サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 岩本潤一さんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年8月)

岩本潤一さんのレビュー一覧

投稿者:岩本潤一

2 件中 1 件~ 2 件を表示

中世思想のデータベース

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1992年から刊行を開始し、今年9月に完結したシリーズの最終配本。「中世思想史」(村井則夫訳)は、全巻の総監修者であるK・リーゼンフーバー上智大学中世思想研究所所長による通史で、本シリーズ各巻に連載された栞を改訂・収録したもの。2世紀の古代キリスト教教父から中世末期14世紀に至るまでの中世思想の流れが、当時の社会的・教会史的背景と知的・霊的状況をふまえ、哲学・神学・霊性・文学・諸学問の各領域を横断して詳細にたどられる。本集成を読むための最良の導きといえよう。全6部のうちイスラーム・ユダヤ思想にも一つの部が割かれ、その西洋世界との密接な関わりが示される。「総索引」は、シリーズ全20巻に収録された335著作の巻ごとの総目次と、著者別の収録著作一覧、訳者・監修者一覧に加え、各巻巻末の索引をまとめた総索引(聖句引照索引、人名・固有名索引、邦訳書名一覧)から成る。聖句9300項目、人名・固有名6000項目、邦訳書名700項目という数字からも、本集成の「中世百科全書」的性格が窺われる。邦訳のある700著作のうち、西洋古典が約150、残る中世の著作550のうち6割が本集成で初めて訳されたことになる。総索引は、人名に欧文原綴りと生没年・在位年も示されているので、中世人名事典として使うこともできる。中世を通して、聖書のどの個所がいかに読まれ、解釈されたか。キケロ、セネカ、ホラティウス、ウェルギリウスなど、古典古代の著作がいかに受容されたか。あるいは中世の著作が相互にどう影響を及ぼし合ったかを、この索引を頼りにたどることが可能となった。2世紀から17世紀までのヨーロッパの主要著作全体について、このような検索のできるツールは、史上初めてのものであろう。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

はじめて明らかにされた十二世紀ルネサンスの全貌

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1927年にC・H・ハスキンズ(1870〜1937年)が出した著作(『十二世紀ルネサンス』野口洋二訳、創文社、1985年/別宮貞徳・朝倉文市訳、みすず書房、1989年)にちなんで、十二世紀ヨーロッパで起こった知的覚醒は「十二世紀ルネサンス」と呼ばれる。その内実について、その後専門家によってさまざまな議論が行われ、研究の現状についてのコンパクトな解説も出版されており(J・ヴェルジェ『入門 十二世紀ルネサンス』(野口洋二訳、創文社、2001年)、国内でも、この時代についての池上俊一氏による包括的な研究(『ロマネスク世界論』名古屋大学出版会、1999年)が近年刊行された。しかし、ラテン語で書かれた、十二世紀ルネサンスの諸思想は、その多くがヨーロッパ近代語にさえ翻訳されておらず、専門家しか近づきえない秘境であった。この秘境の全貌を、テクストの翻訳を通じてはじめて明るみに出したのが、『中世思想原典集成』の7『前期スコラ学』、8『シャルトル学派』、9『サン=ヴィクトル学派』、10『修道院神学』の諸巻である。『前期スコラ学』と『シャルトル学派』は、都市(パリとシャルトル)において、『サン=ヴィクトル学派』と『修道院神学』は修道院において活動した十二世紀ルネサンスの思想家の作品を収録している。『中世思想原典集成』全20巻の最終回配本でもある『シャルトル学派』は、十二世紀ルネサンスの中心に位置づけられる、シャルトル司教座聖堂附属学校を中心として活動した思想家全9名の著作計11点を収める。うち6点は世界初訳である。シャルトル学派の特徴は、古典古代の七自由学芸(文法・弁証・修辞・算術・音楽・幾何・天文学)を基盤にしつつ、プラトン『ティマイオス』とそのカルキディウス(5世紀)による注解を、聖書の創造思想に結びつけて、包括的な「自然」理解を試みたことにある。学派の祖のシャルトルのベルナルドゥスが語ったと伝えられる、「われわれは巨人の肩に坐った小人のようなものだ」という言葉は、古代の世俗的諸学(巨人)を学びながら、その学芸に聖書・神学を加えることにより、より遠くを見通すことができるようになったという彼らの自負を表している。学派の中心人物であるコンシュのギヨームの『宇宙の哲学』という書名が示す通り、現代の知見からすればもちろん限界はあるにせよ、彼らは全宇宙をある統一的な原理にもとづいて解明可能なものと考えた。全訳されたソールズベリーのヨハネスの『メタロギコン』は、アベラルドゥスをはじめとする諸教師が活躍し、新知識を求めてヨーロッパ中から学生が集まっていた、パリを中心とする当時の学問状況を知るうえで貴重な証言である。中世ラテン詩の白眉として知られる、アラヌス・アブ・インスリスの『アンティクラウディアヌス』は、諸学芸の知と崇高な道徳性を兼ね備えた「新しい人間」を生み出す道程を描く。注目すべきは、擬人化された「自然(ナトゥラ)」が、ただ神によって与えられるべき「霊魂」以外には、人間の身体のすべてを自力で形成しうると述べるくだりである。この気概に満ちた12世紀人は、「神的霊魂」という中世的な留保を除けば、近代自然科学の精神の一歩手前まで来ているのである。本書をもって、11年にわたって刊行された『中世思想原典集成』全20巻が完結した。11月には別巻『総索引・中世思想史』の刊行が予定されている。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2 件中 1 件~ 2 件を表示