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先月(2017年6月)

菅野 昭正さんのレビュー一覧

投稿者:菅野 昭正

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本木村蒹葭堂のサロン

2000/10/21 00:17

日本経済新聞2000/5/7朝刊

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 木村蒹葭堂の名は、かつて森鴎外、芥川龍之介の著作のなかで触れられたことはあるものの、その後は長いあいだ、大方の文学者の関心の外に置かれてきた。今でもすっかり忘れられたわけでなく、江戸時代の文化史を専門とする学者の仕事の一隅に、その名が登録されてはいるかもしれない。しかし、その周辺に集まっていた名だたる文人・画家たち、たとえば蕪村、司馬江漢、谷文晁などにくらべると、知名度がずっと低いのは確かである。詩業、画業にかけてもそれなりの腕前を示し、書画骨董に通じ、今日ふうにいえば文化事業に熱心で、図書館兼博物館のような施設を開いて、当代の代表的な文化人となったこの大阪商人の業績の大きさは、ほとんど評価されていないにひとしい。
 中村真一郎『木村蒹葭堂のサロン』は、評伝の形をとって書かれている。生涯のあらましを俯瞰し、家業の酒造りや家庭生活の内情に目を配り、もちろん詩や絵について評価し、本草学の知識を吟味する。その探索はこまかく行きとどいているが、中心に置かれているのは、図書館・博物館を創業・経営し、数多くの文人・学者たちを集めて、文化のネットワークを張りめぐらした業績である。
 幸いにして蒹葭堂には日記があり、著者はそれを大いに活用して、サロンの闊達な交流と創造の雰囲気を再現する。そこのところで、周囲の文人たちの仕事、とくに漢詩についての深い造詣が物を言う。このサロンの文化的な質の高さ、ひいては十八世紀後半の日本の文化の水準が、こうしてここに彷彿とうかびあがる。蒹葭堂以て瞑すべし。文化の環をひろげる組織者としての偉大さは、最大に顕彰されたのであるから。
 中村真一郎の仕事の系列として見れば、『頼山陽とその時代』、『蠣崎波響の生涯』につづいて、これで江戸文化論三部作が完成したことになる。文学を個人の孤独な営みでなく、文明文化のひろい風土のなかで考えてきた作家の最後の仕事として見るとき、この大冊の意義はいっそう深まるはずである。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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