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先月(2017年8月)

いくらさんのレビュー一覧

投稿者:いくら

25 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本星を継ぐもの

2005/10/02 03:11

「幽霊なんて信じない!」そんな人こそ楽しめるSF大作

16人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書がそんなに有名な作品だということは全く知らなかった私が、手に取るに至ったきっかけは、信頼できる友人のオススメ作品と小耳に挟んだからです。
そもそも翻訳物はどうにも苦手で、ハードSFなんて未知の世界だし、正直言って、読み始めて未来の科学技術に関する細かい説明が始まった時には「挫折するかも・・・」と思いました。でもここで諦めなくて本当に良かった!と心から思います。

人間には2通りのタイプがあると思う。不思議なことが起こるとそれを受け入れてしまう人と、納得できる解答を探そうとする人。平たく言うと幽霊を信じるか信じないか、の違いです。
勝手なイメージなのですが、SFは前者のタイプの人間が好んで読むジャンルかと思っていました。その認識は間違いかもしれません。
本書はとにかく「謎」がてんこもり。
そしてその謎を論理的かつ科学的に解明しようとする学者達の物語です。
一つ手掛かりを見つけたと思えば、新たな謎が見つかる。提示される謎が魅力的なのは当然ながら、学者達がさまざまな視点からアプローチし、それぞれにデータを積み上げていく過程が生き生きと書かれており、自分も一員になった気分で議論の行方を見守っていました。
そして、データがただのデータでは何の役に立たない所が現実的で面白かったです。
各専門機関から集められたデータを読み取り、それぞれに役に立つであろう情報を提供し、新たな方向性を見出す役割をになうハントの功績には、組織が効率よく最大の力を発揮する為のヒントが隠されているように思え、SFでありながらビジネス書を読んでいるようなお得な気分になりました。
ハントという心臓があることで、全身の血管に血が行き渡るかのごとく、情報が生きるのですね。

最後には真相が明らかになり、人間という存在の根源にまで言及しています。
生物でありながら、他の動物と明らかに一線を隔する私たち人間。
何故ここまで差が生まれたのか、不思議に思いはしても誰にも解けないであろう謎ですが、本書には一つの「答え」が書かれているように思います。
この物語は、どこまでが現実なのか・・・もしかしたら?!と思わせる筆力に感動です。
28年経った今でも、間違いなく最高傑作と呼べる一冊に出会えたことに感謝!

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紙の本怪盗道化師

2006/03/11 19:43

「仕方ない」って言う前にご一読を。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本は、はやみねかおる氏のデビュー作として有名ですが、児童書という分類ゆえ、実際に読んだことがない方も多いのではないでしょうか?
私もそんな「大人」の1人でしたが、東京創元社の『ミステリーズ!vol.10』に掲載されていた、「私がデビューしたころ」という氏のエッセイを読む機会がありました。
そこには当時、小学校の教師として追い求めていた理想、そして生徒達に伝えたい言葉を物語に変えたのが本書「怪盗道化師」だったこと、この作品の受賞をきっかけに作家デビューをしたことなどが綴られていました。
このエッセイに胸を打たれ、ついに私も知っているだけの状態から脱却することとなりました。
今では、なんて勿体ないことをしていたんだろう!もっと早く読んでいればよかった・・・と叫ばずにはいられません。

世の中には理不尽なことや、やりきれないことがたくさんあります。
まぁ、大人には大人の事情ってやつがある訳ですが・・・。

最近子供に「仕方ない」って言葉を使っていませんか?

それって本当に仕方のないことなのでしょうか?
西沢のおじさんは言います。「怪盗ピエロに不可能はない!」と。
そして最後には『いじめ』だって『大きなビルの影』だって華麗に盗んじゃいます。
・・・そう、「最後には」なのです。
西沢のおじさんは諦めません。決してスマートではないけれど、一生懸命知恵を絞ることを惜しみません。
内心冷や汗をかきながら、「不可能はない!」と子供たちに笑顔を見せて、その影で力を尽くすことが出来る大人が何人いるでしょう?

「怪盗」という派手で華々しい肩書きをしょいながらも、「ピエロ」のように庶民的で人情味溢れる西沢のおじさんの魅力。そして、いそうでいない大人の見本となる姿が、物語にほのぼのとした安心感を与えてくれます。
しかしながら、その実はなかなかシュールな一面も。愛犬との死闘(笑)はバイオレンス。くすりと笑ったり冷や冷やしたり、短い話の中に色取り取りの感情がちりばめられ、まるで虹のようです。
西沢のおじさんの優しさが滲み出るようなラストでは、思わず涙してしまいました。
児童書と思ってあなどってはいけません!
子供たちに夢を与えると同時に、私たち「大人」良きの教科書となる一冊です。

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紙の本秘密 トップ・シークレット 1

2004/12/29 10:12

「見る」という行為の真髄。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

生前の脳が見た映像を再現するMRIスキャナーという装置が実用化され、捜査に使われるようになった未来が描かれています。
様々な犯罪の真相を暴く秘密兵器になる!と期待されたが、MRI捜査には絶対的な精神力が必要とされ…。

表紙の美しさと帯の紹介文を見て、衝動的に買ってしまったのですが、これが大正解でした。世界観に見事に共感してしまいました。
MRI捜査に関わる人々の思いや、自身の抱えるジレンマも丁寧に描かれているのも印象的でした。

MRIスキャナーで映し出された映像は、その人の瞳を通しているので、とても主観的で「本当の姿を映している」のではなく、「その人の瞳に映った姿」なのです。
自分の視線の行く先を他人に知られたら…? 恥ずかしくて死にそうです。(もちろん、死んでからMRIスキャナーにかけられるのですが…)
普段何気なく行っている「見る」という行為の真髄を考えさせられる、奥の深い作品です。

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紙の本邪馬台国はどこですか?

2005/05/17 16:59

酒と料理と歴史バトルに舌鼓を打ちながら楽しむ大人の時間。

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

久々に一気読みをしてしまった。
本書には表題作を含む6本の短編が収録されており、それぞれ独立したお話なので、本来は一気に読む必要はないのだけど、一つのバトルが幕を閉じた瞬間に、次のバトルにまで興味が及んでしまうのです。

舞台はとあるバー。
温厚な性格の日本古代史専攻の三谷教授、才色兼備の助手、静香の2人の前に現れた、正体不明・自称「ライター」の宮田は、本職の歴史研究家である2人を前に、独自の論理を展開する。
おかげでバーはいつも激しい論争の場と化すのだが、そんな3人の様子を密かに楽しみに見守るのがバーテンの松永の日課になりつつある。
「ブッダは悟りなど開いていない」「邪馬台国は東北にあった」「聖徳太子は架空の人物だ」「光秀は謀反を企んでいなかった」「明治維新はたった一人の人物によって成し遂げられた」「キリストは本当に復活した」
これらの奇想天外に思われる宮田の説には、様々な証拠が提示され、最終的には誰もが「もしかしたら・・・」と納得させられてしまうのである。

私は歴史ミステリーを読んだことがなく・・・というより、昔っから歴史というものが大の苦手で敬遠しておりました。
今中学校で受けた歴史のテストを受けたら、下手すると0点を取れるかもしれない。
そんな歴史音痴を自負する私でも、本書は本当に面白い!
全くお堅いものではなく、聴いたことがあるかな〜?程度の知識でも、ポイントは噛み砕いて説明されていますし、バーのカウンターでの4人の会話を横で聞いている「茶(酒?)飲み話」的な感覚が本書の全てであり、小気味良い会話がテンポ良くページを捲る手を進めてくれます。

これらの会話を盛り上げてくれるのが、それぞれのキャラクター付けです。
特に自信家の静香は、宮田に対して「あなたバカ?」とどこかのアニメで聴いたことのあるような(笑)高慢な台詞を連発し、松永をハラハラさせるのだが、宮田の説の信憑性に反論できなくなった姿にちょっぴりスカッとさせられたり。
とにかく強烈な女性なのです。女のヒステリって怖いね。(^^;)
また、会話の随所に挟まれる酒のつまみがまた美味しそうで堪りません。
こんな面白い歴史バトルがみられるのなら、私も是非とも行ってみたいわ〜。

「天才」は常識にとらわれず、物事の本質のみを見定め、発想の転換ができる人間である・・・というような意味の言葉をよく聞きますが、それならばこの宮田は「天才」としか言えません。宮田=鯨総一郎なのか、それとも別に宮田なる人物が実在するかどうかは私には知りえませんが、少なくともここに本書が存在するのは現実です。
本書を専門家が読んだ時、どのような反応が返ってくるかなんてどうでもいいのです。歴史はこれほどまでに謎めいており、私達を魅了してくれる、その事実を知ることができることこそが本書の一番の価値だと思うのです。

「邪馬台国はどこですか?」の続編として「新・世界の七不思議」が刊行されています。バトル中毒症状に陥られた方は是非こちらも合わせてお読み下さいませ。

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紙の本ななつのこ

2005/02/24 15:44

こんな物語が教科書に乗っていたら素晴らしいのになぁ。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

加納さんの作品に出会ったのは、とあるミステリのアンソロジー本でした。
様々な作家さんが勢揃いする中、一人だけ毛色の違う「犯罪が起きない」ミステリに心奪われ、デビュー作であり、鮎川哲也賞受賞作品でもある本書を手に取りました。
主人公の駒子が購入した『ななつのこ』のストーリーと駒子の日常生活、そして『ななつのこ』著者である佐伯綾乃さんとの手紙のやりとり…これらが交差して物語は進んでいきます。
殺人、誘拐、強盗…などの凶悪事件は起きません。あくまで短大生・駒子の日常生活が描かれているんです。
物語から紡ぎ出される言葉ひとつひとつが繊細で透明で力強い、心にしみるものでした。
大人になる一歩手前の女の子の心情…「些細な謎」や「心の葛藤」が見事に描かれています。
読み終わった時、心がぽわぁんと温かくなるような、ミステリという枠を超えた珠玉の一冊です。
こんな物語が教科書に乗っていたら素晴らしいのになぁ。

「ミステリが苦手」という方にこそ是非とも読んで頂きたいです。
「謎」が提示され、それを手紙という手がかりの中から解決していく…という形でミステリの掟はきちんと守られていますが、上で述べたように犯罪が起きません。
ミステリの楽しさは、色々な箇所に撒き散らされた手がかりに如何にして気付くか、また気付かないで騙されるかだと思っていますが、「ななつのこ」の魅力はそれだけではありません。
一つの物語としての純粋な素晴らしさに加えて、ミステリとしての楽しみである解答が提示された時のドキドキ感を同時に味わって下さい。

By T.O.M

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紙の本魔法飛行

2005/02/24 15:51

前作のテイストを残しつつ、全く新しい物語が生み出されました。有栖川有栖氏の解説も読み応えあり♪

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

駒子シリーズ第2作目ということで、第1作目「ななつのこ」に5つ星を掲げた私としては見逃せない作品でした。
著者ご本人もお願いしていましたが本シリーズは順番に読むほうが「美味しい」ですよ♪

前作のテイストを残しながらも、また全く新しい物語が生み出されたなぁ…というのが最初の印象です。
ほのぼの感に加え、人の心の危うさや愚かさ、切なさが胸を貫きます。そして、「恋愛」というスパイスもちょこっと加わっているんです。
駒子の周りを彩る友人達を、駒子が描く「物語」の登場人物として書き記していくのですが、彼らをどれだけ大切に想っているか、文章の中に現れている気がして、駒子の誠実さを感じました。
「とても素敵な人達に囲まれているのね」…とちょっぴり羨ましい気持ちになったりして。
特に瀬尾さんは素敵vv 博識で頼りになって飾らなくって…(続く)

本書は4つの章に分かれているのですが、章の終わりに謎の手紙が挟まれています。
各章毎に物語は完結しているように見えるにもかかわらず、その手紙の存在によって読者に大きな謎を提示します。そして最後には全てが一つに集まり、新たな物語として光を放ちます。
読後には、ミステリとしての完成度の高さと同時に、ミステリの域を超えた物語の甘酸っぱさに酔いしれることでしょう。
また、本書の解説は有栖川有栖氏が書かれているのですが、それまたとても素敵なので是非とも読んでみて下さい。
もちろんネタバレはないので、解説を先に読む派の人も安心してお楽しみ下さい。

By T.O.M

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おかげで初めての確定申告も楽勝でした!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本日、初めての確定申告をしてきました!
会社を辞め、今年から在宅SOHOへの道を踏み出した私の大きな悩みの1つが、国民の義務「確定申告」でした。
今まで無縁だった私は、もちろん「確定申告って何よ?」「ハァ〜? 源泉徴収?」「経費ってどこまで認められるの?」という、知識ゼロの状態。
これはまずい!と思い、税務署発行の手引書を開いてみたのですが、勉強するつもりが難しい用語の羅列にめまいを起こし、逆に不安が募るばかり…。

そんな私を導いてくれた偉大な先生がこの本です。

数ある関連本の中でコレを選んだ理由は、まず初めに絵が可愛かったこと、そして私が「ビンボー」だからです。(笑)
この選択が大正解!
本当に初心者でもわかりやすくって、漫画や体験談など読み物としてもかなり面白いです。
基本的な用語解説はもちろん、フリーランサー、アルバイター、無職にOLにお母さんと様々なケースを項目立てて説明しているので、自分に当てはめて参考にしやすいです。
とにかく本書の基本スタンスが『税金をいかに払わずにすませるか』、更には『還付金をゲットするにはどーすればいいか』なので、知れば知るほどお得感があります。むしろお勉強するのが楽しくなっちゃう!
誰だって高い税金払うために面倒なことなんてしたくないですものね。

この本を読んだ後にもう一度手引書をよく読んだら、なんと自力で申告書が書けちゃいました! この本のおかげです。本当にありがとう。
実感を持ってオススメします。

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B.B.joker

2004/12/29 09:58

ベタなのに新しいギャグと美しい絵の絶妙なハーモニー。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

変なキャラクターがたくさん出てくる、4コマ中心の摩訶不思議なギャグ漫画です。
日本で唯一(?!)の少女ギャグ漫画原作者のにざ(性別♂)と、とてもギャグとは思えない爽やかで素敵な絵を描く作画担当のかな(性別♀)の2人が織り成すハーモニーは絶品です!
絶対に電車の中で読んではいけません。

こんなにお馬鹿で笑えるネタばかりなのに、絵が可愛くって、どんな人が描いてるのだろう?と思ったら、別人だったのですね〜。妙に納得しつつ、このミスマッチとも思える絶妙なコンビネーションが素晴らしくってで、どんどんハマってしまいました。
ほら、格好良い人が真顔で変なことを言うインパクトって大きいじゃないですか。

ジャンルは一応少女漫画ですが、男性でも楽しめますよ!
何度読んでも笑える、オススメの一冊。

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「会計士」の仕事風景が思い浮かばないアナタへ。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

名付けるならば「会計ミステリー」とでも言いましょうか。
裏金、会社の乗っ取り、クーポン詐欺、土地評価額の変動などなど、一度は耳にしたことのある事件を、会計士の監査によって謎解きしていく・・・という、一風変わった作品です。
非常に読みやすく簡潔な文体と、テンポの良い章立て、そして魅力的なキャラクターに引き込まれ、あっという間に読み終えてしまいました。
女子大生会計士の萌さんと、新米会計士補カッキーこと柿本くんの微妙な関係がまた良いのですよ。萌さんの意地悪な台詞の端々に後輩への愛を感じます。(笑)

2005年の角川文庫『夏の100選』に掲載されている本書ですが、もともとは専門学校の情報誌で連載されていたそうで、ビジネス書という位置づけでした。
あとがきで著者本人が言われているように、これを「文芸書」と分類することに違和感を感じる人もいるかもしれませんが、私はこの決断は大正解だと思います。
勉強するぞ!などと気負うことなく、可愛らしい表紙に惹かれて手に取った読者も、楽しく自然と「会計士」の世界を覗き見ることができるのですから。

世の中には色々な業界や職業があります。
そして、普通その一部分しか知らないで終わってしまいます。
本書を読むと、本はそれらの世界を知る手段である、と再認識させられます。
知ることで自分の中の可能性が広がります。
この作品と出会ったことで、会計士に憧れる若者が増えたら、作者の企みは大成功と言えるのでしょう。是非とも中学生・高校生に読んで欲しい1冊です。

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紙の本Q&A

2005/10/11 02:07

日常に潜む恐怖が忍び寄ってくる・・・!?

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本を読んで、あなたはどんな印象を持ちましたか?

「・・・とにかく怖かったです。私が過去に読んだ本の中で5本の指に入る怖さでした。夜に読んだことを後悔しましたよ」

ほぉ、ホラー小説なんですか。

「いいえ、ホラー小説とはちょっと違います。まぁ、現場の凄まじい状況などの説明はグロテスクではありましたが、実際の災害の現場ってそういうものでしょう?ニュースなどでは流れないから実感が湧かないだけで。私たちは辛い現実から目を背けているから・・・。表面的に怖がらせようという趣旨のお話ではないと思います」

なら、謎解き小説ですか?関係者の証言の中から事故原因を探るというような。

「それも違います。確かに原因究明も読者を引きこませる魅力の一つではありますが、それ以上に被害者を中心とする関係者が『どんな気持ちで現場にいたのか』『事故が起こった後どんな気持ちで過ごしているのか』にスポットを当てて聞き込みがされているんです。そこには意外な事実が隠されていて、読者を驚愕させるのです」

なるほど、客観的視点から人間心理を探求していくのですね。

「そうですね。でも不思議なんですよ。多くの人の視点から事件を知ることによって、客観的に情報を整理することができるかと思いきや、むしろ読者は先入観だらけになるのではないかと思う。この感覚は異質です。著者の筆力のなせる魔法なんでしょうか」

先入観・・・何だかあいまいな表現ですね。

「う〜ん、上手く言えないんですけど、彼らは決して特別な人間ではないんです。どこにでもいるような、もしかしたら私自身かもしれない。読んでいて『あの感情、知ってる!』という気分になる。だからどこか客観的に読むことが許されなくなっていく・・・とでも言ったら良いのでしょうかね。そこが怖さにつながるんですよ!本当にゾッとするような」

明日は我が身ですか。
何が起こるかわからない世の中ですからね、本当に。

「ここの所、テロや大きな災害が増えているでしょう?こんな時代だからこそ、この本は手に取って読まれるべきだと思います。どこにでもあるような郊外の大型ショッピングセンターが、大事故の現場になりうるという事実、これは『恐怖』以外の何ものでもないですよ」

しかもその原因は全くわからない・・・。

「本当に救われない話ですよね。しかし、一番怖いのは人間の心なのかもしれません。逆に言えば人間が心を強く持てば、人を守ることもできる・・・と気付かせてくれました。この本が警鐘を鳴らしているのですね。こんな事件、絶対に現実に起こしてはいけません!そうです、絶対に」

ええ、こんな凄惨な事件は本の中の世界だけで充分です。
大丈夫ですよ。本書のおかげで、私たちは疑似体験できたのですから。

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紙の本奇術探偵曾我佳城全集 戯の巻

2005/04/13 15:28

奇術と事件の様々なトリックに彩られた魔術城、ここに現る!

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

人気絶頂の最中の結婚、そして惜しまれながら引退し、奇術界を去った「曾我佳城」という名の美貌の女マジシャンは、今や伝説となり語り継がれている。
引退後も彼女の周囲には多くの謎が集まり、そしてまるで手品のように解き明かしていく。
そんな彼女の夢は古今東西の奇術道具や資料を取り揃えた殿堂作り。完成間近の城を前に彼女が魅せた最後のトリックとは?

この作品は《秘の巻》と《戯の巻》の2巻から構成されています。前者が上巻に当たります。
どちらから読んでも大丈夫ですが、私は絶対に秘→戯の順に読むことをお勧めします。
泡坂さんの短編は個々に独立したお話ではありますが、シリーズ全体に一つのトリックが仕掛けられているからです。
曾我佳城シリーズも同様で、多少の前後はありますが、下巻に進むにつれ魔術城が徐々に完成に近付いていきます。また、佳城の弟子である串目匡一の成長も楽しみの一つです。

奇術素人の方でも問題なく世界観に入れますし、随所に登場する解説によって奇術について詳しくなれるというおまけ付きです。
また、「奇術」というと奇抜な物理的トリック中心かと思われがちですが、そんなことはなく、非常にシンプルかつ盲点を突いたトリックも多く、純粋なミステリとして楽しめます。
心理描写もお見事。時には登場人物と自分を重ね合わせて感情移入してしまうことも。

秘・戯合わせて22の短編が収録されていますが、私は特に戯の巻の「天井のとらんぷ」が好きです。
味のあるトリックも然ることながら、登場人物達の心理を的確に捉えているなぁと思います。
子供のイタズラから始まる謎なのですが、その現象が広まる過程、つまり「ブームの元は何処なのか」を追う過程が面白くって、ページを捲る手が止まりませんでした。
更に待ち受ける意外な真実、そして佳城の登場シーンはドラマのワンシーンのようでした。

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紙の本平井骸惚此中ニ有リ

2005/05/13 20:50

不思議な文体から繰り出される、大正浪漫薫る本格探偵小説!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

○○賞受賞作!と華々しいタイトルがついてる作品には、必要以上に期待をしてしまう私がいます。本書も第3回富士見ヤングミステリー大賞受賞作ということで、読む前からすでに私の心の中に高いハードルが。(笑)

で す が!

★の数でもわかって頂けると思いますが、大満足vv
いや〜、久しぶりに「良い作品」に出会えた気がします。

舞台は大正十二年。日本を代表する「江戸川乱歩大先生」がまだ新人作家だった頃の話であります。
乱歩の作品の素晴らしさを目の当たりにした探偵小説評論家兼作家である池谷氏は、自分の才能に対して悲観的な思いを書き綴った日記を残し、家の庭で自殺を謀ります。
家の出入り口には池谷氏の奥さんが、更には庭に通ずる小道には隣のたばこ屋の目が光っており、「誰も通っていない」と証言。さてはて、現場は密室状態であったことが判明するのであります。

噺家さんの語り口調をそのまま文章化したような、独特な地の文が不思議な味を出しており、最初はちょと読みづらいとさえ思っていた文体が読み進めるうちにだんだんクセになっていきます。
また、随所に使わているカナ文字が効果的で、大正時代の口語調を上手く表しているように感じさせ、キャラクターをより引き立ててます。
特に探偵役の骸惚先生と澄夫人は魅力的。こういうライトノベルで既婚者のキャラクターが全面的に出されているのは珍しい気がしましたが、夫人あっての骸惚先生です。二人の微妙な力関係も本書の読みどころかと。(笑)
主人公の河上くんもお調子者で軟弱な青年っぷりが皆に愛されるキャラで、涼嬢を始めとする「強い」ご婦人方との対比が面白いです。

また、著者のミステリに対する誠実さが随所に滲み出ており、上記の乱歩のくだりや、「モルグ街の殺人」の登場、骸惚先生の口を借りて語る密室論など、ミステリファンの心をくすぐる小ネタも満載です。
犯人の動機に関しての考察では、森博嗣氏の「黒猫の三角」を思わすような哲学的な一面をも見せてくれます。
ミステリを読みなれた人ですと、容疑者の少なさゆえ犯人はすぐにわかりますし、密室トリックに関しても少々拍子抜けする点もありましたが、きちんとした「本格」の枠組みの中で新しい楽しさを見出してくれる本書には、ライトノベルとしての魅力が存分に詰まっております!
是非2巻も手に取ってみようかと。楽しみが増えました♪ありがとう。

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紙の本鳥人計画

2005/05/02 12:07

鳥を目指した男達の熱い冬のミステリ。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

角川文庫から本書が発売されたのが2003年とわりと最近のことなので、新しい作品なのかと思っていたら、初出は1989年。思いの外古い作品で大変驚きました。
15年経った今でも全く色褪せていません。
もちろん、15年なんてたいして昔のことじゃないかもしれませんが、その間に冬季オリンピックが、4回行われているんですもの!

まだ子供だった私の記憶には残っていませんでしたが、調べてみたところ、1988年に行われたカルガリー大会での、日本ジャンプ陣の成績はお世辞にもあまり良くありませんでした。団体11位。個人も70・90m級(当時はこのようなくくりだったらしい)共に10位以内に日本の選手の名前はありません。
多くの人々の記憶に残っているであろう原田雅彦選手や船木和善選手はこの時まだ登場していませんでした。

その時代背景で書かれた作品だと思って読み返してみると、また違った感慨が胸に広がります。
外国人選手の圧倒的な力を目の当たりにし、それでも日本人選手たちはいつか自分が一番遠くまで鳥のように跳ぶ姿を夢見て練習を重ねていたのでしょうか。
そして、その夢を叶えた後輩達の姿を、どのような思いで見つめていたのでしょう。

・・・な〜んて語っていると、スポーツ小説を読んでいたかのようですが、本書は「ミステリ」です。
しかしながら、鳥を目指した男達のドキュメンタリーのようでもあります。いや、もちろんフィクションなんだけど。
そんな錯覚を起こしてしまうほど、この作品はジャンプ界を緻密に描かれています。
これだけジャンプに詳しくなり、選手達の心境を理解するにはどれだけの取材を重ねてきたのだろう、と脱帽するばかりです。
特殊な業界を舞台にしているにも関わらず、読み進めているうちにいつの間にか読者はジャンプ界のいろはを知り、「ミステリ」として本書を楽しむ為の下地作りも自然にできてしまうのがまたすごい。
スポーツとミステリが見事に融合しています。

もちろん、ミステリとしての魅力も存分に発揮されており、今まで体験したことのない不思議な謎解き合戦が読者を待っています。
あらかじめ犯人がわかっており、様々な物証から探偵が追い詰めていくコロンボ方式のミステリは数多くありますが、本書のすごいところは、更に犯人が密告者を推理するという要素が含まれているところです。
警察が犯人の犯行方法・動機を追い(How・Why)、犯人が密告者を追い(Who)、これでもか!というくらい贅沢に謎が散りばめられています。
刑事の視点、犯人の視点の他に、第3者的存在の選手の視点が交差し、一つの真実に向かって収束していく展開に引き込まれ、一気に読まされてしまいました。
序盤からかなり重要な証拠や、推理のヒントとなる情報が読者に与えられるにも関わらず、その結末は更に上をいくものでした。
「おっ、もしかして?」なんて自力で真相解明した気になってぬか喜びした私です。(^^;)
ここは一つ、あなたも鳥人達のジャンプに賭ける青春を味わいつつ、純粋に騙されてみませんか?

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進化した「ライトノベル」はジャンルの垣根など簡単に越えてしまうのです。

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今、ライトノベルが熱い!

それは本好きの人間なら誰もが知っていることですが、実際愛読している人は一部に限られているのではないでしょうか。
そもそも本屋ではコミックスの売り場近くに置かれていることが多く目にすることがないという人や、表紙の絵柄によっては「買うのが恥ずかしい」と思う人(その点はbk1では問題ありませんが)など、特に年齢が上になるほど障害が多いものです。

ライトノベルが中高生をターゲットに作られているとは言え、大人が読んでも充分に楽しめる名作がたくさん隠れていることは間違いありません。
かと言って、新人育成に力を注いでいるレーベルが多く、ただでさえ入れ替わりが激しいジャンルですから、本当に自分にあった面白い本に巡り合うのはなかなか難しいものです。
本書ではランキング上位の作品だけでなく、様々なレーベルから厳選されたオススメの作品が紹介されており、すでにライトノベルが好きな人はもちろん、興味はあるけど読んだことがない人にこそ楽しめる親切な作りとなっています。

内容もただのランキング本というよりは、ライトノベルの文化そのものを紹介されているのが興味深い点です。
そもそも「ライトノベル」とは何なのか?という導入的要素や、ライトノベルの歴史、各レーベルの特徴などが書かれており、近年のブームの背景を読み取ることもできます。
通常のノベルスとして発売されてはいるけれども「ライトノベル」に近いテイストを持つ作品も増えてきており、西尾維新を初めとする人気作家の作品もランクインしており、ジャンルの垣根が低くなりつつある事実にも注目したいです。

また、このランキングと一般書店の売り上げデータとの相違が面白いところ。
シリーズものの強さを見せ付けつつ、まだまだライトノベルが一般的に認知されていない現実が露見しています。
本書を通じて良作にスポットライトが当たるよう、期待しております。

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紙の本テロリストのパラソル

2005/04/13 15:09

「くたびれたアル中男」の内に秘めた輝きに魅せられました。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

文庫で出たら絶対読むぞ!と楽しみにしていた作品でした。
前評判も上々でしたし、安心して読み始めたのですが、展開がとてもスピーディーで全然飽きません。
そして、主人公、島村と周りの人間の会話が非常に魅力的です。
島村は一見すると「くたびれたアル中」という、探偵役でもあるミステリの主人公としては異例のタイプなのですが、事件を追うごとに内に秘めた輝きがキラリと光り始めます。
その魅力の見せ方がとっても自然で好感がもてます。嫌味じゃないんですよね。
いつの間にかただのアル中男が素敵なオジサマになってるの。(笑)
作品の象徴でもありますが、20代の私にとっては遠くて現実感がなかった、大学闘争の細かい描写が印象的です。読んでいるうちに安田講堂事件について詳しく知りたくなりました。
熱くて甘くて、そして破滅的な彼らの青春時代が愛おしかったです。
社会派ミステリは苦手・・・という方もすんなり読める作品だと思います。
導入的な意味でも、試しに読んでみてはいかがでしょうか。
また、社会派ゆえにテーマや背景に気をとられがちですが、本格ミステリとしての側面も充分に楽しめます。上手い具合に伏線が張られていて、読み進めるうちに「あっ!そういえばあの時・・・」と言った驚きが味わえますよ。

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