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グリーンアイさんのレビュー一覧

投稿者:グリーンアイ

5 件中 1 件~ 5 件を表示

火星年代記

2004/01/17 22:34

死んでしまった世界を眺めながら

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

レイ・ブラッドベリとの最初の出会いは、この「火星年代記」だった。続いて、「華氏451度」、「十月の国」、「RはロケットのR」、「何かが道をやってくる」、「メランコリイの妙薬」といった有名な作品群を読んだ。最初は感傷的な気分を誘発する彼の文章に幻惑されて気がつかなかった。いったい何が心に引っかかるのかが分からなかったのだ。

 ブラッドベリという作家は生者と死者を繋ぐ物語しか書かないということに気がついた。生きている者も死んでいる者も彼の前では交錯して描かれる。美しいが、物悲しい。

 「火星年代記」の序章としてロケットが地球から出発する様子が描かれる。少年の心を焼き焦がす希望に満ちた火星への旅立ち。「ロケットの夏」だ。「イラ」では火星人の夫婦の愛憎が描かれる。ブラッドベリイの火星人は地球人と心理構造が変わらない。外見も褐色の肌、黄色の目、髪の色以外はほとんど変わらない。愛憎の形も変わらないのだ。
 火星では得体の知れぬ不安が高まり、地球人への精神的な拒絶反応が始まる。ヒステリーのように広がった不安は、テレパシーによる幻覚操作と地球の調査隊員の殺戮に繋がる。だが唐突に、水庖症で全滅した火星人のことが語られる。「月は今でも明かるいが」は印象的な短編だ。火星人のあまりにもあっけない最後。

 地球の移民が始まり、時空連続体の捻れで生じた火星人との会合が、地球の病んだ精神の滅び行く様が「アッシャー家の崩壊」に模して語られる。火星の精霊が老人の干からびた心をひと撫でしたところで、恐ろしい現実に直面する。地球が失われてしまうのだ。「百万年ピクニック」は悲しい話だ。最後に水面に自分の顔を映す。そして、こう呟く。「君は火星人」と。

 「火星年代記」は、何度読み返しても飽きることはないが、たまに死者の世界を読んでいるような気分になるときがある。それでも、勇気を持って何度か読み直してほしい作品だ。

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紙の本未来世界から来た男

2004/01/06 21:06

雪女と言ったって

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この「未来世界から来た男」の短編集を知ったのは、ラジオドラマの中だった。最初に耳に入ったタイトルは「雪女」。もっとも舞台はヒマラヤだったけれども。その話に引き続いて、淡々と語られる奇妙な物語に、グイっと引き込まれてしまった。短いが鋭いと思った。何となく哲学的だ。これは面白い。洗練されているぞ。

 翌日本屋へひた走り、創元社の文庫本を手にした。当時は松田正久氏のカバー絵で、赤い美人の両生類人魚の乗った割れた卵からはみ出している爬虫類の頭と靴を履いた両足、そして卵を貫く針が描かれていた。何故か蝙蝠が何匹も飛んでいた。まさしく未来世界から送られたイメージだ。
 短編集は2部構成で少しエロチックな雰囲気と言葉遊びが絶妙なタイミングで語られる。各短編ごとに簡単なイラストが描かれており、これも軽妙だ。いつまで眺めていて飽きないイラストだった。

 特に気に入った短編は、「忍びの術」、「報復宇宙船」、「未来世界から来た男」、「おれとロバと火星人」、「漫画家とスヌーク皇帝」、「黄色の悪夢」、「人形」などの作品だった。とにかく短い文中にこれだけ情感と皮肉と恐怖を込められる作家を知らなかった。平凡な現実があっという間に不思議世界に変わって、また現実世界の戻る様は何とも形容しがたいものだ。スタージョンの心の奥底を締めつけられるような情感とは全く別物で無常観が漂っている。
 ブラウンのSFとしては結構後期の作品で、一番最初の長編「発狂した宇宙」などのワクワク、ドキドキの雰囲気からすると、ブラックユーモアがかなり濃く出ている感じがするのは確かだ。しかし、それは成熟の証なのかもしれない。とにかく手にとって読んで欲しい一冊である。
 

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紙の本幼年期の終り

2004/01/24 00:45

今までそこにいたものは?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 アーサー・C・クラークの作り出した異星人の中で最も冷静で尊厳にあふれた異星人がカレルレンだ。地球上空を覆う幻の宇宙船団の総督。完璧な言語を話し、地球の全面的統治を告げる。あらゆる攻撃を受け付けず、示威活動も完璧だ。カレルレンは慎重だ。必要なときまで決して姿を見せない。彼の声だけを人類は知っている。他は何も知らない。このカレルレンの謎をめぐって話が進行する。彼は、人類が「オーバーロード」を信頼する時間を計っているのだ。
 
 そして、ついに姿を現した彼はとてもすてきな恰好をしていた。そう、古の昔から人々が民間伝承や絵画でよく知っている姿だった。短い角、強靭な翼と逆とげのある尻尾をもつ姿。しかし、誰も怯えない。子供たちが彼を受け入れていたからだ。彼は、オーバーロードの命に従って、人類の統治を慎重に進める。長い長い秘密の計画が成就するまで。数世紀をかけて静かに見守っていくのだ。

 カレルレンたちは、コリン・ウィルソンが提出した人類の課題である「退屈さ」を超越した存在である。この世界では、人類さえも退屈しない。不思議で誠実な世界の物語なのだ。遥かな未来の予兆におびえながらも、ゆるやかに時は流れていく。そして、新世代の人類は自らに目覚め、約束の地を目指し、地球ごと旅立っていく。うらやましくもゾッとする物語である。

 数世紀もの時を退屈せずに過ごせる超知性というのはどのようなものなのだろう。あなたや私であれば、あっという間にこんな仕事に飽きてしまうだろう。気の遠くなるほどの時間が、ただ流れていくのだ。もっとも、カレルレンたちの科学力は、生体時間を自由に伸縮させることができるようなので、生体時間を調整することができるのかもしれない。しかし、それによって超知性は強烈な生を生きることができるのだろうか?

 そして、統一世界を実現し、黙って運命を受け入れていく人類は、我々とは違った人類なのだろうか。それとも現実の我々人類もこのような進化が可能なのだろうか?
 この物語の魅力は、そんな一縷の希望を抱かせるところにあるのかもしれない。

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紙の本天使と宇宙船

2004/01/11 02:43

ユーディの原理再び

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 ぼくは気が狂いかけている、で始まる「ユーディの原理」が一番気に入っている。本人に代わって何でもやってくれる機械が自殺して作動しなくなる物語だ。壊れるんじゃなくて自殺するんだ。そうしたら、命令しても何も起こらない。これから誰がコーヒーを入れてくれ、面倒な掃除や洗濯は誰がするんだ。誰か教えてくれ。そもそも自殺したモノって何なんだ。
 人間の信じるもののうち、本当のものは何かということを問いかける物語が揃っている。科学も宗教も考え方の問題にすぎない。妖精だって悪魔だってそういう種類の問題だ。えっ、本当かな。
 フレドリック・ブラウンの世界では名前がすべてを支配する。「ミミズ天使」でも同じく名前が問題である。そりゃ、目の前でミミズに羽根が生えて飛んでいったら驚くのは当たり前だ。しかし、これが言葉の問題だなどと誰が気がつくだろうか。「不死鳥への手紙」も「諸行無常の物語」も同じ構造だ。まったくブラウンという作家は頭がよすぎる。自分の間抜けさ加減にうんざりするほどだ。
 その点、救いがあるのは「気違い星プラセット」や「ウェヴァリ地球を征服す」だ。前者は、混乱する視覚効果を逆手にとってユーモアたっぷりに私たちをからかってくれる。ありがたいの一言だ。後者は、ウェヴァリに侵略されて電気が使えなくなった世界を皮肉たっぷりに語る。でも、彼が最後に漏らすひと言がとても印象的だ。
 「ちょっとでもいいから稲妻が見られたらなあ」
 ブラウンを読んでいると、最後にはあきらめの境地というものが理解できる気がする。諸行無常の世界ってものが何となく分かる気がする。ああ、本当にどうすればいいんだ。だからって、こんな魅力的な作品が見せてくれる世界を見過ごす手はない。読んでからまた考えよう。

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紙の本海を失った男

2004/01/16 22:01

待ち望んでいても手がつかないものもある

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 正直言って、何度読んでも理解できないのが「ビアンカの手」だ。「一角獣多角獣」で読んだときもそうだったけれども、今回もそうだった。私にとってスタージョンの作品の半分はまったく理解できない。話は分かるけれども、一体何が面白いのかさっぱり分からないのだ。一方、他のアンソロジーや雑誌に収録されているものでいつまでも記憶に残る作品も多い。「隔壁」、「極小宇宙の神」。「あなたに必要なもの」「空は船でいっぱい」などは忘れがたい作品だ。しかし、それでも私はスタージョンの熱烈なファンだと思っている。名前を見たら衝動的に購入してしまうから。ファンというのが良いも悪いも含めて応援するものだとすれば明らかに矛盾しているが。

 この本の中で私が理解できた作品は「成熟」「シジシイじゃない」、「三の法則」、「そして私のおそれはつのる」だけといってもいいだろう。今回どうしても読みたいと思っていた作品は「成熟」だった。編者あとがきでも触れられていたが、スタージョンも「成熟」という言葉を真剣に考えていたようだ。何度も結婚生活に失敗していたせいもあるのだろうが、この作品を書くまで何度も自問を繰り返している。私にとっても成熟という概念は切実である。作品中のロビン・イングリシュが味わっている苦悩は読んでいて精神的に苦しかった。何度も途中で投げ出してしまった。何もかもが簡単に出来てしまったら、すべてが予想できるようになったら次は何があるのだろうか? この究極の問に答えていこうとするロビンは精神的に追い詰められていく。そして、終局。私はロビンの達した答えを何度も読み返した。何度も、理解しようとして、何度も。

 最後に「シジシイじゃない」を読み直した。手に入れられないものを人は求める。また、その思いを断ち切るのは結局自分に他ならないことを知る。そして、前回と同様に理想の女にあった男の悲惨な結末に同情した。

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