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先月(2017年8月)

さつきさんのレビュー一覧

投稿者:さつき

1 件中 1 件~ 1 件を表示

祈りの日

2003/02/16 23:33

ロマン大賞佳作。しかし設定負け。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ロマン大賞の佳作だというので読んでみましたけれど、期待はずれでした。
 題材として原発事故を持ってきたというのは、新鮮なのですけれど、それにまつわる悲劇というのが小出し小出しでなかなか核心に迫らないので、主人公の気持ちがわかりませんでした。事故の事後状況というのも、もっと社会的観点からの描写がないと迫力に欠けます。テンポが悪い。
 幻の蝶を追う、というのがテーマの一つであって、それはとても夢のあるファンタジックなものなのですから、余計に原発事故の背景を濃く描かないとすべてが絵空事のように思えてしまいます。土台固めをしっかりしてほしかった。
 いきなり現れた、主人公の少年と一回り以上も違う女性カメラマンへの思慕、というのもすんなり納得のいく展開ではありません。
 もし、自分がこうだったら……と当てはめて読みながら感情移入していくのは小説の醍醐味でもありますが、私は自分に最も近いこのカメラマンの行動に納得がいきません。むしろ嫌悪さえします。
 ジュニア小説、少女漫画によくあるパターンの登場人物たち。主人公を支えるしっかりとした理知的な若者。老人らしい老人。ちょっとオチャメなパパ。ブリっこ気味の女の子。主人公は少し鬱屈している塞いだ少年で、閉鎖的な生活の中にいきなり現れる破天荒な年上の女性。こういう人物配置に新鮮味はありません。
 加えて言うなら、台詞の一つ一つにもっと気を配って書いて欲しいです。
 少女小説の特徴の一つに台詞が妙があります。台詞がいかにその人物を表現しているか。そして読みやすいか。だからといって、ただ台詞が多いというのではない。余計な台詞はいらないのです。もっと練ってください。
 良い意味で少女小説の観点らしからぬ視点を持った、この作者の次回作に期待しています。まだこれはデビュー作なのですから。既存のコバルトの枠から、はみ出るような作品を書いてください。もっとがんばれ。
 

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