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レビューアーランキング
先月(2017年8月)

諏訪旭さんのレビュー一覧

投稿者:諏訪旭

15 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本その日のまえに

2005/08/30 23:28

死をむかえる前に、もし手紙を書く時間が与えられたら、あなたは、心から愛する人に何を伝えますか?

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

恐ろしい物語なのかもしれない。果てしない哀しみと、救いようのない寂しさ、かすかに感じるほのかな希望、最後のページを読み終えたときの読了感を安易に言い表すことは決してできない。あふれ出る悲しみは、とてつもなく大きくて、流れだす涙を自らの意思で止めるのはほぼ不可能だろう。自分が心から愛する人のことを一瞬でも思い出してしまったら、物語の主人公に自分の姿を重ねてしまったら、きっと押し寄せる哀しみに打ちひしがれてしまうだろう。平凡かもしれない、とても幸せかもしれない、もしかしたらすでに不幸かもしれない、誰もが今生きている現実の世界に、いつ起きてもおかしくない「その日」を、著者は真剣に、そして赤裸々に綴っている。
 自らの余命を宣告されたとき。人は何を考えるのだろう? 一日一日、刻一刻と磨り減っていく人生の時間。自らの命が尽きる日を「その日」とよび、「その日」に向かって、一つ一つ準備をすすめる、ごく普通で幸せな夫婦。愛すべき息子たちに何を伝え、何を託すのだろうか。死までの時を知ることは幸せなのだろうか? ストーリーは突飛なものでは決してない。それなのに、なぜ? これほど人の心を掴むのだろう? 小手先だけのまやかしも、煙に巻くトリックも何もいらない。そこに語られるのは、人生。たったそれだけで、充分だったのだ。
 どこにでもいそうな家族を、長い間描き続けてきた重松清。その独特の世界に私はいつも驚かされ、そして癒されてきた。本作「その日の前に」はそんな重松作品の中で、ひときわ輝く光を放っている。重松清の作家人生の一つの到達点を感じることができた。物語は誰かに読まれたがっている。書き綴った作者の思いが、何かを伝えようとしている。何も説明はいらないだろう。この物語を読み終えたとき、誰もが感じるはずだ。生きることの意味を、明日を迎える喜びを。小説のもつ無限の力を、感じて欲しい。今ここに、一つの名作に出会えた喜びを堪能した。
 死をむかえる前に、もし手紙を書く時間が与えられたら、あなたは、心から愛する人に何を伝えますか?

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紙の本容疑者Xの献身

2005/12/15 23:58

2005年ナンバー1ミステリーは、ミステリー史に燦然と輝く名作であった。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 毎年「このミステリーがすごい!」の年間ランキングを楽しみにしている。そして栄えある1位受賞作を年の瀬に読むのが習慣である。今年は本作「容疑者Xの献身」がぶっちぎりの1位であった。さらに本作は今や日本を代表するミステリー作家である東野圭吾の作品であり、当然読まないわけにはいかなった。
 ミステリーの醍醐味の一つは当然そのトリックであるだろう。はるか昔から星の数ほどのトリックが考案され披露されてきた。いまさら新しいトリックなどあるのか? 単純な推理小説が衰退していった原因の一つがトリックのねた切れにあったように思う。本作はもちろん単純な推理小説ではない。深く人間の心理を描いたヒューマンミステリーである。しかし、そこで使われたトリックは、およそすべての読者の度肝を抜くだろう。クライマックスで明らかにされた最大のトリック。そのすべてを知った瞬間、今までに感じたことのない衝撃を受けた。最後の瞬間に向かって巧みに読者を惹きつけて行くストーリーの巧妙さ。ページをめくる手は次々に加速し、その結末を知りたいという欲求が、睡眠という動物の本能をはるかに超越させる。長編小説でありながら、一息で読み終えてしまえるジェットコースターストーリーに魅了された。読者を裏切らない作家。東野圭吾の凄さはとても言葉で表せない。こんなトリックを思いつくとは、、「天才」という言葉しか当てはまらないのではないかと、満足感に包まれながらしばしの間我を忘れてしまった。
 事件は冒頭に起こる。起きてしまった事件を隠そうとする一人の天才数学者。事件を謎を解こうとする一人の天才物理学者。人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのとではどちらが難しいか。秀逸な心理戦の末に浮かび上がってきた一つの答え。物語全体をどんよりと暗い影が包んでいる。世相を反映するかのような先の見えない霧の中に見えた一筋の光は、まさに容疑者Xの前代未聞の”献身”であった。2005年ナンバー1ミステリーは、ミステリー史に燦然と輝く名作であった。

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紙の本趣味は読書。

2003/03/08 10:51

まさに現代人必読の書

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本はとりあえず書評集と言えるのだろう。ただ、普通の書評集と大きく異なると感じた点が二つあった。一つは、ストーリーをかなりばらしてしまっていること。著者が、あなたの変わりに読みました。と言っているように、何百ページもある小説を数十ページにまとめてしまい、ネタばれしまくりになっている。二つめは、一つめから派生することでもあるが、書評を読んでまったくその本を読みたいと思わないことだ。ほとんどすべてが否定的な書評となっている。書評にはまだその本を読んだことのない未来の読者に本を好意的に紹介する役割があると思っていた私には、かなり衝撃だった。何百万部も売れているベストセラーを、まったく読みたくないと思わせる毒舌。いったいどれほどおおくの読者を敵にまわしたことか… 宮部みゆき、村上春樹、「ハリーポッター」「五体不満足」といった一般大衆にこよなく愛されている作家、小説をまさに滅多切り。著者、斉藤美奈子の真骨頂とも言えるが、ここまで徹底的にやってくれると逆にすっきりして気持ちがいい。純粋な読者好きの人には少々刺激が強すぎるかもしれない。自分が面白いと思っていた小説を、けちょんけちょんにけなされればがっかりすることだろう。しかし、落ち込むことはない。本書を読んで一番強く感じたのは、人それぞれの感性の違いの大きさ。それは言うまでもないあたりまえの事実なのだが、日本人は長いものに巻かれろ思想が根強い。誰もかれもがあの小説は面白い、大絶賛、何ていうことが平気で通用している。そんなのはあきらかに嘘だろう。良いという人もいれば、悪いと言う人もいる、それが極自然な姿だと思う。本書は、みんなが凄いと言うからきっと凄いに違いないと思い込まされていた人々に、たいしたことないんだと言う勇気を与えてくれたのかもしれない。だから、本書に書かれている評価は、一個人の評価だと思うべきだろう。そう思うからこそ、この本はとてつもなく面白いのだ。
 またこの本はとても有用である。巷にあふれかえるベストセラーの内容をコンパクトにまとめて教えてくれる何ていう本が今まであっただろうか? 面白そうだけど、買うほどでは… といった中途半端な、有名本の内容をすっかりおしえてくれる。読まずとも読んだ気にさせてくれる。時間のない現代人には必読の書と言えるのではないだろうか。ただ、あまりにも多量の毒が含まれているので、取り扱いには注意した方が良いだろう。

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半落ち

2003/02/07 00:37

もう一歩で触れられそうで誰も触ることができない絶妙なストーリー展開にページをめくる手を緩めることは不可能だ。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昔はミステリと言えば推理小説のことを指していた。巧妙な技を使った密室殺人が一時代を築いたと言っても良いだろう。読者はあっと驚くトリックに魅了され、虜になった。新刊を購入しては新しい驚きを求めた。時代は移り、現在のミステリに非現実的なトリックはあまり使われなくなった。そこに描かれているのは、人の「心」である。現代ミステリで解明しようと試みるのは、巧みなトリックではなく、それ以上に複雑で神秘的な、心の動きなのである。
 「半落ち」は絶大な支持を得ておおくの読者に受け入れられた。03年の「このミス」、「週刊文春」両誌でベスト1に輝いた。この作品は現代ミステリの完成作と言ってよいだろう。すべてがまさにあるべき場所にしっかりと収まっており、まったく無駄がない。登場事物一人一人の心の動きが紙面から飛び出し自らの鼓動と肉薄する。そこにはミステリの醍醐味である謎解きの要素の圧倒的な存在がある。決して触れてはいけない心の陰。もう一歩で触れられそうで誰も触ることができない絶妙なストーリー展開にページをめくる手を緩めることは不可能だ。最後にあきらかにされるすべての謎。人間として生きていくことの偉大さ、責任を深く感じ、大粒の涙をこぼした。名作に出会った喜びが読書への飽くなき渇望を増長させた。
 病気で苦しむ妻を自らの手で殺した警察官は、全面的に容疑を認め自首した。しかし、犯行後の2日間に関しては決して口を割らない。完全にすべてを自供するのではない「半落ち」状態を執拗に続けた。男は妻を殺した時に死を覚悟していた。ならば男が自らの命以上に大切に守ろうとする物とは何なのか? 隠された2日間と一人の男の人生の意味。
 感涙のヒューマンドラマにどっぷり浸かってみるのはいかがだろうか? ミステリもここまで来たかと感心するとともに、読書のもつ不思議な魔力に心を奪われること間違いなしだ。

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あなたは“永遠”の“愛”を信じますか?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

永遠に続くものは存在しない。何事にも終りがあるからこそ、一瞬一瞬を大事に大切に感じることができるのだろう。この物語のテーマはずばり“愛”と“永遠”だ。遥昔から語りつづけられたいわば使い古されたこのテーマを辻仁成が実にシンプルに、かつ情熱的に書き綴った。主人公の周作は年齢70歳、最愛の妻はすでにこの世にない。周作は旧友の強引な誘いにより、ハワイへと旅立つ。そこは周作らが50年前、自らの手で爆弾を落とした封印すべき過去の地、真珠湾であった。英雄と歌われ、名パイロットとして周作は第二次世界大戦を戦った。そして戦争は終り、もはや自らの人生の終結の時を迎えようとする周作は、妻の日記を読む。そして、そこに“愛”を知る。それは生前の妻のいわば周作へのラブレターだとも言える。“愛してる”なんて言葉を使ったこともない周作が心のそこから感じる亡き妻への想い。戦争が青春だった元英雄達が50年後のハワイで最後の青春に花を咲かす瞬間、そこに感動を越えた恍惚とした喜びを感じた。
 “愛”の物語には大きく深い根として“戦争”がある。幾人もの命を奪った真珠湾の元日本兵が、真珠湾に住んでいたアメリカ人と手を取り合う。深く暗い溝をなんとか埋めようとする英雄達。その姿にはただただ感動するしかない。それはまさに戦争を知らない現代人に戦争の重さを知らしめ、それを振り払う勇気を教えてくれる。
 単なるラブストーリーではない。深い純愛と悲しい戦争。知らなければならない、知るべき事実と、学ぶべき行動がある。読書から得られるものは果てしなく多く、文学のもつ力の強さを改めて実感した。

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紙の本東京奇譚集

2005/09/17 00:25

奇譚から学ぶこと、知ること、感じることがある

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「東京奇譚集」というタイトルを見て、首をかしげた。村上ワールドの入り口は作品のタイトルだと思っていた。何ともいわれない不可思議なタイトルに思わず足を止めてしまう。いいようのない引力に本を開くと、村上ワールドが果てしなく広がっている。今回のタイトルはその印象を覆した。私にとってあまりにも平凡に思えたからだ。一昔前の怪談話かと思ってしまった。時間をおいて少し冷静にタイトルを眺めてみると、ますます首をかしげざるをえなかった。奇譚の意味が不明なのだ。村上作品を思い出してみると、はたして奇譚でない物語があったであろうか? 村上作品は、すべて奇譚話であったはずだ。ならば、なぜ今回の作品にあえて”奇譚”ということばを使ったのだろうか? そしてそれが東京に限定されている意味は? 考えれば考えるほど、様々な疑問が頭の中でひしめき合い、それがまさに村上ワールドの力だと思った。
 久々の短編集は、まさに村上パワー爆発の絶品の集合体であった。その文章は、滑らかな指先で細かい部分までも柔からに整えられた文字と文字の組み合わせであり、しばし時を忘れてしまう。楽しみにしていた本作も気がつくとすでに最後のページを迎えていた。
 確かに奇譚であった。最後のページをめくり終えても、そこにミステリ小説にあるような謎解きは現れない。不思議な物語は、不思議なまま終わり、ぽっかりと大きな謎が空中を浮遊する。この不可思議な浮遊感が村上ワールドの醍醐味だろう。さて、作者はこの物語で何を伝えたかったのですか? そんな問題が国語の試験で出題されたら学生は困ってしまうだろう。今回も、そこに答えはなかった。少なくとも一つの明確な答えはなかった。しかし、これが答えかもと思える、小さな手ごたえを感じることができた。それはきっと、人それぞれ違っていて、千差万別であるに違いない。
 奇譚から学ぶこと、知ること、感じることがある。それは文学の持つ無限の力であり、文学が存在する義務なのかもしれない。

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紙の本恋愛写真 もうひとつの物語

2003/12/06 18:52

じわりと体全体に広がるこの感動を、現代人は忘れてはいないだろうか?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いつのまにか、読み終えていた。開け放たれた窓からふわりと入り込んで頬をやさしくなでていく、そんなさわやかな秋風のように、この物語は僕の心をふっくらと温かくしてくれた。じわりと体全体に広がるこの感動を、現代人は忘れてはいないだろうか? 「いま、会いにゆきます」で市川拓司の作品に大きく魅了された。市川拓司のラブストーリーはミステリー仕立てでありながら強い現実感があり、物語の世界に容易に溶け込むことができる。悲しい物語だった。切ない物語だった。いつかは体験するはずなのに、誰も想像すらしていない、大切な人とのリアルな別れの感情をストレートにそしてソフトに感じることが出来た。
 大学時代。仲良しグループには、片想いの女の子がいて、いつもその子が気になっていて、そんな時、ふと見知らぬ女性と出会って、そして、いつしかとても強い恋に落ちていて、絶対忘れられないキスをして。その子は旅立ってしまった。
 大学生にはたまらない作品だろう。まさに今、物語の世界を生きている本人なのだから。中学生、高校生にもたまらないだろう。将来起こりえる胸ときめく切ない物語なのだから。大人にもたまらないだろう。自分が生きてきた過去を思い出さずにはいられないのだから。
ゆっくり読書をしてみたい。そこには人が生きる歴史がある。自分が生きるもう一つの物語がある。

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阿修羅ガール

2003/02/27 22:22

軽快なリズム感、疾走感、摩訶不思議感。くせになること間違いなしの現代を象徴した傑作だ。

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 信じられないことに今時の女子高生の一人称で物語は語られる。「つーか」とか「やべー」とかまさに普通に街で女子高生が使っている言葉で埋め尽くされた小説。これはかなりぶっとんだ小説だ。メフィスト賞受賞でデビューした舞城王太郎にとっては、特に驚くことではないのかもしれないが、一般の人にとっては、何これ? まじでー!って叫びたくなるにちがいない。文章の美しさ洗練さなどは問題ではない。軽快なリズム感、疾走感、摩訶不思議感。くせになること間違いなしの現代を象徴した傑作だ。
 訳の分からない小説だが、その根本は単純な恋愛小説である。一人の女子高生が同級生に恋をする。なかなか上手く行かない恋愛。と、なんとも温かいラブストーリーのように思えるが、恋愛をとりまくように勃発する出来事が何ともすごい。いきなり好きでもない男とセックスするは、同級生の女の子の顔をぼこぼこに蹴りまくるは、街では中学生があばれだして誰彼かまわず襲いだすは、グッチ裕三に石原慎太郎出てくるは…etc 舞城王太郎がつくりだしたまったく新しい世界。舞城ワールドに浸ってみたら、しばしの茫然自失、そして気づくとほんのり癒されていた。
 冒頭より — 減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。返せ。—

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たった一度の人生を成功するには

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すべての生物は、教わる能力を持っている。人は初めて何かをするとき、戸惑い恐れる。そして先人達の意見に耳を傾ける。中には自己流を貫き通し強烈な個性を武器とする人もいる。しかし、人生は一度しかない。たった一度のチャンスであるならば、なんとかして満足できる人生を歩みたい。ぶっつけ本番ではなく、過去の様々な経験を吸収すれば一度の人生への成功のチャンスは格段に広がるはずだ。本書は第一線で闘ってきたビジネスの達人が、数々の失敗例、成功例の中から導き出した“ビジネスの成功則”を分かりやすく説明したものである。ビジネスで成功するには8つのルールがある。そう著者らは主張する。必要十分な8つのルールが具体例とともに一つ一つ丁寧に解説されている。その8つのルールを常に意識して仕事をすれば成功間違いなし! 言うは易し行うは難し、ではあるが、この8つのルールが実に頭にすんなりと溶け込んでいく。突飛なルールではない。そのうちのいくつかを、普段から心がけている人も多数いるだろう。私も実際、そのルールを行っていたことを思い出した。そしてその時、成功していたのだ。偶然適用し成功していた事実を思い出し、私の頭は8つの黄金則に支配された。たった一度の人生である。楽しい生活を送りたいではないか。まだまだ若造の私にとって、達人の提唱する成功のルールは大きな人生の道しるべとなっている。
 本書から得たもう一つの驚きは、この法則がビジネスだけに適用される訳ではないということだ。この法則は生活のあらゆる場面に有効である。子育て、家族生活、人間関係、そして、恋愛のかけひきにまで効力を発揮する。そんな魔法のような法則などあるものかと、穿った目で生きていくのも一つの選択肢であるだろう。しかし、私はできる限り最高の人生への可能性を追求していきたい。本書はその可能性を大きくひろげてくれる。

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紙の本白仏

2002/11/15 23:00

永遠の謎“死”とは何か?

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 死とは何か? なぜ人は、生命は死ぬのか? およそすべての人間が一度は真剣に考えるであろう永遠の問い。小説「白仏」の主人公、稔も同様の疑問を抱く。筑後川下流の島に生まれた稔は、戦前は刀鍛冶、戦中は鉄砲修理、戦後は様々な製造機の発明に費やした。その間、初恋の女性の死、友人の死、自ら戦争での殺人。多くの死を経験することで、ついに“死”の陰謀の謎を解き明かした。
 作家、辻仁成は映画化された「冷静と情熱のあいだ」や最近では中山美穂との結婚といった表舞台での活躍が有名である。「冷静と…」のような甘い恋愛小説のほうが知られてはいるが、彼は芥川賞受賞の純文学作家であり、この作品は彼の代表作と呼べるほどの高い完成度を誇っている。日本人初、フランス・フェミナ賞受賞というのもうなずける。
 辻仁成の魅力は、シンプルな作風にあると思う。難解で分かりにくい純文学に較べ、辻仁成の純文学はわかりやすい。小説全体に一つのはっきりとしたテーマがあり、最後にそのテーマについての結論が述べられる。今回の「白仏」では、まさにテーマは“死”である。はたして辻仁成が導き出した、死の答えとは何か。魅力的なストーリーに導かれて、読者はあっと驚く“死”の答えを目にすることになるだろう。
 主人公、稔のモデルは辻仁成自信の父親だという。これは彼が父に捧げた作品でもあるのだろう。一見、読みにくそうな文体になってはいるが、いざ読み出すとそうではない。ぐいぐいと読者をひっぱる物語の楽しさを味わって欲しい。そして、知って欲しい、死を理解するための一つの答えを。

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紙の本海辺のカフカ 上

2002/10/03 19:22

僕には生きることの意味がよく分からないんだ。

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 「海辺のカフカ」というタイトルと装丁を目にした時、心が少し癒された。神秘的な響きと温かい色使い。背中を向ける一匹の猫。私はその瞬間からすでに村上春樹の世界に浸っていたのだろう。
 主人公は15歳の少年だった。少年はたった一人で家を出る。それは世間一般によくある家出とは大きく異なる。何が異なるのか? その異常さを数行で簡単に表現するのは恐らく不可能だろう。秘めた予言を心に刻み込んだ少年は何かに惹かれて四国に辿りついた。そしてもう一人の主人公、猫と話すことができるナカタ老人も四国へと導かれていった。二人の物語はまったく違うところからはじまって、どんどんと引き寄せられて行き、同じ場所で終わる。それは偶然であって、必然だったのだろう。空から2000匹のイワシとアジが降り、突然カーネル・サンダーズが登場する。いつにもまして難解で抽象的な村上春樹の世界がそこに広がっていた。世界屈指のストーリーテラーが紡ぎだした一つの物語は、面白いとか感動するとか、そういう範疇を遥に超越していた。
 誰もが人生について考える時があるだろう。自分は何のために生きているのか? それは、とても根本的で一生解く事の出来ない永遠の問題であるはずだ。物語の中で、少年は言う「僕には生きることの意味がよく分からないんだ。」 村上春樹は、読者に生きることの意味を問う。この長い物語を読み終えた時、もしかするとその解答のおぼろげな姿が浮かんでくるかもしれない。そしてその解答は、読者一人一人、異なっているに違いない。この物語は私たちを、一つの迷宮へと誘う。深い闇に包まれ、夢のように不可思議な迷路の中で、彷徨い、思考することで、日々の生活では絶対に得ることが出来ない神の啓示を聞くことができるかもしれない。

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紙の本サヨナライツカ

2004/01/07 18:40

私は死ぬとき、愛したヒトを思い出す。あなたはどうだろう?

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申し分の無い女性である光子との結婚が決まっているエリートサラリーマンの東垣内豊は、出向先の地タイで運命の女性である沓子と出会う。結婚までの3ヶ月間だけの遊びの恋愛だったはずが、二人は強く惹かれあい、お互いを絶対に必要な存在だと認めあう。しかし、別れの時間は訪れる。東垣内豊は、悩んだあげく沓子を捨て、婚約者である光子との平穏な結婚生活を選んだ。まるで3ヶ月の出来事などなかったかのように…
ストーリーは突飛なものではない。誰もがどきっとするような見に覚えがあるごく平凡な話だといえるだろう。恋愛と結婚は違う。そんな言葉をよく耳にする。この物語のキーワードは、「人間は死ぬ時、愛されたことを思い出すヒトと、愛したことを思い出すヒトに わかれる」である。この文はまさに恋愛と結婚を表しているように思った。平凡な物語ではあるが、あえてそれを一つの美しいラブストーリーとして語られると、胸に強く響くものがある。恋愛も結婚も人生において計り知れないほど大きな選択である。その中で、一生一人を愛しつづけることを約束する結婚を決断するとき、人はどんなことを考えるのだろうか? 様々な可能性を考慮し、この人だと確信して結婚することができるだろうか? そして、そんな運命な人と出会いながらも、別の人と結婚してしまうことはないだろうか? この物語はそんな悲劇の恋愛を上手く描いている。住めば都ではないにしろ、ベストではなくベターな選択をしても、人生はそれなりにまわっていく。もし、あの時、別の決断をしていたら? そんな切ない想いが読者自身の胸をよぎることだろう。
この物語の読後の印象はまさに千差万別だと言える。それは読者自身のリアルな体験が直接心に働きかけてくるからだ。私はこの本を読み終えた後、自らの現在の人生がベストな選択だと信じることができた。私は死ぬとき、愛したヒトを思い出す。あなたはどうだろう?

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半パン・デイズ

2002/11/05 22:36

自分がヒーローで、学校と近所が世界のすべてであった少年時代

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 半パンをはいて野原をかけまわった日々をどうしても思い出してしまう。懐かしくて、懐かしくてページをめくる手が自然と早くなってしまった。いわゆる大きな事件は起こらない、あっとうなるような大どんでん返しもない。どこにでもいるような少年の小学生の6年間を描いている、それだけだ。そこがとにかく凄い。自分がヒーローで、学校と近所が世界のすべてであった少年時代。そんな時代を色鮮やかに浮かび上がらせるのは、さすがは重松清である。今や、少年の心を描いたら右にでるものはいないであろう。
 東京から田舎に引っ越してきたヒロシは、小学校に入学し新しい友達をつくる。嫌なやつもいる。好きな子もできる。野球をしてサッカーをして、上級生と喧嘩もする。後輩の面倒を見るようにもなる。9つの話からなる連作短編集であり、1話ずつヒロシはどんどん成長していく、いろんな経験を積んでいくのだ。そして、小学6年を卒業して物語は終わる。
 きっと誰もがその続きである中学生のヒロシを見たくなるだろう。想像してしまう。そして自分と重ね合わせる。もう2度と繰り返すことができない少年時代。ああすればよかったと悔いることもあり、楽しかったと懐かしむこともある。そんなあわく、ほろ苦い過去の記憶を呼び起こしたいのなら、是非この本を読むべきだ。そして思い出して欲しい。あのころ何を考え、何も夢見ていたのか。もっとしっかり生きようと思った。前へ前へと前進しようと思った。あなたもきっと何か感じることがあるはずだ。

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紙の本本格小説 日本近代文学 上

2002/11/02 00:21

『恋愛』という小説の基本的テーマを水村美苗が書き綴り、新たな文学の境地を切り開いた。

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 水村美苗の小説を何かのジャンルにはめ込むことは難しい。バイリンガル小説「私小説」で日本の文壇に大きな衝撃を与えた彼女が、7年もの月日を経て生み出した新作「本格小説」はまさに“本格”小説であり、忘れられた古き良き文学を否応なく思い出させてくれる。ミステリ全盛期の昨今、文学を真の小説を書けるまさに稀な作家であることをあらためて実感した。
 作者である水村美苗はアメリカで偶然、軌跡の物語を授かる。作者自身が実際に伝え聞いた話が本作品となるのである。それは彼女自身も関係のあった一人の男の人生の物語であった。そこにこの物語の複雑さの一端がある。単純に一人の男の人生を書き綴るのではなく、その男と作者自身の関係から大きな意味での「本格小説」がはじまっていくのだ。本編に入るまでが長い。しかし、すべてを読み終えた時、この二重、三重構造の小説の世界にどっぷりと嵌ってしまっていることに気付くだろう。
 舞台は戦後まもない日本。貧富の差がまだまだ激しい日本の貧しい階級で育つ男、東太郎と、裕福な家庭に育つ、よう子。幼なじみとして育った二人は禁断の恋に落ちていく。まさに恋愛小説の王道であり、基本とも言える。『恋愛』という小説の基本的テーマを水村美苗が書き綴り、新たな文学の境地を切り開いた。上下巻ずっしりと心に響く愛の長編物語は、舞台は確かに戦後から現代への移り変わりを描いた昔の話ではあるが、まさに今現代に行きる私たちの物語だと感じてしまう。小説の楽しみをあらためて思い出し、堪能するにはもってこいの作品だと言えるだろう。

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紙の本希望の国のエクソダス

2004/01/05 19:19

物語としては駄作

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「2002年秋、経済の大停滞が続く日本で、80万人の中学生が集団不登校を起こす。」この広告から、本書を手にとった。村上龍氏の最近の作品は、読前のインパクトが非常に強い。「五分後の世界」や、「イン・ザ・ミソスープ」「共生虫」といった作品群はまさに本屋で立ち読みを誘う吸引力があり、読書人間はその力に逆らえず、購入してしまう。大きく残念なのは、読前の期待が読後まで維持しないことだ。大きな期待は、ああこんなものかという小さな落胆のうちについえてしまう。本書も私にとってはそうであった。大見出しをきって始まった物語は、ほぼすべてを通して経済学をわかり易く解説した経済小説にすぎないと感じた。様々な分野に精通し、知識人としても村上龍氏の評価は高く、その見識は目を見張るものがある。しかし、私が本書に期待したのは、物語作家としての村上龍であった。「愛と幻想のファシズム」で見た圧倒的なストーリーテーラーぶりは、影も形もなく、第三者的に新聞記者が語るヒーロー像は薄っぺらく、心躍るものとは程遠かった。現代文学の一時代を築いた偉大な作家だからこそ、私は常に大きな期待を持つのだ。
物語として見た場合「希望の国のエクソダス」は駄作と言えるだろう。しかし、この小説の価値はまったく別のところにあるのだろう。2004年を迎えた現在の日本の状況を的確に予想し、“希望”がない日本の未来の危機への大きな警鐘として、本書には大きな価値がある。

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