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チェスタトンさんのレビュー一覧

投稿者:チェスタトン

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紙の本保守思想のための39章

2002/09/24 22:10

俗流保守主義を排し本当の保守思想を語り尽くす

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 氏の「国民の道徳」が、自身のこれまでの言説を包括的にものしたものだとするならば、この本は、西部氏がこれまで色々なところで言及してきた「真正の保守思想」というものに対する言説に絞って、非常にわかりやすく網羅的に解説したものだと言えるだろう。
 氏は、一方で「近代主義」を産み出しそれを推し進めながらも、他方で常にその「近代主義」に懐疑の目を向け連綿と言葉を紡いできた西欧の思想家たちについて語る。
 と同時に、「戦後日本」について語る。「市場」について語る。「家族」について語る。「議論」について語る。「知識人の驕り」について語る。昨今、流布されている「他人に迷惑をかけなければ何をしてもよい」という「援助交際(という名の少女売春)」まで許容しかねないような「危害原則」の誤謬について語る。
 氏は説く。保守思想は精神の葛藤を引き受ける、その意味でダイナミックなものなのだ、と…。
 本書は、現状維持の謂いではない体制擁護の謂いではない単なる反共の謂いではない現実主義の謂いではない国粋主義の謂いではない、「集団的規則」や「公共的規則」だけを重んじる「抑圧」の謂いですらない……そうした「真の保守思想」の真骨頂とは一体何なのか、それを知る上での最高の一冊であり、著者がとりもなおさず日本における「真の保守主義」を標榜する数少ない一人であることが伺える珠玉の一冊である。
 一般に流通している「保守」という言葉に拒絶感を抱く人にとっては、最適な入門書になるだろう。

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紙の本反米という作法

2002/08/28 10:49

「反米」という言葉で中身を断じることなかれ。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この書名を見て、これが「反」「アメリカ国家」の書であると勘違いしてはいけない。この対談は「日米安保を直ちに廃棄して…」云々などという代物ではまったくない。この場合の「米」とは、すなわち「アメリカニズム」のことであり、人権主義・自由主義・個人主義・技術主義・合理主義などの手放しの礼賛とそれらが「普遍的な真理」であるかのごとく振る舞って、世界で摩擦を生み出していることをたしなめている、いわば「反近代主義」の本なのだ。そして、両者はむしろ、アメリカに対してではなく、当のアメリカ以上にアメリカニズムを体現しているこの戦後民主主義下の日本人に対して言葉を放ち、強烈な揺さぶりをかけているのだ。
 「つくる会」における、これまで表に出てこなかった裏話も興味深い。「台湾論争」のときにも「アルカイダ・テロ論争」のときにも最後には反論せず沈黙してしまった西尾氏に対する西部・小林両氏の批判は痛烈である。
 この本を読む方は、西部氏の門下である、京都大教授・佐伯啓思著「現代民主主義の病理」(NHKブックス)、「『アメリカニズム』の終焉」(TBSブリタニカ)を読んでおくと、この書が前提にしている問題についての理解を助けてくれるだろう。
 とにもかくにも、両者の醸し出す空間が実に心地よいひとときを与えてくれた。素晴らしい対談本である。

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