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    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

大山研司さんのレビュー一覧

投稿者:大山研司

1 件中 1 件~ 1 件を表示

論文で何を書けばよいのか分からず戸惑っている「若者」に最適

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。



本書は特に、先生に論文を書けといわれても何を書けばよいのか分からず戸惑っている「若者」に最適である。

 本書では、良い論文とはどんなものかという視点を軸にし、良い論文を書くためにはイントロダクション、実験結果、考察などの各部分で何をどう書くべきかを、膨大な例文で具体的に説明している。著者の酒井氏は生物学が御専門だが、本書には、全ての研究分野に通じる普遍的な指摘が多数含まれている。また、分野違いの壁を感じさせないように配慮された2種類の例文を用いているので、他分野の研究者が読んでも違和感は少ない。

 本書には様々な特色があるが、特に以下の3点をあげたい。
 第1に、なぜ論文をかかなければいけないのか、について1章をさいて説明し、論文が単に研究終了時の報告書ではなく、実は「研究を進める」事と「論文を書く」事とが表裏一体である事を指摘している。従って、よい論文を書く訓練はそのままよい研究をする訓練でもある。 
 第2に、なぜその研究を行う必要があるのかをイントロダクションで明記する事が、良い論文にとって重要である事を強調している。実際、研究の必然性が明瞭な論文が理解しやすい事は多くの研究者が実感している事と思う。さらに本書では優れたイントロダクションの条件を示し、その条件を満たしたイントロダクションを作るための手法を具体的に説明してくれている。イントロダクションの重要性は著者のもっとも伝えたい事であるらしく、表紙にすら登場している。
 第3に、良い論文とは分かりやすい論文である事を指摘し、第3部を独立させてテクニカルライティングについて解説している。どんな解説書にもかならず「分かりやすく書くように。」と書いてあるが、本書はそれだけではなく、どんな文章が分かりやすいのか、どこをどうしたら分かりやすくなるのか、を具体的に示している。研究者にとってもテクニカルライティングの訓練を十分受けられない現状を考えると、本書の解説はありがたい。
 
 一方、技術的な解説も充実している。例えば、共著者の順番の決め方、文章中での文献引用の書き方、さらに投稿の手紙の書き方まで、現実の研究活動にとって重要ではあるけれど他書にはのっていない情報が多数含まれているのも特色といえる。

本書は「若者のために」書かれた本ではあるが、論文執筆経験のある研究者にとっても、自分の論文が分かりやすい論文といえるものかを再考させられる良書といえる。決して単なる論文入門書ではない。

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