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先月(2017年6月)

テレマコスさんのレビュー一覧

投稿者:テレマコス

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本ユリシーズ 3巻セット

2002/12/12 23:57

ダブリンの市民

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 特殊な環境にいない限り、私達の物の見方はあるぶれを含んでいる。それを意識していながらもときどき私は驚かされることがある−−知的な容貌で、髪をかきあげる仕草の魅力的な彼女に恋してしまった場合に、その傾向は顕著である。私達の意識は、十分な客観性を発揮することができないのだ。かくて、人間関係の網目は複雑となり、誤謬を招く。先日も雪かきの件で隣人とちょっとした意見の相違があった。軽視しないで欲しい。雪かきの遂行には、高度な社会性が必要とされるのだから。

 「ユリシーズ」においてラエルテスの息子、知略縦横なるオデュッセウスと対応するのはブルームおじさんであり、オデュッセウスが一子テレマコスに対応するのがディーダラスおにいさんだ。この二人の人物を軸として、1904年6月16日ダブリンを舞台に、「オデュッセイア」の構造をなぞりつつ小説は展開する。したがって、まずはディーダラス=テレマコスの不如意な生活から始まり、彼の庇護者としてのブルーム=オデュッセウスがディーダラスを伴って我が家に帰還するところで終わる(最終章ペネロペイアを除けば、だが)。

 彼らのダブリンにおける放浪を「ユリシーズ」である、と見做すこともできる。が、最も注目すべき点は、行為が複数の語り/視線から語られる点にあるように思える。ここにAという物事がある。Aは複数の人間によって語り直されるものとする。するとAは最終的伝達者のもとではCになっている可能性もあり、Xになっている可能性もある−−伝言ゲーム念頭におくと判りやすい。語りは神のものではなく、人間のものである限りにおいて、ぶれを含んでいる。「ユリシーズ」では、複数の特徴的な語りに或るぶれ(イタケの章は極めて正確なように思えるが、語り手は一体誰なのかが不明なので正しいとは断言できない)が存在し、状況を多義的に捉えられるように書かれている。この語りが、「ユリシーズ」の構造に奥行きと幅をもたらし、読者にはまるでくらげを掴んでいるような心地を感じるさせるだろう。様々な様態に変化する物質で構成された巨大な塔を私は夢想する。
 
 ついでだが、注釈はさして気にしないほうがいいという意見を私は持っている。疑問を持った点があればその都度確認する程度に留めておいたほうが良いだろう。二度三度と読みなおして徐々に理解する姿勢があれば、あなたは豊かなものを得るに違いない。

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天使

2002/11/22 03:58

可能性の減少

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 かえすがえすも残念なことに、我々の住んでいる世界では、可能性というものは時間を経るにしたがって減ずる傾向にあるようだ。私は希望する。とりわけドラフトの季節、そして野球界ではストーブリーグと称されるこの時期には、ああ、野球選手になりかった、と。私が野球少年時代に達成した幾つかの栄光−−地区大会で敢闘賞を掠め取った時の勇姿を私は思い出す。尤も大した選手ではなかった。せいぜいエラーをしなかったくらいだ。そのまま続けていたとしてもプロには到底なれなかっただろう。その後、私はユニフォームを脱いだ。
 「天使」の主人公は途方もない才能に恵まれている。なにしろ人の心にある種の影響を与える能力を持っているのだから。加えて彼の能力は他の能力者と比してみてもずば抜けている。彼には選ぶ権利があった。才能ある者だけが享受できる特権だ。
 作中、主人公は「感覚」を制御するように教え込まれる。彼はじじつ、それを制御する。しかし彼が制御しているのは「感覚」だけではなく、行動と考え方さえも制御するように馴らされていることに気づく。もう少し言えば、文体もある制御下に置かれているようにも思える。自宅でコーヒーを飲みながら寛いで読む種類の読者は閉塞感を感じるだろう。私は、読書を憩いと見做して行うのも、興味深いやり方の一つであると考える。
 もちろん「天使」は非常に完成度の高い作品である。この作品が読み手に貴重な体験を与えることを、私は保証する。付言すると、デリーロの「リブラ」を読んでいた時の感覚に似ていた。

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