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せいさんのレビュー一覧

投稿者:せい

1 件中 1 件~ 1 件を表示

女は儚く、勁く、そして畏しい

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ここの書評につられて読んでみたので、わたしも自分なりに書評を書きます。
興味をもって読んでくれる人が増えてほしいので。

この人の業績の本流?の少女小説は読んでいないけれども、ここに納められた小品の多くもまた、本質的に少女小説だと思う。少女が、閉ざされた者の謂われなら。

どの小品も、ぴっとフォーカスが合ってはいない。
レンズにソフトフィルタでもかけて撮ったような感じがする。それも天然に、だ。
それを、甘いと断じるのは、簡単だ。
だがそれは、目を技巧に犯された者がくやしまぎれに吐く捨て台詞ともいえる。
どこか淡くゆらめく世界のなか、その外部の者には永遠に入りえぬ世界のなかから、泡のように浮かび上がってくる作品。そんな感じの小品集だ。
小林秀雄は彼女の作品をきらっていたとか、ちらと解説で見た。さもありなん。
天然の目は技巧では勝てない。だからといって天然が優れているわけではない。
それはただの、宿命だ。
そんな二重のやりきれなさが、彼女の作品が黙殺されがちな理由ではなかろうか。

ひとむかし前の女性の姿が、ここにはある。
待ち続け、許し続け、耐え続け、恨まず、けれど、願う姿が。
その姿は『女性』とイコールとは限らない。
ひとむかし前の日本の、名もなき善良な、しかし弱き庶民たちとも重なる。

あくまで嫋やかで、暈けていて、ねっとりと閉ざされた世界。
植物のように儚くて手折られて、うらみさえ哀しげな風情をたたえる女たち。
どこか懐かしいこの世界は、けれど、どこまでも底深く、昏く、おそろしい。
死者の魂が、懐かしく、おそろしいように。

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