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先月(2017年6月)

尾骨さんのレビュー一覧

投稿者:尾骨

1 件中 1 件~ 1 件を表示

やり直しがきかない人生であるからこそ、今考えなければ

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  ビートたけしがバイクで重傷を負ってからもう直ぐ10年になるが、忘れてしまった人はまずいないのではないだろうか。その理由の一つに“ゆがんだ顔”が挙げられると思う。彼はTV活動を業とする人であり、彼の姿は公共の電波に乗り億単位の人間の目に触れる。にもかかわらず彼は元通りに整形することを拒み、事故の跡を残すことにした。そうすることで、目に見える形で事故にあったという事実を留めておきたいと思ったからである。そう思うほどのものを、彼はそこで得たのだ。
  本書は、意識を取り戻してから病院、オーストラリア、そして日本に帰って来た時までのことが時系列に並べられ、その時々に何を考えたかが述べられたものである。タイトルにもなっているように、人は死ぬために生きている。人に限った事ではないが、生きているとはそういうことである。では、自分がいざ死に直面した時に、人生がどうあったなら後悔せずに済むか。要するにそのことについて、様々な切り口から考察されているのである。

  出火してから消火器の使い方を調べたり、被災してから緊急用具を用意するのでは遅いように、死に直面してからあるべき人生について考えたのでは遅い。戦時中の人間ドラマが胸を打つのは何故か。彼らは常に死を身近に感じていたために、その時その時を精一杯生きていたからである。著者は「団魂の世代へのメッセージのつもり」だと言っているが、死は突然訪れるのであり、死に備えるのに早過ぎるということはない。しかし、備えるといっても「死」がどういうものか分からなければ、具体的に何をすべきか分からないという人もあろう。これはそういう人のための一冊であると思う。厚さ1センチに満たない文庫本の中に、個々人が各々の人生の哲学について考えるための扉がぎっちりと詰まっているのである。

  後半・第二部は、一部で考えたことを当時(平成7年頃)の世情に当てはめて論じた各論となっている。7年前だと馬鹿にしてはいけない。今でも十分新しいのである。日本人がいかに愚かであるかについて実例とともに滔々と語られているのであるが、それが今でも新しいと感じてしまうところは問題である。

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