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牧野  洋さんのレビュー一覧

投稿者:牧野  洋

1 件中 1 件~ 1 件を表示

日経ビジネス2001/07/09

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本格派ジャーナリズムの本家を自認する米国では、質の高いノンフィクションが多い。本書も例外ではなく、調査報道を土台にして、人間ドラマを鮮やかに描いている。
 題材は、1998年に破綻した有力ヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)。主人公は、「伝説のトレーダー」ジョン・メリウェザーだ。
 著者は、ベストセラーとなった前作『バフェット』(邦題『ビジネスは人なり  投資は価値なり』)で見せた手法をここでも発揮する。メリウェザーについては彼の幼なじみにまで取材し、生い立ちから内面に切り込む。
 さらに、メリウェザーを中心に多彩な人物を絡み合わせる。彼を取り巻く天才トレーダーやノーベル経済学賞受賞者らのパートナーはもちろん、大物銀行家や米連邦準備理事会(FRB)首脳を生々しく描き、LTCM破綻までの“大河ドラマ”に仕立て上げる。
 圧巻はニューヨーク連邦準備銀行本店でのLTCM救済劇だ。同連銀総裁が離反者であるベア・スターンズ最高経営責任者(CEO)のジミー・ケインを個室で説得している最中に、メリルリンチCEOのデビッド・コマンスキーが割り込む場面は次のようになる。
 「コマンスキーが入ってきた。頭から湯気が立ちそうだ。ケインと向き合って、メリルCEOはがなりたてた。『いったい、何を考えている!』。ケインがかわす。『パートナー契約を結んだ覚えはありませんな』。コマンスキーがリンドン・ジョンソンばりの腕でつかみかかった…」
 著者は、メリウェザーへの直接取材要請を断られている。これは、経済人関係ではウォルト・ディズニーやコカ・コーラの大物CEOを主人公にした近年のノンフィクションでも同様で、米国では珍しくない。
 むしろ、主人公を知る多数の関係者への取材や地道な資料集めを基にすることで、著者は主人公との“癒着”リスクを排する。「私」として文中に登場せず、観察者の立場も貫く。主人公が公認する作品では正統派ノンフィクションになりにくいのだ。
 著者はウォールストリート・ジャーナルの名物コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」のコラムニスト経験者。それだけに、難解な金融工学の世界も身近な比喩を使って分かりやすく解説している。なぜLTCMには公的資金が使われなかったのか。なぜウォール街では護送船団行政が成り立たないのか。なぜ米国の金融技術が日本よりも数十年先を行っているのか。本書を読むと、こんな疑問も解ける。
Copyright (c)1998-2001 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

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