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日経BP社 編集委員 木村功さんのレビュー一覧

投稿者:日経BP社 編集委員 木村功

20 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本職人学

2003/11/26 17:53

真の職人は絶えず革新の工夫を重ねる

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 職人の技とは何か、それが現代にどのような意味を持つのか。自ら旋盤工として50年を過ごした著者が、現場で働いた自分の経験と熟練職人に聞いた話をもとに、伝統手法に画期的な工夫を加えて革新的なものづくりに励む職人を生き生きと描き出す。この1冊で見えにくかった職人の世界がはっきりと読者の眼前に広がるだろう。
 著者は、職人の技能、熟練、仕事に対する姿勢などを次のように語る。
 「技術が進歩すれば技能は要らなくなる、と考えるのは誤りである。…技能よりも技術のほうが上だと考えるのも、技術者の奢りである」
 「工場の職人は限りなく無個性なものを作るために、そのものを作り出すプロセスで、限りなく個性を発揮する人たちだ」
 「伝統的な技能にとどまっていないで、常に新しい、よりすぐれた技能を獲得して、伝えられた技能の限界をさらに拡げようと努力する技能者だけが、熟練工と呼べる。だから、熟練はいつも生きている。時代を生きているし、空間を生きている」
 「ものを作り出す人間の心だては、ものを作るところから、ものとの関係のなかでのみ生まれる。ものとの関係のなかでのみ生まれて、人との関係のなかにまで生きる。そういう心だてだけが、職人気質と呼べるものである」
 このような著者の言葉は、豊富な実例をもとに導き出されているだけに迫真性がある。自分の専門の金属を削る旋盤の仕事にとどまらず、家具、測定機器、機械部品、精密電子部品、レンズ研磨、食器、果てはパン製造まで広く熟練職人の技能を追求していく。著者自身が職人であるため、それぞれの分野の職人が知恵を絞り工夫を重ねる過程がじっくりと書かれている。職人同士で相通ずるところがあるのか、こうした点の叙述は他の書き手では到底及ばないところだろう。
 この本を読んで感動を覚えるのは、ものづくりに限りない愛着と誇りを抱く腕のよい旋盤工の背筋をぴんと伸ばした、おもねりも虚飾もない著者の姿勢である。日本の未来は、ものづくりにかかっている。ものづくりに関わるすべての人に読んでもらいたい本である。どんな職業にも職人的な要素がある。ものづくりとは直接関係ない仕事についている人にも得るところが大きい本だ。
 なお、著者は労働運動、政治運動にも関わってきた小説家でもある。
そしてこう語る。「ものは雄弁である。いい仕事をしていれば、きっと誰かが見てくれる。人が見ていなくても神様はきっと見てくれている。経済的には決して恵まれないで、いい仕事をするが生きかたとしてはむしろ不器用にしか過ごせない人に、無神論のわたしが、つい神様を担いでそんなことを言ってきた」。職人を励ましながらも、職人にどっぷり漬かりきれない部分を残す人間の正直な息づかいが伝わってくる。いや、それらは著者の中でしっくり同居しているのかもしれない。

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ザ・プロフィット

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本は実に刺激的な本である。賢人のチャオが若いビジネスマンのスティーブとの対話を通して、企業の利益がどのように生み出されるかをパターン化し、分かりやすく説明してくれる。
 事業のリストラクチャリング、新規事業、新製品、新サービスの開発などを考えている経営者、ビジネスマンが利益の上がる事業モデルを導入する際に配慮しておくべきポイントを懇切丁寧に、身体の中に染み込ませるような語り口で教えてくれる。現在の仕事に行き詰まりを感じ、なんとか突破口を開きたいと願っている人にも、現状をどう理解し、次ぎにどのような手を打てばよいのかについて、光が射し込むような感じがするアイデア、ヒントを提供してくれる。
「顧客を知ることが利益のはじまり——顧客ソリューション利益モデル」、「ファイアウォールで利益を守れ——製品ピラミッド利益モデル」、「同じ製品で異なるビジネスを——マルチコンポーネント利益モデル」、「臨界点を目指せ——スイッチボード利益モデル」、「大ヒットを創造するマネジメント——ブロックバスター利益モデル」、「一つの資産からさまざまな製品を——利益増殖モデル」、「売り手が主導権を握る——インストール・ベース利益モデル」、「ニッチな市場を深く掘れ——専門品利益モデル」等々、利益を生み出すモデルを23モデルに整理し、個々のモデルのメカニズムの説明が実に巧みになされている。
読者は、自分の会社の事業、仕事とここに示された利益モデルを比べながら読み進んでいくと、自社の利益モデルの強みにも弱みにも納得し何回もうなずき、「そうだ、その通り」と思うに違いない。現実のビジネスのケースが23のモデルで全て説明し切れるわけではない、と著者も認めているが、23の利益モデルの原則、仕組みを押えていれば新しいケースにも適用できるという。
 「利益というのは、モデルや方程式というよりも考え方だ。物理学が物質のエネルギーについて教えてくれるように、利益は経済のエネルギーを教えてくれる。…収益性を追求するとは、高い利益はどこでどのように発生するかを常に問いかけながら、考えを日々変えていくことなんだ。」この言葉は、著者が最も訴えたいことだろう。
 経営者、ビジネスマンが自分で購入して個人的に読む以外に、経営コンサルタントが顧客の研修に使うテキスト、自社の社員の研修用テキストなどにも使える。かしこまって四角四面の研修講義を聴くより、この本を基にして自由なディスカッションをする方が、ずっと研修の実が上がるのではないだろうか。
賢人チャオが、スティーブに読むように指示する本の中には、邦訳されて長期にわたって売れ続いている良書もあり、推薦書籍のリストはおおいに参考になる。
 中川治子さんの訳もこなれて、賢人と教えを受ける若者のやりとりの呼吸がよく感じられて心地よい。二人のやりとりに初めはまどろっこしさ感じる人もいるかもしれないが、じっくり読んでいけば面白さに引き込まれていくに違いない。

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ビジネス書で今年最大級の収穫

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  この本は2003年に日本人が書いたビジネス書分野で最大級の収穫の1つになるのではないだろうか。経営者、経営幹部はもちろん日本企業の研究者、学生など多くの人に読んでもらいたい本である。バブル崩壊の後遺症から抜けきれない日本企業の経営の立て直しに貴重な指針となるに違いない。
 「自分たちが分かる事業を、やたら広げずに、愚直に、真面目に自分たちの頭できちんと考え抜き、情熱をもって取り組んでいる企業」。これが著者のいう優秀企業の姿である。
 優秀企業の条件として著者は6つ挙げる。第1の条件は「分からないことは分ける」、第2は「自分の頭で考えて考えて考え抜くこと」、第3は「客観的に眺め不合理な点を見つけられること」、第4は「危機をもって企業のチャンスに転化すること」、第5は「身の丈に合った成長を図り、事業リスクを直視すること」、第6は「世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること」——である。
 現在、優秀な業績を上げている日本企業にこれらの条件を当てはめ、販売、利益、財務などのデータ、企業トップへの綿密なインタビューなどをもとに、優秀な実績を上げている背景、要因を客観的な理論として打ち出したことにこの本の重要な価値がある。6つの条件と似たような内容の説は、これまでたびたび述べられていたが、客観的事実に基づく証明が十分でない、一般理論に昇華されていないなどの弱点があった。つまり、優秀な企業が持つ固有の特徴でしかなく、他の企業には通用しない特徴と見られてきた。本のタイトルを「研究」とした点は、日本企業を客観的に分析しようという著者の強い意志を表現するものでもあろう。丁寧でじっくりした論証の進め方に著者の謙虚な自信が見え、叙述全体に日本企業に対する著者の温かい応援の情が感じられる。
 優れた日本企業が共通して持つマネジメントの原則を明確に示す本書は、日本の企業研究で誰もが読むべき基礎的な書籍になるに違いない。英語をはじめ各国語に翻訳されて出版されれば、外国の日本企業研究者、日本企業の経営を知りたいビジネスパーソンにとって極めて有益な本となるだろう。まずは英語版の出版を期待したい。

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アメリカの覇権に頼らざるを得ない世界

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 著者のビル・エモット氏は英「エコノミスト」誌の編集長として世界の潮流を凝視してきたジャーナリストである。同誌の東京支局長を務めたこともあり、日本のバブル経済に警鐘を鳴らした著書「日はまた沈む ジャパン・パワーの限界」(1990年刊)はベストセラーになった。
 21世紀の教訓から21世紀を展望しようとする著者の問題意識は、ニつの点に絞られる。一つは、社会主義に勝利した資本主義は今後も繁栄を続けるか、二つ目は、唯一の覇権国となったアメリカが世界の平和を維持する役割を果たし続け、世界を資本主義が普及する安全な場所にできるかどうか、である。
 アメリカは帝国主義の時代の覇権国である英国とは全く異なるタイプの覇権国だ。植民地での収奪、軍事力を背景とした外交交渉など英国のとった行動とは違うやり方で現在の覇権国の地位にある。搾取と略奪の植民地支配に手を染めたことはない。著者はこう言う。「アメリカが信奉して海外で普及させようとする価値観は他の国がそれを受け入れた場合、相手国を弱めるのではなく、むしろ強化するものだ。・・・アメリカは、勝利することにより、その理念が自らの優位を失わせることになる史上初の覇権国なのである」と。
 こうした今までに例のない覇権国が誕生したこと、資本主義の優位性が証明されたこと、民主主義を原則とする国が豊かで安定した社会をつくることができること、などの点が20世紀を通じて確認できた事実として解き明かされる。
 著者によれば、資本主義は本質的に不安定なものだが、人間の活力、経済的豊さ、生活水準の向上などをもたらすシステムである。資本主義の持つ欠点や弱点は、民主主義に基づいて形成された政府が修正し補っていくことができる、と言う。独裁制を残し言論の自由もない自称民主主義国家が多数あるので、著者は「リベラルな民主主義」が本当の民主主義であると条件を付けてはいる。
資本主義も民主主義もアメリカの持つ基本的な価値観で、それだからこそアメリカが覇権国になりえたのだが、将来にわたってアメリカが軍事力を使ってでも平和の維持に努めるのだろうか。その疑問に、著者は摩擦も強硬な反対もあるが、「イエス」と明言している。アメリカの信奉する価値観の強さに信を置いているからだ。
 本書を読んで感じるのは、著者の視野の広さである。欧米の歴史、現在の情勢分析に止まらず、アフリカ、中近東、アジア、中国、ロシアなどにも仔細に検討の目を向けている。西欧文明を上手く取り入れいち早く西欧に対抗できる一大勢力に成長した日本には随所で触れているため、日本人には読みやすい。
 誰がこの本を読むべきか。資本主義に疑いと敵意を抱くことしか知らない一定数の人、アメリカと協調する日本の姿勢に対する不満からなんとなくアメリカ批判に逸脱してしまう人などに読んでもらいたい、と言ったら皮肉に過ぎるだろうか。ともかくも、世界の中における日本の位置、外国との関係、世界のバランス・オブ・パワーの現実を知りたい人、あるいは再確認したい人には極めて有益な本である。

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「任せた」ではリーダー失格

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 米国でベストセラーになったことが納得できる本である。企業のトップ、経営陣にとどまらず、全ての階層のリーダーにとって得るところが極めて大きいだろう。著者の2人は経験豊な経営者、企業のアドバイザーで、2人が自分の仕事を通して確信した「経営は実行」という結論は説得力に富む。
 著者によれば、企業経営を語る場合、これまでの根本的な問題は、実行がビジネスの戦術だととらえられ、リーダーは実行を他人に任せ、もっと「大きな」問題に注力すべきだと考えられている点にある。「この考え方は完全に間違っている」という。
 実行は単なる戦術ではなく、企業の必修科目であり、戦略や目標、文化に根づかせなければならない。企業のリーダーはその中身と実践に深く関与して部下や他人に任せきりにしてはならない——と説く。
 立派なビジョン、戦略計画を持つ企業も、事業を実行する手法、体系を持たないと結局は事業に失敗する。実行のノウハウ——と言っても良いだろう——を確立し社内、組織にそのノウハウを植え付けておけば、環境変化にも適切に対応できる組織として生きていかれる、というわけである。
 誰もが独創性認め、コンサルタントや投資家が賞賛するビジネスプラン、事業計画も着実な実行が伴ってはじめて意味を持つ。企業が成功する必須の条件として「実行」という概念を打ち立てたことの意義は大きい。経営を学問的に分析するうえでも新しい視点を提供したのではないだろうか。
 また、この本が優れているのは、企業の普遍でかつ重要なテーマである「人材」、「戦略」、「業務」を実行という問題と連動させて分かりやすく話を進めている点だ。特に、人材の問題が企業にとって最も重要な問題と強調し、著者のこれまでの経験、実例をもとに展開する人材論は面白い。人材の評価について、過去に目を向け評価をするのは誤りで、はるかに重要なのは明日の仕事ができるかどうかだ、というような指摘には同意する向きも少なくないだろう。今までのレベルの仕事で優れた実績を上げた者を、上位のレベルの仕事のリーダーにしなかった米国企業のケースには経営トップの目の確かさを感じさせる。
 最新流行の経営手法に跳び付き、社員、部下を言葉やスローガンだけで振り回すようなリーダーはいつの時代にもどこにもいるだろう。だからこそ、この実行の重要さを再認識し企業は実行のノウハウを確立すべきという提案は、永遠の真理として我々の耳に響いてくる。
 読んで損のない本ではなく、読んでおくべき本であると思う。

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経営の視界が開ける

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 この本が教えてくれるのは、企業が成功するためには何が必要かということだ。しかし、ハウツー本ではない、経営再建・強化に速効性がある具体的な処方箋でもない。企業のマネジメントを基本から検証してマネジメントの原則を抽出し、成長、飛躍の裏には“きちんとしたマネジメント”があることを明示する。
 マネジメントが対象とする、価値創造、ビジネスモデル、戦略、組織、実行と評価、人材など企業の課題を総括的に取り上げ、実際の企業を例にとりながら巧みにマネジメントの原則、マネジメントの本質を読者の前に提示する。フォード、GM、トヨタ、GE、サウスウエスト航空、デル、イーベイなど、歴史のある大企業からネットワーク時代にチャンスをつかんで台頭した若い企業が推進したマネジメントの説明は分かりやすく説得力がある。
 不況のトンネルの出口が見えず、濃い霧の中をさ迷っているような日本の経済、産業。経営者は日常業務に追われて企業の明日を考える余裕も無い。変化が激しいため新しい事業に確信が持てず不安に囚われ、経営判断の基準も揺らぎ勝ちになる。
 経営者、経営幹部は著者のマネジメントについての洞察を読み、多くのヒントを得られる筈だ。日常の業務、経営課題の解決にどのような視点で対応すればよいのか、読者は貴重な示唆を受けることができるだろう。
 マネジメントは、利益を追求する企業だけに必要なのではない。最近注目されている非営利企業にもこのマネジメントの原則が十分適用される。これもニューヨーク市警、高齢者の生活を有意義なものにすることを目的にする組織、エルダー・ホステルなど実際のケースを通して語っている。日本でも非営利組織が増えつつあるが、そのマネジメントができる人材が不足して、マネジャー養成が急務とされ養成講座も開かれている。利益というプレッシャーがかからないために、これからの経済社会に極めて有用な活動であるにも拘わらず失敗する非営利団体が多いという。非営利団体も含めた組織のマネジメントを取り上げた点も本書の特徴だ。

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変革の原動力は心と感情にあり

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急激なスピードで変わりつつある経営環境に企業はどのように対応していくべきか。変わる必要があることまでは誰でも頭で理解できるが、どうすれば企業組織やそこに働く人間の意識改革ができるのか。本書は組織変革のプロセスを分かりやすく描き、環境変化に柔軟に対応して持続的な成長ができる企業をつくる手法を提示している。
 現実離れ、教条的、抽象的になりがちなテーマだが、実際にあった例を豊富に挙げながら話を進めているため叙述は説得力に富む。現実と切り結んでいる経営者、ビジネス・リーダーも納得のいく内容の濃い組織変革のガイドとなっている。
 著者は組織変革のプロセスを以下のように8つの段階に分ける。
第一段階:危機意識を高める。第ニ段階:変革推進チームをつくる。第三段階:適切なビジョンをつくる。第四段階:変革のビジョンを周知徹底する。第五段階:従業員の自発的な行動を促す。第六段階:短期的な成果を生む。第七段階:さらに変革を進める。第八段階:変革を根づかせる。
 この8段階を文字通り読む限りでは、眼から鱗が落ちるような新鮮な驚きがあるわけではない。経営学者もコンサルタントも頭の中で、これくらいの整理は簡単にできるに違いない。本書が優れているのは、この結果を引き出すために90以上の組織の人間にインタビューを重ね、事実確認を行なっている点だ。アメリカ、ヨーロッパなどの企業で実際にあった逸話、精選した事例を基に導き出されたこの組織変革の原則に読者は賛同せざるを得ないだろう。
 組織変革は全ての企業、組織に不可欠のものであることは論を待たない。しかし、改革の本質をとらえて改革を具体的にどのような手法と手順で進めるかが大きな問題だ。本書はその問題に対し、人間の本性も押さえながら現実に役立つ回答を示している。企業の中で一度でも組織改革や業務改革の仕事に参加した経験のある人、改革に意欲を持つ人は本書で取り上げた事例に見られる改革抵抗派、抵抗心理などにうなずくことだろう。
 そして、著者は「変化のプロセスで最大の課題は行動を変えることだ」と語り、「行動を変化させるカギは、分析や理性に訴えるのではなく、視覚に訴え、心に訴えることにある」と付け加える。この本で何回も強調されているのは、心と感情に訴えることの重要さである。優れた頭脳がまとめた整然とした改革案や変革のプランは、変革の行動につながらず絵に描いたもちに終わるというのだ。
 日本の電力会社のトップが「うちの社員は優秀で事業計画も万事遺漏のない計画をつくるのは得意だが…」と嘆くのを聞いたことがある。感動や情熱を引き起こさない計画は、行動も引き起こさない。そして、何も変わらない。
 本書には、企業のトップ、経営幹部、変革チームのメンバーのほか、人間がつくるあらゆる組織のリーダーにとって有益なヒントが豊富に盛り込まれている。若いビジネスマンは、自分を高める貴重な教訓を得ることができるだろう。

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紙の本中国リスク高成長の落とし穴

2003/11/04 18:43

客観的に中国のリスクを分析

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 中国についての本が大量に刊行されている。政治、外交、経済、社会と幅広いテーマで中国を対象にした本が書かれている。始皇帝、老子、孔子、孟子など歴史や文化、思想を通じて現代中国に迫ろうとする書から中国でのビジネスや生活のためのノウハウ本等、切り口も多種多様で、百家争鳴といった感じだ。書いている人の中国に対する見方、思想も違うため、読む人は今の中国をどう理解すべきか混乱させられるのではないだろうか。外国からの生産設備、低賃金労働力などで輸出を急激に伸ばし「世界の工場」と言われ始めたことにともない「中国脅威論」も頭をもたげてきている。
 本書は「中国の安定成長は日本の利益である」という考えに立ち、マクロ経済、金融、産業、企業経営、技術・研究体制、政治・社会、農業、環境、エネルギーなどの分野で中国が抱えるリスクを詳細に分析している。中国は急速に変貌しているが、他方で内外から変貌を迫られつつあると言ってもよい。中国の本当の姿と課題を客観的な事実、データに基づいて中国が先進国に成長する過程で直面すると見られるリスクを読者に示す。
 失業増などによる社会不安拡大、財政赤字拡大と資産バブル、企業経営への党の干渉、知的財産権の侵害と弱い研究開発力、急激な民主化要求による政治体制の動揺——などのリスクを指摘する一方で、日本企業に対して、「リスクの裏には中国が世界経済と一体化していく過程でのビジネスチャンスも豊富にあるといえる。リスクの面ばかり見ているとチャンスを失うことにもなりかねない」、「リスクを踏まえた対中戦略を練っていくべき」と提言する。これが、本書全体の基調となる姿勢だ。
 「中国はまだ発展途上国で近代化にはまだ時間がかかる」(温家宝首相)。発展途上国であるが故に生じているリスクや課題も多分にある。しかし、中国の指導者層、若手リーダーも問題は十分理解しており、打ち出される政策を見てもリスク対策に真剣に取り組もうとしている、と本書は述べる。政策が本当に実現されるのかという疑問はあるが、それはまた別のリスクだろう。
 本書では、中国の有力エコノミスト50人、中国大企業100社と対象にアンケート調査を行って中国側のリスクに対する考え方などを聞いている。この調査は中国側の真意をつかむ上で非常に役に立ち、類書に比べ本書の価値を高めるものとなっている。
 本書を読んでもらいたい人は、色眼鏡で中国を語る人の言説にいまひとつ納得できないでいた人、中国の実態を正確につかみたい人、中国との合弁事業、事業提携、貿易で既に実績がある企業のビジネスパーソン、対中国ビジネス進出を考えている人、などである。
 タイトルの「落とし穴」という表現が中国のネガティブな側面を余りに強調するような印象を与えるのは少し残念な気がする。鮫島敬治氏をはじめ執筆の12名はいずれも著名な中国通の研究者、ジャーナリストである。

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世界最強の諜報機関の実像に迫る

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 一国の存亡をかけた戦争、外交交渉は昔から情報戦でもあった。相手の戦略、戦術、戦力などを事前に知ることができれば戦いを有利に進めることができる。世界の最強国になったアメリカが情報戦の要としているNSA(米国家安全保障局)の秘密に覆われた活動を白日のもとに曝した本である。国際政治・外交に関心のある人だけでなく、ビジネスパーソンも経済・産業問題の国際交渉の裏でひっそりと相手を盗聴、スパイするNSAの存在と活動を知っておくべきだろう。
本書が書いている世界最大最強の電子情報機関、NSAの電子情報戦、諜報活動のいくつかを挙げてみる。
・第2次大戦時ドイツが誇っていたエニグマ暗号を解読していた。ソ連の暗号を解読し戦後数年、アメリカはソ連の軍・警察・産業関連の暗号通信をほとんど読んでいた。
・キューバ危機の際、アメリカはソ連がキューバにミサイル基地を設置することは退けるのに成功したが、ソ連の大規模な傍受基地の建設は阻止できず、「フルシチョフは拳骨を失ったかもしれないが、耳を獲得した」。
・67年6月の第3次中東戦争で、イスラエルがアメリカの情報収集艦リバティを米艦と知りながら攻撃、乗船者の皆殺しを図った。イスラエルは、この件のもみ消し工作に奔走した。しかし、アメリカの偵察機ははるか上空で襲撃の顛末を傍受していた。
・ベトナム戦争では、空、海、陸上で徹底的な偵察・傍受体制を敷いたが北ベトナム軍、南ベトナム解放戦線軍は通信を極力控えたため拠点爆撃の多くが空振りに終わった。サイゴンを陥落させた北ベトナム軍はNSAの一番重要な暗号機械、最高機密の暗号・暗号表資料を接収した。これはアメリカ史上最大の高度機密暗号資料の流出だった。
・UKUSA(英米通信情報協定)を構成する主要英語使用国家群は、同盟国であろうと敵対国であろうと他国を盗聴する。加盟国は盗聴、傍受などに関する共通の規則を持つ。信号情報処理、情報の自由な利用のため加盟国共通のソフト「エシュロン」を開発した。
・中国の対艦巡航ミサイルのイラン売却を中止させ、97年10月のクリントン・江沢民の米中首脳会談で中国から先端兵器拡散防止で合意を取り付けた。
・インテルサットの商業通信衛星を利用した通信はほとんど傍受できる体制にある。極東向け電波は日本の三沢米空軍基地の巨大アンテナ群、ゾウの檻アンテナで傍受している。
・95年6月ジュネーブで開いた日米自動車交渉では会議の数週間前から派遣されたNSAチームが日本の代表団のホテルの電話を盗聴し、米代表団を支援した。
 本書では、このほか、3万8000人の職員を抱え、メリーランド州に本拠を置くNSAの厳重な警備体制、一つの独立した異様な町をなすNSAのさまざまな施設などを紹介する。冷戦終結による予算の削減、ソ連担当者の余剰、紛争地域の多様化による語学要員不足、暗号解読などの中心になる数学専攻スタッフの不足、コンピューター要員の不足など新しい課題に直面しているNSAの姿が詳しく描かれている。
 日米自動車交渉の例にもあるように、アメリカの利益に関すると判断されれば、NSAは米国産業界・企業の支援のため、産業スパイのような活動もする。96年バンクーバーでの日米半導体交渉でも、日本代表団の内部の話し合い、交渉に当たった通産省スタッフと東京の本庁とのやり取りが米国側に漏れていた、と聞いたことがある。
 NSAがどのような機能を持ち、どのような活動をしているのか、他では知り得ない知識を与えてくれる貴重な本である。

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紙の本1秒の世界

2003/08/28 17:09

環境と人間を根底から考えさせる

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 人が瞬きする1秒の間にこの地球で何が起きているのかを描いた極めてユニークな本である。貪欲に地球を食い荒している動物「人間」の姿が数字で表わされ、人間の欲望、たくましさに驚き、生きていることの業とも言うべきものに目を向かせる。
 編集者は、本書を環境立国を進めるためのテキストとしており、テーマは大きく分けて次の6つだ。「生命の驚異と人間の営み」、「宇宙の神秘と、奇跡の惑星 地球」、「地球規模の環境変化」、「現代文明を特徴づける、莫大な生産と消費」、「経済と社会の現実」、「持続可能な未来に向かっての新しい挑戦」である。
 このテーマの下に全体で60項目の事象が1秒の間に変化する様子を数字で表現している。
いくつか例を紹介すると、
 「グリーンランドの氷河が1,620立法メートル溶ける」、「140万人が1日に必要とする、710トンの酸素が減少している」、「世界最大のハンバーガーチェーンに532人が来店」、「テニスコート20面分、5,100平方メートルの天然林が消失」、「畳48枚分、78平方メートルの土地が中国で砂漠化」、「4トンの文書用紙が世界で使われる」、「1.3台の乗用車が生産」、「0.3人、4秒にひとりが飢えによって命を落とす」、「人口が2.4人増えている」——といった具合である。
 1秒間にこの地球で起きていることを本書で知ると、地球と人間の生活が驚異的なスピードと規模で変化していることに愕然とするだろう。編集者は、この変化を環境という視点から見て、現代に生きる日本人が真正面から向き合うべき課題だと語りかける。
 環境問題は人間が抱え込んだ難題である。この難題に立ち向かうため、禅の修行に使われるテキスト「無門関」と同じように本書を読んで欲しいというのが編集者の願いだ。
 地球に生きる一人の人間として環境を真摯に考えることが必要だ。この本は環境と人間の生活を対立させたままでなく、調和させることを考え抜く姿勢が大切であることを教えてくれる。

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成功の裏には「考え抜く経営」があった

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 宅配便を巨大事業に育て上げた創造性豊かな経営者の肉声が静かに伝わってくる。情熱と信念と懐の深さに触れ、読む人は理想の経営者像を見るのではないだろうか。仕事がハードであっても信頼できるリーダーのもとで働くのは一番楽しく、やりがいも感じられるものだ。こういう社長のもとで働きたいと思う人は年齢、性別を問わずたくさんいるだろう。
 まず指摘しておきたいのは次ぎの三つのことだ。
 一つは、小倉氏がヤマト運輸の社長として従業員とのコミュニケーションに真剣に多大なエネルギーを注いだことだ。飾らず威張らず率直な姿勢で従業員を見ていたことが分かる。
 二つ目は、曲がったことを断じて退け、従業員にも世に恥じない不正をしない行動を求めていること。反社会的行為、違法行為を糾弾される経営者、私欲に囚われ晩節を汚す経営者が続出している今の時代に、小倉氏の清廉な姿勢には誰もが感動するだろう。
 もう一つ、小倉氏の経営者としての信条である。「私は、経営は論理だと思っている。だから、考える必要がある。考えて、考えて、考え抜く」。それでも分からない場合はやってみる。「やってみればわかる。やらなければわからない」と語る。
「経営は論理」ととらえるところに、小倉氏の徹底した合理主義の精神がうかがえる。経営の課題は現実のもの形而下のもので、論理立てて因果関係を突き詰めていけば解決の策が見つかる。究極まで考え抜いて、それでも解が見つからなければ、やってみる。そうすれば、やるべきことが見えてくる、ということだ。
 凡人は考えが浅くて行動を起こし、すぐに失敗する。考えが浅いから失敗の真の原因も究明できない。小倉氏の信条から、まずは「考え抜く」ことの重要さを学びたい。「やらなければわからない」という次ぎの段階に小倉氏は重きを置いているのかもしれないが、そこまで行かないで徹底的に考えることに集中することが、なにはともあれ凡人には必要かもしれない。
 小倉氏は本書でヤマト運輸の社員に遺言を書く。「ヤマトの絶対目標は何か。それはお客様の立場に立って考える良いサービスの実行である」と。重要なのは「絶対」という言葉なのだ。色々ある目標の中で、最優先される目標で企業の存立基盤を左右する目標である。良いサービスのためには他の目標を犠牲にしても構わない。リーダーのこうした断言は、従業員が仕事を進める際に明確な基準となり、挑戦する勇気を与え、やる気を起こさせるだろう。
 小倉氏は第一線を退き、障害者の自立支援事業に取り組んでいるが、マスコミなどで紹介されているように支援事業にマネジメントの視点を取り入れるなど障害者の自立事業に新風を吹き込んでいる。小倉氏に「本物の人間」の姿を見る。

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独自技術を開発する職人は経営上手

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 「刺しても痛くない注射針」の開発で最近広く名前を知られるようになった岡野工業。わずか6名の会社だが、誰も真似のできないプレス技術がある。岡野雅行社長(代表社員と名乗っている)が開発哲学、経営哲学を歯切れ良く語る。大企業を相手に一歩も引かず渡り合う“マイクロ企業”に読者は驚き、感心させられ、ため息をつくことだろう。
 岡野社長は、まず何よりも強烈な自恃(じじ)の精神を持つ人なのである。世間から「変わり者」と言われようと意に介さない。「他人のやらないことをやる」がモットーである。この考えで突き進めば、技術的に難しくて他人が不可能と手をつけない仕事をやるか、単価が安くて他人が敬遠するもうからない仕事をやるしかない。しかし、不可能、できないと他人が断った仕事を引き受け技術開発に没頭し、誰にもできない数々の製品を作り上げてきた。
 並みの職人ではない。時流も見ている。父親の始めた金型専業に行き詰りを感じプレス技術に進出した。プレス加工業の下請けでしか生きられない金型の利益率の低さに我慢がならず、利益率が高いプレス技術も売る会社に転換させた。金型屋が仕事をくれるプレス屋の領分を犯すのはご法度という時代にプレス加工に乗りこんだ。金型専業のままでいたら現在の岡野工業はなかった。
 常に新しい技術に兆戦、とことん追求していく。古い様式のお宮をつくる宮大工のような職人は伝統的な技術を磨いくことが大切だが、金型、プレス加工の仕事は新しい製品が出るたびに研究してなんでもつくらないといけない、と言う。過去のものを修得、維持することにとらわれがちな頑固一徹の職人とはまったく違うタイプの職人なのである。
 岡野社長によれば、今は金型の利益率が良くなったが、それも金型をプレス機とセットにして自社のノウハウを埋め込んだプラントとして販売するからだ。もうからないと他社が逃げる仕事は、プレス工程を短縮する自動化機械を独自に開発、大量に処理して利益が出るようにした。岡野社長は、ものづくりを究めた職人であると同時に、利益を計算して仕事をするマネジメントの才を備えた職人でもある。
 痛快な「世界一の職人」の話は、業種を問わず中小・ベンチャー企業経営者、起業を考える人などに参考になるだろう。また、大企業の経営陣、管理職、若手社員にも多くの示唆を与えるに違いない。
 しゃべり言葉のようなスタイルの文章はテンポが快調で、一気に読ませてしまう。岡野社長の気質を上手く伝える筆致で、担当ライターは、かなりの文章の職人であることを感じさせる。

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開国の真の主役は倒幕派ではない

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 幕末と明治維新は日本人にとって巨大なテーマである。ここを舞台に生き、行動し、そして死んでいった者の姿は、多数の人に描かれ、多数の読者を感動させている。動乱の時代が人間の生を凝縮させ、登場人物を魅力ある人間に変えていくからだ。
 本書は、薩摩藩、長州藩、土佐藩などの倒幕派が正義の英雄、改革者と見なされがちな歴史に異議を唱え、列強の干渉を巧みにかわしながら無事開国を果たした徳川幕府側こそ開国の主役、と主張する。開国論議に新たな視点を投じたノンフィクションである。
 独立した米国が西進策をとりペリーが来日して日本に開国を迫るなか、イギリス、フランス、ロシア、オランダも幕府、薩摩、長州と結んだり離れたりして、近代国家に生まれ変わろうとしている日本に利権を得ようと動き回る。米国は開国と並び沖縄に海軍基地を設置することを強く望みながらも、結局南北戦争の勃発でアジアでの覇権争いから引かざるを得なかった。
 イギリスはイギリス商人のトマス・グラバーを通じ長州藩と密貿易を進め、最新の兵器を提供していた。南北戦争の終結であふれ出た最新鋭の中古小銃が長州に大量に流れ込んだ。植民地を求め虎視眈々としていた列強が、自国内での戦争、政権の交代などで対日政策を変えてゆく様子や、親米の幕府にも親露、親仏と揺れたこと、薩摩、長州など国内倒幕派勢力と外国との込み入った関係、などが分かりやすく書かれている。
 そして、筆者は言う。「厳しい国際情勢のなかで我が国が欧米列強の植民地にならず独立を保ち得たのは、京都守護職と新撰組が強硬な攘夷急進派を押え込んで幕府の対外協調方針を支え、無謀な対欧米戦争を回避したからである」と。この京都守護職が会津藩主、松平容保(かたもり)であり、会津藩は賊軍の汚名をきせられ維新で抹殺された唯一の藩となった。徳川親藩である越前藩の藩主松平慶永が守護職指名を逃れて、守護職を無理やり引き受けさせられた松平容保は、最後の将軍徳川慶喜を助けながら開国の難事をやり遂げたが、最後は錦の御旗を掲げる西軍に降伏する。
 新撰組は、「京都御所に放火して京都守護職殺害、孝明天皇の身柄を長州に移して攘夷断行」を画策した長州藩攘夷派を池田屋で討ち、攘夷派のクーデター計画を頓挫させた。著者は、もし池田屋切り込みが無ければ開国の諸条約に勅許も得られぬまま幕府が倒れ、圧倒的な武力を持つ欧米との戦争に完敗し、日本は自らの力で近代を築くことができなかった、と主張する。
 著者は、長州、薩摩に軍功で遅れをとっていた土佐藩倒幕派の板垣退助らが手柄を上げて新政府での地位を得るため、会津藩せん滅を強硬に主張し、実際に先鋒として呵責の無い攻撃をしたという。白虎隊の壊滅、会津鶴ケ城陥落など悲惨な戦闘を強いられた会津藩士、農民、商人などへの鎮魂の思いが、著者にこの本を書かせた動機の一つになっている。幕府の総帥、徳川慶喜への評価には異論が残るところだが、会津藩と新撰組に対する著者の熱い思いはよく伝わってくる。

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今こそ、こんなリーダーが欲しい

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 優れた企業には「ガッツのあるリーダー」がいる。「ガッツ」とは、気力、勇気、元気あふれる、やる気、肝っ玉がすわっている、というような意味だ。
著者のケビン・フライバーグ、ジャッキー・フライバーグ夫妻は、ベストセラーとなった「破天荒! サウスウエスト航空——驚愕の経営」(日経BP社刊)を1976年に出している。サウスウエスト航空の常識破りの経営が、破綻相次ぐ米航空業界で優良企業として生き延びている秘密を明らかにした。H・D・ケレハーというガッツのあるリーダーに率いられて成長してきたサウスウエスト航空と同様、優れた企業には同じようなリーダーが存在することをこの本で明かにし、その考え方、行動をつぶさに検証して紹介する。
著者はガッツのあるリーダーに共通する特質をこう述べる。
・長期的な成功を達成し目覚しい業績を記録している
・人柄が派手か地味かに関係なく、心の底から従業員に奉仕することによって、従業員の仕事への強い意欲と能力を引き出している
・従業員を単なる人的資産としてではなく、一人の人格者として配慮している
・他の企業が成功するための見本となることをやっている
・誰もがそこで働きたいと願う組織を運営している

 ここで重要なのは、従業員の働く意欲と能力を引き出すことだ。従業員は働き甲斐のある仕事と思えば、一生懸命仕事に取り組み、良い結果も生まれ企業としての業績も上がる。本書のタイトルのように、「仕事はカネじゃない!」のである。リーダーは、この点を十分に理解し従業員にその従業員の仕事の重要性を説明、納得してもらい、やり甲斐を感じさせる手を打つべきだ、と説く。
 業種、業態も異なる企業の様々なタイプのガッツあるリーダーが進める多種多様な策が具体的に紹介される。ユーモアを交えた分かりやすい記述で気楽に読めるが、本書が投げかけている「仕事とやり甲斐」は、これからの企業経営にとってますます重みを増していく課題だ。
 ガッツのあるリーダーがいるとして取り上げた企業は、金融サービス、広告、印刷、航空、コンピュータ・ソフト、衣料販売、化粧品販売、食品小売り、日本車ディーラー、医療機器、会計事務所、カーペットクリーニング、電気・設備と多種多様な業種にわたる。読む人は、自分の業種・業態に近い企業のケースから他社との違いを知り、また自社に有益な策を発見できるだろう。
 薦めたいのは、まず企業の経営幹部で、自社の従業員に生き生きと意欲をもって働いてもらううにはどうすればよいのか、ありきたりの経営者向けセミナーなどよりずっと本質的で重要なヒントが得られる。また、新しく会社を起してリーダーとなった人には、成功の秘訣がどこにあるか分かるだろう。働き甲斐のある企業で仕事をしたいと願っている新卒者や転職希望者には、企業選択の材料を与えてくれるに違いない。

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創造する組織をつくるツボが分かる

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 この本のタイトル見ると、お手軽なノウハウ本を想像する人が多いだろう。「ひらめく人」などと聞くと、なんとなくうさん臭い、どこにでもある自己啓発本の類ととるかもしれない。ところが、実際は、創造的なビジネスを生み出す組織はどのようにつくるべきかをじっくりと説いた、内容の濃い本である。中には重いノウハウが詰まっている。
 組織の問題は、企業にとって永遠の課題だ。企業が競争に勝ち抜き、時代の変化に対応しながら持続的な成長を維持していくためには、組織の問題を避けては通れない。今のように、経営環境が速いスピードで変わる時代には、新しいもの、新しいビジネス、新しい技術を生み出す創造的な力を組織が持たなくてはならない。本書は、人の独創性を育てビジネスに結実させる組織のあり方を分かりやすく提示してくれる。
 著者は、「創造についてよく考え、自分たちの組織・人材インフラを創造の場とし、独創性のある人材が、目利きのリーダーによって活かされるシステムを導入することが必要」と説く。人は、局面によってひらめいたり、ひらめなかったりする。どのような組織にも現在内部に、ひらめく人あるいはその時ひらめいている人がいる。そういう人を見逃さずに適切な役割を与えることが大切という。
同時に、ひらめく人を発見する能力を備えた「目利きのリーダー」を育てることの重要さを強調してことが興味深い。偏見に満ちたリーダー、自分の目で見ず世評だけで人を評価しているリーダー、人の隠れた才能を見出すことができないリーダーが動かしている組織に明日はないというわけだ。
 本の構成は以下のようになっている。第1章「日本人のひらめきを阻害するものはなにか」、第2章「組織・人材マネジメントのここが問題」第3章「これがひらめく人を咲かせる組織の基本法則だ、第4章「組織デザインの決め手は人と場の組み合わせ、第5章「目利きのリーダーをどうつくるか、第6章「自分にひらめきをどう呼ぶか」、第7章「ひらめく人を咲かせる組織への進化」———である。
 著者は、組織・人材コンサルタントだが、企業の技術者とし10年ほど働いた経験があり、それも本書の内容に厚みと、説得力を持たせている。
組織改革にヒントが欲しい大手企業の経営トップ、組織・人事部門の実務職、成長途上にある中小企業の経営者などとって、新鮮に思われる提案が多いだろう。技術を事業経営の中枢に置くMOT(技術経営)を指向する企業、研究組織などにとっても、有益な示唆が豊富に含まれている。

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