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池田  信夫さんのレビュー一覧

投稿者:池田  信夫

日経コミュニケーション1999/1/4

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 インターネットについての本は,ほとんど毎日のように出版されているが,大部分は断片的な技術情報・ビジネス情報である。こうした横文字の話題を追いかけている中毒状態のビジネスマンも多いが,そういう人にはこの本はお薦めできない。最新の技術情報も実用的なビジネス情報もほとんどなく,平易な言葉でインターネットの「思想」が語られているだけだからである。
 著者は,インターネットの言論の自由や自治を守る組織EFF(electronic frontier foundation)の創立当時からのメンバーである。EFFは米ロータスの創始者の一人でもあるミッチ・ケイパーらが私財を投じて作った非営利組織(NPO)で,インターネットの世界では各国政府と同等の影響力を持つ。
 本書で語られている思想は,横文字中毒の読者にとっては不可解かもしれない。例えば「知的財産権」を守ることがビジネスの発展に不可欠な条件だという米国政府の主張とは対照的に,本書ではより多くの人々が情報を共有することによって情報の価値を高めることが重要だとしている。
 またセキュリティについては,暗号鍵を政府が持つ必要があるという主張を批判し,インターネットの安全は参加者の自治によって守るものだと述べている。プライバシについても,法律ではなくNPOの活動によって守るべきだとしている。
 これらはEFFの主張だが,インターネットの主張でもある。NPOによるオープンな情報共有こそが,インターネットが国際標準になった最大の理由である。日本がインターネットの世界で存在感を示すために必要なのは,横文字を追いかけることではなく,本書に書かれているような「未来地球」モデルを理解し,オープンな組織や社会を作ることだ。その意味で邦題(原題はRelease 2.0)はなかなかしゃれている。
 ただし,米国的な民主主義がそのままサイバー・スペースに拡張できるかのような著者の主張は,いささか楽観的に過ぎよう。国家による秩序が守られない時,「自分がしてほしいように他人にもせよ」という市民社会のルールが機能するかどうかは疑わしい。知的財産権を守らずにビジネスを成立させる手段についての著者の代替案も,説得力に欠ける。
 真の21世紀の地球社会像は,こうした実験を重ねた先に見えてくるのだろう。
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