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先月(2017年6月)

NANIOさんのレビュー一覧

投稿者:NANIO

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あの日から世界が変わった

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 この本には、常に、「のか?」がつきまとう。本の内容はいわずもがな、かの「911テロ」以降のNYに関するレポートである。ただし、今は亡きWTCの展望台から下界を見下ろすような感覚ではなく、ましてや崩れ去ったWTCの残骸を遠巻きに眺めながらの感傷的な「あの日から世界が変わっちゃった」的レポートでもない。「あの日から世界が変わった」。このタイトルには、まずは、この本を手に取らんとしている人にとって、いわゆる「911テロ」を今現在どう捉えている「のか?」についての、著者からの問いかけがあると思う。そして何よりも、その「のか?」は著者自身の心のつぶやきでもあるのだ。それが、この本のテーマである。
 著者はNYの、かのWTC(世界貿易センター)からわずか1キロほどの場所に居を構え、フリーのガイドを生業とし、17年間そこで生活してきた。そんな彼の生活も、911以来一変する。テロによって商売が成り立たなくなってしまったのだ。しかしそこはNYカー的バイタリティを身につけた者の強みか、その非常事態にもとりたてて右往左往することなく、むしろ有り余った時間を利用して、長年住み慣れたNYの今現在の「表情」をデジカメに収め、被災後の人々の「心情」を、そこで出会った人々とのさりげない会話の中から拾い集めていく。そして、ほどなく彼は家をたたんで日本へ帰ることを決めてしまうのだ。
 実はこの本の魅力はこの著者のノリにある。つまり、前代未聞の有事の起きた「被災地」でありながら、その被害自体は局部的であり、確かに動揺と緊張はあるものの、NYという街全体が恐怖のあまりパニック状態になっていたわけではないことが、その行動自体からうかがえるからだ。そして著者と居合わせた人々との会話には意外や悲壮感はなく、まるで片岡義男の小説でも読んでいるかのような、なんともおおらかなウィットに富んでいて、実に生っぽい「テロ後のNY」の自然な息づかいが感じてとれた。そこに暮らす個々の住人の感性には確かに温度差があり、そこからもNYという街が多様な価値観から構成されていることがわかる。にもかかわらず、テレビをつければ「UNITED WE STAND(一致団結して悪を討つ!)」というヒステリックな呼びかけが必ず目に飛び込んでくる。そしてそれに呼応して星条旗は街を埋め尽くし、その威信を誇示するかのように強くはためく。その矛盾に、著者はいかんともしがたい違和感を感じ、それが「何なのか?」を追求し続け、最終的に、NYカーとしては屈辱にも値するような結論に達する。
 それでも、著者は最後にこう締めくくっている。「ああ、またNYに教えられてしまった」。
でも、本当は、NYはなんにも教えちゃくれないんだと思う。言い換えれば、「教えられてしまった」と言える者、つまりNYを感じることができる者だけが、NYに受け入れてもらえるというわけだ。その意味で、この本は極めてNY的なのかもしれないと思った。
 あの日から世界が変わったのか、何も変わっちゃいないのかなんてことは、個人が個人として生きる上では、さほど重要なことではないのかもしれない。
 
 

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