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先月(2017年6月)

草野  厚さんのレビュー一覧

投稿者:草野  厚

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本憲法とはなにか

2000/10/26 00:22

日経ビジネス2000/5/29

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 国会にようやく憲法調査会が設置され、議論が始まった。55年体制下では、自民党が当時の社会党に顔を立てて、こうした調査会すら発足していなかっただろう。それだけに遅ればせながら喜ばしいと思っていたら、新聞を読む限り現行憲法の制定過程などに焦点を当てている。
 そんな中、憲法問題というと第9条のことしか思い出さないという大半の人々に、憲法全体の問題点と今後の議論を考える上で格好の書籍が出版された。もちろん、優れたジャーナリストの著者だから概説書ではない。
 著者の指摘でなるほどと思ったのは、一度も憲法を改正しなかったために、世界の潮流である「知る権利」が条文にはないという欠陥だ。それを補い情報公開法ができはしたが、官僚の裁量で、実質的には不開示とするのが可能になっている。その結果、国民は政府が何をしたのかを知らないままでいる可能性が高いと指摘する。国民が知らされていない例として、北朝鮮の拉致事件を挙げるのだが、リベラルな学者やメディアが主張する情報公開の必要性の議論とひと味違って面白い。
 冷戦が終わって10年。環境など地球規模問題が国家の利害を超えて議論され、政策が実施されつつある。著者は、現行憲法にははっきりと書き込まれていない、環境を守るという思想を盛り込むべきと主張する。日本が目指す国家像が軍事大国でないことは明らかだが、ならばどのような国になるべきかというと、明確な答えがない。その1つの方向は環境大国であるという著者の主張には賛成である。
 私学で教えている者からすれば、私学助成は憲法違反という指摘は耳が痛い。しかしこの議論をタブーにして、第9条の修正を議論することは不可能だ。私学経営者は国庫助成なしの経営を模索すべきであろう。
 こうした議論に加え、聖徳太子の十七条憲法や明治憲法の制定過程を扱うなど、議論は奥行きが深い。しかし何と言っても、著者の真骨頂は第4章「現行憲法で国が守れるか」に始まる安全保障問題を扱った3つの章であろう。
 私も最近、日米安保についての本を出版する過程で、周辺事態法の目的が第9条の制約によっていかに歪められているかを改めて確認した。国連平和維持活動(PKO)協力法案も同様で、PKO部隊に参加している隊員は、他国の隊員が目の前で撃たれようとしても救助することすらできない。
 唯一、著者と見方が違ったのは、前文の評価である。私は、この文章の、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という件が好きだ。
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紙の本関東大震災と日米外交

2000/10/26 00:19

日経ビジネス1999/10/18

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書店で何気なく手にした本が、望外の面白さだったということは滅多にない。この本はまさしくそうした類の1冊である。理由は3つある。
 第1は、日米関係史の知られざる一面を教えてくれたことである。関東大震災の折に、米国からの援助があったことは知っていたが、細部については情報がなかった。米国が、ベッド6000床をはじめ度肝を抜くようなスケールで資金、物資、医者、看護婦を送ってきた事実、それも76年前という時点で行われた点に驚きを禁じ得なかった。
 米国はクーリッジ大統領自ら先頭に立って募金集めを行い、対日航路は援助物資の輸送に特化するように命じたという。英、仏、中国も先を争うように日本を支援した。外国からの支援など予想していなかった政府は震災で情報網が被災していたこともあり、受け入れに大混乱となる。このあたりは阪神・淡路大震災と同様である。
 第2に興味深いのは、各国は人道的見地から援助を行ったことは間違いないが、それぞれに外交、政治的意図があった点である。米国には、排日問題で冷却化した日本との関係改善、さらには、大震災の前年のワシントン会議で確認した日米相互協調を実践するという目標があった。同時に救護団300人は、しっかりと日本を観察し、復旧にあたる青年団などの団結力は、「誤った方向へ向かえば軍隊をしのぐ暴力組織」となりうると書き残している。現在の米国外交の底力を見せつけるような情報収集力である。
 また結局は断ることになる誕生間もないソ連の援助には、日本側が察知したように革命イデオロギーの宣伝という意図があった。先月の台湾中部大地震でも、中国の援助を台湾は婉曲に断ったが、その理由も、中国共産主義への警戒心と、大地震を利用して冷却している関係改善を図ろうとする中国への反発であった。
 第3に、感心したのは、大震災と日米関係に焦点を当てただけではなく、その十数年前に起きたサンフランシスコ大地震の際の日本の対米支援、排日移民をめぐる対立、当時の日本が国際社会で置かれた立場などについて、1章を割いている点である。登場する人物描写も丁寧で、それらが相まって、ストーリーの展開が、立体的となり、引き込まれるようにしてページをめくった。中長期的な日米関係を論じるには必読の極めてすぐれた書物と言えよう。ただ1つ残念なのは、答礼の使節として訪米した女性とのインタビューを行ったと、あとがきで記しているにもかかわらず、それが十分に記述されていない点である。
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