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レビューアーランキング
先月(2017年2月)

海路友さんのレビュー一覧

投稿者:海路友

10 件中 1 件~ 10 件を表示

ゲッベルスの贈り物

2001/10/03 22:16

入念に張り巡らせた仕掛けは、巧妙かつ大胆。ユニークな「空想本格推理」

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 かって、怪獣が跋扈し超兵器が活躍する映画を「空想特撮映画」と呼んだ。『ゲッベルスの贈り物』には、空想本格推理とでも言うべき懐かしさのようなものがある。

 ビデオのみの露出ながら、爆発的な人気を誇るアイドル「ドミノ」。彼女を探し出すため、プロデューサーの「おれ」は街を奔走する。
 一方、著名人を自殺に見せかけ殺害していく、殺し屋「わたし」。
 二人の距離は少しづつ縮まっていく。やがて明らかとなる驚くべき「ゲッベルスの贈り物」の正体!

 昨年徳間文庫より刊行され、(ごく一部にではあるが)話題となった『六色(りくしき)金神殺人事件』。その著者藤岡真が1993年に発表した長編ミステリー第一作が、この『ゲッベルスの贈り物』である(著者についてより詳しく知りたい方は、千街晶之氏による本書解説参照)。
 一見、単純に見える物語。だがその実態は、蜘蛛の巣のように入り組んでいる。
「おれ」と「わたし」、それぞれの視点で語られる数々の事件。その中心にかいま見える「ドミノ」の存在。そして、「ゲッベルス」。
 入念に張り巡らせた仕掛けは、巧妙かつ大胆。読者は「焦躁」のツボを小気味よく刺激され、ページをめくる手は止まらなくなる。

 「全く思いもしなかった意外性」を求めるという著者の読書嗜好は、自作においてもきちんと実践されている。7年という沈黙があったものの、創作意欲は旺盛とのこと。藤岡真という作家。今後、要注目である。 (bk1ブックナビゲーター:海路友/ライター 2001.10.04)

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十四歳、ルシフェル

2001/12/13 22:18

サイボーグとして生まれ変わった14歳の戦い

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 物語は直球勝負。ゴテゴテした飾り付けは一切ない。そんなものは、必要ないからだ。

 暴走族によって惨殺された中学生、源正義。彼は科学の力によって、サイボーグとしてよみがえった。チタン合金の骨格、心臓には超小型の原子炉。マッハの速度で走り、鉄板をも貫くパワーを持つ。
 「ルシフェル」と命名された彼は、自分を殺した暴走族たちと闘うことになる。自分を甦らせた男たちのために、そして、かって自分が守ることのできなかった少女のために。

 著者中島望は1999年第10回メフィスト賞受賞作『Kの流儀 Fullcontact Game』でデビュー。極真空手の使い手を主人公に(著者自身、国際空手連盟極真会館に所属している)、血沸き肉躍る挌闘小説を描いてきた。
 今作においても、作者の力量はいかんなく発揮されている。
 凄絶とも言うべき戦いを、適格に描写していくそのスピード感。主人公の持つ、抑えようのない怒りと噴出。生々しい死闘の映像は、ダイレクトに読者の頭に叩き込まれる。中島望ならではの、「力」である。
 こう書いてしまうと、何やらひどく血なまぐさい、それでいて中味のない、ある種ゲーム的な小説かと思われてしまいそうだが、決してそんなことはない。
 14才で時間を止められてしまった主人公の葛藤、社会や法律の冷酷さ理不尽さ、人間が本来持っている残酷さ。登場人物の行動には、そうした様々な念がこめられている。暴力に彩られながらも小説としての深みを失わないのは、やはり中島望の持つ「力」の所以であろう。

 あとがきによれば、担当編集者は本作を「70年代のSF」と評したという。
 社会規範、道徳規範を侵してまで、殺戮を続けるサイボーグ。2001年という時代は、彼には窮屈すぎるのかもしれない。
 70年代は、超小型の原子炉が無限の可能性をもっていた時代である。 (bk1ブックナビゲーター:海路友/ライター)

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紙の本夏の夜会

2001/11/06 22:16

子供の頃に起きた女教師殺人事件の真相とは?

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 作品のテーマは「記憶」。そして、主人公たちがふりまわされるのは、「思い出」である。青春よりも少し前、子供のころの思い出。
 だが思い出は、必ずしも心地よいものとは限らない。

 祖母の葬儀と同級生の結婚式が重なった。ひさしぶりに帰省した身元は、同級生四人とともに小学校時代の思い出を語り合う。
 やがて浮かび上がる、担任教師だった井口加奈子殺害事件。女性教諭はいつ、どこで殺されたのか。各人が、三十年前の記憶を辿っていく。真実はおぼろげな記憶とともに明らかとなっていくが……。

 「本格ミステリは人間の記憶の確実性に依拠する(というより、それを大前提とする)特殊ジャンルです」(著者のことばより)
 西澤保彦は、この大前提に挑戦した。本来確実であるべき人間の記憶が、曖昧であったとしたら。そこに築き上げられた推理はすべて瓦解してしまう。

 語られるのは、三十年前の出来事。主人公たちが小学生のときに起きた、殺人事件である。
 犯行はいつどこで行われたのか。わずかな手がかりを元に巧みに推理を構築し、アクロバティックな結論を導きだす。西澤保彦のお家芸は、ここでも冴え渡る。

 しかし、前提となっているのは曖昧模糊とした子供のころの記憶。前提となるべき記憶は容易にくつがえされ、導きだした結論も共にくつがえる。真実はなかなか顔を出してはくれない。
 西澤保彦自身、こうした作品形態を「錯誤なのかも」しれないと言っている。

 たしかに、「錯誤」かもしれない。だが、最終話において語られる真実の重み、悲しさ、驚きは、本格の王道をいくものである。
 錯誤どころか、本格ミステリに一石を投じた作品として、大いに評価するべきであると思う。

 そもそも、人間の記憶というものは、実に曖昧なものなのだ。試しに、昨日の夕食の献立を思い返してみるといい。 (bk1ブックナビゲーター:海路友/ライター)

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第22回メフィスト賞受賞作。宇宙人、大殺戮。B級の香り。

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 21世紀半ば、第三次世界大戦の傷も癒えぬ地球に、一隻の宇宙船が降りたった。
乗っていたのはバルカン人。地球人はこのファーストコンタクトによって、宇宙への第一歩を踏み出すことになる……。
 これは、アメリカで現在も放送されているSFテレビドラマ『スタートレック』の話。
 本著『DOOMSDAY 審判の夜』で描かれるのは、まさに最悪最凶のファーストコンタクトである。

 アメリカフラートン郡フラートン町。人口7000人の田舎町に、突如宇宙船が着陸した。未知のバリアで町を覆った2体のE.T.は、住人たちの殺戮を開始する。
 鉄をも貫くレーザー銃を乱射し、銃弾も受け付けないE.T.。その目的はいったい何なのか?
 元海軍特殊部隊のコウイチ=ハヤシをはじめとする町の住民たちは、何とか反撃を試みるのだが……。

 第22回メフィスト賞受賞作。宇宙人、大殺戮。B級の香りが漂ってくる。
 しかし、作者の持つ卓越した構成力、描写力は、B級をB級のままで終わらせたりはしなかった。
 出獄したばかりの元海軍特殊部隊隊員。再選を睨む大統領。スクープを狙う記者。神父、バーの店主、無能な町長、住人たちを救おうと奮闘する空軍、陸軍の面々たち。登場人物は約30名。
 作者は彼ら一人一人にスポットをあて、未曾有の災厄に見舞われた人々を、皮肉たっぷりに描いていく。そこに現出する、リアルなアメリカの田舎町。レーザー銃を持った宇宙人との絶妙のコントラストが、独特の世界観をかもし出す。
 よくできたB級映画は、A級大作映画を凌駕する。そんな奇蹟が、小説の世界でも起こり得るのだ。 (bk1ブックナビゲーター:海路友/ライター)

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暗闇の中で子供

2001/11/06 22:16

『煙か土か食い物』の続編。驚愕のラストに注目

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 憎めない人というのがいる。舞城王太郎の新作『暗闇の中で子供』は、憎めない本だ。
 前作『煙か土か食い物』で描かれた、福井県西暁町を恐怖のどん底に叩きこんだ連続主婦殴打生き埋め事件。解決したかに見えたその事件は、まだ終わっていなかった。
 マネキン人形を埋める少女、土中より発見される切断足首。
 奈津川家の三男三郎は、虚ろな毎日を送りつつも、否応なく事件の渦中へと巻き込まれていく。

 事件も盛り沢山だ。腹を切り開き中に札束を詰め込む猟奇事件。死体も盛り沢山。輪切り死体に串刺し死体に墜落死体。
 屋敷の中に現われる顔のない幽霊。ついに現われた河路夏朗!!
 さあ、どうする三郎。

 第19回メフィスト賞を受賞した『煙か土か食い物』でデビューした舞城王太郎の最新作である。
 続発する怪事件、そして奈津川家血みどろの闘い。地獄のごとき世界観は健在だ。
 本作の主人公は前作の四郎に代わり、兄三郎が務める。
 奈津川四兄弟の中でも、もっとも影の薄い三郎。彼を主人公としたことで、物語は前作とはまったく違った方向へと迷走していく。
 四郎に罵倒され、「無価値」のレッテルを貼られ、幽霊に怯え、十三歳の少女に困惑する三郎。彼が迎える驚愕のラストとは。

 怒濤の疾走感を抑制させながらも、まったく次元の違う扉を開いてみせる舞城王太郎。
 たしかに、ええ? と思わず声をあげたくなる箇所多数。でも、憎めないから言ってしまおう。本作はやはり、期待していた通りの傑作だ。

 蛇足ながら、本編中、前作『煙か土か食い物』の真相に触れている部分がある。できることなら、順番に読むことをお勧めする。

 もっとも読む順番なんて、作品の持つパワーの前には些細なことかもしれないが。 (bk1ブックナビゲーター:海路友/ライター)

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紙の本煙か土か食い物

2001/10/31 22:16

第19回メフィスト賞受賞。賛否両論の話題作

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 なんなんだこれは! 

 首を傾げる方もいるだろう。でも、あきらめてもらうより仕方がない。『煙か土か食い物』はそういう作品なのだから。

 サンディエゴのERで働く奈津川四郎。彼の母陽子が、何者かに殴られ、生き埋めにされ、意識不明になった。
 帰国した四郎は犯人への復讐に燃え、捜査を開始する。
 福井県西暁市を戦慄させる、連続主婦殴打生き埋め事件。被害者の傍に残された動物のぬいぐるみは何を指すのか。犯人の目的は。
 四郎の弟にして推理作家の三郎、自称名探偵の番場潤二郎。真相を見つけだすのは誰か。
 捜査の過程で見え隠れする、行方不明となった兄二郎の影。
 奇妙な連続犯罪を契機として、奈津川家に潜む血みどろ、どろぬまの過去が浮かび上がっていく。

 第19回メフィスト賞を受賞した本作は、極めて危険な作品である。
 語られる謎は二つ。一つは連続主婦殴打生き埋め事件。二つ目は、密室状態の三角蔵における奈津川二郎の消失である。
 だが、正面からまともに挑んではならない。二つの謎を貫き、ひっかきまわして、遂には渾沌とさせる竜巻のような物語が、本作には潜んでいるからだ。
 それは、奈津川家代々にわたる血の物語。壮絶な闘いの記憶を、読者は四郎とともに追体験していくことになる。
 やがて謎が解かれ、登場人物たちの往き先が定まったとき、言い様のないカタルシスが読者を包み込む。

 謎の連打に胸躍らせる方もいるだろう。凄絶な暴力描写に眉をひそめる方もいらっしゃるだろう。本格をバカにするなと怒る人もいるだろう。それでも、あきらめてもらうより仕方がない。『煙か土か食い物』はそういう作品なのだから。 (bk1ブックナビゲーター:海路友/ライター)

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紙の本異邦人 fusion

2001/10/31 22:16

父が殺される4日前にタイムスリップした男

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 1999年1月31日、故郷、竹廻(たけとば)空港に到着した永広影二(えひろじょうじ)は、突然、昭和52年にタイムスリップする。
 昭和52年。それは、影二の父啓介が何者かに殺害された年でもあった。
 父の死体が発見されるのはタイムスリップした日から4日後。父は一体誰に殺されたのか。殺害現場における足跡消失の謎とは何か。
 父の死を未然に防ぐべく、影二は従姉の許へと急ぐ。

 西澤保彦の最新長編である。タイムスリップというSF的設定、父親の殺害と足跡消失というミステリー。まさに西澤保彦の世界である。
 タイムスリップ、父親の殺害、と聞いて『七回死んだ男』(講談社文庫) を思い起こす方もいらっしゃるだろう。
 同じ時間を七回反復する能力を持った男が、祖父殺害を未然に防ごうと奮闘する物語。西澤保彦の名を世に知らしめた傑作である。
 では、本著『異邦人 fusion』が『七回死んだ男』の単純な焼き直しかと言えば、とんでもない。作者の狙いはまったく違うところにあるのだ。

 そもそも本著において、「殺人」という出来事はあくまでも一つのファクターにすぎない。
 物語の中心にあるのは、あくまで主人公の従姉美保の存在。彼女を巡る奇妙に捻れた人間関係が、すべての発端となっている。
 彼らの未来を知る影二は、故に「殺人発生」というゼロ時間に向って突き進まねばならない。父親を救うということは、従姉をも救うことになるのだから。
 やがて、タイムスリップと殺人は混然一体となり、一つの結論を導きだす。そのラストはまさに圧巻である。

 前作『夏の夜会』で西澤保彦は、記憶の曖昧さ、危うさ、想い出の苦さを描きだした。本著の主人公影二は、過去に戻り、記憶の中にのみ存在していた世界を実際に体験する。
 「過去」を巡る西澤保彦の挑戦は、まだまだ続きそうである。 (bk1ブックナビゲーター:海路友/ライター)

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紙の本超・殺人事件 推理作家の苦悩

2001/09/28 18:15

笑いと毒の豪華絢爛短編集

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 ミステリー界を震撼させた「名探偵の掟」(講談社文庫)から6年。東野圭吾がまたやってくれた。「推理作家(&編集者)の苦悩」を毒と笑いでぶった斬る、最新短編
集の登場である。

 税金対策に奮闘する推理作家、その悲しい末路は(超税金対策殺人事件)。
 理系離れを嘆く男が書店で目にした不思議な本、その内容は(超・理系殺人事件)。
 長篇原稿を得るため犯人当て小説に挑む4人の編集者、その結末は(超犯人当て殺人事件)。
 老齢の作家が書く支離滅裂な連載小説、担当編集者の決断は(超高齢化社会殺人事件)。
 若手作家、渾身の連載小説、その手口をそっくり真似た殺人事件が実際に起きて……(超予告殺人事件)。
 編集者の要求で、800枚の小説を2000枚に増量することになった推理作家の苦悩(超長編小説殺人事件)。
 解決までに残された枚数は5枚、追い詰められた推理作家は……?(魔風館殺人事件)。
 要約、書評なんでもござれの機械「ショヒョックス」、それを売り歩く男の真意は?(超読書機械殺人事件)。
 以上8本、そのすべてに笑いがあり毒がありオチがある。結末が悲惨であればあるほど、笑いが止まらなくなるのは、なぜだろう?

 東野圭吾は1985年、『放課後』 で江戸川乱歩賞を受賞。以来、多彩な作風で数々の傑作を世に出してきた。本著「超・殺人事件」においても、氏の持ち味はいかんなく発揮されている。特に、8作品すべてに織り込まれた「作中作」に要注目。ホラー、本格、ハードボイルド、トラベルミステリー。東野ワールドの懐深さを感じさせてくれる。

 文句なし、お勧めの一冊だ。

(bk1ブックナビゲーター:海路友 かいじ・ゆう/ライター 2001.09.29)

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紙の本巫女の館の密室

2001/09/28 03:16

美少女探偵・根津愛が「完璧な密室殺人」に挑む本格長編

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 美少女探偵・根津愛と宮城県警刑事桐野義太が活躍する好評シリーズ3作目である。

 友人樫村愉美の別荘に招待された愛と桐野。その別荘には、奇妙な離れがあった。山の急斜面をくり抜いて作った「日輪館」。そこでは10年前、密室殺人があったという。窓も何もない、コンクリートの箱のような建物の中で、いかにして殺人は行われたのか。「完璧な密室殺人」に愛が挑む。

 愛川晶は1994年、第5回鮎川哲也賞を受賞。以来、トリッキーな本格ものを中心に秀作を発表しつづけてきた。

 本作は作者自身「きちんとした本格が書けた」と述べているように、謎と解決のカタルシスを存分に味わうことのできる傑作だ。冒頭から提示される膨大な情報量。一見、何の関係もなさそうに見える蘊蓄の数々。それらが重要な伏線となり、一気に浮かび上がってくる。探偵・根津愛と犯人の対決を存分に楽しんでいただきたい。

 シリーズ3作目とはいえ、探偵・根津愛のひととなりについては、本文中にじっくりと描かれている。根津愛ものは初めてという読者も安心である。

 根津愛シリーズは『夜宴 美少女代理探偵の殺人ファイル』(Gentosha novels 幻冬舎推理叢書)、『根津愛(代理)探偵事務所』(原書房)があり、1999年角川書店より刊行された『堕天使殺人事件』 というリレー小説内でも活躍を見せている。興味のある方は、ぜひそちらも手にとっていただきたい。

 ちなみに、根津愛は愛川晶の作り出した架空の人物ではない。ちゃんと実在しているのだ。本書あとがき内に記されたサイト『根津愛探偵事務所』にアクセスすれば、嘘ではないことがお分かりになるはずだ。密室の謎を解き明かした名探偵とコンタクトできるチャンス。くれぐれもお見逃しなく。 (海路友 かいじ・ゆう/ライター 2001.09.28)

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冬のスフィンクス

2001/09/28 03:15

現実と夢の交錯。「推理小説風の発端」から「探偵小説風の展開」を経て「幻想小説風の結末」へ

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 これは夢? それとも現実?

 ページをめくる手が少しでも止まれば、あなたは既に作者の術中に落ちている。

 夢を見ることで、絵の中に入り込めるという能力を持つ「看板屋」楯経介。洲ノ木正吾という彫刻家のコラージュ・ロマン『冬のスフィンクス』に入り込んだ楯は、不可思議な殺人事件に巻き込まれる。密室状態の中、ライフル銃で頭を打ち抜いた画家。自殺か他殺か。続いて発見された首なし死体。真犯人は誰か、そしてその目的は。

「探偵」と名乗ってしまったがために、その役割を果たすこととなった楯。現実と夢が交錯する世界で、謎は少しずつ解かれていく。

『殉教カテリナ車輪』で第9回鮎川哲也賞を受賞、1998年にデビューした飛鳥部勝則の最新長編である。幻想の世界を漂いつつも、確固とした論理の世界を構築していく……。独特の世界観は、今回も健在である。

 序章を受け、まずは「推理小説風の発端」がある。そして「探偵小説風の展開」。やがて物語は「幻想小説風の結末」を迎え、終章へ。読者は主人公楯とともに夢と現実を行き来し、いつしか事件の謎に頭を悩ませることになる。作中に設けられた「読者への挑戦」に思わずニヤリとする方もいらっしゃるだろう。もっとも、この「読者への挑戦」には「?」マークがつけられている。くれぐれも油断されないよう。

 「私にとって(この作品は)本格推理以外の何物でもない」という、飛鳥部勝則の挑戦を受けてみてはいかがだろうか。

 なお本作は、2000年にカッパノベルスより刊行された『砂漠の薔薇』と微妙な表裏一体関係にある。作者曰く「併せて読んでも、発見があるだろう」。 (bk1ブックナビゲーター:海路友 かいじ・ゆう/ライター 2001.09.28)

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