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迫水由季さんのレビュー一覧

投稿者:迫水由季

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本環蛇銭

2002/06/03 22:15

神社から発掘された古銭に掛けられた呪いとは?伝奇ホラーの秀作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 29歳の修と裕一。辿ったコースは違ったが、社会に適応しきれず現実から逸脱しているという点では似ていた。彼らのつきあいは長年にわたって密でも疎遠でもなかった。親友——ではなく「ロクデナシ同士」の幼なじみだった。

 裕一は考古学に興味を持ち、「椿神社古墳」の発掘に携わっていたが、ノイローゼを患い、急性アルコール中毒で死んだ。
 葬式の一ヶ月後、修は街中で裕一に似た男を見かけて、ふと火葬場で焼けた骨が出てこなかったことを思い出す。死体の消失。早すぎた埋葬。まさか、裕一は生きかえったのだろうか?

 その夜、修の家の窓を叩く醜悪に老いた男がいた。老人は「俺は裕一だ。助けてくれ」と言う。「俺の体を取り戻したい」と。……そんなことが信じられるわけがない。しかし、話を聞くうち、現実に起こったことだと思い知らされる修。裕一が発掘現場で拾ったという古銭——環蛇銭が原因なのか。

 環蛇銭について調べを進めるうちに、裕一にかけられた呪いは、修と古銭商の佐伯へも波及していく。「ウロボロスの蛇」のように連鎖して閉じている呪い。これを解決しなければ、次は自分がやられてしまうという恐怖が修たちを襲う。
 椿神社古墳、八百比丘尼(やおびくに)の伝説、ドラキュラ、環蛇銭。それらを繋ぐ「呪いの根元」は何なのか。三人はそれぞれの思惑を抱えながら、真相を究明しようと試みるのだが……。

 本書は修の一人称で語られている。登場人物たちは年齢のわりには幼い感じなのだが、だからこそ理屈ではなく単純に本能のまま行動して、脅え、苦悩し、立ち向かっていく。そんな彼らに同化し、読者は作品世界に一気にひきずりこまれることだろう。

 印象的だったのは「赤」色の描写だ。随所に見られるのだが、どの場面でも尋常ならざる美と恐怖を湛えて、読む者に迫ってくるのである。
 人間関係のトラブルなど因果関係が明白なケースは、まだマシだ。本書に描かれるように、まったく身に覚えのない呪いの連鎖に、本人も気づかないまま巻き込まれていた……というケースは、明確な理由がわからないがゆえに最も怖ろしいといえるかもしれない。
 伝奇とホラー——両方の醍醐味を味わわせてくれる魅力的な作品である。 (bk1ブックナビゲーター:迫水由季/役者・ライター)

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紙の本月蝕の窓

2001/11/06 22:16

女たちの悲嘆が宿る「月映荘」で起こる惨劇

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 1986年、那須高原に建つ明治時代の洋館「月映荘」で二人の女性が殺された。その時に、一人だけ助かったのが当時11歳だった印南茉莉である。これは強盗殺人だとする説が有力だったが、犯人が特定できないまま月日は流れた。
 1997年、桜井京介を含む一行は赤城邸調査から足をのばして、そっくりな設計であるといわれる「月映荘」へと向かう。館に辿り着くと、同行していた茉莉の様子がおかしくなり、「あの時見たのは、赤いお月様じゃない。血で赤くなったお兄様の顔
だった」と告げる。彼女は過去の事件に関して封じられていた記憶を取り戻したかのようにみえた。その後、1999年に茉莉の義理の兄である印南雅長は真相不明のまま、自宅マンションで謎の転落事故死をする。あるいは、これは義妹に告発された故の自
殺だったのか?
 そして2000年、再び「月映荘」に向かおうとする桜井京介に、霊能力を持っているという少女・輪王寺綾乃は「あなたの命に関わる危険があるから行くのをやめてほしい」と忠告する。「忠告をいただいたからこそ、死ぬわけにはいかなくなりました」と桜井は答え、那須へと旅立った。
 しかし「月映荘」ではやはり再び惨劇が。女たちの悲嘆が宿るといわれるこの館は本当に呪われているのだろうか? それに関わる桜井の運命は?

 建築探偵・桜井京介シリーズの10冊目、番外編2作を除くと、8作目の長編である。
もちろん単独で読むことも可能だが、ここはやはりシリーズを順番に読むことをお薦めする。
 というのも、主人公である桜井京介については8作目にしてもいまだに謎が多いのだが、シリーズを通して段々と彼の過去や人物像が明らかにされてきているからである。
 特に、本作品は以前関わった事件を通して、自分の在り方について悩んでいる桜井の視点で大半のストーリーが進んでいく。著者自身があとがきで「視点人物が自閉して、ぐずぐずと悩んでばかりなのだから、物語が快調に動くわけもない」と記してい
るが、桜井京介のモノローグで進んでいく部分が多いのである。
 しかし、この桜井による内面的な語りが心地よい、と思う読者も多いのではないだろうか。確かにテンポよく進んでいく話、スピード感のあるものというのも楽しいが、ゆっくり主人公とともに考えながら読んでいける作品というのは、また別の味わ
いがある。
 そして、その桜井の視点にどこか同調することができれば、苦い結末を経て、最終ページでは優しい感動を覚えることだろう。
 シリーズを通しての読者にとっては気になるところかと思うが、後半になってからは桜井の友人である栗山深春も合流するのでご安心を。深春が来てからは、事件が解決に向けて進展していくので、その流れの変化もまた楽しい。

 シリーズ全般では、建築探偵というタイトルからもわかるとおり「建物」が中心になっているのだが、さらに今回は雪・月・花にまつわる話が効果的に使われている。
これらの美しさも味わえる作品であるところは、著者の持ち味であろう。 特に、輪王寺が語る、雪が降る時に聞こえるという「雪音(ゆきね)」のエピソードは心に残る。 (bk1ブックナビゲーター:迫水由季/役者・ライター)

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紙の本R.P.G.

2001/10/31 22:16

憧憬や嫉妬、疑心が渦巻くインターネットを舞台にしたミステリ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 正義、とは何なのだろう。

 強い精神と正義感が犯罪をおこしてしまうこともある。いいかげんに生きていても法に触れなければ「善人」でいられる現代の世界。そのなかで人はもがきながらも自分の中の何かと闘いつつ、他人との距離をうまく保っていかねばならない。インターネットでの「仮想家族」という設定をうまくとりいれながら、そんなテーマを考えさせる作品である。

 杉並区の自宅近くで、48歳の会社員・所田良介が刺殺された。渋谷区では、その3日前に21歳の女子大生・今井直子が絞殺される事件があった。それぞれの捜査が進むにつれて、被害者二人が顔見知りであったことと、現場に残っていた犯人の衣服と思われる繊維が一致していたことから、同一犯の可能性が浮上してくる。

 疑わしい人物は特定された。今井が大学のゼミで同級生だったA子である。今井は妻子のある所田と、いわゆる不倫関係を結んでいたのだが、A子の恋人である男性にも近づき横取りしたため、A子に怨まれていた。

 容疑者確定という動きの中で、現場担当ではなくデスク担当のベテラン・中本巡査部長は、違った視点から意見を述べた。彼の意見は採用され、具体的な計画の相談が始まる。その計画の一環で女性刑事が必要となり、石津ちか子が呼び寄せられた。ところが計画の実行開始の日、中本は心筋梗塞の発作で倒れ意識不明になる。中本の友人でもあるデスク担当の下島規義警部はここまで進めてきた中本の無念を思い、代役をかってでた。

 これがストーリーの序盤である。ここからは、ほぼ警察署内だけを舞台にしているので、一幕ものの芝居のようである。どう展開されていくのかはご自分の目と心で体験してほしい。
 著者自身があとがきに「本作では、地の文のなかに真実ではない記述があるという、ミステリーとしては大変基本的なルール違反をしている部分があります。(中略)ごめんなさい!」と記しているとおり、普通に読み流してしまうような文章の中にも仕掛けがひそんでいる。推理小説における「騙される楽しみ」を存分に堪能できるだろう。

 読み始めたら一気に読みたくなってしまうのはすべての宮部作品に言えることなのだが、この作品は文庫書き下ろしなので、気軽に一晩で読むこともできるのが嬉しい。

 つけくわえるならば、実際にこの作品が舞台化されるのをぜひ観てみたいと思った。 (bk1ブックナビゲーター:迫水由季/役者・ライター)

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