サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. 井上  俊明さんのレビュー一覧

井上  俊明さんのレビュー一覧

投稿者:井上  俊明

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本縛らない看護

2000/10/26 00:19

日経ビジネス1999/11/8

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日本の老人医療・福祉には、これまで常にある種の暗さがつきまとってきた。例えば「老人病院」という言葉を聞けば、病室に所狭しとベッドが並べられ、老人がずらりと横たわって点滴を受けているようなイメージを、多くの人が思い浮かべるのではないだろうか。
 とりわけ、本書が問題提起の対象としている「抑制」、すなわち治療や介護を拒んだり大声をあげて暴れたりする痴呆性老人などの手足を、看護婦らが縛ってその自由を奪う行為は、日本の老人医療の暗さの象徴だと言ってもいい。
 だが、「抑制」は日本の医療現場では決して珍しくない光景である。治療や安全という患者への配慮からではなく、少ないスタッフで切り盛りするための病院運営・経営上の目的から、「抑制」が行われる場合もなくはないのが現実だ。
 本書は、「抑制」から「縛らない看護」へと転換した東京・上川病院の医師や看護婦、理学療法士らの医療スタッフがまとめた現場報告である。
 高邁な理想を振りかざすのではなく、医療・看護上の合理的な考え方に立ち、「抑制」の是非を問う点が共感できる。例えば編著者らは、看護婦が多忙なために手のかかる患者を縛るケースについて、「抑制が床ずれを作ったり、心肺機能の低下や感染症の発生をもたらして、結局は看護の手間を増やす」と主張している。
 さらに、徘徊などの問題行動や転倒の防止など、「抑制」を防ぐための具体的な看護の方法についても実践的に記述している。日頃老人患者に向き合っている病院スタッフの現場の知恵が、本書にはあふれていると言っていい。
 だが、すべての医療スタッフが「縛らない看護」に理解を示したわけではなかった。点滴のために「抑制」を指示する医師とそれを拒否する看護婦の間で、激しい対立があったとの記述も見られる。決してきれいごとでは済まない医療現場の一端がここにも表れていよう。
 厚生省は、先頃公的介護保険の対象施設での身体的拘束の禁止を打ち出した。福岡県の病院が「抑制廃止宣言」を出すなど、「縛らない看護」の輪はじわじわ広がっている。そうした折だけに、本書は医療関係者ばかりでなく、一般の人の関心も集めるだろう。
 来年4月、公的介護保険が実施されれば、老人医療はより国民にとって身近な存在になる。その日のためにも、「縛らない看護」が一部の先進施設だけでなく、多くの病院や高齢者施設に一刻も早く普及してほしいものだ。
Copyright (c)1998-2000 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

1 件中 1 件~ 1 件を表示