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yurippeさんのレビュー一覧

投稿者:yurippe

40 件中 1 件~ 15 件を表示

闇の子供たち

2003/05/21 18:02

子供たちが、生きながら死んで行く世界がある

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

梁石日さんご自身は自著をこう評しています。

「小説のテーマは、幼児売春、幼児売買、幼児臓器売買ですが、こうしたテーマの本は数多く出版されています。問題は子供たちがどのように売られ、欧米人や日本人の大人たちに、どのようにして買われ、さらにホテルや売春宿で、どのようにして犯されるのか、といった具体的な描写が書かれていないのです。誰も知らない密室の中で、80キロから100キロもある大人が10歳そこそこの子供を犯していく場面を私は描きました。おぞましい光景ですが、この密室での暴力と性の陵辱を描かずして、幼児売春、幼児売買、幼児臓器売買の真実を暴くことはできないのです。それはミステリーよりもさらにミステリーな人間の度し難い不可解さでもあります。そしてそれは矛盾の根源的な意味を問うものです」と。(宝島社刊『このミステリーがすごい! 2003年版』より)

幼い男児にペニスを肥大化させるホルモン注射をしてまでも性欲を満たそうとする欧米の中年女性、エイズに感染した子供を使い物にならないからとゴミ捨て場に捨てる売春宿の元締め。難民キャンプでは見回りの警察官自らが幼児をさらい売り飛ばし、日本の子供に臓器を提供するためにタイの子どもたちは生きながら内臓を解体されていく…。

本書は、タイのバンコクを舞台に描かれた、深い闇の底に蠢(うごめ)く人間たちの物語です。中でも、家の貧しさゆえに8歳で売られ、売春の果てにエイズに罹患した10歳の少女ヤイルーンが、生ゴミとして捨てられた処理場から100キロ近くも炎天下を這って故郷の村に帰っていくくだりは圧巻です。

ここ近年の日本では、「癒しのリゾート地」「オシャレな雑貨天国」としてアジアンブームが続いていますが、果たしてアジア通を標榜するトレンディな人々のうち、どれだけの人が実態に目を向けているのでしょう? 実情なんてカンケイない、オシャレなものだけを見ていたいの。私もそんな一人でした。リゾートで行ったタイからの帰国後まもなくこの本を手にとり、恥ずかしさのあまり居ても立ってもいられなくなりました。自分は一体、何を見てきたのか。

この作品は、単なる社会派ドキュメンタリーとしては括(くく)りきれない、人の醜悪さの根源を問う問題作です。 最後のページに書かれた一節には、おそらく日本で生まれ育った人ならば誰もが非常な衝撃を受けることと思います。ここに、筆者の訴えたかったミステリーは凝縮されています。

同じ人間なのにただ途上国に生まれた、それだけの理由で理不尽な生を強いられる…。そんな世界の現状を、本書は余すところなく伝えてくれました。

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高嶺の花か、アスファルトに咲く野の花か

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

持ち続けるのも捨て去るのも、これほど難しいものはありません。プライドとの付き合い方は、誰にとっても永遠の課題なのではないでしょうか。本書で華麗に描かれるのは“プライドV.S.プライド”のバトルです。

ヒロインはオペラ歌手を目指す二人の女の子。それも全く対照的な二人です。才能・美貌・品位・財産・コネクションのすべてに恵まれた史緒と、場末のホステスの娘で苦学して音大に通う萌。高いプライドが邪魔して器用に生きられない根っからのお嬢様の史緒と、惨めな生活から這い上がるためにプライドをかなぐり捨てた萌が、ことあるごとにぶつかり合い、物語のテンションを引き上げていきます。中でも、父の会社の倒産で財産を失った史緒が、プライドだけでは生きられないことに気付き、お嬢様体質から徐々に脱皮していく様子は、細やかに描かれていて読みどころです。

前作『天使のツラノカワ』でも、お寺の娘でリッチな小悪魔美人の沙羅と、牧師の娘で図太くもかわいらしい貧乏娘の美花が好対照をなしました。対比によって登場人物の魅力を最大限に引き出すワザは一条先生の18番。今回も先がとても楽しみです。華やかなクラシック界が舞台なだけに、今のところ史緒に肩入れしたくなってしまいますが、これから萌がどう見せてくれるのか、目が離せません。

ただ、萌を見ていると「プライドを捨てるプライド」が、実は最も高いプライドなのではないかと感じます。平素の自分自身を振り返っても、何とつまらないことにカチンときていることか。ページを繰るたびに、しばし自省です。いつも華やかな一条ワールドですが、今回は生き方の示唆にも富んで抜群の読み応え。大御所の放つ“読ませる傑作”です。

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紙の本オタクの迷い道

2003/06/05 02:01

ハレルヤ!オタキング

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「コミケ」「エヴァ」「へきる」「キンゴジ」…、一つでも聞き覚えのある方、もしくはどれについても一晩は語れる方々、まだお読みでなければ必読です。濃密で、悶絶モノの快感に溺れられること請け合いです。

本書は1995年9月〜99年2月にかけて、『テレビブロス』に連載された筆者の人気コラムを文庫化したものです。後に一世を風靡する『エヴァンゲリオン』を生み出すこととなるガイナックスを設立し、数多(あまた)のアニメ作品やゲームを手がけ、東大では「オタク文化論」の講師を務めるなど、オタク史に燦然と輝く足跡を残す岡田さんのコラム集です。いや本当に、その語り口は濃くて濃すぎて爆笑せずにはいられません。目次の見出しから、一気に引き込まれてしまうのです。

 ○人は誰もがオタクになれるわけではない
 ○オタク界の魔窟「コスプレ忘年会」を知ってるか?
 ○「へきへき!」「萌え萌え!」な話
 ○コレクター、それはゴミと暮らす者
 ○「フィギュア王」編集長の憂鬱
 ○プラモと泳ぐ夏            …等々。

そして筆者は次のように「オタク」を定義し、彼らへの限りない愛情を注ぎます。

どうも一般の人は、ただ単にアニメや特撮やゲームが好きな人間を「オタク」と思っているようだ。しかしその手のものがどんなに好きであっても、それだけの人は「オタク」とはいえない。それは単なる「ファン」だ。「ファン」が「オタク」になるためには、天文学的な経済、時間、知性の投資を必要とする。(文中より)

本書の素晴らしいところは、筆者が「天文学的な経済、時間、知性の投資」をし、優れた作品を生み出してきた実績を持つ、オタクの中のオタク「オタキング」である点です。つまりオタク道を極めているからこそ、その濃い世界の魅力を存分に伝えられるのであるし、またオタクの抱える屈折したプライドや、社会から嘲笑されるがゆえの過剰な自意識と滑稽さを、客観視して笑いをとることができるのです。その「超越ぶり」が生み出すヒネリの効いた文章には抱腹絶倒ですが、同時に筆者が捧げているオタクの世界への無上の愛も伝わってきます。

どのコラムも抜群に面白いのですが、中でも「ハヤシバラ・メグ〜ミ」が口癖のフランス人オタク、セバスチャンの項は最高です。洋の東西を問わず、今日も明日もオタクは萌えに萌えます。究極の道楽人生オタクの花道を、歩き続ける決心を促してくれる傑作です!

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紙の本エルメスの道

2003/06/24 00:20

モード界の至宝、エルメスの底力

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

エルメス。言わずと知れた、バッグの最高級ブランドです。ヴィトンやグッチも高級ですが、お値段はもう一桁、二桁、エルメスが上を行きます。ケリーやバーキンを代表とする革バッグやシルクのスカーフは、女性たちの心を鷲掴(わしづか)みにして離しません。

本書は、少女漫画界の大御所、竹宮恵子さんがエルメス社に依頼されて描き上げた“マンガ・エルメス社史”です。毎夏モンゴルに渡り、草原を馬で駆けるという竹宮さんは、馬具メーカーとして創業したエルメスにとって、おそらくまたとない社史の描き手だったでしょう。

竹宮さんの代表作は、言うまでもなく『地球(テラ)へ…』と『風と木の詩』。『地球(テラ)へ…』では、その壮大なる宇宙の広がりとソルジャーの悲壮な姿に心を打たれ、『風と木の詩』ではジルベールやオーギュスト、セルジュが織り成す耽美な愛憎に酔いしれました。竹宮さんは、その繊細な筆致と私達の想像を遥かに超える大胆なストーリーテリングで、いつも読者を魅了してくれます。

『エルメスの道』は、そんな竹宮さんが丁寧に仕上げたエルメスの歴史物語。創業者ティエリ・エルメスから四代目社長ロベール・デュマ・エルメスまで、エルメスが馬具メーカーとして興され、ファッションブランドとして躍進するまでのサクセス・ストーリーを世界史の変遷と共に追って行きます。

根っからの職人気質だった初代ティエリ・エルメスが作り出す馬具は、その確かな技術とセンスで王侯貴族から熱い支持を受けました。三代目のシャルル・エミール・エルメスは、誰からも好かれる社交家であり、同時に卓抜した企画力を持ち合わせた天性の広告マンでした。馬車の時代から自動車の時代へと移ろう時代の趨勢を目ざとく読み取り、革の縫製技術を生かして馬具商からファッションメーカーへの転向を成し遂げたのです。馬の鞍を縫うための特別な縫製技術が生み出すバッグの新鮮さは、社交界で最先端のファッションを競う貴婦人たちを虜にしました。

洗練された技術を持つ職人と、先見の明を持った経営者という「人の利」、パリというファッションの都に工房を構えた「地の利」、そして時代の流れというまたとない「天の利」と、三つの「利」に恵まれ、それを生かしきったエルメスという奇跡の軌跡を、竹宮さんは見事に描ききっています。ブランドの好き嫌いにかかわらず、エルメスという最高級ブランドの物語は物作りに携わるすべての人にとって、学ぶことが多いのではないでしょうか。エルメスがモード界で一目置かれるそのわけを、本書はしっかりと教えてくれました。

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紙の本マリー・アントワネットの生涯

2004/02/01 13:50

人間マリー・アントワネットに迫った、緻密な取材に感服

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ヨーロッパ一の名門ハプスブルク家の皇女に生まれ、フランス王妃となりながら、革命により断頭台で最期を迎えた「悲劇の王妃」マリー・アントワネット。その「悲劇」の発端となった彼女のケタ外れの愚かさ、人間臭さを、著者はアントワネットの生育環境や取り巻きの人々の性格など、丹念に調べ上げた史実を元に描ききりました。約50点のカラー図版(・写真)も見所の、またとない“マリー・アントワネット読本”です。

興味深い史実が満載の本書ですが、特に印象深いのは、夫のフランス国王ルイ16世をあれほどないがしろにして好き勝手をしたアントワネットの性格は、祖国オーストリアの父帝の影響だ、という著者の見解です。母の女帝マリア・テレジアは、当時の王族には珍しい恋愛結婚。しかも相手は小国の公子。マリア・テレジアの夫となった小国出身のフランツ・シュテファンは、結婚により神聖ローマ皇帝の地位に就くも、政治・軍事にことごとく才能を欠き、偉大なマリア・テレジアの影で享楽的に生きていたそうです。

父帝の影が薄く、強い母帝の支配する宮廷で育ったアントワネットにとって、王妃の自分が主導権を握るのはごく当然のことだった、というわけです。しかも父フランツ・シュテファンは語学の才能もまるでなく、フランスに嫁いだ後も、フランス語をろくに読み書きできなかったというアントワネットの語学能力の欠如は、明らかに父のDNAだ…などなど、興味深い話が盛りだくさんです。

マリー・アントワネットを語るときに欠かすことのできない傑作『ベルサイユのばら』でも、アントワネットの派手好き・遊び好きさ加減や、わずか14歳で愛のない結婚をしなければならなかった女性としての悲しさ、などは劇的に描かれています。が、なぜあれほど享楽的な性格が形成されたのか、という点の細部にまでは言及されていません。また母マリア・テレジアは偉大な女帝として描かれていますが、父の神聖ローマ皇帝フランツ・シュテファンは1コマすら登場しません。そうか、アントワネットには父帝がいたのか、という当たり前のことにしみじみと気づかされたりするのも、本書の魅力です。(本書は『ベルばら』の副読本として読むと、ますます面白いかもしれません。)

それにしても、ここまでマリー・アントワネットにまつわる史実を集めた著者の取材力には、驚嘆です。フランス革命時代の書物をひもとき、アントワネットが過ごした同じ場所を辿り、日欧の歴史家たちを訪ね歩き…。著者が取材に費やした膨大な時間と足労は、一体どれほどなのでしょう。少女小説の分野で一時代を築いた、藤本ひとみならではの筆致と力量です。

現在はフランス政府観光局名誉委員なども務め、西欧史への深い造詣に基づく著作を発表し続ける著者の作品の面白さは、少女小説時代を凌駕し、一層の磨きがかかっています。

本書の他にもフランス革命やブルボン家を濃密に描きあげた著者の作品、『マリー・アントワネットの遺言』(『マダムの幻影』を文庫化に際し改題)、『ブルボンの封印』なども併せてオススメの太鼓判です。

※久しぶりに『ベルサイユのばら』を通読した後、本書が目に留まりました。やっぱり絶対王政時代のフランスは最高です。数多く出ている映画や本のうち、オススメをいくつか挙げてみました。
■映画:『宮廷料理人ヴァテール』『女優マルキーズ』『王は踊る』『仮面の男』『マリー・アントワネットの首飾り』『マリー・アントワネット』
■本:『マリー・アントワネット』上・下巻(シュテファン・ツワイク著)、『ベルサイユのばらの街歩き』(JTB刊)

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紙の本ロシアは今日も荒れ模様

2003/04/14 23:15

ロシア流の小噺(こばなし)を一席

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は、ロシアの見方が180度転換する、ステキで知的な抱腹絶倒エッセイです。
特に、飲んべえ・酔っぱらいの方には、たまらない一冊。
例えばこんな小噺が登場します。

酔っぱらいの亭主を見かねた妻が詰め寄った。
「あんた、ウォトカをとるの、わたしをとるの?」
「その場合のウォトカは何本かね?」

ロシア人の酒飲みぶりが描かれているくだりに登場します。
ロシア語通訳として百数十回におよぶロシア出張をこなし、エリツィンやゴルバチョフといった大物にも随行した筆者だからこそ、語れるエピソードが満載です。

首脳会談や国際会議での失言、健康不安説が絶えなかったエリツィン元大統領は、西側諸国や西欧かぶれのインテリの間では大変な顰蹙(ひんしゅく)を買っていましたが、庶民の間では「やってくれるぜ、うちの親父は」という風に親近感をもたれていたそうです。

アメリカ人は自己コントロールできない人間を軽蔑し、政治家失格と判断するが、ロシア人は国民の前で警戒心を解いて自己をさらけ出し平気で酔っぱらえるようなタイプの政治家のほうを好むみたいだ。これは、日本人のメンタリティーにむしろ近い。(本文より)

今までいかに、アメリカ・西欧的ロシア観に洗脳されていたかが身に染みる作品です。

※酔っぱらいの視点でロシアを見る、という観点では、筆者も推奨している名著『酔いどれ列車、ペトゥシキ行き』(国書刊行会刊)も大変面白い作品です。

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紙の本クライマーズ・ハイ

2003/09/22 12:57

報道人に捧げられたノスタルジア

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

専門紙の記者だった父は、この作品を読みながら泣いていた。全国紙ではなく地方紙、若きエリート記者ではなく中年のうらぶれた記者を描いたこの作品に、ひどくノスタルジーを感じたのだという。「泣ける」という理由で本を読むのは好きじゃない。だが、横山秀夫だ。今度はどんな人間ドラマで魅せてくれるのだろうか。その一心で本書を手にした。

舞台は群馬県の地方紙「北関東新聞」、題材は「日航機墜落事故」、主人公は四十歳のベテラン記者・悠木。四十にもかかわらず、いまだに昇格することなく一記者として燻(くすぶ)る一匹狼の悠木が、「世界最大の航空機事故」となった日航機墜落事故の全権デスクに抜擢されるところから物語は始まる。

連合赤軍事件の手柄話で生きてきた上層部の後輩記者に対する嫉妬と妨害、悠木の活躍を面白く思わない他部署の嫌がらせ——。事件を軸に泥臭い人間ドラマが描出されていく。あまりに大きな事件を誰もが扱いあぐね、だが、やがてしっかりと受け止めていく、という展開は沁(し)みる。

そして「北関東新聞」同様、群馬の地方紙である上毛新聞の記者出身の著者にとっては、半自伝的ともとれる設定と内容に、ついつい主人公と著者をかぶせて読んでしまうのである。

さて表題の“クライマーズ・ハイ”とは、「困難な山を前にして興奮状態が極限に達し、恐怖感がマヒして脇目もふらず登っていく」という意味の登山家の用語だ。不惑の年まで現場の一記者だった悠木が、巨大な事件(ヤマ)を任され、苦悩しながらもアドレナリン全開で事件の指揮を執っていく。その様が“クライマーズ・ハイ”に擬せられているのだろう。

本書の魅力の一つは、全編に漂う報道人のノスタルジアだ。新聞に限らず、出版でもテレビでもいい。この作品は、時事ネタを扱い、締め切りに追われる生活を経験したすべての人の琴線に触れるだろう。まして大きなヤマを踏んだ人になら尚更だ。降板ギリギリまで新鮮なネタを詰め込みたい、印刷所の営業を泣かせてでも鮮度のいい誌面にしたい、そんな報道人の持つ緊迫感と身勝手な傲慢さが、本書ではノスタルジックかつリアルに描かれている。

みっともなくても自分に嘘をついた生き方はしない。事件の扱いをめぐり、悠木の下した数々の決断と上司に対する不器用な行動は、そう言っているように感じられた。本書の一読は、平坦な日々を送る人にもヤマ場にある人にも、きっと何かのメッセージが届くだろう。手にとって、決して損ではない一冊だ。

さて、蛇足になるが、本書をちょっと面白おかしく楽しむには“田口トモロヲ”口調で読むのも一興。トモロヲ風に、「全権デスクの任は想像以上に重かった。自分の能力を遥かに超えていると悠木は思った」(文中より)という具合に。だってこの本は、美談仕立ての「プロジェクトX」を、もっと人間臭く塗り替えた一級のヒューマン・ドラマだから。

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紙の本池袋ウエストゲートパーク

2003/08/08 01:52

気取らない街、池袋

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

渋谷でも新宿でも六本木でもなく、池袋。石田衣良の筆は、縦横無尽に跳梁する池袋の住人を鮮やかに描出する。

「オンナのレベルは池袋が一番」とナンパな弟は言う。歌舞伎町を崇拝していた元カレは、いつの間にか「ブクロは横ノリ系の聖地だ」を口癖に、ズルズルファッションを纏(まと)い池袋の虜(とりこ)になっていた。どうやら流れは池袋らしい、と感じたのは数年前。今更ながら『池袋ウエストゲートパーク』を読んだ。

本書の主人公マコトは、池袋の西口公園(通称“ウエストゲートパーク”)近くに店をかまえる果物屋の一人息子。ダラダラと退屈な毎日を送るストリート・チルドレンの一人だが、抜群に機転の利く頭脳とイケてるルックス、街のギャングのヘッドにも一目置かせる人間的魅力の持ち主である。池袋の街を知り尽くし、強い愛着を持つマコトの元には次々とトラブルが持ち込まれる。マコトは、時に街のギャングを操り、時にヤクザを出し抜きながら、特殊技能を持った仲間たちとトラブルシューティングを成し遂げる。それは爽快な、珠玉の物語集なのである。

渋谷や新宿という街はアイデンティティが確立していて、その中で動く人物にはおのずと制限が加わる。お子様が幅を利かせる新宿や、海千山千の暴力団員がたむろする渋谷センター街には違和感があるだろう。渋谷や新宿には既成のイメージと街自身の持つ“タテマエ”があるのだ。だが池袋にはすべてが似合う。露出過多のコギャルも、大のヤクザが通りを闊歩する姿も、10代のチビギャングが繰り広げるストリート抗争も、あっけらかんとしたフーゾク嬢も、池袋の中ではみな居場所を持ち、存分に生きることができる。池袋には気取りがないのだ。

石田衣良は、いま一つ存在感の薄かったエアポケットのような大都会・池袋が発する声なき声を見事に聴き取り、スタイリッシュな物語に仕立てて見せてくれた。颯爽と街を駆け抜けるボーイズ&ガールズと、軽くて重い現代特有の病んだ事件の数々が、主人公マコトの軽妙な語り口を借りてグルーヴィに展開されていく。それはまだアイデンティティの確立していない池袋だからこそ、ありえたステージ。

「池袋ウエストゲートパーク」を読んでいる瞬間は、まさに新しい都市の誕生に立ち会っている瞬間である。

※続編の『少年計数機 池袋ウエストゲートパーク2』も、期待を裏切らない秀作である。

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紙の本コットンが好き

2003/04/22 15:48

粋でいなせな、大人の随筆集

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

筆者は往年の大女優、高峰秀子さんです。
『二十四の瞳』『恍惚の人』などをはじめ映画の出演数は約300本、エッセイストとしても『巴里ひとりある記』(河出書房新社刊)や『わたしの渡世日記』(文藝春秋社刊)など、優れた作品を世に送り出されています。

本書に収録されているのは、そんな高峰さんが愛用する身の回りの品々や日々の出来事、そして日常生活をちょっと豊かにしてくれる小粋な心遣いの術(すべ)です。
「珍味入れ」「男の指輪」「風呂敷」「ダイヤモンド」「老舗」「黒」……
小見出しを垣間(かいま)見ただけも、風流な視点が伝わってきます。

たとえば本文中にある次の一節。
「不覚にも結婚しちまったのが運のつき、とあきらめて、ラッキョウやのりのつくだ煮を瓶ごとお膳にのせる“荒々しさ”は女房のタブーと心得たい。めんどうくさくてもなんでも、顔で笑って心で泣いて、ちょっと小皿に盛りかえることで食膳はグッと楽しくなる」。

猛スピードで過ぎてゆく毎日に忙殺される中では、合理的にすること、効率の良いことが美徳なのは確かです。
男女平等のイマドキの世の中で、こんな女房像はナンセンスだ、というご意見もあるでしょう。
けれど、わずかな気遣いや美しいものに心を留める余裕を持つことが、どれほど生活に彩りを添えるのか。
高峰さんは独特の目線と語り口で気づかせてくれます。
凛とした、大人の女性の洗練に触れたいとき、この一冊はきっと応(こた)えてくれることと思います。

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イヂワルで、ごめんあそばせ!

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 女どうしの人間関係って、ほんとうに厄介!
…と、女性ならきっと誰しも一度は思ったことがあるのではないでしょうか。

 『女の子どうしって、ややこしい!』(草思社刊)は、女の子のイジメと人間関係を明るみに出した、全米のベストセラーです。ああ〜、それってわかる、わかる、と思わず頷いてしまう箇所がしばしば。

 女の子のイジメは、皆で無視をする、といった非暴力的なものなので、周囲の目には止まりにくいもの。人間関係を武器にした女の子のイジメの実態と背景、原因を、著者のレイチェル・シモンズが綿密なインタビューを基にリサーチしています。

 インタビュー対象は数百名にのぼるでしょうか。小・中・高校生の女の子を中心にイジメる側とイジメられる側、教師、母親、社会で働く女性たち…。社会から無言のうちに「いい子」「やさしさ」「かわいらしさ」を求められる女の子たちの鬱積は、外ではなく内なる人間関係に向かいがち。

 あ〜、イジメって絶対なくならないだろうなぁ、とブルーな気分にもなりますが、とにもかくにも興味深い一冊でした。

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五回の「なぜ」を繰り返せ!

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本書は、いうまでもなく経営学を学ぶ人にとって必読の古典です。英文学を学ぶ人にとってのシェイクスピアといったところでしょうか。世界中のメーカー経営者が手本と仰いだトヨタの“かんばん方式”について、生みの親である著者が記した本書は、しかし、単なる「経営学の古典」という枠組みを越えた、普遍の哲学書であるともいえると思います。

ソニーの会長兼CEOの出井さんも、自著のエッセイ『ONとOFF』において、トヨタの工場を見学したくだりで、その「品質に対する執念」に賛辞を捧げています。トヨタ生産方式の誕生から約五十年。世界に冠たる企業のトップたちが、いまだに一目も二目も置くトヨタ生産方式は、ただの生産ノウハウに留まらない奥深さを感じさせます。

「ジャスト・イン・タイム」「かんばん」「自働化」など、トヨタ生産方式の基本思想である“徹底したムダの排除”を表すキーワードはいくつかありますが、ここではそれらの根幹をなす「五回のなぜ」に注目したいと思います。以下は、長くなりますが文中からの抜粋です。

 一つの事象に対して、五回の「なぜ」をぶつけてみたことはあるだろうか。言うはやさしいが、行なうはむずかしいことである。たとえば、機械が動かなくなったと仮定しよう。
(1)「なぜ機械は止まったか」
  「オーバーロードがかかって、ヒューズがきれたからだ」
(2)「なぜオーバーロードがかかったのか」
  「軸受部の潤滑が十分でないからだ」
(3)「なぜ十分に潤滑しないのか」
  「潤滑ポンプが十分くみ上げていないからだ」
(4)「なぜ十分くみ上げないのか」
  「ポンプの軸が摩耗してしてガタガタになっているからだ」
(5)「なぜ摩耗したのか」
  「ストレーナー(濾過器)がついていないので、切粉が入ったからだ」
 以上、五回の「なぜ」を繰り返すことによって、ストレーナーを取りつけるという対策を発見できたのである。「なぜ」の追求の仕方が足りないとヒューズの取り替えやポンプの軸の取り替えの段階に終わってしまう。そうすると、数ヶ月後に同じトラブルが再発することになる。—中略—
 五回の「なぜ」を自問自答することによって、ものごとの因果関係とか、その裏にひそむ本当の原因をつきとめることができる。
(文中より)

地道に「なぜ」を繰り返し、根本的な問題解決の方法を探る態度の積み重ねが、他社に追髄を許さない高品質のトヨタを作り上げました。

モノづくりの生産現場のみならず、学問、仕事、人間関係、スポーツ、芸術…。根本的な真理、解決方法を求める「五回のなぜ」の問いは、あらゆる場面に応用できます。本書に出会ってからずいぶん経ちますが、困難な場面ではいつも「五回のなぜ」に助けられています。

このたびの、三菱自動車製品の脱輪事故多発や過去のクレーム情報隠蔽など、一連の三菱不祥事を耳にして、ふと、本書を思い出しました。

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紙の本ブルース

2003/07/11 01:04

小っ恥ずかしい青臭さが、美しい

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

虐待され、どん底の生活の中で、黒人たちがせめてもの慰めにとありったけの魂を込めて口ずさんだ救いのない歌、ブルース。この黒人音楽を表題に持つ本書の結末に、大団円は期待すべきでない。だが、堕(お)ちる所まで堕ちた人間たちの哀歌に受ける衝撃は、想像以上だ。

舞台は横浜市中区寿町。ハマッ子が“近づいてはいけない”と教えられる町、通称“コトブキ”は国内最大級のドヤ街であり、今も昔もハマのアンタッチャブルである。本書によれば次のような町だ。

寿町。簡易宿泊所の町。ドヤ街。毎年二百人もの行路死亡者のでる街。中村川に死体の浮く町。死体が浮いても、労務者風であれば、警察は調べもしない地区。ほとんどの死亡者が無縁仏として葬られる町。港湾労働者をはじめ、港町横浜の底辺を支えて、忌み嫌われながらも、その存在が絶対に必要である町。(文中より)

主人公の村上は、寿町にくすぶるシカゴ仕込みの一流ギタリスト。厳しい港湾労働の中でも最もきついといわれるタンカーのスラッジ清掃で日銭を得ている。寿町の目と鼻の先にある中華街のバー“MOJO”に迷い込んだある晩、村上はステージ上で蛇のようにくねる美しいブルースシンガー綾に出会う。そしてまた大時化のある晩、港湾労働を取り仕切るヤクザであり同性愛者でもある徳永は、スラッジ清掃の際に村上が目をかけている青年、催を巨大タンカーの底に突き落とし、死なせた。村上への愛ゆえに。徳永の歪んだ愛と綾のひたむきな恋心が、村上を徐々に締め上げてゆく。

中学・高校の6年を山手のミッションスクールで過ごし、学生生活の4年を横浜市の大学で送り、文字通り横浜で生まれ育った私は、横浜を庭だと思っていた。…だがそれは思い上がりで、花村萬月の描きあげた横浜は全くもって未知の世界だった。ここには、レトロな洋館も、瀟洒なカフェも、和める港の風景もない。あるのは腐臭を放つドヤ街と、登場人物たちの悲痛な叫びばかりだ。

自ら青臭いと恥じながらも、音楽論を語り、階級闘争を唱える催に説教をたれ、音楽に苦悩した身の上話をぶつ。村上の言葉は読んでいる方が恥ずかしくなるような“熱い”ものばかりだが、しかしその未熟さ、稚拙さに喩えようもない魅力がある。それらは、私たちがそれに正直に生きたい願いながらも、社会生活を送る上では内に秘めるか、忘れざるをえなかった思いだからかもしれない。

しかし一度どん底の生活に堕してしまった者は、未来の明るい状況を手に入れても、それを捨てる方向へと進むことしかできない。安定、幸福、前途ある将来…、それまでの自分とは対極の存在であるそれらを前に、手にしたら再び失うかもしれないという恐怖と潜在的な不安が、舵をもと来た道にきらせるのであろうか。村上は、美しい綾と、確実にヒットするに違いない彼女のバンドの一員としての地位を手に入れ、コトブキを上がってもなお、破滅への道に足をむける。

コトブキの威を借り、コトブキに支配された村上の行く末は、表題の通りである。
花村萬月作品群の、一つの頂点をなす傑作である本書は、完璧なハードボイルドであり、濃密な恋愛劇であり、紙上に奏でられたブルースである。

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紙の本草の海 モンゴル奥地への旅

2003/06/04 00:36

モンゴリアンブルーの空のもと

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「蒼く深く澄み切った空。雲はなく、飛行機も鳥の姿も見えない」そんなモンゴル独特の空の色を、モンゴリアンブルーというのだそうです。

人口256万人(2001年現在)、首都ウランバートル、 国家元首はバガバンディ大統領、主要宗教はチベット仏教(ラマ教)。 通貨単位はツグリク、円換算は1ツグリク=0.11円。距離的にも近く、横綱・朝青龍の活躍などで身近のような気もするのですが、意外と知らない「モンゴル」という国。

本書は、草原の国モンゴルへの憧れと想像を大きく膨らませてくれる、雄大な旅行記です。甘くて濃厚な馬乳酒「アイラグ」、塩茹での羊肉のごちそう、軽やかで勇壮なモンゴルの馬たち、騎馬民族ならではの凛とした馬上の雄姿、移動式円形住居「ゲル」、チンギス・ハーンの時代を髣髴(ほうふつ)とさせる民族衣装デール、牧民の祭典ナーダムの祭……。

椎名さんの優しい目線で描かれたユーモアたっぷりの旅物語と、あたたかくおおらかなモンゴルの人々を活写した高橋さんの鮮やかなカラー写真が、本当に目を楽しませてくれます。いつの間にか自分まで草原の只中にいるような、ステキな錯覚を体験させてくれる作品です。

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紙の本御書物同心日記 正

2003/05/16 01:35

将軍家の司書

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天下泰平の江戸時代、三代将軍家光は「御書物奉行」を設置しました。
書物に並々ならぬ愛着を持っていた初代家康が収集した、膨大な書物を管理する役職です。

本書は、新米の御書物同心(御書物奉行の役人)東雲丈太郎を主人公とした短編集です。
徳川家の将軍には書物の愛好家が多く、諸大名が競って稀覯(きこう)本を献上するため、江戸城内の御書物蔵「紅葉山御文庫」は珍本・奇本の宝庫。
本の虫の丈太郎は「稀覯本を読める!」と期待に胸を膨らませて出仕を始めたのですが…。

知の聖域「紅葉山御文庫」は、一風変わった先輩たちや独特の習慣、不思議な生き物でひしめきあっています。
なぜか女物の赤い襦袢(じゅばん)を身につける御書物同心たち。
火事を起こしては大変だからと火を禁じられているため、お茶も飲めず、冬は凍てつくように寒いハードな職場。
姿は見えねども気配はする、蔵に200年も棲む青大将の「ヌシ」。
見ること聞くこと、新米の丈太郎にとっては驚くことばかり。

空調のない江戸時代、書物の管理はどれほど大変だったのか、上様が照覧する書物の扱いにはどれほど慎重を極めたのか。
将軍家の司書の大変さや、書物にまつわる将軍たちのエピソードも読みどころです。

古書店主である筆者だからこそ、古書への造詣と思い入れはたいへん深く、そのことも物語に厚みを出しています。
テンポが良く、江戸の風俗も粋に描かれている本書は風流な秀作。
小粋で愉快な時代小説を、ぜひご堪能ください。

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紙の本コックサッカーブルース

2003/05/01 02:21

ソフィスティケイテッド・キッチュ

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村上龍は、俗悪なものをスタイリッシュに描き出すことにかけては天才です。
さながら錬金術師のように。
全編を貫く強烈なセックス描写も、彼の手にかかれば、爛熟しきった大都会の片隅で見た酔夢のような趣です。

「丸顔・ワンピースのスワッパーと細面の舞台デザイナーは幼児がオシッコをさせて貰うような格好でセックスを始めた。ウエイトレスは証券マンに足の指を一本ずつていねいにしゃぶらせ、ミツコはすでに二回オナニーによるオルガスムを得てパンティを脱ぎ捨て荒々しくスカートをまくり上げて指を二本おまんこに入れ汚れでも落とすような感じで激しく掻きあげている。カオリは両手をカウンターについて尻を突き出しママからバイブでやられているが双頭バイブが長いためかオレはセルフサービスのガソリンスタンドを思い出したのだった。」
(文中より)

随所に散りばめられた、卑猥(ひわい)な単語の数々。
文面には生々しい淫語が露悪趣味的に連ねられているだけなのに、読み進んでいくうち、この作品が単に性欲を喚起するだけのものではなく、鑑賞に堪える芸術の領域にあることに気づきます。
単なるポルノを超越している一因は、無秩序に見えるエログロ世界を構成しているのが、実は非常に明晰な文章だ、という点にあるでしょう。
明快な文章でグロテスクな幻想世界を描出し、しかも芸術的な美しさすらかもしだす…。『コックサッカーブルース』は村上マジックの真骨頂です。

本書の主人公・堀坂は、ポルノ雑誌が主力商品の弱小出版社を経営する男盛りの三十代。かつては大手広告代理店に勤めていた経歴を持つアウトローで、妻子とは別居中。そんなある日、見知らぬ女が家に現れ、謎のメモを冷蔵庫に残していった—。メモに記されたキーワードが発端となり、堀坂は日本の上流階級の性の禁域へと飲み込まれてゆく。

主人公の独白形式をとるエロと狂気の世界は、村上文学の18番。
SM嬢、変態性癖を持つ金持ち連中、エキセントリックな女、アウトロー中年男性…、と村上龍お得意のモチーフが総結集です。
読み始めたら、彼らのノンストップ変態乱痴気騒ぎに我を忘れてのめりこんでしまうでしょう。
退廃と官能に身を委ねたいひととき、抜群の牽引力を持った本書に、めくるめくエロスの世界へと連れ出してもらいましょう。
※村上龍による独白小説の傑作、類書としては『エクスタシー』(集英社文庫)、『ストレンジ・デイズ』(講談社文庫)も見逃せません。

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