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先月(2017年8月)

エルフさんのレビュー一覧

投稿者:エルフ

182 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本エンド・ゲーム

2006/01/04 15:05

まさか、まさかのエンド・ゲーム。

13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「光の帝国」から始まった常野物語では常野の人々は不思議な能力を持っているが権力への志向は持たず、穏やかで知的な人々という、人でありながら人ではなく超越した人達というイメージと淡い哀しみに満ちた物語だったのに対し、この「エンド・ゲーム」では常野の人々の思わぬ姿と哀しみよりも怒りやその能力故の不安定さを見せられてしまう作品になっていることにまず驚かされます。
恩田陸の本で私が感じるのは清らかで凡人の辿り着けない世界への「憧れ」だったのに、まさか常野物語の「オセロ・ゲーム」がこんな形で展開するとは想像もしていませんでした。
予想外のことなのにこの世界が嫌いかと聞かれると私は嫌いではなく、むしろこの人間らしい世界観が好きでしたね。
また現代の世の中の歪みをリンクしてある部分も良いのではないでしょうか。
冒頭の時子が語る怪談、文章を目で追うだけなのに背後から恐怖が這い上がってくるような禍々しさは「禁じられた楽園」に通じ、誰が真実を語っているのが誰が嘘をついているのか分からない混乱さは「ユージニア」に通じ、また「あれ」とか「包まれる」という得体の知れないモノへの恐怖は「月の裏側」などに通じると思います。
つまり「エンド・ゲーム」は集大成と言ってもいいのではないでしょうか。
時子、瑛子、そして失踪した夫が長年闘ってきた「あれ」。
ある日瑛子は旅先で長い眠りについてしまう。一人残された時子は長い間封印してきたあの番号へついに電話をしてしまう、しかし母が残したメッセージは全く違うものだった。
これが最初の一日なのですが毎度この恩田氏の「惹き」の部分には感心してしまいます。
章を読む毎に続きを読まないといてもたってもいられないのです。
あぁ、時子はどうなってしまうのか、「あれ」とは何なのか、そして彼らが行き着く先には何が待っているのか。
始まりから中盤までの魅力は言う事ありません。そして終盤へ向けて・・・、この部分で読者の反応は二つに分かれそうですが、この裏切り方を好むか好まないかが評価の分かれ目なんでしょうね。
この「エンド・ゲーム」の何が凄いかと言えば最後の最後、彼らが見せるもう1つの常野一族の最後の姿が想像の域を超えていたということだと思います。
まさかあの常野物語でダークな世界観が観れるなんて思いもしませんでした。
本当に「そうきたか」という驚きで一杯に。
自分達の置かれた立場に対する冷ややかな思い、そして冷ややかな笑みとともに始まる新たなゲーム。一味違う常野の世界を満喫できた一冊でした。オススメ。

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紙の本青空の卵

2009/06/06 20:51

読了後、とても気持ちのよい気分になれる一冊です。

10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

*あらすじ*

主人公・坂木司は外資系の保険会社に勤務しています。
友人の鳥井真一はひきこもりのプログラマー。
一人暮らしが長いせいか料理の腕はプロ顔負け。
鳥井はほっておけば何週間でも家に閉じこもっている、そんな彼を外の世界へ連れ出すために僕は鳥井の家へ足を運んでいる。
僕が街で見た気になることを不思議なことを鳥井に話すと彼はその鋭い観察眼で僕が見えなかった真実へと導いてくれる。

そんな二人の前に現れたのは不自然なまでに化粧をした女性、誰かにストーカーされているという視覚障害者、知能に障害があるのか言葉が上手く話せない少年・・・・。彼らに隠された真実とは??

1.夏の終わりの三重奏
2.秋の足音
3.冬の贈り物
4.春の子供
5.初夏のひよこ


これは単なるミステリ小説ではありません。
その奥の深さに驚かされます。

さて、この本有栖川有栖氏の有栖・火村シリーズのように二人の男性によって数々の謎が解かれてゆきます。
火村シリーズとちょっと違うところはこの主人公・坂木と鳥井はお互いにお互いを常に気に掛け、深く繋がり信用しあっている仲だというところ。
火村シリーズだと 有栖の片思いっぽい感じがありますが、この二人は物語の途中で依存という言葉が出てきますが例え依存しあっていたとしてもいいんじゃないかと思えるくらい深い部分で必要としている二人なんですよね。
その部分は短編が進むにつれて深まっていく気がしまた。そして二人の信用度、深い絆を感じて行きます。
どちらかと言えば「ななつのこ」の駒子と瀬尾さんのような二人なのかしら。

ひきこもりになった鳥井の抱える問題、これは読んでいて胸が辛くなりました。
そして彼を見守り続ける坂木の姿も・・・・彼は本当心優しい青年なんですよね。
この透明感のある青年が自分の周りで困っている人を見逃せずに時に利用され、時に真実に傷つきながらも成長していく物語はミステリを読んでいるという感じはしませんでした。

そしてまた季節感溢れる文章がいいですね。
最後が初夏で終わる辺りもまぶしい青空が二人の将来を明るく見せているようでとてもいいです。

ちなみに私は「春の子供」が一番好き。ラストは感動しちゃいました

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紙の本漢方小説

2009/04/19 12:41

心と身体に良い一冊

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

芥川賞は受賞していない作品のほうが優れている・・・島本理生氏のときからずっと私が感じていることです。不思議なことに受賞した作品は私にとっては理解不能なものが多いのですよね。
そんなわけで今回も候補作に上がり受賞しなかった「漢方小説」は私にとっては五つ★の面白さで何故この本が受賞していないのか不思議でならないのでありました。

主人公のみのりは一言で言えば「負け犬」の31歳。
元彼の結婚話を聞いたその日から体調は不良、原因のわからないドキドキに悩まされてしまいます。動悸や食欲不振、一体私はどうしちゃったの?と病院通いの日々が始まり、辿りついたのが「漢方診療所」。
少しずつ回復していったみのりですがまたまたショックな出来事に振り出しに戻り落ち込む事に、しかも飲み仲間の男性からはちょっと違う方向へ向き過ぎとまで指摘されてしまうし同じ状況の友達は睡眠薬を飲みすぎて入院してしまう・・・。

結構切実な内容ですし30代の女性であれば体調不良は精神不良に結びついていることも多いし若い頃と比べるとグラグラと不安定になる時期も増えてしまう・・そんな主人公達の気持ちは痛いほど伝わります。
それなのにこの本の素晴らしいところは笑える箇所かあちこちに散りばめられているところなのですよね。
プププと笑いながらもウンウンと頷く、そして漢方のように優しく読者の心を癒してくれる。
そんな心と身体に良い一冊です。

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紙の本闇の子供たち

2008/08/16 21:57

問題作であり衝撃を受け、更に一気に読ませながらも最後は読者を突き放す一冊

10人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

何とも言えぬ救いのない物語であり、読み終えた後ずしりと重い気持ちになりながらも非日常の出来事として忘れ去れる物語がこの本なのだと思います。
きっとここに描かれていることは現実に起きていることであり、今もどこかで少女や少年は売られ、病気になれば生きたまま捨てられ、性の処理だけでなく内臓すらも売買される対象になっているのでしょう。
それが伝われば伝わるほど、目を背けてしまうのが日本という国で生まれ本当の意味での貧困が遠い国の出来事としてみている今の自分だからかもしれません。
物語に登場する少女や少年たちは人として扱われることなくモノとして扱われ、大人たちは都合よく搾取していく。貧困がすべての原因だとしても親すらもわが子を売り、そのことに罪悪感を感じていないのが薄ら寒さとリアルさを感じてしまうのです。
物語はあまりにも残酷で描写も生々しくおぞましい。

生きたまま殺される少女や暴力に怯え大人の望むままのモノとなる子供たち。
そして児童売買をなくそうと奮闘するNGOの音羽恵子と彼女に頼まれて記事を書く新聞記者の南部浩行。
二人の日本人と一人の少女により物語は進むのだが少女の身にふりかかる出来事の壮絶さに比べ日本人はあくまでも「善意」の振りまきにしか思えないし、どちらかと言えば「自己満足」にも思えてしまいます。
さらに最初は同じ正義感から始めた一人の臓器移植により失われる少女の命を救うことがラストで二人の立場は変わっていってしまうのです。
きっと音羽恵子のような生き方をする人に同調し感動を受けるほうが正しいのでしょうがあまりにも青臭く真っ直ぐ過ぎる彼女の言動に違和感を感じてしまいました。
こう感じることが作者が描く物語の本質であり、ラストに南部と音羽のそれぞれの言葉になり、ほとんどの人が南部と同じ行動を取るのだろうと思います。
問題作であり衝撃を受け、更に一気に読ませながらも最後は読者を突き放す、今までに読んだことのないようなタイプの一冊でした。

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紙の本対岸の彼女

2008/07/01 21:42

胸が痛みながらも止まらない。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

まず最初に感じたのは何と生々しく心が痛くなる作品なのだろうという事です。
しかしあまりにも共感できる二人の現在と過去に読む手が止まらず、痛いなぁと思いながらも一気読みさせられる1冊でした。
しかも女性ならではの陰湿さを包み隠さず、また目を背けたくなる部分を真っ直ぐに見て書いてあるので読むタイミングが悪いとヘコんでしまいそうなんですよね。
でも少々落ち込んでも読む価値はかなりある本です。

学生時代も社会に出てからも大変なのは勉強や仕事ではなく人間関係。
特に女の友情は脆い、そして上辺だけの事が多い。
同じ時間・空間を過ごさなければいけないから必死で一緒にいる仲間を探す。
教室移動や弁当を食べる時に独りになるのが怖いから、周りから浮いて見られるのが怖いからと恐怖から仲間を探してしまう。今思うと毎年毎年一から築き、翌年にはゼロになる人間関係をよく築けたものだとあの頃の自分達の努力に感心してしまいますね。
もし今もう一度あの時代をやり直せと言われたら本当にキツイと感じてしまうかもしれないです。もしくは今なら無理に頑張らずに自分と他人を割りきって楽に過ごせるのか
もしれないのですが・・・。
実際に10代でナナコのように本当に大事なものだけを見つめられる人は少なく、またナナコのように潔く生きれる人も少ない。周りから見られる自分を気にせずにいるのは大人になった今でも難しいものです。人は独りでいることではなく、独りだと思われることが辛いのではないでしょうか。
ナナコが抱えていた闇と葵とナナコが辿りついた先にあったもの、そして葵が異国の地で悟ったものは哀しいけど正しく、辛いけどどこか温かい、読んでいて葵と共に震える
膝を押さえて前に前に進んでいきたいと思わせてくれました。

葵がナナコのように変わっていく姿と、内に篭っていた小夜子が新たな人間関係の作り方を知っていく姿は一言で簡単に言うと「勇気」が沸いてきます。
あぁそうか、そうなんだよねと深く頷いてしまいます。
「対岸の彼女」というタイトルは生き方の違う『対立』する二人を表現しているのかと思っていたらそうではなかったのですね。
「対岸の彼女」は葵でありナナコであり小夜子でもあるし読んでいる自分でもある。
手を振る二人が見え、そこに行こうと思う自分に気付くラストでした。

この本を手にするまでは帯などから「負け犬の遠吠え」みたいな女同士の確執を描いているのかと思っていたのですが、全然違う内容に良い意味で大きく裏切られました。
大人が読んでも、高校生が読んでも共感できる部分の多い本だと思います。
初めてこの本で角田さんの作品を読みましたが凄い作家さんと出会えたことに大満足。

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紙の本楽園 上

2007/08/15 14:24

宮部みゆきらしい問いかけに心にずっしりと重く残る一冊。

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

どの家庭にも存在している他人には決して入れない領域、底なし沼のように暗い場所。
そんな暗部にいつの間にか辿り着いてしまったのが「模倣犯」事件のフリーライター・前畑滋子。

あの事件から9年が経ったにも関わらず事件のショックから立ち直れずにいた彼女の元に依頼にきたのはどこにでもいそうな婦人・荻谷敏子。
裕福ではなく傍から見ると不幸を背負っている荻谷敏子だが息子の萩谷等との二人きりの生活は楽園そのものだった。
そんな等は12歳にして事故で亡くなる。
絵の上手かった等が残した謎の絵の数々。
それは16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、それを絵に描いていたというものだった。
12歳の息子は「事件」を予告して死んだのか!?
それとも息子は第三の目で何を誰から見てしまったのか?

ただ荻谷敏子の弔いをしようと思っていた前畑滋子は思いもしない事件に遭遇していく。
そしてまた事件の渦中へと巻き込まれていくのだ。

家庭だからといってどの家も楽園になるとは限らない。
いや逆にどの家にも暗部が存在し、それを上手く隠して生活しているもの。

16年前に我が子を殺し家の下に埋めたままその上で生活をしていた大人しいと評判の両親はその年月何を思っていたのか?
そして彼らはもう一人の娘を何から守ろうとしていたのか。
時効を迎えた今となって警察へ話した本当の理由とは。

子殺しが起きた理由は決して「衝動的」という一言では終わらず、またもし家族にこの少女のような子がいたとしたら?という答えのない切実な心の叫び。
宮部みゆきらしいこの問いかけが重くずっしりと心に残る作品でした。

模倣犯とは別物ですがやはり物語の端々にあの事件が出てくるので模倣犯を未読のかたはあちらから読んだほうがよいと思います。

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紙の本サウスバウンド

2006/03/22 16:55

本を読む面白さを久々に感じさせてくれた一冊です。やはり奥田英朗はスゴイ。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

あちこちの書評サイトで絶賛されているので今更ここでオススメする必要なんてないのですが、それでもやはりオススメせずにいられない面白さなのです。
未読の方がいましたら今すぐ購入ボタンをもしくは本屋へ走りましょう。図書館で借りてもいいのですが絶対に読了後は手元に欲しくなるに決まっているのでこの本だけは買うべきです。損は絶対させません(笑)。
そしてこの本を手に入れたら積読なんてせずにさっさと家で読み始めましょう。もちろん読み始めたらその後の予定なんて入れてはいけません、携帯の電源も切っておくように・・・・。
何故ならば読み始めたら最後、もう一気読みせずにいられない面白さなのです。
最近仕事に追われており読書をする元気すらなかった私ですがこの本だけは別物で久々に「あー、読書って楽しいなぁ」と忘れかけていた本の面白さを思い出させてくれた一冊でした。何より疲れも吹っ飛ぶ面白さなんですね。
さて、物語ですがはた迷惑で突拍子もない父親に翻弄される二郎くんが主人公。
平穏だった生活は極悪中学生に睨まれたことから一変し、人生最大の危機まで陥ることに。
大人には絶対にわからない子供たちの世界をよくぞここまで描いたなぁ〜感心してしまうくらい彼らの日々はリアルなんですね。
ただでさえ困難が降りかかっている最中なのに世間からズレにズレた父親が登場しさらに話はややこしいことに。とても小学生とは思えないくらいの悩みを抱える二郎くん。
彼の子供らしい部分や、逆にあの両親だからこそ生まれる逞しさ、そして正しさ、真っ直ぐさが読んでいて微笑ましいのですよね。
一応表の主人公は二郎くんですが、裏の主人公は父親の一郎。この一郎がすごく良い味を出しているのです。ここまで強烈なキャラは滅多に出会えないかも。
ある意味「伊良部」よりも強烈です。
一郎の言っていることは無茶苦茶ですが筋は通っていますし、何より自分の信念を貫き通す姿や何にも屈さない姿は格好良さを感じます。また子供に無理強いさせているようで、自分と同じ道を選ぶ必要はないことも説いてますし、子供への愛情も深い。
一章だけ読むと自分の父親だと迷惑過ぎて嫌ですが(働かないですし)、二章の西表島での生活での父親の姿を見るときっと惚れ惚れとするのではないでしょうか。
一章ではほとんど登場しなかった姉の変化も見所かも。
読み終えた瞬間、楽しい時間を有難うと感謝したくなるくらい面白い本でした。

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何とも言えぬ切ない余韻の残る恋愛小説であり、人が人を許す難しさも感じた一冊。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

淫乱な母親から生まれた七竈。
父親が誰なのかわからないまま淫乱な母は七竈を産み、そしてその男を求める旅は子供が産まれてもなお続きいまだ旅人である。

旭川に田舎で七竈は小さいころからその産まれにより友達ができず、唯一の友は七竈と同じく鉄道を愛する美しい少年の雪風のみ。
雪風との穏やかな時間は望んでも望んでも決して続くものではなく、美しい少女と少年の切ない青春の時間は好むと好まざると終わりを迎えてしまう。
認めたくなくても認めざる終えない事実。

時間の流れは、なにより大事なはずだったものをすべて、容赦なく墓標にしてしまう(P252)

あまり感情を表に出せない七竈の心に痛みがすべてこの一行に込められる。
なんとも言えぬ切ない余韻が残るのである。


この小説というかこの作家には不思議な魅力がある。
タブーの世界なのに厭らしさが感じられないのだ。
そして風変わりな主人公達を愛おしく感じてしまうのである。

人が人を許すことは難しい。
きっと生きていれば誰もに「許せない誰か」がいる。
死んでも許せぬと思うくらい憎んでしまう「誰か」を痛む胸のうちに抱えて生きている。
時間の流れがそれを風化させるのか?それとも胸に巣食うのかは誰にもわからない。
「ほんのちょっと」その誰かを許せたら軽くなるのに難しい。
あらためてそう感じた一冊。

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紙の本古道具中野商店

2009/04/19 13:00

噛めば噛むほど味が出る、スルメのような一冊

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

主人公の「わたし」は小さな古道具店でアルバイトをしている、店長の中野は三回も結婚し子供もそれぞれにいるのに愛人とのことですったもんだのあるダメ男、店長の姉マサヨさんはいい歳なのに愛に生きている少女みたいな不思議な人、彼氏なのか同僚なのか分からないタケオ。
この4人の中で起きる日常の出来事が書かれているだけの作品にも関わらず何故か惹かれるものがある。
しかもこの本、人情ものかと思えばその芯にあるものは直球の恋愛ものなのだ。
ダメ店長の憎めない恋愛騒動、歳の離れたマサヨさんの愛の告白や、わたしとタケオの不器用なのだか何なのだか分からないけれどうまくいかない恋。普通に想像すると生々しい男女の恋愛なのに何故かキラキラと輝いて見えるから不思議である。
何か大きな出来事があるわけでもないのに次第に中野商店に自分も出入りしているような居心地の良さと、その世の中から少し浮いているような時間が永遠に続くとは思えないほんの少し漂う切なさが微妙なバランスで保たれている。
長居は出来ないけれど居座りたいなぁと思わせるこの感覚がこの本の良さなのだ。
そしてエピローグとも言える最後の短編がまた味わい深い。
おそらく誰にでも居心地の良い空間、時間、仲間に囲まれた期間があったと思う、しかしそれは一過性のもので永遠にその時は止まってはくれない。
変わってゆくものだということを前提にしてある居心地の良い空間というのが逆に読んでいて幸福感を感じさせてくれた。

噛めば噛むほど味が出る、スルメのような一冊である。

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紙の本木洩れ日に泳ぐ魚

2007/07/29 16:23

謎と感情の渦に巻き込まれていく一冊。

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

どれだけ疲れた時でも恩田陸氏の本だけは序章を読んでしまうとその吸引力に負けてしまい止めることができない。

アパートの一室で引越し前の最後の日を迎える1組の男女がいる。
明日から男のほうは別の女と暮らすアパートへ、女の方は友人の家へ。
今夜しかお互いに残された時間はない。
この1年間お互いに過ごした地獄のような日々を終らすために、そして明日からの新しい日を迎えるために決着をつけないといけない「ある出来事」。

彼に、彼女に「あの男を殺した」のだと言わせることができるのか?

緊張感に満ちた一室で行われる男女の会話。
しかも二人の背景を小出しにしているので一体二人がどういう関係なのか、「あの男」とは誰なのか、謎が謎を呼んでいく。

1章終わるごとに見える新しい真実と新たな謎。
思わぬところから呼び覚まされた記憶から今まで二人が教えられていたこととは異なる真実に驚愕させられたり、一瞬で立場の変わる恋愛関係。

過去と現在の交差と謎と謎の結びつき、緊張感と脱力感、感情の高まりや醒め方。
そのどれをとっても絶妙なバランスなのだ。

やはり恩田氏はうまいぁと再確認した一冊。

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紙の本しゃべれどもしゃべれども

2007/01/10 20:38

文句なしに「良い」。ただ一言「読むべし」といいたくなる一冊。

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1997年に単行本で出版されその年の「本の雑誌」で年間ベスト1に輝いた作品。
前評があまりのも良いと期待し過ぎて逆に評価が下がることが
ありますが、この作品に限ってはそんな心配は不要です。
評判・話題になって当然期待以上の面白さでした。
読んいる間中楽しさと切なさとそして爽快さに包まれていて読
了後自然と笑みが浮かぶ作品なのです。
もしこの本を読んで悪評を書く方がいたらならば、それはただ
の偏屈としか呼びようがないのでは?と思うくらい兎に角一言
「良い」作品なのです。
本好きの方の中には社交性のある方もいますが、私にとっては
本の世界はいわば現実からの逃避行のようなものでこの本に登
場する話しベタで付き合いベタの4人の気持ちが実に良く分か
るのです。
五月が自分が周りと上手く付き合えないからこそ三つ葉のよう
な人に憧れつつも距離を置く、湯河原は優しさが表にみえない
から誤解される・・・。
人に嫌われて平気な者などいるわけがない、自信を持てという
時点でその人に対して「良し」と認めていないなど当たり前の
ことをサラリと語られ、そしてハッとさせられる場面が多いの
も佐藤さんの作品の特徴なのかもしれません。
いじめや対人恐怖症など決して明るいだけの物語ではないのに
何故こんなにも爽やかな読了後なのか?
それはきっと三つ葉のおせっかいと優しさが4人に向けられる
とともに読者の心にも伝わってくるからかもしれません。
皆の心に灯りをともしてくれる一冊です。

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紙の本あの日にドライブ

2005/11/01 16:12

読みながら主人公と自分を思わず重ねてしまう一冊でした。サラリーマンにオススメの一冊です。

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

荻原氏の本に登場する主人公は多くの人にとって等身大のサラリーマンの姿。
特に今回はエリート銀行員からタクシーの運転手になった伸郎が主人公ですしタイトルが「あの日にドライブ」ですから、重松氏の「流星ワゴン」みたいな話なのかな・・と思っていました。
ところがやはり荻原さん、良い意味でしっかりと裏切ってくれました。
きっと誰にでももう一度戻ってやり直したい「あの日」はあると思います。
一体どこで自分は間違えてしまったのかと選んだ道の全てがダメだったように感じる時や何をやっても上手くいかないのは運のせいで、もう一度「あの日」に戻れば違う道を選んでいたのにと、悔やんでも仕方ないことをいつまでも悔やみ続けるのが人間であり、「あの日」から起きるはずの全く違う人生を妄想してしまうのも人間だと思います。
ですから読みながら読者側も自分の人生の中で選ばなかった「あの日」の別の選択を妄想させられてしまうのですよね。
伸郎の物語なのに伸郎だけの物語ではなく、自分の人生もついつい重ねてしまう。
だからこの先どうなるのか、本当に「あの日」の選ばなかった道を今選ぶことが出来るのか、それこそ人生は今からでも車線変更は可能なのか?と先が気になって仕方がない一冊でした。
変なプライドに邪魔されて、こんな場所は本当に居場所ではないと思う伸郎の気持ちや、過去へ執着し過ぎてしまう行動など人生が自分の思うものとはちょっとズレてしまった時に誰もが思う気持ちを生々しく書いてあり、時に読んでいてドキリとさせられてしまいます。
例えば他の作家さんが書けば伸郎の人生は凄く深刻なものですし、もっと重たいものになってしまうのに、荻原氏が書く伸郎の姿は深刻の中にも笑いがあるのです。
その笑いはトホホという笑いに近いのですが実際に社会に出てみるとこのトホホという可笑しさに出会うことは多いのですよね。
最終的に伸郎が気付いたこととは・・・これは読んでのお楽しみということでここには書きませんが大人版の森絵都「カラフル」みたいな一冊かなと思いました。
見えてこなかった家族の色々な思い、周りの人々の本当の姿。
決して何かが解決したわけでもないのに何故か心の中がスッキリと晴れ渡る一冊でした

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紙の本トリツカレ男

2006/07/01 23:29

読者がトリツカレてしまう魅力の一冊。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

私の個人的な問題ですが基本的にラブストーリーが好きではありません。ですからこの本も内容紹介の欄にラブストーリーの文字を見た瞬間「うげげ」と正直思いました。
ところがです、この本はラブストーリーでありながらファンタジーのような物語でもあり、また切ないのか心温まるのか、一体感想をどんな言葉で表したらよいのか解らなくなりそうなくらい感情の渦が後から押し寄せてくる一冊なのです。
まず冒頭からジュゼッペが何故トリツカレ男と呼ばれるのかその説明はなく、いきなり「オペラ」にトリツカレた様子から物語は始まるのです。
何をしても歌から始まるジュゼッペ、それは彼にとって息をしているのと同じくらい自然な行為のためやめようと思っても止めれない。またほかに三段跳びにトリツカレて新記録が出るほどまでになるのに、ある日突然そのトリツカレるものは変わってしまう。
その説明を延々とするのではなくほんの数ページだけなのにも関わらず、変わり者である「ジュゼッペ」という人物が自然と読者の心の中に踊るように生きてくるのです。
そして彼が出会う少女が「ペチカ」。
彼女にトツリカレたジュゼッペは彼女に笑ってもらうためだけに、彼女の心の中にある哀しみを取り除くためにあらゆることをしていきます。
彼女の心を凍らせるものは全て暖めて溶かしてあげたいと願うジュゼッペ。
不思議な出来事を混ぜながら、次第にペチカは真実に近づいていくのです。
ここまでファンタジックにそして感情を押付けることなくラブストリーを書ける方がいたのか!という驚きで一杯になってしまった一冊でした。
本当の愛は相手の幸せと笑顔を求めて、その笑顔で自分も救われることという単純だけれども難しいことをスラリと語っているこの本は是非手元に置いておくべき一冊かもしれません。
この本を読むと、今度はあなたがジュゼッペにトリツカレることお約束します。

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紙の本夏期限定トロピカルパフェ事件

2006/04/16 12:36

早くも次の作品に期待大。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

米澤氏の作品はラストまで読み終えてから最初に戻ると全く別の雰囲気が漂う面白さがあるのですが、今回も最後まで読んだ後、冒頭の序章を読み直すと小左内さんの笑いが別の意味を含んでいるように思えて思わずゾワゾワとしてしまいましたね。
ミステリーズ!で「シャルロットだけはぼくのもの」を読んでいたせいか、ずっと短編連作だと思っていました。ところがこの「トロピカル」は短編にみせかけて長編だったのですね。いや単純に私が短編だと思いこんでいただけかもしれませんが。
物語の最初は小鳩君が小市民を目指しながらもついつい小左内さんに挑んでしまうという小鳩君が中心の話になっていて、狼である小左内さんの牙はずっと隠されています。ところがアチコチに伏線として小左内さんの企みが貼ってあるのですがラストまで読まないとその笑顔の意味が見事に隠されているのですよね。
ここがこの愛らしい装丁とは裏腹にピリリと毒が効いた米澤さんらしいところなのです。
さすが復讐が好きな小左内さんだけあって長期に渡って準備を進めていたのですよね。
しかも敵も見事も騙しているところも二人らしいと言えば二人らしい。
お互いに二度と中学時代を繰り返さないため、小市民であることを誓ったのにも関わらず二人の関係は微妙にズレていき・・・。
さて、この続きは一体どうなるのでしょう?
次の作品は「秋期限定モンブラン事件」と言われていますがこのラストで次にどう繋がるのか早くも次作に期待のシリーズです。

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ミステリファンにとって毎年恒例のお祭りのような一冊です。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

12月になると今年もこの本が出る日を今か今かと待ちわびます。
ミステリファンの方にとって一年の総決算でもあるベスト10。
「このミス」と「本格ミステリベスト10」を比べて読んでも良し、読み逃した本をピックアップしていくのも良し、兎に角重宝する一冊なのです。
また毎年行っている読者アンケートがありますのでミステリ好きの方がどんな作品を上位に選んだのかが分かるのもまた喜びの1つです。
さらに「新作近況会」では作家さんの来年の予定も載っているのでこちらもかなり参考になります。
最後に「国内ミステリ刊行リスト」が載っているのですが、私は毎年この一覧表の中で読んだものをチェックしていくのが恒例となっています。意外と読み逃したものが多くてビックリすることが多いのですが・・・。

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