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どくたさんのレビュー一覧

投稿者:どくた

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本キャッチャー・イン・ザ・ライ

2003/05/11 02:30

不器用な、切なさが、ここに、あります。

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サリンジャーと言えば、「ライ麦畑でつかまえて」が何しろ有名である。
多くの著名人が愛読書としてあげ、不思議な魅力がある一方、
学校の推薦図書として出会う機会があるほど、その文学的評価は高い。

その作品を、今一番日本で人気のある作家といってもいいだろう村上春樹が翻訳したのが本作である。
彼の文体はとても独特でかつ自然である。
それが見事にサリンジャーの文章とマッチしている。
世界に対する姿勢みたいなものの描き方が彼ら(サリンジャーと村上春樹)は似ているからだろう。
クールに構えているんだけど感じやすい、という。
さらに村上春樹は「僕」という一人称の口語体の文章をよく使うが、この作品自体ももともと一人称で口語体であるということが訳がマッチしている一つの要因かもしれない。

さて、推薦図書などと言ってしまうと、それだけで敬遠してしまいたくなる人もいることだろう。
しかしそういう人にこそまさにこの作品はうってつけの小説だと思われる。

主人公のホールデンは16歳。
いくつかの学校を転々とし、今度もまた追い出されることになる。
なにしろ学校に関わるあらゆるものが大嫌い。
勉強が嫌い。寮のルームメイトが嫌い。先生が嫌い。校長が嫌い。
それどころか目に付くもの全てにうんざりしているような少年。
好きなものといえば、兄のDBや弟のアリー、妹のフィービーくらいだ。
世界との折り合いがうまくつかなくて、でもそれをどうしたらいいかもわからないでいる。

そういった感覚って、程度の差こそあれ誰しもどこかで感じるものじゃないだろうか。
見ようによってはホールデンはどうしようもない甘ったれにも見えるけど、やっぱり憎めない。
生意気で強がりで泣き虫でどうしようもないんだけど、そうなんだよな、と共感してしまう部分があるのだ。
納得できない物事に直面して、なんで? と思うのはみんな経験のあることだろうが、多くの人はそれをうまく処理しながら生きている。
つまり軽く捉えてしまうわけだ。
たいした問題じゃないと。
ホールデンはそのそれぞれに見事に真正面からぶつかっている。
そしてうまく処理することができず、ことごとく切なくなってしまっているのだ。
その様はひどく惨めで不器用に映るが、彼が真摯に生きようとしているからこそなのかもしれない。

この話には、すごい冒険も、とんでもない事件も、めくるめくラブストーリーも描かれていない。
わくわくしたり、涙をぽろぽろ流したり、というのとは違う。
ただ、色褪せるないことのない、ちょっとした切なさが残るだけだ。

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