはいない。
 それもこれも、スペースシャトルがNASAの宣伝とは裏腹の巨大な失敗作であったことの帰結である。確かにアメリカは巨大な夢を見た。しかしそれは悪夢だった。

 以前、宇宙開発OBに昔の話を聞いていたところ、一枚のイラストが出てきたことがあった。OBの方は言った。「スペースシャトルが飛び始めた頃にね、体の悪い画家さんからもらったんだよ」。イラストには多くの人が列を作りスペースシャトルに乗り込んでいくところが描かれていた。列にはベレー帽をかぶった足を引きずる人物も並んでいた。「その画家さんの自画像だ。『私のような者でも乗れるのでしょうか』といって、この絵を送ってきたんだよ」。
 20年前、足の悪い画家の方はどんな思いでこのイラストを描いたのだろうか。どんな希望をスペースシャトルに抱いたのだろうか。スペースシャトルの歴史は、そのような世界中の人々が抱いた宇宙への想いに対する裏切りの連続であった。

 本書には、スペースシャトルのどこが失敗で、失敗の結果何が起きたかをまとめた。シャトルの毒は世界中の宇宙開発に回り、真に宇宙を目指す人類の努力を抑圧してきた。日本もまたその影響を免れなかった。
 そろそろ真実を直視し、過去の失敗を精算する時期だ。真に我々が宇宙に行くための宇宙計画へと復帰しよう。私はそう考えている。

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解説者コメント

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ロケットを打ち上げ、衛星を飛ばす。心躍る事業ですが、それが国家予算で行われるとなると、夢一直線の無垢な事業ではあり得ません。さまざまな浮き世のしがらみがまとわりついてきます。
 今回、私は世界の宇宙開発というテーマで解説を書きました。それも、どの国がどんなロケットを持っているという図鑑的なものではなく、各国がいかほどの金をどうやって使い、世界のパワーゲームのの中で宇宙開発をどう位置付けているかという観点から、です。

 フォン・ブラウン、セルゲイ・コロリョフという2人の偉大な先達も、独裁者を利用し、軍を利用し、政治家を利用し、宇宙への夢に一歩を記しました。人生を賭けるに足る「夢」としての宇宙を目指すならば、まずは現実世界で渦巻く金と思惑を知らねばなりません。それは、必ずしも気持ちよいものではないでしょう。胸が悪くなるような事もあるかも知れません。

 が、それらを知らずして、宇宙への夢は現実のものとなりません。

 本書を読み終えたなら、胸に手を置いて考えてみて下さい。あなたは一体なにをしたいのか、と。

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紙の本コダワリ人のおもちゃ箱

2006/11/27 18:11

著者コメント

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 コダワリ人になろう

 本書にご登場願ったのは、単なる趣味人ではない。なにか面白そうなことにと
りつかれ、結果として驚くほど素晴らしい高みに到達した人たちである。

 実際のところ、取材をしてみるまで、これほどまでの人たちが、かくも沢山、
今の日本に生きているとは思っていなかった。

 彼ら(そう、本書に登場するのは男性ばかりだ。これは私の取材が偏っていた
からであって、分野を選べば女性も当然入ってくるだろう)は、共通点がある。

 気負わない、諦めない、楽しむ——そして突き抜ける。

 彼らには趣味だからという言い訳はなしだ。気が付くと趣味どころではなく、
生活を賭けてしまったりもするが、その場合も悲壮感はない。突き抜けるプロセ
スそのものを楽しむ。その姿には精神的な余裕すら見てとることができる。

 団塊世代の大量定年を控え、あちこちのメディアで趣味の講座が流行してい
る。でも、同じ趣味ならば、突き抜けてみたいと思わないだろうか。自己満足で
はなく、社会が「それはすごい」と言ってくれるほどに。

 「やったぜ」とガッツポーズがとれるぐらいに、「向こう側」突き抜けてみようではないか。

 もちろん、お涙頂戴も根性物語も男達の逆転ストーリーもなしだ。

 楽しく、諦めることなく、そして気負わない。コダワリ人は常に朗らかである。

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紙の本日本列島は沈没するか?

2006/07/18 14:40

著者コメント

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 科学の最先端、特に激しく動いている最先端ほど、楽しい場所はありません。
現場で丁々発止と議論を戦わせている研究者の方が、2年前の持論を尋ねられて「あれは嘘だった。今は違う考えだよ」などという分野では、間違いなくアクティブな議論と、新しいデータが積み重ねられています。そして、今現在の地球科学は、まさにそういう分野なのです。

 もう一つ、我々日本人は、くらげなすただよえる大地の上に生活しています。いつどこで大地震が起きてもおかしくはないし、自分が被災してもおかしくはないのです。
 最新の地球科学は、巨大地震についても、かなりのことを解明しつつあります。それは、まだ地震予知にはほど遠いものですが、それでも33年前に「日本沈没」が書かれた頃に比べれば、まるで夢のように様々な現象の根本が判明しつつあります。

 そんな「地球科学の今」を、私達は可能な限りかみ砕いて解説しました。本書は、めくるめく知的興奮を分かりやすく読者に届けようという試みであると同時に、我々の住む日本という弧状列島の実態を大づかみにするマニュアルでもあります。

 本書を読んでみて下さい。読後、もしもあなたが地面が揺れるような錯覚を感じたとしたら、あなたには私達が伝えたかったことが伝わっている——そう思います。

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