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先月(2017年6月)

天野若さんのレビュー一覧

投稿者:天野若

1 件中 1 件~ 1 件を表示

痛々しいほどひたすら夢を求めた生方に感動

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 劣等感をばねにした一匹狼のアルピニスト森田勝氏の壮絶な人生を描いたノンフィクション。世の不条理に怒りを叩きつけるかのように岩壁に挑戦し続けた天才クライマー。痛々しいほどひたすらに自分の夢に向き合うがゆえ、自分にも他者にも一切の妥協を許さない。山に対する執念が生きること、そんな修羅の生涯が言い知れぬ感動を与えてくれる。

 偉業を成し遂げた「三スラの神話」は、読んでいて胸が痛くなる。邪気のない純粋な気持ちとはいえ、あまりにも不用意に近しい人を傷つけてしまう。当時、困難というより雪崩が集中する極めて危険なコースである谷川岳滝沢第三スラブ(三スラ)の積雪期初登攀に成功した時、有頂天のあまりパートナーの前で 「終わってみればオレ一人で登ったようなものだ。オレが三スラを登ったのだ……」 と、しゃべりまくる。深い劣等感ゆえの極端な優越感なのか。何故「オレたちが…」と言えないのか。
 彼が言葉にしたことは真実であり、思っていること。しがらみや思惑、損得勘定にがんじがらめの身には、「ちょっと違うんじゃない」と思う反面、羨ましくさえなる。
 
 「K2下山劇」は“組織と個人”の問題として興味深い。
 エベレストに次ぐ世界第二の高峰 K2遠征隊において、第二次アタック隊に選出された森田氏は、一次でないことが不満で、リーダーの懇願を無視して山を降りてしまう。“チームの使命と個人の夢”、損得抜きに自分の心にあまりにも忠実で、周囲の迷惑などにはまったく思いが至らない。組織にはまったく不向きな性格だ。それでは何故、彼は単独行者とならなかったのか。
 「彼は一人孤独に瞑想にふけるタイプではない。山でも、誰か落ち着いた人がそばにいてくれないとヘマをやる。パートナーがいた方が、技術を十二分に発揮できる。そういう意味で、単独行には向いていないクライマーだったんです」
 「世渡り下手というか、先を見る目がないというか、そういうところが山でもあった。参謀がいて、それ行け、とやると先頭を切ってみごとに働くが、自分で作戦を練ってやるとなると弱点が出てしまうんです」
 「彼自身は単独行に憧れてはいた。しかし、淋しがり屋だからダメなんです。気質的にいって、単独行は合わなかったんじゃないでしょうか」など、ザイルパートナーたちの証言が記されている。

 組織になじめず、かといって単独行者にもなれなかった悲運の人生のようにも思える。しかし、ひたすら夢を追い求めグランドジョラス北壁に42歳の命を散らした生き方に共感する人は少なくないだろう。そして、私もそのひとりである。

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