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Псиさんのレビュー一覧

投稿者:Пси

1 件中 1 件~ 1 件を表示

タイム・リーパー

2003/05/23 22:22

永遠の近未来

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 宇宙旅行から帰ってきた家族。
 空飛ぶ車。
 ゴミの様に消されるヒト。
 人格を持ったシステム。
 暗躍する超能力集団。

 ごった煮の様に混沌とした近未来の風景。その描写に関して、大原まり子さんの右に立つことのできる方は皆無だと思います。
 三度も星雲賞を取られた大原まり子さんは、近未来を舞台としたSFを数多く執筆されています。枚数の長さを問わず、システマティックな残酷さと人間らしい暖かさを併せ持ったその描写は、Псиをずっと魅了しているのです。

 そんな大原まり子さんの「タイム・リーパー」は、やはり近未来を描いた長編。1988年の日本、主人公の森坂徹は交通事故のショックで30年後の2018年にタイムリープ。気が付くと病院にいたトオルは、時間を跳躍したらしいことに、自分のカラダが金属製になっていることに、そして30年前には存在の予兆すらなかった自分の娘に、ただただ驚嘆。しかし、そんな驚きに暮れる間も無く、時間を跳躍する「能力」を持ったトオルを巡って、様々なヒトが、種族が、組織が動き始めるのです。

 Псиは、あまりSFを読みません。ですから、SFとして「タイム・リーパー」がどうなのか、残念なことにПсиには判りません。ただ、その魅惑的なまでに混沌とした未来の描写、創造逞しいヒトには堪らない行間の魅力、そして、全ての山が終わった後に用意された、はっとする様な最後の展開…そうした大原まり子さんの魅力は存分に詰まっていますし、SFだとかタイムとラベルだとかに惹かれない方にも、存分に楽しめると思います。


 ちなみに、SFを読まないПсиがSF的だと思う手法(?)のひとつに、世界観の共有があります。
 大原まり子さんの作品にも、「未来史」と呼ばれる未来のトーキョーを舞台にした作品群があり、単行本の枠を越えて設定や世界観を共有しています。この「タイム・リーパー」は、一応「未来史」作品のひとつに数えられていますが、他の「未来史」作品との繋がりは殆ど皆無です。
 もしも、大原まり子さんの描く未来に興味を持ったなら、「未来史」の中でも最もドライで残酷な結末を持った短編集「未来視たち」を、タイムパトロールの他の活動に興味を持ったなら短編集「メンタル・フィメール」を、長編が読みたくなったら星雲賞受賞作である「ハイブリッド・チャイルド」をご覧になることをお薦めします。

 絶妙な展開や描写も然ることながら、見事としか言い様の無い大原まり子さんの文体は、きっとあなたに感動を運ぶ筈です。みなさんが大原まり子さんデビューを輝かしく飾る作品として、二人の素敵な郵便屋さんがアイを運ぶ短編集と、長編「タイムリーパー」はうってつけです。
 Псиは、「大原まり子さんの作品で一番好きなのはどれですか?」と訊かれて、思わず頭を抱える様になっているに違いない、未来のみなさんに祝福を送信します。

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