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ふじさんのレビュー一覧

投稿者:ふじ

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紙の本悩む力 べてるの家の人びと

2002/05/19 15:00

社会とはなにか

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「べてるの家」という社会は、「自由闊達な意見や発想をもち、問題があればそれを『ぶつかりあいと出会い』によって解決していく(20)」ことによって成り立っている。「べてるの家」は、従来の精神病医療とは違い、病気を治そうとはしない。むしろ自分の病気を受け入れ、それと格闘し、「生きることに悩みあえぐ力(140)」を重視している。また、「べてるの家」では、ミーティングが頻繁に行われている。そのミーティングは何かしらの明確な議題があるわけではなく、話し合いの方向はいつも支離滅裂である。しかし、そうした対話を通じて、「べてるの家」の人々は、お互いの悩み、つらさなどを分かち合っている。それが可能なのは、一人一人が自分を受け入れ、生きる意味を考え、苦闘しているからではないかと思う。つまり、「自分自身と和解することのできた人のみが、人とも和解できる(181)」のである。
 そこで、私は考えてみたい。「生きることに悩みあえぐ力」というのは、精神病などの特定の苦難を背負った人のみが持つべきものなのであろうか。従来の精神病医療での最終目標は、社会復帰である。しかし、社会復帰とは何なのか。それはあくまで健常者の尺度から見た考え方であり、つまり健常者の社会に戻ることが社会復帰であるという考え方を、もう一度見なおしてみるべきではないだろうか。私は、本当の社会復帰とは、自分と正面から向き合い、それと同時に他人とも向き合えるようになることであると思う。
 いわゆる健常者の現代社会は、効率を優先し、能率や生産性を重視し、「人間のはみだした部分を押さえこんで、すべて管理しやすいようにとあらゆる手を打ち構築されてきたもの(184)」である。学校では学歴主義がはびこり、テストで良い点数をとるために、いい大学に行くために、生徒達はひたすら勉強をする。企業においても、より高い地位を求めて激務を背負うことになり、過労死が社会問題化するまでに至っている。だが、「いい大学に行くために受験勉強をする」にしても、全ての生徒が自分の意志で、自分のために受験勉強をしているのかと問われれば、それはいささか疑問である。自分と向き合うことをせず、ただ何となく虚像の社会に身を委ねて生きている人間像が、そこには映し出されているようにも思える。そうした意味では、現代社会においては、本当の意味での社会復帰を果たしている人間はほとんどいないといえる。つまり、管理や規則を排した「べてるの家」にこそ、私達にとって学ぶべきことは多く、そこには社会の本質、つまり本来あるべき姿が体現されているのではないだろうか。
 もっとも、管理や規則を排するといっても、「べてるの家」において設立された「有限会社福祉ショップべてる」のように、仕事をサボりたい人はサボってもよいというわけにはいかないであろう。そこには、社員はみんな精神分裂病などの病気を抱えており、長時間働くことが困難であるという了解が成り立っているからである。社会には秩序を維持するための管理や規則が必要なのはやはり否定はできない。したがって、「べてるの家」の社会を現代社会に還元して考えるときは、管理や規則そのものに疑問を投げかけるのではなく、その管理や規則がいつに間にか人間を支配してしまっている状況に問題をおくべきであろう。
 また私達は、自分達が健常者でないものを差別し、社会から追い出していることにも目を向けなければならない。差別が生じる根本的な原因は、無知である。すなわち無知が偏見につながり、ついにはその偏見が差別につながるのである。実際私はこの本を読んで、精神分裂病について全くの無知であったことを反省した。差別をする前にその人達を理解し、全ての人間が共生できるような社会を築いていくべきであろう。それにはやはり、自分自身と和解し、人とも和解していこうとする努力が必要なのである。

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